衆議院

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第一八〇回

閣第七〇号

   ダム事業の廃止等に伴う特定地域の振興に関する特別措置法案

目次

 第一章 総則(第一条・第二条)

 第二章 特定地域振興基本方針(第三条)

 第三章 特定地域振興計画の作成等(第四条−第六条)

 第四章 特定地域振興計画に基づく特別の措置(第七条−第十二条)

 第五章 雑則(第十三条−第十五条)

 附則

   第一章 総則

 (目的)

第一条 この法律は、ダム事業の廃止等に伴い水没しないこととなる土地の区域及びその周辺の地域のうち、生活環境及び産業基盤の整備等が他の地域に比較して低位にあり、当該ダム事業の廃止等に伴い振興を図る必要がある地域について、国土交通大臣による特定地域振興基本方針の策定、都道府県による特定地域振興計画の作成及びこれに基づく特別の措置等について定めることにより、その振興を図り、もってその住民の生活の安定及び福祉の向上に資することを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において「ダム事業」とは、国土交通大臣が河川法(昭和三十九年法律第百六十七号)第九条第一項の規定により自ら建設するダム又は独立行政法人水資源機構が建設する独立行政法人水資源機構法(平成十四年法律第百八十二号)第二条第四項に規定する特定施設に該当するダムの建設工事に関する事業をいう。

2 この法律において「ダム事業の廃止等」とは、次の各号に掲げるダムに係るダム事業(当該ダムの建設に伴う損失の補償として実施される事業(第五条第二項第二号において「損失補償事業」という。)を除く。)について、当該各号に定める措置がとられることをいう。

 一 河川法第十六条の二第一項に規定する河川整備計画(河川法の一部を改正する法律(平成九年法律第六十九号。次号において「河川法改正法」という。)附則第二条第二項の規定により河川整備計画とみなされるものを除く。以下この号及び次号において単に「河川整備計画」という。)に定められたダム 当該ダムに係るダム事業の廃止又はダム事業の縮小(当該ダム事業の施行により水没することとなる土地の区域の大幅な縮小を伴うものに限る。以下この項において同じ。)をその内容に含む河川整備計画の変更が行われること。

 二 河川法改正法附則第二条第二項の規定により河川整備計画とみなされる工事実施基本計画に定められたダム 当該ダムに係るダム事業が施行されることとされていた場所を含む河川の区間について、当該ダム事業を施行しないこと又は当該ダム事業の縮小をすることをその内容に含む河川整備計画が新たに定められること。

 三 特定多目的ダム法(昭和三十二年法律第三十五号)第四条第一項に規定する基本計画又は独立行政法人水資源機構法第十三条第一項に規定する事業実施計画(以下この号において「基本計画等」という。)に定められたダム 基本計画等の廃止又は当該ダムに係るダム事業の廃止若しくはダム事業の縮小をその内容とする基本計画等の変更が行われること。

   第二章 特定地域振興基本方針

第三条 国土交通大臣は、次条第一項に規定する特定地域(次項において単に「特定地域」という。)の振興を図るための基本的な方針(以下「特定地域振興基本方針」という。)を定めなければならない。

2 特定地域振興基本方針には、次に掲げる事項を定めるものとする。

 一 特定地域の振興の意義及び方向に関する事項

 二 特定地域の指定に関する事項

 三 第五条第一項に規定する特定地域振興計画の作成について指針となるべき事項

 四 前三号に掲げるもののほか、特定地域の振興のために必要な事項

3 国土交通大臣は、特定地域振興基本方針を定めようとするときは、あらかじめ、関係行政機関の長に協議しなければならない。

4 国土交通大臣は、特定地域振興基本方針を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。

5 前二項の規定は、特定地域振興基本方針の変更について準用する。

   第三章 特定地域振興計画の作成等

 (特定地域の指定等)

第四条 国土交通大臣は、都道府県知事の申出により、特定地域振興基本方針に基づき、ダム事業の廃止等に伴い水没しないこととなる土地の区域及びその周辺の地域のうち、生活環境及び産業基盤の整備等が他の地域に比較して低位にあり、当該ダム事業の廃止等に伴い振興を図る必要がある地域を特定地域として指定することができる。

