衆議院

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第一七六回

衆第三号

   赤潮被害対策特別措置法案

 (目的)

第一条 この法律は、養殖業が水産物の安定的な供給を図る上で重要な役割を果たしている中で、ここ数年来養殖業に深刻な被害をもたらす赤潮が相次いで発生し、養殖漁業者の自助努力では被害の回復及び経営の再建が困難となっているとともに、養殖業を重要な産業としている地域においてその経済に深刻な影響を及ぼしている現状にあること、また、近年の海水温度の上昇等によりこれまで赤潮が発生していなかった地域においてもそのような赤潮が発生するおそれが生じていること等にかんがみ、赤潮により深刻な被害を受けた養殖漁業者に対する赤潮被害補てん金の支給、これらの被害に対処するために要する費用等に係る国の財政上の措置、赤潮の発生に係る調査研究の推進等による赤潮の防除のための措置等について定めることにより、赤潮により深刻な被害を受けた養殖漁業者の経営の再建及び安定並びに赤潮による被害の防止を図り、もって国民に対する食料の安定的な供給及び地域の振興に資することを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において「養殖漁業者」とは、漁業災害補償法(昭和三十九年法律第百五十八号)第百十四条に規定する養殖業の種類を勘案して政令で定める養殖業を営む者をいう。

2 この法律において「特定赤潮」とは、深刻な被害が発生した赤潮として農林水産省令で定める要件に該当する赤潮をいう。

 (赤潮被害補てん金の支給)

第三条 都道府県知事は、当該都道府県の区域に係る地先水面において養殖業を営む養殖漁業者であって、特定赤潮により当該養殖業に係る養殖水産動植物(養殖中の水産動植物をいう。以下同じ。)が死亡したものに対し、その者の申請に基づき、赤潮被害補てん金(以下「補てん金」という。)を支給する。

2 補てん金の金額は、当該養殖漁業者ごとに、特定赤潮により死亡した養殖水産動植物の数量に、当該養殖水産動植物と同種の水産動植物の当該地域における標準的な出荷価格を乗じて得た金額を基礎として農林水産省令で定めるところにより算定した損害額に、政令で定める割合を乗じて得た金額とする。

3 前項の政令で定める割合は、特定赤潮により当該養殖業に係る養殖水産動植物が死亡した養殖漁業者(以下「赤潮被害養殖漁業者」という。)に生じた損害が、漁業災害補償法の規定による漁業災害補償制度と相まって、十分に補てんされるものとなるよう定められるものとする。

4 補てん金の支給を受ける権利を有する者について相続その他の一般承継があった場合において、その者が死亡その他の当該一般承継の原因となる事由が発生する前に補てん金の支給の申請をしていなかったときは、その者の相続人その他の一般承継人は、自己の名で、その者の補てん金の支給を申請することができる。

5 前項の規定により補てん金の支給を受けることができる同順位の相続人が二人以上あるときは、その一人がした申請は、全員のためその全額につきしたものとみなし、その一人に対してした支給は、全員に対してしたものとみなす。

6 補てん金については、補てん金の支給を申請した者が迅速にその支給を受けることができるよう、仮払をする方法その他の政令で定める方法により支給するものとする。

 (資料の提供等)

第四条 都道府県知事は、漁業共済組合、漁業共済組合連合会、漁業協同組合、漁業協同組合連合会又は市場において卸売の業務を行う者に対し、赤潮被害養殖漁業者の損害額の算定のため必要と認められる資料の提供その他必要な協力を求めることができる。

2 都道府県知事は、赤潮被害養殖漁業者の損害額の算定に当たっては、前項の規定により提供を受ける資料を活用すること等により、補てん金の支給を申請する者に過重な負担を課することのないよう配慮するものとする。

 (政令への委任)

第五条 補てん金の申請期間、支給方法その他補てん金の支給に関し必要な事項は、政令で定める。

 (不正利得の徴収)

第六条 偽りその他不正の手段により補てん金の支給を受けた者があるときは、都道府県知事は、国税徴収の例により、その者から、その支給を受けた補てん金の額に相当する金額の全部又は一部を徴収することができる。

2 前項の規定による徴収金の先取特権の順位は、国税及び地方税に次ぐものとする。

 (非課税)

第七条 租税その他の公課は、補てん金として支給を受けた金銭を標準として、課することができない。

 (国の負担)

第八条 国は、都道府県知事が補てん金の支給をするために必要な費用の五分の四を負担する。

 (特定赤潮に対処するために要する費用等に係る国の財政上の措置)

