第一八〇回
参第一九号
地方教育行政改革の推進に関する法律案
目次
第一章 総則(第一条−第四条)
第二章 地方教育行政改革の基本的な方針(第五条−第十二条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、地方公共団体において地域の実情に応じた教育行政が行われるようにすることが喫緊の課題となっていることに対処するための改革(以下「地方教育行政改革」という。)につき、基本理念を定め、及びその推進についての国の責務を明らかにするとともに、政府が講ずべき法制上の措置その他の措置に関する基本的な方針を定めることにより、これを集中的に推進することを目的とする。
(基本理念)
第二条 地方教育行政改革は、教育行政について地方公共団体に委ねることが可能なものはできる限りこれに委ねるとともに、地方公共団体における教育行政の在り方を地方公共団体が自らの判断と責任において決定することができるようにすることにより、教育行政において地方公共団体の自主性及び自立性が十分に発揮されるようにすることを旨として、行われなければならない。
(国の責務)
第三条 国は、前条の基本理念にのっとり、地方教育行政改革を推進する責務を有する。
(集中改革期間)
第四条 政府は、次章に定める基本的な方針に基づき、平成二十六年度までの期間を集中改革期間として地方教育行政改革のために必要な措置を講ずるものとする。
第二章 地方教育行政改革の基本的な方針
(国と地方公共団体との役割分担)
第五条 政府は、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第一条の二の規定の趣旨にのっとり、教育行政における国と地方公共団体との役割分担の在り方について検討を加え、その結果に基づき、必要な法制上の措置を講ずるものとする。
(地方公共団体における教育行政の組織)
第六条 政府は、教育委員会を設置するかどうかを地方公共団体の決定に委ねることを含め、地方公共団体における教育行政の組織に関し、地方公共団体が地域の実情に応じた制度を選択することができるようにするための制度の在り方について検討を加え、その結果に基づき、必要な法制上の措置を講ずるものとする。
2 政府は、教育委員会を設置する地方公共団体におけるその委員の身分取扱いに関し、地方公共団体が次に掲げる事項について地域の実情に応じた制度を選択することができるようにするための制度の在り方について検討を加え、その結果に基づき、必要な法制上の措置を講ずるものとする。
一 教育委員会の委員の任命及び任期に関する事項
二 教育委員会の委員の罷免に関する事項
三 教育委員会の委員の服務に関する事項
四 前三号に掲げるもののほか、教育委員会の委員の身分取扱いに関し地方公共団体が地域の実情に応じた制度を選択することができるようにすることが必要と認められる事項
(地方公共団体における教育行政に係る職務権限の配分)
第七条 政府は、地方公共団体における教育行政に係る職務権限の配分に関し、地方公共団体が次に掲げる事項について地域の実情に応じた制度を選択することができるようにするための制度の在り方について検討を加え、その結果に基づき、必要な法制上の措置を講ずるものとする。
一 教育委員会を設置する地方公共団体におけるその長及び教育委員会の職務権限に関する事項
二 地方公共団体が設置する学校(学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第一条に規定する学校をいう。以下同じ。)の校長に対する当該学校における課題に対処することができるようにするために必要な職務権限の付与その他の地方公共団体が設置する学校の校長の職務権限に関する事項
三 前二号に掲げるもののほか、地方公共団体における教育行政に係る職務権限の配分に関し地方公共団体が地域の実情に応じた制度を選択することができるようにすることが必要と認められる事項
(学校の設置、管理及び廃止)
第八条 政府は、地方公共団体が地域の実情に応じて学校を設置し、管理し、及び廃止することができるようにするため、これらに係る基準の在り方について検討を加え、その結果に基づき、必要な法制上の措置を講ずるものとする。
(地方公共団体が設置する学校の運営)
第九条 政府は、地方公共団体が設置する学校の運営に関し、地方公共団体が次に掲げる事項について地域の実情に応じた制度を選択することができるようにするための制度の在り方について検討を加え、その結果に基づき、必要な法制上の措置を講ずるものとする。
一 当該学校の所在する地域の住民、当該学校の生徒等の保護者等が当該学校の運営について協議を行う機関(次号及び第三号において「協議機関」という。)の設置に関する事項
二 協議機関の構成員の任命に関する事項
三 協議機関の権限に関する事項
四 前三号に掲げるもののほか、地方公共団体が設置する学校の運営に関し地方公共団体が地域の実情に応じた制度を選択することができるようにすることが必要と認められる事項
(地方公共団体が設置する学校の教職員の身分取扱い)
第十条 政府は、地方公共団体が設置する学校の校長及び副校長(以下この条において「校長等」という。)の身分取扱いに関し、地方公共団体が次に掲げる事項について地域の実情に応じた制度を選択することができるようにするための制度の在り方について検討を加え、その結果に基づき、必要な法制上の措置を講ずるものとする。
一 校長等を公募により任用することその他の校長等の任用に関する事項
二 校長等の人事評価の基準及び方法に関する事項
三 校長等の服務及び校長等が職務上の義務に違反した場合等における適正な処分に関する事項
四 前三号に掲げるもののほか、校長等の身分取扱いに関し地方公共団体が地域の実情に応じた制度を選択することができるようにすることが必要と認められる事項
2 政府は、地方公共団体が設置する学校の教職員(校長等を除く。以下この項において単に「教職員」という。)の身分取扱いに関し、地方公共団体が次に掲げる事項について地域の実情に応じた制度を選択することができるようにするための制度の在り方について検討を加え、その結果に基づき、必要な法制上の措置を講ずるものとする。
一 教職員の任用に関する事項
二 教職員の人事評価の基準及び方法に関する事項
三 教職員の服務及び教職員が職務上の義務に違反した場合等における適正な処分に関する事項
四 前三号に掲げるもののほか、教職員の身分取扱いに関し地方公共団体が地域の実情に応じた制度を選択することができるようにすることが必要と認められる事項
(地方教育行政改革の推進に関するその他の措置)
第十一条 政府は、第五条から前条までに規定するもののほか、地方公共団体が自らの判断と責任において学校以外の当該地方公共団体が設置する教育機関に係る教育行政の在り方を決定することができるようにするための制度その他の地方教育行政改革を推進するための事項について検討を加え、その結果に基づき、必要な法制上の措置その他の措置を講ずるものとする。
(地方公共団体の議会の関与及び住民の意見の反映に対する配慮)
第十二条 政府は、第六条から前条までの規定による措置を講ずるに当たっては、次に掲げる事項について十分に配慮しなければならない。
一 地方公共団体における教育行政の組織及び運営の在り方の決定に際しその議会が適切に関与を行うことができるようにすること。
二 地方公共団体における教育行政の組織及び運営の在り方の決定に際しその住民が適切に投票等を通じて意見を反映させることができるようにすること。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から施行する。
(地方公共団体における教育目標の設定)
2 地方教育行政改革が行われる前においても、地方教育行政の組織及び運営に関する法律(昭和三十一年法律第百六十二号)第二十三条から第二十四条の二までの規定は、地方公共団体の長が当該地方公共団体における教育目標を設定することを妨げるものではない。
理 由
地方公共団体において地域の実情に応じた教育行政が行われるようにすることが喫緊の課題となっていることに鑑み、地方教育行政改革を集中的に推進するため、地方教育行政改革につき、基本理念を定め、及びその推進についての国の責務を明らかにするとともに、政府が講ずべき法制上の措置その他の措置に関する基本的な方針を定める必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。