衆議院

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第一八三回

参第二号

   いじめ対策推進基本法案

目次

 第一章 総則(第一条−第六条)

 第二章 基本計画等(第七条−第九条)

 第三章 基本的施策(第十条−第十五条)

 第四章 いじめ又はその兆候の発見及びいじめに関する事案への対処(第十六条−第二十一条)

 第五章 いじめ対策の実施の状況の把握及び評価(第二十二条−第二十五条)

 第六章 いじめ対策に係る体制の整備(第二十六条−第三十五条)

 第七章 重大事案への対処についての文部科学大臣等に対する申立て及び措置(第三十六条−第三十九条)

 第八章 雑則(第四十条−第四十二条)

 第九章 罰則(第四十三条)

 附則

   第一章 総則

 (目的)

第一条 この法律は、いじめが児童生徒等の尊厳を害するとともに、あらゆる児童生徒等の良好な教育環境を損ない、児童生徒等の適切な教育を受けて健全に成育する権利を害するものであることに鑑み、児童生徒等をいじめることを禁止するとともに、いじめ対策に関し、基本理念及び国の責務等を明らかにし、並びに基本計画等の策定その他のいじめ対策の基本となる事項、いじめ又はその兆候の発見及びいじめに関する事案への対処に関する措置、いじめ対策の実施の状況の把握及び評価等について定めることにより、いじめ対策を総合的に推進し、もって児童生徒等の権利利益の擁護並びにその健全な心身の成長及び人格の形成に資することを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において「いじめ」とは、児童生徒等が特定の児童生徒等を心理的又は物理的に攻撃する行為(作為であるか不作為であるかを問わないものとし、インターネットの利用その他直接に対面しない方法により行われるものを含む。)であって、当該児童生徒等に心身の苦痛又は財産上の損失を与えるものと認められるものをいう。

2 前項に規定する心身の苦痛を与える行為には、通常苦痛を感じないが当該行為を受けた児童生徒等は苦痛を感じるものをその事実を知りながら行うことを含む。

3 この法律において「いじめ対策」とは、いじめを未然に防止し、いじめ又はその兆候を早期に発見し、及びいじめに関する事案に対処してその適切な解決を図るための施策をいう。

4 この法律において「児童生徒等」とは、小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校(幼稚部を除く。)及び高等専門学校並びに専修学校(以下「学校」という。)に在学する児童、生徒又は学生をいう。

5 この法律において「保護者」とは、次の各号に掲げる児童生徒等の区分に応じ、当該各号に定める者をいう。

 一 未成年である児童生徒等 当該児童生徒等に対して親権を行う者(親権を行う者のないときは、未成年後見人)

 二 成年に達した児童生徒等 当該児童生徒等が父母その他の在学中に必要な連絡を受ける者としてその在学する学校に届け出た者

 (児童生徒等をいじめることの禁止等)

第三条 何人も、児童生徒等をいじめてはならない。

2 学校の教職員は、いじめを受けた児童生徒等を徹底して守り通す責務を有するものとして、いやしくもいじめ又はいじめが疑われる事実を知りながらこれを放置し、又はいじめを助長してはならない。

3 保護者は、いじめ又はいじめが疑われる事実を知りながらこれを放置してはならない。

4 前二項に定めるもののほか、何人も、いじめが疑われる事実を知りながらこれを放置することがないように努めなければならない。

 (基本理念)

第四条 いじめ対策は、次に掲げる事項を基本理念として行われなければならない。

 一 いじめがいずれの学校のいずれの児童生徒等にも起こり得るものであることを踏まえて、いじめの未然防止を図ることを旨とするとともに、いじめ又はその兆候を早期に発見し、迅速かつ適切に対処することができるようにすべきこと。

 二 いじめは児童生徒等の尊厳を害するとともに犯罪その他重大な人権侵害となり得る行為を含むものであり決してしてはならないものであることについて、児童生徒等が認識することができるよう、その情操と道徳心を培い、規範意識を養い、及び自尊心を育むべきこと。

 三 いじめに関する事案への対処においては、当該いじめを受けた児童生徒等の生命を保護すること及びいじめによりその心身に受けた影響からの回復を図ることが特に重要であることを認識すべきこと。

 四 いじめを受けた経験を有する者の意見が反映されるようにするとともに、いじめを受けている者の立場に立ち、かつ、その置かれている状況に応じ、最大限に必要な配慮をすべきこと。

 五 いじめ対策を推進することが社会全体で取り組むべき課題であることに鑑み、国、地方公共団体、学校、保護者その他の関係する者の連携の下に行われるべきこと。

 六 いじめの態様及び背景が地域によって、また、個々の事案によって多様であることに鑑み、地域の実情に応じた効果的な施策が講ぜられるとともに、いじめ対策に従事する者による対応が個々の事案に即したものとなるよう不断の努力及び創意工夫がなされるべきこと。

 七 いじめ対策が児童生徒等から容易に認識され得るものとして行われるとともに、児童生徒等がいじめ対策に積極的かつ主体的に参加することを確保すべきこと。

 (国の責務等)

第五条 国は、前条の基本理念(以下この条において「基本理念」という。)にのっとり、いじめ対策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。

2 地方公共団体は、基本理念にのっとり、いじめ対策について、国と協力しつつ、当該地域の状況に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。

3 学校及び学校の教職員は、基本理念にのっとり、いじめを受けた児童生徒等を徹底して守り通す責務を有し、いじめ対策について、不断の取組を行うとともに、創意工夫に努めなければならない。