第九条 国は、補てん金の支給に要する費用、特定赤潮により死亡した養殖水産動植物の埋却の支援に要する費用その他特定赤潮に対処するために要する費用並びに赤潮被害養殖漁業者等の事業の再建等に必要な金融上の措置に要する費用及び雇用の機会の確保に要する費用その他特定赤潮による被害がこれらの者の経営又は生活に及ぼす影響を緩和するために要する費用について、特定赤潮による被害の発生した地方公共団体が実質的に負担する部分を生じさせることのないよう、必要な財政上の措置を講ずるものとする。

 (金融上の措置)

第十条 国及び地方公共団体は、赤潮被害養殖漁業者等に対し、種苗の購入、養殖業に係る施設又は設備の整備等に必要な資金の無利子の貸付けが円滑に行われるための措置、当該資金の貸付金の償還期限の延長に係る措置、養殖業に必要な資金の借入れに係る債務の保証の拡充のための措置その他の事業の再建等に必要な金融上の措置を講ずるものとする。

 (赤潮による被害の回避のための措置)

第十一条 国及び地方公共団体は、養殖漁業者等が行う消波堤及びいけす等を固定するための(いかり)(えい) (赤潮の発生に係る調査研究の推進)

第十二条 国及び地方公共団体は、赤潮の発生の原因となる有害なプランクトンの休眠期細胞の分布状況の調査を行うとともに、赤潮の発生メカニズムの究明を図るための調査研究を推進するものとする。

2 国は、前項の施策を効果的に実施するため、国、地方公共団体等の相互間の緊密な連携協力体制の整備を図るものとする。

 (赤潮の防除のための措置)

第十三条 国及び地方公共団体は、前条第一項の調査の結果及び調査研究の成果を踏まえて赤潮の発生の防止のための措置を講ずるとともに、赤潮の除去に関する研究開発の推進及びその成果の普及のための措置並びに赤潮の除去に係る措置を実施するため必要な財政上の措置その他の措置を講ずるものとする。

 (事務の区分)

第十四条 第三条、第四条及び第六条の規定により都道府県が処理することとされている事務は、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二条第九項第一号に規定する第一号法定受託事務とする。

 (政令への委任)

第十五条 この法律に定めるもののほか、この法律の実施のための手続その他この法律の施行に関し必要な事項は、政令で定める。

   附 則

 (施行期日等)

第一条 この法律は、公布の日から施行し、第二条から第四条まで、第六条から第十条まで及び第十四条の規定は、平成二十二年六月一日以後において発生した赤潮について適用する。

 (検討)

第二条 政府は、この法律の施行後五年以内に、赤潮による被害の発生状況、赤潮の発生に係る調査研究の成果、赤潮の防除のための措置の実施状況その他この法律の施行の状況を勘案し、この法律の規定について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。

 (地方自治法の一部改正)

第三条 地方自治法の一部を次のように改正する。

 別表第一に次のように加える。

赤潮被害対策特別措置法(平成二十二年法律第▼▼▼号)

第三条、第四条及び第六条の規定により都道府県が処理することとされている事務

 (地方財政法の一部改正)

第四条 地方財政法(昭和二十三年法律第百九号)の一部を次のように改正する。

  第十条に次の一号を加える。

  三十 赤潮により被害を受けた養殖漁業者に対する赤潮被害補てん金の支給に要する経費


     理 由

 養殖業が水産物の安定的な供給を図る上で重要な役割を果たしている中で、ここ数年来養殖業に深刻な被害をもたらす赤潮が相次いで発生し、養殖漁業者の自助努力では被害の回復及び経営の再建が困難となっているとともに、養殖業を重要な産業としている地域においてその経済に深刻な影響を及ぼしている現状にあること、また、近年の海水温度の上昇等によりこれまで赤潮が発生していなかった地域においてもそのような赤潮が発生するおそれが生じていること等にかんがみ、赤潮により深刻な被害を受けた養殖漁業者の経営の再建及び安定並びに赤潮による被害の防止を図るため、赤潮により深刻な被害を受けた養殖漁業者に対する赤潮被害補てん金の支給、これらの被害に対処するために要する費用等に係る国の財政上の措置、赤潮の発生に係る調査研究の推進等による赤潮の防除のための措置等について定める必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。


   本案施行に要する経費

 本案施行に要する経費としては、平成二十二年度約二十五億円の見込みである。

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