衆議院

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第一八〇回

参第一四号

   道州制への移行のための改革基本法案

目次

 第一章 総則(第一条−第四条)

 第二章 道州制への移行のための改革の基本方針(第五条−第十条)

 第三章 道州の区域の決定(第十一条)

 第四章 道州制への移行のための改革推進本部(第十二条−第二十一条)

 附則

   第一章 総則

 (目的)

第一条 この法律は、我が国の国のかたち(日本国憲法の理念の下における国と地方公共団体の全体を通じた統治の構造をいう。)を新たなものに転換することが喫緊の課題となっていることに鑑み、道州制への移行のための改革(この法律の規定に基づいて、地方自治の仕組みを広域の地方公共団体である道州と基礎的な地方公共団体である市町村(特別区を含む。以下同じ。)との二層制に移行するとともに、これに伴い国及び地方公共団体の組織及び事務、国と地方公共団体の税源配分等を抜本的に見直す改革をいう。以下同じ。)について、その基本理念及び基本方針、その実施の目標時期その他の基本となる事項を定めるとともに、道州制への移行のための改革推進本部を設置することにより、これを総合的に推進することを目的とする。

 (基本理念)

第二条 道州制への移行のための改革は、道州において、個性豊かで活力に満ち、かつ、安心して暮らすことのできる地域社会が形成され、及び地域経済が自律的に発展するとともに、行政、経済、文化等に関する機能が我が国の特定の地域に集中することなく配置されるようにし、あわせて、国が本来果たすべき役割を重点的に担うことができるよう、次に掲げる事項を基本として行われるものとする。

 一 広域の地方公共団体である道州を設置して、道州においてその地域の特性に応じた独自性のある施策を展開することができる地方自治制度を確立すること。

 二 国が本来果たすべき役割に係る事務を除き、国が所掌する事務を道州に移譲するとともに、道州が施策の企画及び立案と実施とを一貫して行う体制を確立することにより、道州が行政需要に的確に対応して効率的に事務を実施することができるようにすること。

 三 道州の財政運営における自主性を確保し、道州が自主的かつ自立的にその役割を果たすことができる地方財政及び地方税に係る制度を確立すること。

 四 住民に身近な行政はできる限り基礎的な地方公共団体が担い、道州がこれを補完するものとし、市町村について、基礎的な地方公共団体としてあるべき姿となる地方自治制度並びに地方財政及び地方税に係る制度を確立するとともに、行政需要に的確に対応して効率的に事務を実施することができるようにすること。

 五 前各号に掲げる事項の実施に伴い、国の行政組織及び事務を簡素かつ合理的なものにすること。

 (国及び地方公共団体の責務等)

第三条 国は、前条の基本理念にのっとり、道州制への移行のための改革を推進する責務を有する。

2 国は、道州制への移行のための改革を推進するに当たっては、地方公共団体の意見に配慮するものとする。

3 地方公共団体は、前条の基本理念にのっとり、国による道州制への移行のための改革の推進に協力する責務を有する。

 (道州制への移行のための改革の実施及びその目標時期等)

第四条 政府は、次章に定める基本方針(第三項において「基本方針」という。)に基づき、道州制への移行のための改革を行うものとする。

2 道州制への移行のための改革は、その緊要性に鑑み、この法律の施行後七年以内に、道州を設置し、道州制への移行のための改革による新たな体制への移行を開始することを目標とするものとする。

3 政府は、この法律の施行後二年以内に、基本方針に基づく施策を総合的かつ計画的に実施するため、次に掲げる事項について必要な法制上の措置を講ずるものとする。

 一 基本方針に基づく施策を実施するための方針

 二 基本方針に基づく施策を計画的に実施するために必要な事項

 三 その他基本方針に基づく施策の実施に関する重要事項

   第二章 道州制への移行のための改革の基本方針

 (道州の設置等)

第五条 市町村を包括する広域の地方公共団体として、全国の区域を分けて道又は州を設置するものとする。

2 道州の区域は、二以上の都道府県の区域を包括するものとする。ただし、北海道及び沖縄県についてはその地理的条件を踏まえそれぞれ一の道又は州とすることを妨げず、また、東京都についてはその区域に首都としての機能が存在することを踏まえその全部又は一部の区域をもって一の道又は州とすることを妨げないものとする。