4 弁護士会及び日本弁護士連合会、人権擁護委員協議会、都道府県人権擁護委員連合会及び全国人権擁護委員連合会その他の関係団体は、基本理念にのっとり、国及び地方公共団体によるいじめ対策の実施に協力するよう努めなければならない。

5 父母その他の保護者は、子の教育について第一義的責任を有するものとして、いじめについての理解と関心を深め、地域及び学校におけるいじめ対策に参加し、又は協力するよう努めなければならない。

 (財政上の措置等)

第六条 国及び地方公共団体は、この法律の目的を達成するため、必要な財政上の措置、人的体制の整備その他の措置を講ずるものとする。

2 前項の措置については、いじめ対策の適切な実施が確保されるものとなるよう、第五章に定めるところにより把握されるいじめ対策の実施の状況及びその評価の結果を踏まえ、必要な見直しが行われるべきものとする。

   第二章 基本計画等

 (基本計画)

第七条 文部科学大臣は、いじめ対策の総合的かつ計画的な推進を図るため、いじめ対策の推進に関する基本的な計画(以下「基本計画」という。)を策定しなければならない。

2 基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。

 一 いじめ対策の基本となるべき事項

 二 国が講ずべきいじめ対策に関する事項

 三 教育委員会及び学校が講ずべきいじめ対策に関する事項

 四 いじめ対策の実施の状況の評価に関する事項

 五 その他いじめ対策の実施に関する重要事項

3 文部科学大臣は、基本計画を策定し、又は変更しようとするときは、あらかじめ、関係行政機関の長に協議するとともに、第二十六条第一項のいじめ対策推進協議会及びいじめ対策に関する民間の団体の意見を聴くものとする。

4 文部科学大臣は、基本計画を策定し、又は変更したときは、遅滞なく、これをインターネットの利用その他適切な方法により公表しなければならない。

5 文部科学大臣は、いじめ対策の効果に関する評価を踏まえ、少なくとも三年ごとに基本計画に検討を加え、必要があると認めるときは、これを変更することその他の必要な措置を講ずるものとする。

 (地域いじめ対策計画)

第八条 教育委員会は、基本計画に基づき、その所管に属する学校におけるいじめ対策に関する計画(以下「地域いじめ対策計画」という。)を策定しなければならない。

2 地域いじめ対策計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。

 一 いじめ対策の基本となるべき事項

 二 いじめ対策に関する次に掲げる事項

  イ いじめの未然防止に関する事項

  ロ いじめ及びその兆候の早期発見に関する事項

  ハ いじめに関する事案への対処に関する事項

  ニ 教育委員会及び学校と保護者、地域住民、関係機関、関係団体等との連携体制の整備に関する事項

  ホ 学校の取組の支援に関する事項

  ヘ 学校がいじめ対策を実施する際に留意すべき事項

  ト いじめ対策の実施の状況の評価に関する事項

  チ その他いじめ対策の実施に関する重要事項

3 教育委員会は、地域いじめ対策計画を策定し、又は変更しようとするときは、あらかじめ、関係機関に協議するとともに、その案を地域いじめ対策委員会(第二十七条第一項の地域いじめ対策委員会をいう。第十七条第八項及び第二十五条第一項において同じ。)の審査に付さなければならない。

4 教育委員会は、地域いじめ対策計画を策定し、又は変更したときは、遅滞なく、これをインターネットの利用その他適切な方法により公表するとともに、文部科学大臣に(市(特別区を含む。以下同じ。)町村に置かれる教育委員会にあっては、当該市町村の属する都道府県に置かれる教育委員会を経由して文部科学大臣に)提出しなければならない。

5 教育委員会は、いじめ対策の効果に関する評価を踏まえ、及びその所管に属する学校のいじめ対策主任(第三十三条第一項のいじめ対策主任をいう。第十三条第一項、第十七条第三項及び第四項、第三十条第二項第一号並びに第三十一条第二項第一号において同じ。)の意見を聴いて、少なくとも三年ごとに地域いじめ対策計画に検討を加え、必要があると認めるときは、これを変更することその他の必要な措置を講ずるものとする。

 (学校いじめ対策計画)

第九条 学校においては、基本計画及び地域いじめ対策計画に基づき(教育委員会の所管に属しない学校にあっては、基本計画に基づき、かつ、地域いじめ対策計画を参酌して)、当該学校におけるいじめ対策に関する計画(以下「学校いじめ対策計画」という。)を策定しなければならない。

2 学校いじめ対策計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。

 一 この法律(教育委員会の所管に属する学校にあっては、この法律及び地域いじめ対策計画)により学校において講ずべきものとされる措置の実施方針

 二 前号に掲げる事項のほか、当該学校におけるいじめに関する状況を踏まえて講ずべき措置の内容及び実施方針

 三 その他当該学校におけるいじめ対策に関する事項

3 学校いじめ対策計画は、学校保健安全法(昭和三十三年法律第五十六号)第二十七条(同法第三十二条第三項において準用する場合を含む。)の計画との調和が保たれたものでなければならない。

4 学校は、学校いじめ対策計画を策定し、又は変更しようとする場合には、学校いじめ対策委員会(第三十条第一項の学校いじめ対策委員会をいう。以下この項、第二十四条第一項及び第二十五条第一項において同じ。)にその案の提出を求めるものとする。ただし、学校いじめ対策委員会が置かれていない専修学校については、この限りでない。