2 都道府県知事は、前項の申出をしようとするときは、あらかじめ、関係市町村長の意見を聴かなければならない。

3 国土交通大臣は、第一項の規定による指定を行おうとするときは、あらかじめ、関係行政機関の長に協議しなければならない。

4 国土交通大臣は、第一項の規定による指定をしたときは、遅滞なく、その旨を公示しなければならない。

5 前三項の規定は、特定地域の変更について準用する。

 (特定地域振興計画)

第五条 都道府県は、前条第四項の規定による公示があったときは、特定地域振興基本方針に基づき、当該特定地域を振興するための計画(以下「特定地域振興計画」という。)を作成することができる。

2 特定地域振興計画においては、おおむね次に掲げる事項を定めるものとする。

 一 特定地域の振興に関する基本的な方針

 二 公共施設及び公益的施設の整備に関する事業(ダム事業の廃止等の後においても継続する損失補償事業及び水源地域対策特別措置法(昭和四十八年法律第百十八号)第四条第二項に規定する整備事業(第四項第一号及び次条第二項第三号において「水源地域整備事業」という。)を含む。)に関する事項

 三 農林水産業その他の産業の振興に関する事項

 四 ダム事業を施行する者(以下「ダム事業者」という。)が当該ダム事業の用に供するために取得した土地の利用に関する事項

 五 特定地域の振興を図るため、補助金等交付財産(補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(昭和三十年法律第百七十九号)第二十二条に規定する財産をいう。)を当該補助金等交付財産に充てられた補助金等(同法第二条第一項に規定する補助金等をいう。)の交付の目的以外の目的に使用し、譲渡し、交換し、貸し付け、又は担保に供することにより行う事業に関する事項

 六 ダム事業の施行により整備された地すべり(地すべり等防止法(昭和三十三年法律第三十号)第二条第一項に規定する地すべりをいう。)を防止するための施設(第九条において「地すべり防止施設」という。)及び急傾斜地(急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律(昭和四十四年法律第五十七号)第二条第一項に規定する急傾斜地をいう。)の崩壊を防止するための施設(第十条において「急傾斜地崩壊防止施設」という。)の管理に関する事項

 七 前各号に掲げるもののほか、特定地域の振興に関し必要な事項

3 都道府県は、特定地域振興計画の作成に当たっては、ダム事業の廃止等に伴い水没しないこととなる土地の区域の住民の生活環境の整備に特に配慮しなければならない。

4 都道府県は、特定地域振興計画を作成しようとする場合において、次条第一項の特定地域振興協議会が組織されていないときは、あらかじめ、関係市町村の意見を聴かなければならない。

5 都道府県は、特定地域振興計画を作成しようとする場合において、次条第一項の特定地域振興協議会が組織されていないときは、次の各号に掲げる事項について、あらかじめ、当該各号に定める者と協議しなければならない。

 一 第二項第二号に掲げる事項 同号に規定する事業を実施すると見込まれる者(水源地域整備事業に関する事項にあっては、水源地域対策特別措置法第十二条第一項の規定により当該水源地域整備事業に係る経費の全部又は一部を負担する者を含む。)

 二 第二項第四号に掲げる事項 ダム事業者

6 都道府県は、特定地域振興計画に第二項第五号に掲げる事項を記載しようとするときは、当該事項について、あらかじめ、国土交通大臣に協議し、その同意を得なければならない。

7 国土交通大臣は、前項の同意をしようとするときは、関係行政機関の長に協議し、その同意を得なければならない。

8 都道府県は、特定地域振興計画を作成しようとするときは、あらかじめ、公聴会の開催その他の住民の意見を反映させるために必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