3 道州の境界は、従来の都道府県の境界と異なるものとすることを妨げないものとする。

4 道州には、議会及び知事を置き、議会の議員及び知事は、住民が直接選挙するものとする。

5 道州の行政組織は、道州がその果たすべき役割を適切に遂行するにふさわしいものとなるように自主的に定めることができるようにするものとする。

6 道州の事務所の位置は、道州が自主的に定めるものとする。この場合には、住民の利用に最も便利であるように、従来の都道府県の事務所の位置にとらわれず検討されるものとする。

 (国の事務の道州又は市町村への移譲等)

第六条 国は、次に掲げる事務については引き続き担うものとし、当該事務以外の事務(これに係る企画及び立案を含む。)については道州に移譲するものとする。

 一 外交、安全保障、出入国管理、通貨その他の国際社会における国家としての存立に関わる事務

 二 私法に関する法秩序の維持、公正取引の確保その他の全国的に統一して定めることが不可欠である国民の諸活動又は地方自治に関する基本的な準則に関する事務

 三 エネルギーの供給の確保、大規模な災害への対処その他の全国的な規模で又は全国的な視点に立って行わなければならない施策及び事業の実施

 四 その他国が本来果たすべき役割に係る事務

2 国による道州に対する事務の処理又はその方法の義務付け及びその事務に係る関与については、全国的に統一して定めることが不可欠な場合その他の国が前項各号に掲げる事務を行う上で特に必要な場合に限り行うことができるものとする。

3 第一項各号に掲げる事務以外の国の事務のうち、市町村において処理することができる事務は、同項の規定にかかわらず、市町村に移譲するものとする。

4 国の事務の道州又は市町村への移譲に伴い、当該移譲に係る事務の用に供していた国有財産のうち道州又は市町村がその事務を適切に行うために必要なものを道州又は市町村に譲渡するものとする。

 (国及び地方公共団体の税財政制度の見直し)

第七条 道州及び市町村がその事務を自主的かつ自立的に執行することができるように、国、道州及び市町村の税源がそれぞれの事務に要する経費に応じて配分されるようにすること、道州及び市町村がその地域の実情に応じて自主的に課税を行うことができるようにすることその他の税制の抜本的見直しを行うものとする。この場合において、併せて、効率的かつ適正に徴税することができる仕組みを構築するようにするものとする。

2 国の事務の道州又は市町村への移譲に伴い、地方公共団体に対する国の負担金、補助金等の支出金は、廃止するものとする。

3 道州がその自主的な判断の下に地方債を起こすことができるよう、その制度の見直しを行うものとする。この場合において、道州が自らの財政運営について透明性を確保するようにするものとする。

4 道州間における財源の均衡化を図るため、これを目的とする財源を確保した上で、道州間の協議を基本として自律的にその財政の調整を行う制度を設けるものとする。

5 道州の区域内の市町村間における財源の均衡化を図るため、道州がその区域内の市町村間の財政の調整を行う制度を設けるものとする。

 (都道府県の廃止等)

第八条 道州の設置に伴い、都道府県は、廃止するものとする。

2 都道府県が行っている事務のうち、広域にわたるもの及び市町村に関する連絡調整に関するものは、道州に移譲するものとし、その他の事務は、市町村に移譲するものとする。この場合において、その規模又は性質において市町村が処理することが困難なものについては、複数の市町村において共同して処理することができるようにするものとする。

 (市町村の事務等)

第九条 市町村は、従来の市町村の事務に加え、都道府県の廃止に伴い都道府県から移譲された事務及び国から移譲された事務を行うものとする。

2 国又は道州による市町村に対する事務の処理又はその方法の義務付け及びその事務に係る関与については、全国的に又は道州の区域内において統一して定めることが不可欠な場合その他の国又は道州がその事務を行う上で特に必要な場合に限り行うことができるものとする。