5 学校は、学校いじめ対策計画を策定し、又は変更したときは、これをインターネットの利用その他適切な方法により公表するとともに、当該学校の設置者(教育委員会の所管に属する学校にあっては、教育委員会。以下同じ。)に提出するものとする。

6 前項に規定する提出を受けた者は、当該計画を文部科学大臣に(市町村にあっては、都道府県を経由して文部科学大臣に)提出するものとする。

7 学校は、いじめ対策の効果に関する評価を踏まえ、不断に、学校いじめ対策計画に検討を加え、必要があると認めるときは、これを変更することその他の必要な措置を講ずるものとする。

   第三章 基本的施策

 (学校におけるいじめの未然防止)

第十条 学校は、児童生徒等の豊かな情操と道徳心を培い、人権尊重の精神の(かん)2 学校は、いじめの未然防止に資するよう、いじめが起こりにくい環境の整備に努めるとともに、生徒指導を組織的に展開するための体制の整備を行うものとする。

 (いじめ又はその兆候の早期発見のための措置)

第十一条 教育委員会及び学校は、いじめ又はその兆候を早期に発見するため、児童生徒等に対する質問票を用いた定期的な調査及び聴取り調査の計画的な実施その他の必要な措置を講じなければならない。

2 国及び地方公共団体は、いじめを受けている児童生徒等及びその保護者並びに児童生徒等がいじめを受けている疑いがあると思料する保護者その他いじめが疑われる事実を発見した者からの通報及び相談を受け付けるための体制の整備及び充実に必要な施策を講じなければならない。

 (関係機関等との連携等)

第十二条 教育委員会及び学校は、いじめを未然に防止し、いじめ又はその兆候を早期に発見し、及びいじめに関する事案に対処してその適切な解決を図るため、都道府県警察、法務局又は地方法務局、児童相談所その他の関係機関及び関係団体と緊密に連携しつつ、必要な措置を講ずるものとする。

 (いじめ対策に従事する人材の確保及び資質の向上)

第十三条 国及び地方公共団体は、いじめ対策主任の職務の適切な遂行の確保その他学校におけるいじめ対策の適切な実施を確保するために必要な人材の確保を計画的に行わなければならない。

2 教育委員会及び学校は、学校の教職員に対し、いじめ対策に関する研修の実施その他のいじめ対策に関する資質の向上に必要な措置を計画的に行わなければならない。

3 国及び地方公共団体は、大学(教育職員免許法(昭和二十四年法律第百四十七号)第七条第一項に規定する大学をいう。)に対し、同法第二条第一項の教員としていじめ対策に従事するのに必要な能力の習得及び資質の向上のための講座の開設その他の自主的な取組を行うよう促すものとする。

4 国及び地方公共団体は、いじめ対策に関する研修の充実その他のいじめ対策に従事する人材の確保及び資質の向上に必要な施策を講じなければならない。

 (インターネットを利用して行われるいじめに対する対策の推進)

第十四条 教育委員会及び学校は、児童生徒等及びその保護者が、発信された情報の高度の流通性、発信者の匿名性その他のインターネットを利用して送信される情報の特性を踏まえて、インターネットを利用して行われるいじめを防止し、及び効果的に対処することができるよう、これらの者に対し、必要な啓発活動を行うものとする。

2 教育委員会及び学校は、インターネットを利用していじめが行われた場合において、いじめを受けた者又はその保護者(保護者であった者を含む。第十七条第二項及び第六項、第十八条第一項、第十九条第一項第四号、第二十条第一項並びに第三十条第二項第三号イを除き、以下同じ。)が当該いじめに係る情報の削除を求め、又は発信者情報(特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(平成十三年法律第百三十七号)第四条第一項に規定する発信者情報をいう。)の開示を請求しようとするときは、必要に応じ、法務局又は地方法務局の協力を求めることができる。

3 国及び地方公共団体は、児童生徒等がインターネットを利用して行われるいじめに巻き込まれていないかどうかを監視する関係機関又は関係団体の取組を支援するとともに、インターネットを利用して行われるいじめに関する事案に対処する体制の整備に努めなければならない。

 (いじめ対策の調査研究の推進等)

第十五条 国は、いじめ対策に関し、いじめの態様、いじめの発生の構造等についての調査研究を推進し、並びに全国における地域いじめ対策計画及び学校いじめ対策計画の実施の状況その他の情報の収集、整理、分析及び提供を行うものとする。

   第四章 いじめ又はその兆候の発見及びいじめに関する事案への対処

 (初動調査及び報告)

第十六条 学校は、当該学校に在学する児童生徒等の生命又は身体を害する重大な事件又は事故が発生したときは、できる限り速やかに、当該児童生徒等に係るいじめの有無について、質問票を用いる等の適切な方法により調査を行い、その結果を当該児童生徒等の保護者及び学校の設置者に報告するものとする。

2 学校は、当該学校に在学する児童生徒等に関連する事件又は事故(前項に定めるものを除く。)が発生したときは、当該事件又は事故といじめとの関連の有無に十分留意して、速やかに、事実の把握に努めなければならない。

 (いじめに関する通報、相談等)

第十七条 何人も、いじめが疑われる事実を発見したときは、教育委員会、学校、都道府県警察、法務局又は地方法務局、児童相談所等に通報又は相談をすることができる。

2 いじめを受けている児童生徒等若しくはその保護者からの相談又は前項の通報若しくは相談(以下この条において「相談等」という。)を受けた機関は、当該機関の所掌の範囲内において、真摯かつ適切に対応するものとする。この場合において、所掌の範囲外の事案については、当該事案を所掌する機関への情報提供その他の適切な措置を講ずるものとする。

