衆議院

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第一八〇回

参第八号

   平成二十三年東京電力原子力事故による被害からの子どもの保護の推進に関する法律案

 (目的)

第一条 この法律は、平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う東京電力株式会社福島第一原子力発電所の事故(以下「平成二十三年東京電力原子力事故」という。)による被害から子どもを保護するための施策に関し、基本理念を定め、並びに国及び地方公共団体の責務を明らかにするとともに、平成二十三年東京電力原子力事故による被害から子どもを保護するための施策の基本となる事項を定めることにより、平成二十三年東京電力原子力事故による被害から子どもを保護するための施策を総合的かつ計画的に推進することを目的とする。

 (基本理念)

第二条 平成二十三年東京電力原子力事故による被害から子どもを保護するための施策は、次に掲げる事項を基本理念として行われなければならない。

 一 子ども(胎児を含む。)が放射線による健康への影響を受けやすく、かつ、低線量の放射線が人の健康に与える影響が科学的に十分に解明されていないことに鑑み、平成二十三年東京電力原子力事故により放出された放射性物質による外部被ばく及び内部被ばくによる子どもの健康被害を未然に防止する観点から、被ばくのおそれがある子ども(胎児である間の被ばくのおそれがある子どもを含む。)及び妊婦の健康管理並びに子ども及び妊婦の被ばく放射線量の低減に万全を期すること。

 二 子どもが心身の成長の過程にあり、かつ、次代の社会を担う存在であることに鑑み、平成二十三年東京電力原子力事故による被害によりその健やかな成長が阻害されることのないようにすること。

 三 平成二十三年東京電力原子力事故による被害が長期間にわたるおそれがあることに鑑み、必要な施策を長期間にわたって確実に実施すること。

 (国の責務)

第三条 国は、これまで原子力政策を推進してきたことに伴う社会的な責任を負っていることに鑑み、前条の基本理念(次条において「基本理念」という。)にのっとり、平成二十三年東京電力原子力事故による被害から子どもを保護するための施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。

 (地方公共団体の責務)

第四条 地方公共団体は、基本理念にのっとり、平成二十三年東京電力原子力事故による被害から子どもを保護するための施策に関し、国との適切な役割分担を踏まえて、当該地域の状況に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。

 (法制上の措置等)

第五条 政府は、平成二十三年東京電力原子力事故による被害から子どもを保護するための施策を実施するため必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講じなければならない。

 (基本計画)

第六条 政府は、平成二十三年東京電力原子力事故による被害から子どもを保護するための施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、平成二十三年東京電力原子力事故による被害からの子どもの保護に関する基本的な計画(以下この条において「基本計画」という。)を策定しなければならない。

2 基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。

 一 平成二十三年東京電力原子力事故による被害から子どもを保護するための施策についての基本的な方針

 二 平成二十三年東京電力原子力事故による被害からの子どもの保護に関し、政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策

 三 前二号に掲げるもののほか、平成二十三年東京電力原子力事故による被害から子どもを保護するための施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項

3 政府は、基本計画を策定したときは、遅滞なく、これを国会に報告するとともに、公表しなければならない。

4 前項の規定は、基本計画の変更について準用する。

 (地域ごとの放射線量の算出等)

第七条 国は、平成二十三年東京電力原子力事故による被害から子どもを保護するための施策の策定及び実施に資するため、平成二十三年東京電力原子力事故発生当時の気象の状況、放射性物質の性質等を踏まえた放射性物質の種類ごとの詳細な移動の状況の把握に基づき平成二十三年東京電力原子力事故後一定期間の地域ごとの放射線量を算出し、並びに放射性物質による環境の汚染の状況について監視及び測定をきめ細かく実施するとともに、これらの結果を国民に明らかにするものとする。

 (子ども及び妊婦の被ばく放射線量の評価等)

第八条 国は、平成二十三年東京電力原子力事故により放出された放射性物質による被ばくのおそれがある地域に居住し、又は滞在した子ども及び妊婦について、行動調査に基づく被ばく放射線量の推計、被ばく放射線量の評価に有効な検査等による被ばく放射線量の評価及びその結果の本人又はその保護者への通知を行うことその他平成二十三年東京電力原子力事故により放出された放射性物質による子ども及び妊婦の被ばくの状況を明らかにするために必要な措置を講ずるものとする。

 (生涯にわたる定期健康診断等)

第九条 国は、平成二十三年東京電力原子力事故により放出された放射性物質による被ばくのおそれがある子ども(胎児である間の当該被ばくのおそれがある子どもを含む。以下この条から第十一条までにおいて同じ。)及び妊婦の健康管理に資するため、当該子どもの生涯にわたる定期的な健康診断及び当該妊婦の健康診断の実施並びにその結果の保管及び本人又はその保護者への通知その他必要な措置を講ずるものとする。