9 都道府県は、特定地域振興計画を作成しようとするときは、国土交通大臣及びダム事業者に対し、情報の提供、技術的な助言その他必要な援助を求めることができる。

10 都道府県は、特定地域振興計画を作成したときは、遅滞なく、これを公表するとともに、国土交通大臣に送付しなければならない。

11 国土交通大臣は、前項の規定により特定地域振興計画の送付を受けたときは、これを関係行政機関の長に送付しなければならない。

12 国土交通大臣は、第十項の規定により特定地域振興計画の送付を受けたときは、都道府県に対し、必要な助言をすることができる。

13 第三項から前項までの規定は、特定地域振興計画の変更について準用する。

 (特定地域振興協議会)

第六条 都道府県は、前条第一項の規定により作成しようとする特定地域振興計画及びその実施に関し必要な事項その他特定地域の振興に関し必要な事項について協議するため、特定地域振興協議会(以下この条において「協議会」という。)を組織することができる。

2 協議会は、次に掲げる者をもって構成する。

 一 前項の都道府県

 二 関係市町村

 三 特定地域振興計画に定めようとする事業又は定められた事業を実施すると見込まれる者(特定地域振興計画に水源地域整備事業を定めようとし、又は定められた水源地域整備事業を実施する場合にあっては、水源地域対策特別措置法第十二条第一項の規定により当該水源地域整備事業に係る経費の全部又は一部を負担する者を含む。)

 四 ダム事業者

3 第一項の規定により協議会を組織する都道府県は、必要があると認めるときは、前項各号に掲げる者のほか、協議会に、次に掲げる者を構成員として加えることができる。

 一 当該都道府県が作成しようとする特定地域振興計画及びその実施に関し密接な関係を有する者

 二 その他当該都道府県が必要と認める者

4 次に掲げる者は、協議会が組織されていない場合にあっては、都道府県に対して、協議会を組織するよう要請することができる。

 一 前条第二項第二号に規定する事業を実施し、又は実施しようとする者

 二 前号に掲げる者のほか、当該都道府県が作成しようとする特定地域振興計画又はその実施に関し密接な関係を有する者

5 前項の規定による要請を受けた都道府県は、正当な理由がある場合を除き、当該要請に応じなければならない。

6 都道府県は、第一項の規定により協議会を組織したときは、遅滞なく、その旨を公表しなければならない。

7 第四項各号に掲げる者であって協議会の構成員でないものは、第一項の規定により協議会を組織する都道府県に対して、自己を協議会の構成員として加えるよう申し出ることができる。

8 前項の規定による申出を受けた都道府県は、正当な理由がある場合を除き、当該申出に応じなければならない。

9 協議会において協議が調った事項については、協議会の構成員は、その協議の結果を尊重しなければならない。

10 前各項に定めるもののほか、協議会の運営に関し必要な事項は、協議会が定める。

   第四章 特定地域振興計画に基づく特別の措置

 (国有財産の譲与等)

第七条 国は、国有財産法(昭和二十三年法律第七十三号)第二十八条の規定にかかわらず、特定地域内に存するダム事業の廃止等に伴い不用となった土地、工作物その他の物件のうち、普通財産である国有財産を、特定地域振興計画に記載された第五条第二項第四号に規定する土地の利用に供するため、当該ダム事業に要した費用を負担した地方公共団体に、その負担した費用の額の範囲内において譲与することができる。

2 国は、特定地域内に存するダム事業の廃止等に伴い不用となった土地、工作物その他の物件のうち、普通財産である国有財産(前項の規定により譲与するものを除く。)を売り払おうとする場合において、次に掲げる者からその買受けの申請があったときは、国土交通省令で定めるところにより、これを他に優先させなければならない。

 一 当該国有財産を特定地域振興計画に基づく事業の用に供する地方公共団体、特定地域の住民その他の者

 二 当該国有財産(前号に掲げる者に売り払うものを除く。)に特別の縁故がある者であって国土交通省令で定めるもの

 (補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律の特例)

第八条 地方公共団体が特定地域振興計画に記載された第五条第二項第五号に規定する事業を行う場合においては、都道府県が当該特定地域振興計画について国土交通大臣の同意を受けたことをもって、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律第二十二条に規定する各省各庁の長の承認を受けたものとみなす。