3 いじめ対策主任以外の学校の教職員は、いじめが疑われる事実を発見したとき又は相談等若しくは前項後段の情報提供を受けたときは、直ちに、これをいじめ対策主任に連絡しなければならない。

4 前項の規定により連絡を受けたいじめ対策主任は、学校全体によるいじめ対策の円滑な実施を図るため、学校内における適切な情報の共有のための措置を講じなければならない。

5 学校は、学校の教職員がいじめが疑われる事実を発見したとき又は相談等若しくは第二項後段の情報提供を受けたときは、速やかに、いじめの有無について調査を行うとともに、関係のある児童生徒等の保護者に対し、適時に、かつ、適切な方法により、情報の提供を行わなければならない。

6 学校は、いじめが疑われる事実に関し、当該学校に在学する児童生徒等の保護者から説明の求めがあったときは、適時に、かつ、適切な方法により、当該保護者に説明しなければならない。

7 学校の教職員は、いじめが疑われる事実を発見したとき又は相談等若しくは第二項後段の情報提供を受けたときは、速やかに、当該学校の設置者に連絡しなければならない。

8 地域いじめ対策委員会の委員又は学校の教職員は、いじめが疑われる事実又は相談等若しくは第二項後段の情報提供に係る事実が犯罪に該当すると思料するときは、当該学校の所在地を管轄する警察署長に通報しなければならない。

9 相談等に係る情報については、当該相談等に係る児童生徒等又は当該相談等をした者がこれを理由としていじめその他の報復を受けることのないよう、その適切な取扱いに配慮されなければならない。

 (いじめに関する事案への即時関与等)

第十八条 保護者は、いじめ又はいじめが疑われる事実を発見したときは、できる限り即時に適切な関与を行うよう努めるとともに、速やかにその解決のための行動をとるものとする。

2 前項に定めるもののほか、何人も、いじめが疑われる事実を発見したときは、その場における適切な関与を心がけるとともに、前条第一項の通報又は相談を行う等適切な対応を行うように努めるものとする。

 (いじめに関する事案への対処)

第十九条 学校は、いじめを認知した場合においては、当該いじめに関する事案について、次に掲げる措置を実施しなければならない。

 一 いじめを受けた児童生徒等の保護及び個別の事情に応じた必要かつ適切な支援に関する措置

 二 いじめをした児童生徒等が再びいじめを行うことの防止及び当該児童生徒等に対する() 三 いじめを受けた児童生徒等の保護者及びいじめをした児童生徒等の保護者に対する適時かつ適切な情報の提供及び必要な支援に関する措置

 四 当該学校に在学する児童生徒等の保護者に対する必要に応じた適時かつ適切な説明に関する措置

 五 その他いじめの適切な解決のために必要な措置

2 学校は、前項第一号に掲げる措置を実施する場合には、児童生徒等がいじめを受けたことによる長期間にわたる学校の欠席(いじめが認知された時以前における当該いじめが原因であると認められる学校の欠席を含む。)等を理由として、当該児童生徒等が不利益な取扱いを受けることとならないように配慮するものとする。

3 学校は、第一項各号に掲げる措置を実施するため必要があると認めるときは、教育委員会、都道府県警察、法務局若しくは地方法務局、児童相談所その他の関係機関に対して必要な協力を求め、又はこれらの者以外の者に対して必要な協力を依頼することができる。

4 教育委員会は、いじめを受けた児童生徒等に係る措置についてはその教育を受ける権利を実現する観点から、いじめをした児童生徒等に係る措置についてはいじめを受けた児童生徒等を徹底して守り通すとの観点から、学校による第一項各号に掲げる措置の実施と相まって、その権限を適切に行使するものとする。

5 学校は、当該いじめに関する事案について実施した措置について、学校の設置者及び法務局又は地方法務局の長に報告するものとする。ただし、法務局又は地方法務局の長への報告については、当該報告をしないことについていじめを受けた児童生徒等及びその保護者の同意が得られたときは、この限りでない。

6 学校又は教育委員会が実施したいじめに関する事案への対処について人権侵害が生じていると思料する者は、その旨を法務局又は地方法務局の長に通報するものとする。

7 学校及び教育委員会は、他の機関が当該学校におけるいじめに関する事案の調査を行おうとするときは、これに誠実に対応するものとする。

 (いじめに関する事案への対処の基準及び手続)

第二十条 学校及び教育委員会は、いじめに関する事案への対処として行う懲戒をはじめとする指導及び出席停止その他の措置の基準及び手続を定め、児童生徒等及び保護者その他関係機関に周知しなければならない。

2 文部科学大臣は、前項の基準及び手続の策定に関し、必要な助言を行うものとする。

 (個人情報の取扱い)

第二十一条 文部科学大臣は、いじめに関する事案に係る事実の解明、いじめ被害者等(いじめを受けた者若しくはその保護者又は児童生徒等がいじめを受けた疑いがあると思料する保護者をいう。以下同じ。)への適切な情報提供及び個人情報の保護のそれぞれの観点から、いじめ被害者等といじめ対策に従事する者との間及びいじめ対策に従事する者相互の間におけるいじめの当事者に関する情報の取扱いに関する指針を定めるものとする。

   第五章 いじめ対策の実施の状況の把握及び評価

 (学校におけるいじめ対策の実施の状況の把握)