 (医療費に係る負担の減免)

第十条 国は、平成二十三年東京電力原子力事故により放出された放射性物質による被ばくのおそれがある子ども及び妊婦が医療を受けたときに負担すべき費用についてその負担を減免するため、必要な措置を講ずるものとする。

 (医療等を行う機関の設置)

第十一条 国は、放射線による被ばくのおそれがある子ども及び妊婦に対する医療の提供及び健康相談を行う機関の設置のため、必要な措置を講ずるものとする。

2 前項の機関は、これを利用する平成二十三年東京電力原子力事故により放出された放射性物質による被ばくのおそれがある子ども及び妊婦の利便を確保するため適切な場所に設置されるものとする。

 (医療及び研究に係る人材の養成)

第十二条 国は、放射線に被ばくした者の医療及び放射線が人の健康に与える影響に関する研究に係る人材を幅広く養成するため、中等教育段階を含め、放射線に被ばくした者の医療及び放射線が人の健康に与える影響に関する教育及び研究の充実に必要な措置を講ずるものとする。

 (子ども又は妊婦が通常所在する場所の汚染状況の把握、除染等の措置等)

第十三条 国は、子ども及び妊婦の被ばく放射線量の低減に資するため、平成二十三年東京電力原子力事故により放出された放射性物質による環境の汚染が一定以上あるおそれがあると認められる地域内における子どもの住居、学校、保育所その他の子どもが通常所在する場所(通学路その他の子どもが通常移動する経路を含む。)及び妊婦の住居その他の妊婦が通常所在する場所(次項において「子ども又は妊婦が通常所在する場所」という。)についての汚染の状況に関する詳細な調査測定の実施並びにその方法及び結果の公表その他必要な措置を講ずるものとする。

2 国は、子ども又は妊婦が通常所在する場所であって、前項の調査測定の結果放射性物質により汚染された土壌等の除染等の措置が必要と認められるものについて、当該措置を速やかに行うため、必要な措置を講ずるものとする。

3 国は、前項の除染等の措置が講ぜられるまでの間において当該措置が必要と認められる場所から子ども及び妊婦が一時的に避難することを支援するため、当該避難に要する費用の助成その他必要な措置を講ずるものとする。

 (学校給食等に係る放射性物質の検査)

第十四条 国は、平成二十三年東京電力原子力事故により放出された放射性物質による食品への影響に係る不安を解消する必要があると認められる生産地がある場合に、当該生産地の食品を多く利用する学校給食等について放射性物質の検査が行われるよう、学校給食の共同調理場等における当該検査のための機器の設置に要する費用の助成その他必要な措置を講ずるものとする。

 (地域における自主的な取組の支援)

第十五条 国は、子どもの保護者等による放射性物質により汚染された土壌等の除染等の措置、学校給食等についての放射性物質の検査その他の子ども及び妊婦の被ばく放射線量の低減を図るための地域における自主的な取組を支援するため、最新の科学的知見に基づき専門的な助言、情報の提供等を行うことができる者の派遣その他必要な措置を講ずるものとする。

 (子どもの学習等の支援)

第十六条 国は、平成二十三年東京電力原子力事故により学校における学習その他の活動(以下この条において「学習等」という。)に支障が生じた子どもの学習等を支援するため、学校における学習を中断した子どもに対する補習の実施、学校における屋外での運動が困難となった子どもに対する屋外での運動の機会の提供その他必要な措置を講ずるものとする。

 (放射線に関する教育及び啓発)

第十七条 国は、子どもをはじめとする国民が、放射線が人の健康に与える影響及び放射線からの効果的な防護方法に関する知識の習得等により放射線に関する正しい理解を深めることができるよう、学校教育における放射線に関する教育の推進その他必要な教育及び啓発を行うものとする。

 (意見の反映及び透明性の確保)

第十八条 国は、平成二十三年東京電力原子力事故による被害から子どもを保護するための施策の適正な策定及び実施に資するため、国民の意見を当該施策に反映し、その策定の過程の透明性を確保するための制度を整備する等必要な措置を講ずるものとする。

   附 則

 (施行期日)

1 この法律は、公布の日から施行する。

 (検討)

2 平成二十三年東京電力原子力事故による被害から子どもを保護するための施策については、この法律の施行後三年を目途として、この法律の施行の状況、最新の科学的知見等を勘案して検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるものとする。


     理 由

 平成二十三年東京電力原子力事故による被害から子どもを保護するための施策を総合的かつ計画的に推進するため、平成二十三年東京電力原子力事故による被害から子どもを保護するための施策に関し、基本理念を定め、並びに国及び地方公共団体の責務を明らかにするとともに、平成二十三年東京電力原子力事故による被害から子どもを保護するための施策の基本となる事項を定める必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

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