 (地すべり等防止法の特例)

第九条 地すべり等防止法第五十一条第一項に規定する主務大臣(以下この条において単に「主務大臣」という。)は、特定地域振興計画に記載された第五条第二項第六号に規定する地すべり防止施設の管理のために必要な区域について、同法第三条第一項の規定により地すべり防止区域として指定しようとするときは、同項の規定にかかわらず、関係都道府県知事の意見を聴くことを要しない。

2 前項の場合において、主務大臣は、ダム事業者に対し、地すべり防止施設の整備に際し地すべり等防止法第三条第一項に規定する地すべり地域に関し行った地形、地質、降水、地表水若しくは地下水又は土地の滑動状況に関する現地調査の結果について報告を求めることができる。

3 第一項の場合において、都道府県知事は、地すべり等防止法第九条前段の規定にかかわらず、地すべり防止施設の改良その他の当該地すべり防止区域内における地すべり防止工事(同法第二条第四項に規定する地すべり防止工事をいう。以下この項において同じ。)を実施しようとする場合を除き、地すべり防止工事に関する基本計画を作成し、及びこれを主務大臣に提出することを要しない。

 (急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律の特例)

第十条 都道府県知事は、特定地域振興計画に記載された第五条第二項第六号に規定する急傾斜地崩壊防止施設の管理のために必要な区域について、急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律第三条第一項の規定により急傾斜地崩壊危険区域として指定しようとするときは、同項の規定にかかわらず、関係市町村長(特別区の長を含む。)の意見を聴くことを要しない。

2 前項の場合において、都道府県知事は、ダム事業者に対し、急傾斜地崩壊防止施設の整備に際し当該指定に係る土地に関し行った地形、地質、降水等の状況に関する現地調査の結果について報告を求めることができる。

 (国の補助)

第十一条 国は、地方公共団体に対し、予算の範囲内において、地方公共団体が特定地域振興計画に基づいて行う事業の実施に要する費用の一部を補助することができる。

2 前項の規定による補助金の交付に当たっては、特定地域振興計画に基づいて行う事業が円滑に実施されるよう適切な配慮をするものとする。

 (地方債についての配慮)

第十二条 地方公共団体が特定地域振興計画を達成するために行う事業に要する経費に充てるために起こす地方債については、法令の範囲内において、資金事情及び当該地方公共団体の財政状況が許す限り、特別の配慮をするものとする。

   第五章 雑則

 (都道府県知事によるダムの建設工事に関する事業の廃止等に係る地域の振興のための支援)

第十三条 国は、都道府県知事が河川法第九条第二項又は第十条第一項の規定により自ら建設するダムの建設工事に関する事業の廃止又は縮小(当該事業の施行により水没することとなる土地の区域の大幅な縮小を伴うものに限る。以下この条において同じ。)に伴い水没しないこととなる土地の区域及びその周辺の地域のうち、生活環境及び産業基盤の整備等が他の地域に比較して低位にあり、当該事業の廃止又は縮小に伴い振興を図る必要がある地域について、都道府県がその振興を図る場合には、必要な支援に努めるものとする。

 (国土交通省令への委任)

第十四条 この法律に定めるもののほか、この法律の実施のために必要な事項は、国土交通省令で定める。

 (経過措置)

第十五条 この法律の規定に基づき国土交通省令を制定し、又は改廃する場合においては、国土交通省令で、その制定又は改廃に伴い合理的に必要と判断される範囲内において、所要の経過措置を定めることができる。

   附 則

 (施行期日)

1 この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

 (経過措置)

2 第四条の規定は、この法律の施行の日以後にダム事業の廃止等があった場合について適用する。


     理 由

 ダム事業の廃止等に伴い水没しないこととなる土地の区域及びその周辺の地域のうち、生活環境及び産業基盤の整備等が他の地域に比較して低位にあり、当該ダム事業の廃止等に伴い振興を図る必要がある地域について、国土交通大臣による特定地域振興基本方針の策定、都道府県による特定地域振興計画の作成及びこれに基づく特別の措置等について定める必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

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