第二十二条 学校は、学校におけるいじめ対策の実施の状況を把握し、文部科学省令で定めるところにより、当該学校の学校いじめ対策計画に定める措置の実施の状況をインターネットの利用その他適切な方法により公表するとともに、当該学校の設置者に報告するものとする。

2 前項に規定する報告を受けた者は、文部科学省令で定めるところにより、当該報告に係る事項を文部科学大臣に(市町村にあっては、都道府県を経由して文部科学大臣に)報告するものとする。

 (地域におけるいじめ対策の実施の状況の把握)

第二十三条 教育委員会は、その所管に属する学校に関するいじめ対策の実施の状況を把握し、文部科学省令で定めるところにより、当該地域いじめ対策計画に定める措置の実施の状況をインターネットの利用その他適切な方法により公表するとともに、文部科学大臣に(市町村に置かれる教育委員会にあっては、当該市町村の属する都道府県に置かれる教育委員会を経由して文部科学大臣に)報告しなければならない。

 (いじめ対策の実施の状況の評価)

第二十四条 学校いじめ対策委員会は、毎年、学校いじめ対策計画に定める措置の実施の状況を評価し、学校は、文部科学省令で定めるところにより、その結果をインターネットの利用その他適切な方法により公表するとともに、当該学校の設置者に報告するものとする。

2 前項に規定する報告を受けた者は、文部科学省令で定めるところにより、当該報告に係る事項を文部科学大臣に(市町村にあっては、都道府県を経由して文部科学大臣に)報告するものとする。

第二十五条 地域いじめ対策委員会は、地域いじめ対策計画に定める措置の実施の状況の評価については少なくとも三年ごとに、学校いじめ対策計画に定める措置の実施の状況の評価については前条第一項に規定する学校いじめ対策委員会による評価を受けて毎年、実施するものとする。

2 教育委員会は、文部科学省令で定めるところにより、前項の規定による評価の結果をインターネットの利用その他適切な方法により公表するとともに、文部科学大臣に(市町村に置かれる教育委員会にあっては、当該市町村の属する都道府県に置かれる教育委員会を経由して文部科学大臣に)報告するものとする。

   第六章 いじめ対策に係る体制の整備

 (いじめ対策推進協議会)

第二十六条 文部科学省に、いじめ対策推進協議会を置く。

2 いじめ対策推進協議会は、次に掲げる事務をつかさどる。

 一 基本計画に関し、第七条第三項に規定する事項を処理すること。

 二 第四十二条の措置に関し、同条に規定する事項を処理すること。

 三 文部科学大臣の諮問に応じていじめ対策に関する重要事項について調査審議すること。

 四 前号に規定する重要事項に関し、文部科学大臣に意見を述べること。

3 いじめ対策推進協議会は、第一号の委員及び第二号の委員をもって組織する。

 一 いじめを受けた経験を有する者及びいじめを受けた経験を有する者の保護者のうちから、文部科学大臣が任命した委員

 二 次に掲げる者のうちから、文部科学大臣が任命した委員

  イ 教育に関する事務に従事する者

  ロ 人権の擁護に関し専門的な知識を有する者

  ハ 児童生徒等の権利、発達又は心理に関し専門的な知識を有する者

  ニ 児童生徒等の福祉について実務の経験を有する者

  ホ 社会福祉に関し専門的な知識を有する者

  ヘ 少年による犯罪及び非行について専門的な知識及び実務の経験を有する者

  ト 精神疾患又は発達障害に関する医療について専門的な知識及び技能を有する者

  チ その他いじめ対策に関し専門的な知識を有する者

4 いじめ対策推進協議会に、専門の事項を調査させるため必要があるときは、専門委員を置くことができる。

5 専門委員は、当該専門の事項に関し学識経験を有する者のうちから、文部科学大臣が任命する。

6 いじめ対策推進協議会の委員及び専門委員は、非常勤とする。

7 前各項に定めるもののほか、いじめ対策推進協議会の組織及び運営に関し必要な事項は、政令で定める。

 (地域いじめ対策委員会)

第二十七条 教育委員会に、地域いじめ対策委員会を置く。

2 地域いじめ対策委員会は、第一号の委員及び第二号の委員をもって組織する。

 一 第二十九条第一項の地域いじめ対策主事

 二 教育委員会が次に掲げる者のうちから任命した委員

  イ いじめを受けた経験を有する者及びいじめを受けた経験を有する者の保護者

  ロ 教育委員会の置かれている地方公共団体の住民

  ハ 前条第三項第二号ロからチまでに掲げる者

3 地域いじめ対策委員会は、次に掲げる事務をつかさどる。

 一 第八条第三項に規定する事項を処理すること。

 二 地域いじめ対策計画及び教育委員会の所管に属する学校に係る学校いじめ対策計画の実施の状況の評価に関すること。

 三 教育委員会の求めに応じ、その所管に属する学校におけるいじめに関する事案を調査すること。

 四 教育委員会の求めに応じ、その所管に属する学校におけるいじめに関する事案への対処方針について教育委員会に意見を述べること。

4 教育委員会は、前項第三号及び第四号に掲げる事務については、いじめ被害者等の同意がある場合に限り、第二項第二号イ又はロの委員を関与させるものとする。

5 教育委員会は、いじめ被害者等から申立てがあった場合において、必要があると認めるときは、第三項第三号及び第四号に掲げる事務については、第二項第一号の委員を関与させないことができる。

