衆議院

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第一八三回

衆第三四号

   死刑再審無罪者に対し国民年金の給付等を行うための国民年金の保険料の納付の特例等に関する法律案

 (趣旨)

第一条 この法律は、死刑に処せられた罪について再審において無罪の言渡しを受けてその判決が確定した者(無罪の言渡しを受けた罪以外の罪について死刑に処せられた者を除く。以下「死刑再審無罪者」という。)については、死刑の判決が確定した後は、仮釈放もなく社会復帰への希望を持つことが著しく困難であるため国民年金の保険料の納付等の手続をとらなかったことがやむを得ないと認められることに鑑み、死刑再審無罪者に対し国民年金の給付等を行うための国民年金の保険料の納付の特例等に関し必要な事項を定めるものとする。

 (国民年金の給付を行うための国民年金の保険料の納付の特例)

第二条 死刑再審無罪者は、死刑の判決が確定した日から死刑に処せられた罪について再審において無罪の言渡しを受けてその判決が確定した日(以下「無罪判決確定日」という。)の前日までの期間(次条第一項において「対象期間」という。)のうち国民年金法等の一部を改正する法律(昭和六十年法律第三十四号)第一条の規定による改正前の国民年金法(昭和三十四年法律第百四十一号)(以下この項において「旧国民年金法」という。)による被保険者期間(次条第一項において「旧被保険者期間」という。)又は国民年金法第七条第一項第一号に規定する第一号被保険者としての国民年金の被保険者期間(次条第一項において「新被保険者期間」という。)であるもの(旧国民年金法第五条第三項に規定する保険料納付済期間、国民年金法第五条第二項に規定する保険料納付済期間その他の政令で定める期間を除く。)に係る保険料を納付することができる。

2 前項の納付は、無罪判決確定日から起算して一年を経過する日までの間において、一括して行わなければならない。

3 第一項の規定により保険料が納付されたときは、無罪判決確定日に、当該納付に係る期間の各月の当該死刑再審無罪者の国民年金の保険料が納付されたものとみなす。

4 死刑再審無罪者に係る国民年金法に規定する事項及び前三項の規定の適用に関し必要な事項については、同法その他の法令の規定にかかわらず、政令で特別の定めをすることができる。

 (特別給付金の支給)

第三条 国は、前条第一項の規定により保険料が納付された場合には、国民年金法の規定による老齢基礎年金その他政令で定める給付(以下この項において「老齢基礎年金等」という。)の支給を開始すべき年齢(以下この項において「支給開始年齢」という。)に達した日の属する月の翌月以後に死刑再審無罪者となった者に対し、当該者の請求により、六十歳に達した日に対象期間のうち旧被保険者期間又は新被保険者期間であるものに係る保険料が納付されたものとみなして計算された老齢基礎年金等が支給開始年齢に達した日の属する月の翌月から無罪判決確定日の属する月まで支給されたとした場合における当該老齢基礎年金等の額に相当する額(死刑再審無罪者が無罪判決確定日前に国民年金法その他の法律による政令で定める給付の支給を受けた場合にあっては、その額から既に支給された当該政令で定める給付の額を控除した額)として政令で定めるところにより計算した額の特別給付金を支給する。

2 前項に定めるもののほか、特別給付金の支給に関し必要な事項は、政令で定める。

 (譲渡等の禁止等)

第四条 前条第一項の特別給付金の支給を受ける権利は、譲渡し、担保に供し、又は差し押さえることができない。

2 租税その他の公課は、前条第一項の特別給付金として支給を受けた金銭を標準として、課することができない。

 (情報の提供)

第五条 厚生労働大臣及び日本年金機構並びに法務大臣は、法務省令・厚生労働省令で定めるところにより、第二条第一項の保険料の納付及び第三条第一項の特別給付金の支給に関し、相互に必要な情報の提供を行うものとする。

   附 則

 (施行期日)

第一条 この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

 (経過措置)

第二条 第二条から第五条までの規定は、この法律の施行の日前に死刑再審無罪者となった者についても適用する。この場合において、第二条第一項中「死刑に処せられた罪について再審において無罪の言渡しを受けてその判決が確定した日(以下「無罪判決確定日」という。)の前日」とあるのは「六十歳に達した日」と、同条第二項及び第三項中「無罪判決確定日」とあるのは「この法律の施行の日」と、第三条第一項中「国民年金法の規定による老齢基礎年金その他政令で定める給付(以下この項において「老齢基礎年金等」という。)の支給を開始すべき年齢(以下この項において「支給開始年齢」という。)に達した日の属する月の翌月以後に死刑再審無罪者となった者」とあるのは「この法律の施行の日前に死刑再審無罪者となった者(この法律の施行の日において国民年金法の規定による老齢基礎年金その他政令で定める給付(以下この項において「老齢基礎年金等」という。)の支給を開始すべき年齢(以下この項において「支給開始年齢」という。)に達している者に限る。)」と、「無罪判決確定日」とあるのは「この法律の施行の日」とする。

 (矯正施設に収容中の者に対する国民年金の保険料の納付等の手続に関する指導)

第三条 政府は、矯正施設に収容中の者に対し、国民年金の保険料の免除の申請その他の国民年金の保険料の納付等の手続に関し、必要な指導を行うものとする。


     理 由

 死刑再審無罪者については、死刑の判決が確定した後は、仮釈放もなく社会復帰への希望を持つことが著しく困難であるため国民年金の保険料の納付等の手続をとらなかったことがやむを得ないと認められることに鑑み、死刑再審無罪者に対し国民年金の給付等を行うための国民年金の保険料の納付の特例等に関し必要な事項を定める必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。


   本案施行に要する経費

 本案施行に要する経費として、現時点で見込まれるものは、約二千万円である。

 

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