3 市町村の規模の適正化及び市町村の事務処理の共同化については、道州において必要な措置を講ずることができるようにするものとする。

 (国の行政組織の見直し)

第十条 国の行政組織に関し、第五条から前条までの規定に基づく施策の実施に伴い、国の府省の再編、地方支分部局の廃止その他の措置を行うとともに、国が本来果たすべき役割に係る行政機能を強化するものとする。

   第三章 道州の区域の決定

第十一条 道州の区域は、道州がその果たすべき役割を適切に遂行するにふさわしい範囲となるように、併せて社会経済的条件、地理的条件、歴史的条件及び文化的条件を勘案し、定めるものとする。

2 道州の区域は、法律をもって定めるものとし、その法律案の作成に当たっては、別に法律で定めるところにより地方公共団体及び住民の意見を反映させるために必要な措置を講ずるものとする。

   第四章 道州制への移行のための改革推進本部

 (道州制への移行のための改革推進本部の設置)

第十二条 道州制への移行のための改革を総合的に推進するため、内閣に、道州制への移行のための改革推進本部(以下「本部」という。)を置く。

 (所掌事務)

第十三条 本部は、次に掲げる事務をつかさどる。

 一 道州制への移行のための改革の推進に関する総合調整に関すること。

 二 道州制への移行のための改革の推進に関する法律案及び政令案の立案に関すること。

 三 道州制への移行のための改革の推進に関する施策の実施の推進に関すること。

 四 前三号に掲げるもののほか、他の法令の規定により本部に属させられた事務

 (組織)

第十四条 本部は、道州制への移行のための改革推進本部長、道州制への移行のための改革推進副本部長及び道州制への移行のための改革推進本部員をもって組織する。

 (道州制への移行のための改革推進本部長)

第十五条 本部の長は、道州制への移行のための改革推進本部長(以下「本部長」という。)とし、内閣総理大臣をもって充てる。

2 本部長は、本部の事務を総括し、所部の職員を指揮監督する。

 (道州制への移行のための改革推進副本部長)

第十六条 本部に、道州制への移行のための改革推進副本部長(以下「副本部長」という。)を置き、内閣官房長官及び道州制への移行のための改革担当大臣(内閣総理大臣の命を受けて、道州制への移行のための改革に関し内閣総理大臣を助けることをその職務とする国務大臣をいう。)をもって充てる。

2 副本部長は、本部長の職務を助ける。

 (道州制への移行のための改革推進本部員)

第十七条 本部に、道州制への移行のための改革推進本部員(以下「本部員」という。)を置く。

2 本部員は、本部長及び副本部長以外の全ての国務大臣をもって充てる。

 (資料の提出その他の協力)

第十八条 本部は、その所掌事務を遂行するため必要があると認めるときは、国の行政機関及び地方公共団体の長に対して、資料の提出、意見の開陳、説明その他の必要な協力を求めることができる。

2 本部は、その所掌事務を遂行するため特に必要があると認めるときは、前項に規定する者以外の者に対しても、必要な協力を依頼することができる。

 (事務局)

第十九条 本部に、その事務を処理させるため、事務局を置く。

2 事務局に、事務局長その他の職員を置く。

3 事務局長は、関係のある他の職を占める者であって、かつ、道州制への移行のための改革に関する事務に関し必要な識見を有する者をもって充てられるものとする。

4 事務局長は、本部長の命を受け、局務を掌理する。

 (主任の大臣)

第二十条 本部に係る事項については、内閣法(昭和二十二年法律第五号)にいう主任の大臣は、内閣総理大臣とする。

 (政令への委任)

第二十一条 この法律に定めるもののほか、本部に関し必要な事項は、政令で定める。

   附 則

 この法律は、公布の日から施行する。ただし、第四章の規定は、公布の日から起算して一月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。


   理 由

 我が国の国のかたちを新たなものに転換することが喫緊の課題となっていることに鑑み、道州制への移行のための改革について、その基本理念及び基本方針、その実施の目標時期その他の基本となる事項を定めるとともに、道州制への移行のための改革推進本部を設置することにより、これを総合的に推進する必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

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