6 地域いじめ対策委員会の運営に当たっては、いじめ被害者等の意見を述べる機会の確保が図られなければならない。

7 地域いじめ対策委員会は、第三項第一号及び第二号に掲げる事務を行うに当たっては、教育委員会の所管に属する学校に在学する児童生徒等の意見を聴かなければならない。

8 前各項に定めるもののほか、地域いじめ対策委員会の組織及び運営に関し必要な事項は、教育委員会規則で定める。

 (地域いじめ対策特別委員会)

第二十八条 教育委員会は、その所管に属する学校の教職員又はいじめ被害者等がその認知し又は受けたいじめにより生じている状況が深刻かつ重大なものである旨の意見を添えて教育委員会に申立てをした場合において、必要があると認めるときは、当該いじめに関する事案に関する調査及び対処に関する事務を処理させるため、地域いじめ対策特別委員会を置くことができる。

2 いじめの当事者である児童生徒等が在学する学校を設置する地方公共団体が異なる場合において、当該いじめに関する通報若しくは相談又は情報提供があったときは、二以上の教育委員会は、共同して、当該いじめに関する事案に関する調査及び対処に関する事務を処理させるため、地域いじめ対策特別委員会を置くことができる。

3 地域いじめ対策特別委員会の委員は、教育委員会が任命する。この場合において、いじめ被害者等から申立てがあった場合において、相当と認めるときは、教育委員会の委員及び教育委員会の事務局の職員並びにその所管に属する学校の教職員を任命しないものとする。

4 地域いじめ対策特別委員会は、次に掲げる事務をつかさどる。

 一 設置に係るいじめに関する事案の調査に関すること。

 二 設置に係るいじめに関する事案への対処方針について教育委員会に意見を述べること。

5 前条第六項の規定は、地域いじめ対策特別委員会について準用する。

6 前各項に定めるもののほか、地域いじめ対策特別委員会の組織及び運営に関し必要な事項は、教育委員会規則で(第二項の規定による地域いじめ対策特別委員会にあっては、関係する教育委員会が協議して規約で)定める。

 (地域いじめ対策主事)

第二十九条 教育委員会の事務局に、その所管に属する学校におけるいじめ対策に関する専門的事項の指導に関する事務をつかさどらせるため、地域いじめ対策主事を置く。

2 地域いじめ対策主事は、指導主事(指導主事を置かない教育委員会の事務局にあっては、当該事務局の職員。次項において同じ。)のうちから、教育委員会が任命する。この場合において、当該事務局の職員は、教育に関し識見を有し、かつ、学校におけるいじめ対策に関する専門的事項について教養と経験がある者でなければならない。

3 地域いじめ対策主事に任命する指導主事は、教育委員会の事務局の職員及び地方教育行政の組織及び運営に関する法律(昭和三十一年法律第百六十二号)第十九条第四項後段に規定する教員以外の者から採用することができる。

 (学校いじめ対策委員会)

第三十条 学校(専修学校を除く。以下この条及び次条において同じ。)には、学校いじめ対策委員会を置かなければならない。

2 学校いじめ対策委員会は、第一号の委員、第二号の委員及び第三号の委員(学校の教員の配置の状況に照らして真にやむを得ない理由があるときは、第一号の委員及び第三号の委員)をもって組織する。

 一 いじめ対策主任

 二 前号に掲げるもののほか、当該学校の教員のうちから、学校の設置者が任命した委員

 三 次に掲げる者のうちから、それぞれ学校の設置者が当該学校の非常勤の職員(地方公共団体が設置する学校にあっては、一般職に属する非常勤の職員。次条第二項第二号において同じ。)として採用し、学校いじめ対策委員会の委員として任命した委員

  イ 当該学校に在学する児童生徒等の保護者

  ロ 地域住民

  ハ 第二十六条第三項第二号ロからチまでに掲げる者

3 学校いじめ対策委員会は、次に掲げる事務を分掌する。

 一 学校いじめ対策計画又はその変更の案の作成に関すること。

 二 学校いじめ対策計画に定める措置の実施に関すること。

 三 学校におけるいじめに関する通報の受付並びにいじめに関する事案(次条第一項の学校いじめ対策特別委員会が処理するものを除く。)に関する調査及び対処に関すること。

 四 学校いじめ対策計画に定める措置の実施の状況の評価に関すること。

4 校長は、前項第三号に掲げる事務については、いじめ被害者等の同意がある場合に限り、第二項第三号イ又はロの委員を関与させるものとする。

5 校長は、いじめ被害者等から申立てがあった場合において、必要があると認めるときは、第三項第三号に掲げる事務のうち調査に関する事務については、第二項第一号及び第二号の委員を関与させないことができる。

6 第二十七条第六項の規定は、学校いじめ対策委員会について準用する。

7 学校いじめ対策委員会は、第三項第一号及び第四号に掲げる事務を行うに当たっては、当該学校に在学する児童生徒等の意見を聴かなければならない。

8 前各項に定めるもののほか、学校いじめ対策委員会の組織及び運営に関し必要な事項は、学校の設置者が定める。

 (学校いじめ対策特別委員会)

第三十一条 学校の設置者は、学校の教職員又はいじめ被害者等がその認知し又は受けたいじめにより生じている状況が深刻かつ重大なものである旨の意見を添えて申立てをした場合において、必要があると認めるときは、当該事案に関する調査及び対処に関する事務を処理させるため、当該学校に、学校いじめ対策特別委員会を置くことができる。

