衆議院

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第一八五回

衆第二七号

   世代間格差を是正するための公的年金制度及び医療保険制度の改革の推進に関する法律案

目次

 第一章 総則(第一条−第四条)

 第二章 公的年金制度の改革の基本方針(第五条−第七条)

 第三章 医療保険制度の改革の基本方針(第八条−第十一条)

 附則

   第一章 総則

 (目的)

第一条 この法律は、急速な少子高齢化の進展に伴い、現行の公的年金制度及び医療保険制度における負担と受益に係る世代間の格差(以下「世代間格差」という。)が著しいものとなっており、その早急な是正が求められていること並びに世代間格差の是正が公的年金制度及び医療保険制度を持続可能なものとする上で不可欠であることに鑑み、世代間格差を是正するための公的年金制度及び医療保険制度の改革について、その基本理念及び基本方針その他の基本となる事項を定めることにより、これを総合的に推進することを目的とする。

 (基本理念)

第二条 世代間格差を是正するための公的年金制度及び医療保険制度の改革は、次に掲げる事項を基本として行われるものとする。

 一 公的年金制度及び医療保険制度を抜本的に見直し、被保険者の属する世代にかかわらず、その生涯を通じて負担と受益が均衡する仕組みとすること。

 二 公的年金制度及び医療保険制度について、保険料その他の費用の負担に関し各世代の理解を得られるようにするとともに、国民の就労形態の多様化等に適応できるようにするため、一元的で、かつ、簡素で透明性の高い仕組みとすること。

 (国の責務)

第三条 国は、前条の基本理念にのっとり、世代間格差を是正するための公的年金制度及び医療保険制度の改革を推進する責務を有する。

 (改革の実施及び目標時期)

第四条 政府は、次章及び第三章に定める基本方針に基づき、世代間格差を是正するための公的年金制度及び医療保険制度の改革を行うものとし、このために必要な措置については、この法律の施行後二年以内を目途として講ずるものとする。

   第二章 公的年金制度の改革の基本方針

 (新たな公的年金制度の創設)

第五条 公的年金制度の改革においては、この章に定めるところにより、新たな公的年金制度を創設するものとする。

2 新たな公的年金制度は、被保険者が支払った保険料及びその運用収入をその者に係る公的年金給付を行うための積立金とする仕組みとするものとする。

3 新たな公的年金制度は、原則として、世代別年金被保険者集団(一定の期間ごとにその期間内に出生した者で構成される公的年金制度の被保険者の集団をいう。以下同じ。)ごとに、支払われる保険料及びその運用収入の総額と公的年金給付の総額とが均衡する仕組みとするものとする。

4 新たな公的年金制度は、全ての国民が加入する単一の制度とするものとする。

5 新たな公的年金制度において被保険者が支払うべき保険料は、世代別年金被保険者集団ごとに、就労形態等を問わず、その所得の額を基礎とする額に一律の保険料率を乗じて得た額とするものとする。

6 新たな公的年金制度においては、被用者である被保険者に係る保険料について、事業主に負担させないものとする。この場合において、被用者である被保険者の保険料の負担の増加を考慮してその賃金が引き上げられることとなるよう、必要な措置が講ぜられるものとする。

7 新たな公的年金制度における積立金の運用は、安全で、かつ、物価の変動に対応できる複数の方法の中から被保険者が選択した方法により行うものとする。

8 新たな公的年金制度の財政運営は、特別会計を設けて行うものとし、次条第三項及び第七条の繰入れを除き、当該特別会計への一般会計からの繰入れは行わないものとする。

9 新たな公的年金制度の財政運営については、世代別年金被保険者集団ごとに経理を区分し、それぞれ勘定を設けて整理するものとする。この場合において、一の世代別年金被保険者集団に係る勘定から他の世代別年金被保険者集団に係る公的年金給付の財源に充当するために当該他の世代別年金被保険者集団に係る勘定への繰入れは、予測し難い事象の発生によりやむを得ない場合を除いて行わないものとし、当該繰入れを行ったときは、その内容が国民に明らかにされなければならないものとする。

 (新たな公的年金制度への移行を直ちに行うための措置)

第六条 新たな公的年金制度は、その実施前の公的年金制度(以下この条において「旧公的年金制度」という。)における被保険者期間を有する者にも適用するものとし、新たな公的年金制度の実施後に支給すべきその者に係る公的年金給付については、当該被保険者期間に対応する部分も含め、新たな公的年金制度に基づいて行うものとする。

2 前項の者に対する新たな公的年金制度の適用については、その者の旧公的年金制度における保険料の納付の状況等に応じて旧公的年金制度における公的年金給付の額の算定方法により算定した額(当該額が一定の基準額を超える場合には、当該超える額の一部を控除した額)を新たな公的年金制度における公的年金給付として支給するために必要な積立金の額を算出し、これを新たな公的年金制度におけるその者に係る積立金の額とみなすものとする。

3 前項の場合において、新たな公的年金制度における個々の積立金の額とみなされた額を合計した額と新たな公的年金制度の実施の際現に存する旧公的年金制度に係る積立金の総額との差額については、長期間にわたり、毎年度一般会計から前条第八項の特別会計への一定の金額の繰入れを行うことにより、補填するものとする。

