衆議院

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第一七七回

衆第八号

   東日本大震災復興再生基本法案

目次

 第一章 総則(第一条−第七条)

 第二章 復興再生基本計画及び復興再生計画(第八条・第九条)

 第三章 基本的施策(第十条−第十三条)

 第四章 東日本大震災復興再生院の設置に関する基本方針(第十四条)

 附則

   第一章 総則

 (目的)

第一条 この法律は、東日本大震災(平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震及びこれに伴う津波による災害(これらに伴う原子力発電施設の事故による災害を含む。)をいう。以下同じ。)が、その被害が甚大であり、かつ、その被災地域が広範にわたる等極めて大規模なものであるとともに、地震及び津波並びに原子力発電施設の事故による複合的なものであるという点において我が国にとって未曽有の国難であることに鑑み、東日本大震災からの復興再生についての基本理念を定め、並びに現在及び将来の国民が安心して豊かな生活を営むことができる経済社会の実現に向けて、復興再生基本計画及び復興再生計画の策定その他の基本となる事項を定めるとともに、東日本大震災復興再生院の設置に関する基本方針を定めること等により、東日本大震災からの復興再生の円滑かつ迅速な推進を図ることを目的とする。

 (基本理念)

第二条 東日本大震災からの復興再生は、単なる原形復旧ではなく、新たな地域社会の構築であり、かつ、地震その他の天災地変による災害、電力その他のエネルギー及び食料問題、少子高齢化等我が国の社会経済情勢の変化、地球温暖化問題、国境を越えた社会経済活動の進展等の国際情勢の変化その他の現在の我が国が取り組むべき内外の諸課題を解決し、二十一世紀半ばにおける日本のあるべき姿を目指すものであることを旨として行われなければならない。

第三条 東日本大震災からの復興再生に当たっては、地域社会の絆の維持及び強化に留意しつつ、国が、地方公共団体と協力し、かつ、被災地域の住民の意向を最大限に尊重して、推進するものとする。

第四条 東日本大震災からの復興再生に当たっては、被災者を含めてその担い手である国民一人一人の総力と、国、地方公共団体及び民間の英知を結集して、これを行うものとする。

 (国の責務)

第五条 国は、二十一世紀半ばにおける日本のあるべき姿を示すとともに、前三条に定める基本理念(以下単に「基本理念」という。)にのっとり、東日本大震災からの復興再生に関する施策を策定し、及び実施する責務を有する。

 (地方公共団体の責務)

第六条 地方公共団体は、基本理念にのっとり、かつ、東日本大震災からの復興再生に関して講じられる国の施策に呼応して、東日本大震災からの復興再生に関する施策を策定し、及び実施する責務を有する。

 (国民の努力)

第七条 国民は、基本理念にのっとり、相互扶助の精神に基づいて、被災者への支援その他の助け合いに努めるものとする。

   第二章 復興再生基本計画及び復興再生計画

 (復興再生基本計画の策定等)

第八条 政府は、基本理念にのっとり、東日本大震災からの復興再生に関する施策を総合的かつ計画的に実施するため、その復興再生に関する基本的な計画(以下「復興再生基本計画」という。)を策定するものとする。

2 復興再生基本計画は、その策定の日の属する年度から十箇年間の計画とする。

3 復興再生基本計画は、おおむね、次に掲げる事項について定めるものとする。

 一 国の支援体制の確立に関する事項

 二 住宅、交通、情報通信、衛生、医療、福祉、教育、文化等の生活環境の整備及び雇用の確保その他の被災した住民の生活の再建に関する事項

 三 農林水産業の復興再生、中小企業者の事業の復興再生その他の被災した産業の復興再生に関する事項

 四 被災した地域社会の再生に関する事項

 五 原子力発電施設の事故の対策及びエネルギー政策に関する事項

 六 前各号に掲げるもののほか、東日本大震災からの復興再生に関し必要な事項

4 政府は、被災地域の復興状況等を勘案し、及び復興再生基本計画に係る施策の効果に関する評価を踏まえ、定期的に(必要がある場合は、随時)、復興再生基本計画の見直しを行い、必要な変更を加えなければならない。

 (被災した県又は市町村の復興再生計画)

第九条 被災した県又は市町村は、基本理念にのっとり、かつ、復興再生基本計画を踏まえて、当該県又は市町村の被災状況に応じ、当該県又は市町村の区域における復興再生に関する施策についての復興再生計画を策定するものとする。この場合において、当該県又は市町村は、復興再生に係る施策の広域的な調整及び実施に努めるものとする。

