第一八〇回
参第三一号
放射線業務従事者の被ばく線量の管理に関する法律案
(目的)
第一条 この法律は、放射線業務従事者の安全と健康を確保することの重要性に鑑み、放射線障害防止関係法令の規定に基づき測定され又は記録された放射線業務従事者の業務上受けた放射線の線量(以下「被ばく線量」という。)に関する情報を適正に管理することにより、放射線業務従事者の被ばく線量の把握を容易にし、もって放射線業務従事者の放射線による障害を防止することに資することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「放射線業務従事者」とは、放射線障害防止関係法令の規定により被ばく線量の測定又は記録が義務付けられている業務(放射線による障害を防止するための緊急を要する作業を含む。以下「測定対象業務」という。)に従事する者をいう。
2 この法律において「放射線障害防止関係法令」とは、次に掲げる法律及びこれらに基づく命令であって放射線による障害の防止について定めるものをいう。
一 核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号)
二 放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律(昭和三十二年法律第百六十七号)
三 医療法(昭和二十三年法律第二百五号)
四 薬事法(昭和三十五年法律第百四十五号)
五 前各号に掲げるもののほか、放射線による障害のおそれがある業務に係る事業の規制に関する法律として政令で定めるもの
3 この法律において「被ばく線量測定義務者」とは、次に掲げる者をいう。
一 核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律第六条第一項に規定する製錬事業者、同法第十六条第一項に規定する加工事業者、同法第二十三条の二第一項に規定する試験研究用等原子炉設置者、同法第四十三条の三の八第一項に規定する発電用原子炉設置者、同法第四十三条の七第一項に規定する使用済燃料貯蔵事業者、同法第四十四条の四第一項に規定する再処理事業者、同法第五十一条の五第一項に規定する廃棄事業者、同法第五十五条第一項に規定する使用者、同法第五十七条の八第三項に規定する核原料物質使用者及び同法第六十条第一項に規定する受託貯蔵者
二 放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律第十一条第一項に規定する許可廃棄業者及び同法第十五条第一項に規定する許可届出使用者
三 医療法第一条の五第一項に規定する病院又は同条第二項に規定する診療所の管理者
四 薬事法第七条第一項に規定する薬局開設者、同法第十八条第一項に規定する製造販売業者、同条第二項に規定する製造業者及び同法第三十四条第三項に規定する卸売販売業者
五 前各号に掲げるもののほか、放射線業務従事者の被ばく線量の測定又は記録が放射線障害防止関係法令の規定により義務付けられている者として政令で定めるもの
(放射線業務従事者手帳)
第三条 原子力規制委員会は、測定対象業務に従事しようとする者に対し、その者の申請に基づき、放射線業務従事者手帳(放射線業務従事者の被ばく線量の把握のために必要な事項を記載する手帳をいう。以下「手帳」という。)を交付する。
2 手帳の記載事項、様式及び交付その他手帳に関して必要な事項は、原子力規制委員会規則で定める。
(手帳への記載)
第四条 被ばく線量測定義務者は、放射線業務従事者に係る放射線障害防止関係法令の規定に基づく被ばく線量の測定(直接測定することが困難な場合における推定を含む。次条第一項において同じ。)の結果又は記録の内容を、原子力規制委員会規則で定めるところにより、手帳に記載しなければならない。
(被ばく線量の測定結果の報告等)
第五条 被ばく線量測定義務者は、放射線業務従事者に係る放射線障害防止関係法令の規定に基づく被ばく線量の測定の結果又は記録の内容を、原子力規制委員会規則で定めるところにより、その事業を所管する大臣を経由して、原子力規制委員会に報告しなければならない。
2 原子力規制委員会は、前項の規定による報告に係る情報を、原子力規制委員会規則で定めるところにより、電子計算機に備えられたファイルに記録するものとする。
(被ばく線量に関する情報の公表)
第六条 原子力規制委員会は、原子力規制委員会規則で定めるところにより、毎年少なくとも一回、前条第一項の規定による報告に係る情報を整理し、これを公表するものとする。
(罰則)
第七条 次の各号のいずれかに該当する者は、百万円以下の罰金に処する。
一 第四条の規定による記載をせず、又は虚偽の記載をした者
二 第五条第一項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者
第八条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して前条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して同条の刑を科する。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、平成二十五年四月一日から施行する。
(政府の措置)
2 政府は、この法律の施行後一年を目途として、手帳に代わるべき放射線業務従事者の被ばく線量の把握のために必要な事項を記録するカードの導入及び測定対象業務に従事しないこととなった者に対する健康管理のために必要な措置を講ずるものとする。
(調整規定)
3 この法律の施行の日から原子力規制委員会設置法(平成二十四年法律第四十七号)附則第十七条の規定の施行の日の前日までの間における第二条第三項第一号の規定の適用については、同号中「同法第二十三条の二第一項に規定する試験研究用等原子炉設置者、同法第四十三条の三の八第一項に規定する発電用原子炉設置者」とあるのは、「同法第二十三条の二第一項に規定する原子炉設置者」とする。
理 由
放射線業務従事者の安全と健康を確保することの重要性に鑑み、放射線業務従事者の放射線による障害を防止することに資するため、放射線障害防止関係法令の規定に基づき測定され又は記録された放射線業務従事者の業務上受けた放射線の線量に関する情報を適正に管理することにより、放射線業務従事者の被ばく線量の把握を容易にする必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。
この法律の施行に伴い必要となる経費
この法律の施行に伴い必要となる経費は、初年度約十一億円、平年度約六億円の見込みである。