2 学校いじめ対策特別委員会は、第一号の委員及び第二号の委員をもって組織する。

 一 いじめ対策主任その他の当該学校の教員のうちから、学校の設置者が任命した委員

 二 第二十六条第三項第二号ロからチまでに掲げる者のうちから、学校の設置者が当該学校の非常勤の職員として採用し、学校いじめ対策特別委員会の委員として任命した委員

3 第二十七条第六項並びに前条第五項及び第八項の規定は、学校いじめ対策特別委員会について準用する。

 (専修学校における学校いじめ対策委員会等の設置)

第三十二条 専修学校においては、学校いじめ対策委員会及び学校いじめ対策特別委員会を設置するよう努めるものとする。

 (いじめ対策主任)

第三十三条 学校には、当該学校におけるいじめ対策に関する職務をつかさどらせるため、いじめ対策主任を置かなければならない。

2 いじめ対策主任は、次の各号に掲げる学校の区分に応じ、当該各号に定める者をもって充てる。

 一 小学校、中学校、高等学校、中等教育学校及び特別支援学校(幼稚部を除く。) 主幹教諭(養護又は栄養の指導及び管理をつかさどる主幹教諭を除く。)、指導教諭又は教諭

 二 高等専門学校 教授、准教授又は助教

 三 専修学校 教員

 (地域いじめ対策協議会)

第三十四条 都道府県は、教育委員会、都道府県警察、法務局又は地方法務局、人権擁護委員協議会及び都道府県人権擁護委員連合会、弁護士会、児童相談所、社会福祉協議会、民生委員協議会、保護者で構成される団体又はその連合体その他の関係機関及び関係団体の相互の連携及び協力を通じて地域におけるいじめ対策の円滑かつ効果的な実施を図るため、都道府県又は政令で定める区域ごとに、これらの関係機関及び関係団体により構成される地域いじめ対策協議会を組織するものとする。

2 都道府県の教育委員会は、いじめ対策の調整機関として、地域いじめ対策協議会に関する事務を総括するとともに、地域いじめ対策協議会を構成する関係機関及び関係団体相互間の連絡調整を行うものとする。

 (守秘義務)

第三十五条 地域いじめ対策委員会又は地域いじめ対策特別委員会の委員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も同様とする。

   第七章 重大事案への対処についての文部科学大臣等に対する申立て及び措置

 (国立の学校に係る申立て及び措置)

第三十六条 国立大学法人法(平成十五年法律第百十二号)第二条第一項に規定する国立大学法人又は独立行政法人国立高等専門学校機構の設置する学校におけるいじめ被害者等であって当該いじめにより生じている状況が深刻かつ重大なものであるものは、当該学校及びその設置者による当該いじめに関する事案への対処に不服があるときは、文部科学大臣に対し、次項に定める措置を講ずるよう申立てをすることができる。

2 文部科学大臣は、前項の規定による申立てがあった場合において、必要があると認めるときは、当該申立てに係る学校の設置者に対し、当該申立てに係るいじめに関する事案への対処に関し、報告を求めるとともに、その結果、この法律に違反し、又は違反するおそれがあると認めるときは、必要な措置をとるべきことを要請することができる。

 (公立の学校に係る申立て及び措置)

第三十七条 教育委員会の所管に属する学校におけるいじめ被害者等であって当該いじめにより生じている状況が深刻かつ重大なものであるものは、教育委員会及び当該学校による当該いじめに関する事案への対処に不服があるときは、当該学校を設置する地方公共団体の長に対し、地方公共団体の長が当該事案の調査を行うよう申立てをすることができる。

2 前項の規定による申立てがあったときは、地方公共団体は、地方教育行政の組織及び運営に関する法律第二十三条及び第二十四条の規定にかかわらず、同条各号に掲げるもののほか、条例の定めるところにより、当該地方公共団体の長が前項に規定するいじめに関する事案の調査に関する事務を執行することとすることができる。

3 地方教育行政の組織及び運営に関する法律第二十四条の二第二項の規定は、前項の条例について準用する。

4 地方公共団体は、当該地方公共団体の長が第二項の事務を執行することとするときは、その適正な執行を確保するため、いじめ事案調査委員会を置く。

5 いじめ事案調査委員会の委員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も同様とする。

6 前項に定めるもののほか、いじめ事案調査委員会の組織及び運営に関し必要な事項は、地方公共団体の長が定める。

7 第二項の事務の執行の結果必要があると認めるときは、地方公共団体の長は、当該地方公共団体に置かれる教育委員会に対して、当該いじめに関する事案への対処に関し、報告を求めるとともに、必要な措置をとるべきことを要請することができる。

8 前各項の規定の適用に当たっては、これらの規定が深刻かつ重大な状況を生じさせたいじめに関する事案への適切な対処を確保することの必要性に鑑み特に地方教育行政の組織及び運営に関する法律第二十三条及び第二十四条の規定の特例を定めたものであることを踏まえ、第二項の事務以外の教育委員会の事務の管理及び執行に支障を与えることのないように留意しなければならない。

第三十八条 地方独立行政法人法(平成十五年法律第百十八号)第六十八条第一項に規定する公立大学法人の設置する学校におけるいじめ被害者等であって当該いじめにより生じている状況が深刻かつ重大なものであるものは、当該学校及びその設置者による当該いじめに関する事案への対処に不服があるときは、当該公立大学法人を設立する地方公共団体の長に対し、次項に定める措置を講ずるよう申立てをすることができる。