2 国は、被災した県又は市町村に対し、当該県又は市町村の復興再生計画の策定及びその円滑な実施を促進するため、必要な助言、指導その他の援助を行うものとする。

   第三章 基本的施策

 (復興再生に関する施策の迅速な実施)

第十条 国は、東日本大震災からの復興再生に関する施策を迅速に実施するため、必要な法制上、財政上その他の措置を講ずるとともに、その円滑かつ弾力的な執行に努めなければならない。

 (資金の確保のための措置)

第十一条 国は、次に掲げる措置その他の措置を講ずることにより、東日本大震災からの復興再生のための資金の確保に努めるものとする。

 一 復興再生及びこれに関連する施策以外の施策に係る予算を徹底的に見直し、当該施策に係る歳出の削減を図ること。

 二 財政投融資に係る資金及び民間の資金の積極的な活用を図ること。

 (復興再生債の発行等)

第十二条 政府は、財政法(昭和二十二年法律第三十四号)第四条第一項の規定にかかわらず、東日本大震災からの復興再生に係る歳出の財源に充てるため、国会の議決を経た金額の範囲内において、公債(次項において「復興再生債」という。)を発行することができる。

2 政府は、東日本大震災からの復興再生に係る歳入及び歳出について一般会計と区分して経理するとともに、あらかじめ、復興再生債の償還に係る道筋を明らかにしなければならない。

 (復興再生に係る国の資金の流れの透明化)

第十三条 国は、被災者を含めた国民一人一人が東日本大震災からの復興再生の担い手であることを踏まえて、その復興再生に係る国の資金の流れについては、国の財政と地方公共団体の財政との関係を含めてその透明化を図るものとする。

   第四章 東日本大震災復興再生院の設置に関する基本方針

第十四条 別に法律で定めるところにより、内閣に、東日本大震災からの復興再生に関する事務を行う東日本大震災復興再生院(以下「復興再生院」という。)を設置するものとする。

2 復興再生院は、復興再生基本計画の期間の終了する日まで、置かれるものとする。

3 復興再生院は、次に掲げる事務をつかさどるものとする。

 一 東日本大震災からの復興再生に関する企画及び立案並びに総合調整に関する事務

 二 東日本大震災からの復興再生に関する施策の実施に係る事務

 三 その他東日本大震災からの復興再生に関し必要な事務

4 復興再生院の内部部局には、必要に応じ、広く行政組織の内外から人材を登用するものとする。この場合において、政府は、被災した県及び市町村の職員その他の者の登用について、特に配慮するものとする。

5 復興再生院に、地方支分部局として、被災地域に地方復興再生事務所を置き、復興再生院の事務を分掌させることができるものとする。

6 復興再生院に、復興再生基本計画その他東日本大震災からの復興再生に関する重要事項について調査審議させるため、復興再生に関し高い識見又は豊富な経験のある有識者及び被災した県又は市町村の長等から構成される東日本大震災復興再生委員会を置くものとする。

7 第一項の法律を制定するに当たっては、内閣府及び各省が所掌している東日本大震災からの復興再生に関する施策に係る事務を復興再生院が所掌することを旨としなければならない。

   附 則

 (施行期日)

第一条 この法律は、公布の日から施行する。

 (この法律の廃止)

第二条 この法律は、東日本大震災からの復興再生が実現されたと認められるに至ったときは、廃止するものとする。

 (検討等)

第三条 国は、東日本大震災からの復興再生に関する施策の進捗状況、施策の広域的な調整及びその実施等に鑑みつつ、復興再生院の所掌事務及び権限について、被災した県及び市町村に段階的に移譲するよう、検討するものとする。

2 国は、東日本大震災からの復興再生に関する施策の推進と並行して、二十一世紀半ばにおける日本のあるべき姿の実現に努めるものとする。


     理 由

 東日本大震災が、その被害が甚大であり、かつ、その被災地域が広範にわたる等極めて大規模なものであるとともに、地震及び津波並びに原子力発電施設の事故による複合的なものであるという点において我が国にとって未曽有の国難であることに鑑み、東日本大震災からの復興再生の円滑かつ迅速な推進を図るため、東日本大震災からの復興再生についての基本理念を定め、並びに現在及び将来の国民が安心して豊かな生活を営むことができる経済社会の実現に向けて、復興再生基本計画及び復興再生計画の策定その他の基本となる事項を定めるとともに、東日本大震災復興再生院の設置に関する基本方針を定めること等の必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

 

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