4 一の世代別年金被保険者集団に係る勘定において前項の繰入れが行われてもなお公的年金給付を行う上で積立金が一時的に不足する場合においては、当該勘定において国債を発行することができるものとし、当該国債は、他の世代別年金被保険者集団に係る勘定において引き受けることができるものとする。

 (低所得者の保険料の負担の軽減等)

第七条 新たな公的年金制度における低所得者の保険料の負担の軽減及び新たな公的年金制度において福祉的な給付が行われないことによる低所得者への影響の緩和については、給付付き税額控除(給付と税額控除を適切に組み合わせて行う仕組みその他これに準ずるものをいう。第十条において同じ。)の導入により対応するものとし、その導入までの間に限り、保険料の減免の措置及びこれに伴う一般会計から第五条第八項の特別会計への繰入れの措置並びに福祉的な給付の措置を講ずるものとする。

   第三章 医療保険制度の改革の基本方針

 (新たな医療保険制度の創設)

第八条 医療保険制度の改革においては、この章に定めるところにより、新たな医療保険制度を創設するものとする。

2 新たな医療保険制度は、原則として、世代別医療保険被保険者集団(一定の期間ごとにその期間内に出生した者で構成される医療保険制度の被保険者の集団をいう。以下同じ。)ごとに、支払われる保険料及びその運用収入の総額と医療給付の総額とが均衡する仕組みとするものとする。

3 新たな医療保険制度は、全ての国民が加入する単一の制度とするものとする。

4 新たな医療保険制度において被保険者が支払うべき保険料は、世代別医療保険被保険者集団ごとに、これに属する被保険者の生涯における医療給付の総額を確保することを基本として定められる全国一律の額とするものとする。

5 新たな医療保険制度においては、被用者である被保険者に係る保険料について、事業主に負担させないものとする。この場合において、被用者である被保険者の保険料の負担の増加を考慮してその賃金が引き上げられることとなるよう、必要な措置が講ぜられるものとする。

6 新たな医療保険制度における積立金の運用は、確実で、かつ、物価の変動に対応できる方法により行うものとする。

7 新たな医療保険制度の財政運営は、特別会計を設けて行うものとし、次条第二項及び第十条の繰入れを除き、当該特別会計への一般会計からの繰入れは行わないものとする。

8 新たな医療保険制度の財政運営については、世代別医療保険被保険者集団ごとに経理を区分し、それぞれ勘定を設けて整理するものとする。この場合において、一の世代別医療保険被保険者集団に係る勘定から他の世代別医療保険被保険者集団に係る医療給付の財源に充当するために当該他の世代別医療保険被保険者集団に係る勘定への繰入れは、予測し難い事象の発生によりやむを得ない場合を除いて行わないものとし、当該繰入れを行ったときは、その内容が国民に明らかにされなければならないものとする。

9 新たな医療保険制度においては、六歳に達する日以後の最初の三月三十一日までの間にある者が医療給付の対象となる医療を受けたときは、その費用の全額について医療給付が行われるものとする。

 (新たな医療保険制度への移行を直ちに行うための措置)

第九条 新たな医療保険制度は、その実施前の医療保険制度の対象者にも適用するものとする。

2 新たな医療保険制度において前項の者の属する世代別医療保険被保険者集団に係る保険料として算定される額が一定の基準額を超える場合においては、当該世代別医療保険被保険者集団に係る保険料の額は当該基準額とするものとし、当該世代別医療保険被保険者集団における医療給付の総額として算定される額のうち当該保険料及びその運用収入の総額を超える額の一部について、長期間にわたり、毎年度一般会計から前条第七項の特別会計への一定の金額の繰入れを行うことにより、補填するものとする。

3 一の世代別医療保険被保険者集団に係る勘定において前項の繰入れが行われてもなお医療給付を行う上で積立金が一時的に不足する場合においては、当該勘定において国債を発行することができるものとし、当該国債は、他の世代別医療保険被保険者集団に係る勘定において引き受けることができるものとする。

 (低所得者の保険料の負担の軽減)

第十条 新たな医療保険制度における低所得者の保険料の負担の軽減については、給付付き税額控除の導入により対応するものとし、その導入までの間に限り、保険料の減免の措置及びこれに伴う一般会計から第八条第七項の特別会計への繰入れの措置を講ずるものとする。

 (医療給付の額の抑制のための措置)

第十一条 新たな医療保険制度においては、負担に応じた受益を超える医療給付の防止に資するよう医療給付の額を抑制するため、医療給付の総額が一定の基準額を上回ることのないようこれを管理する仕組みの導入、医療に要した費用の額のうち一定の額について医療給付の対象から除くこととする仕組みの導入、医療給付の対象となる医療の範囲の限定と混合診療(医療給付の対象となる部分と医療給付の対象とならない部分が併存することが認められる医療をいう。)の範囲の拡大その他の措置が講ぜられるものとする。

   附 則

 この法律は、公布の日から施行する。


     理 由

 急速な少子高齢化の進展に伴い、現行の公的年金制度及び医療保険制度における負担と受益に係る世代間格差が著しいものとなっており、その早急な是正が求められていること並びに世代間格差の是正が公的年金制度及び医療保険制度を持続可能なものとする上で不可欠であることに鑑み、世代間格差を是正するための公的年金制度及び医療保険制度の改革について、その基本理念及び基本方針その他の基本となる事項を定めることにより、これを総合的に推進する必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

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