2 地方公共団体の長は、前項の規定による申立てがあった場合において、必要があると認めるときは、当該申立てに係る学校の設置者に対し、当該申立てに係るいじめに関する事案への対処に関し、報告を求めるとともに、その結果、この法律に違反し、又は違反するおそれがあると認めるときは、必要な措置をとるべきことを要請することができる。

 (私立の学校に係る申立て及び措置)

第三十九条 学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第二条第一項に規定する国及び地方公共団体以外の者の設置する学校におけるいじめ被害者等であって当該いじめにより生じている状況が深刻かつ重大なものであるものは、当該学校及びその設置者による当該いじめに関する事案への対処に不服があるときは、当該学校の設置者の所轄庁(私立学校法(昭和二十四年法律第二百七十号)第四条に規定する所轄庁である文部科学大臣又は都道府県知事をいい、構造改革特別区域法(平成十四年法律第百八十九号)第十二条第二項に規定する学校設置会社又は同法第十三条第二項に規定する学校設置非営利法人にあっては、それぞれ同法第十二条第一項又は第十三条第一項の認定を受けた地方公共団体の長(高等専門学校については、文部科学大臣)とする。)に対し、次項に定める措置を講ずるよう申立てをすることができる。

2 前項に規定する学校の設置者の所轄庁は、同項の規定による申立てがあった場合において、必要があると認めるときは、当該申立てに係る学校の設置者に対し、当該申立てに係るいじめに関する事案への対処に関し、報告を求めるとともに、必要な措置をとるべきことを要請することができる。

   第八章 雑則

 (いじめ対策啓発週間)

第四十条 国民の間に広くいじめ対策についての関心と認識を深めるため、いじめ対策啓発週間を設ける。

2 いじめ対策啓発週間は、五月二十日から同月二十六日まで及び十月二十日から同月二十六日までとする。

3 国及び地方公共団体は、いじめ対策啓発週間の趣旨にふさわしい事業を実施するよう努めるものとする。

 (学校評価及び教員評価における留意事項)

第四十一条 学校の評価を行う場合においていじめ対策を取り扱うに当たっては、いじめの発生が隠蔽されず適切な実態把握及び対処が確保されるよう、いじめ又はその兆候の発見、いじめの再発を防止するための取組等について適正に評価が行われるようにしなければならない。

2 学校の教職員の勤務成績の評定(地方公共団体が設置する学校以外の学校にあっては、勤務成績の評定に相当するもの)に当たっては、いじめの発生が隠蔽されず適切な実態把握及び対処が確保されるよう、いじめ又はその兆候の発見、いじめの再発を防止するための取組等について適正に評価が行われるようにしなければならない。

 (この法律の円滑な施行を図るために必要な措置)

第四十二条 文部科学大臣は、この法律の円滑な施行を図るため、いじめ対策推進協議会の意見を聴いて、いじめ対策に関する技術的指針の策定その他の必要な措置を講ずるものとする。

   第九章 罰則

第四十三条 第三十五条又は第三十七条第五項の規定に違反して秘密を漏らした者は、一年以下の懲役又は三万円以下の罰金に処する。

   附 則

 (施行期日)

1 この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、次項の規定は、公布の日から施行する。

 (学校への就学以外の方法による教育に係る制度の早期導入)

2 政府は、いじめを受けた結果学校における集団の生活に不安又は緊張を覚えることとなった学齢児童又は学齢生徒(それぞれ学校教育法第十八条に規定する学齢児童又は学齢生徒をいう。)が適切な支援を受けつつ学習することができるよう、多様な学習の機会を確保する必要性も踏まえ、学校への就学以外の方法による教育であって教育委員会の指導の下に実施されるものを受けたときは同法第十七条第一項及び第二項の義務が履行されたものとみなす制度について速やかに検討を行い、当該制度の早期導入を行うものとする。

 (検討)

3 政府は、この法律の施行後三年を目途として、この法律の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。

 (文部科学省設置法の一部改正)

4 文部科学省設置法(平成十一年法律第九十六号)の一部を次のように改める。

  目次中「第六款 独立行政法人評価委員会(第二十条)」を

第六款 独立行政法人評価委員会(第二十条)

 

 

第七款 いじめ対策推進協議会(第二十条の二)

 に改める。

  第四条第十二号の次に次の一号を加える。

  十二の二 いじめ対策推進基本法(平成二十五年法律第▼▼▼号)第七条第一項に規定する基本計画の策定に関すること。

  第六条第二項中「独立行政法人評価委員会」を

独立行政法人評価委員会

 

 

いじめ対策推進協議会 

 に改める。

  第三章第二節に次の一款を加える。

      第七款 いじめ対策推進協議会

 第二十条の二 いじめ対策推進協議会については、いじめ対策推進基本法(これに基づく命令を含む。)の定めるところによる。


     理 由

 いじめが児童生徒等の尊厳を害するとともに、あらゆる児童生徒等の良好な教育環境を損ない、児童生徒等の適切な教育を受けて健全に成育する権利を害するものであることに鑑み、児童生徒等をいじめることを禁止するとともに、いじめ対策に関し、基本理念及び国の責務等を明らかにし、並びに基本計画等の策定その他のいじめ対策の基本となる事項、いじめ又はその兆候の発見及びいじめに関する事案への対処に関する措置、いじめ対策の実施の状況の把握及び評価等について定めることにより、いじめ対策を総合的に推進する必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

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