衆議院

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第一八五回

参第二号

   電力自由化推進法案

目次

 第一章 総則(第一条−第三条)

 第二章 電力自由化の基本方針(第四条−第九条)

 第三章 電力自由化推進本部(第十条−第十九条)

 附則

   第一章 総則

 (目的)

第一条 この法律は、平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により、原子力発電は安全性と経済的合理性を有しないものであることが明らかとなり、原子力発電に依存した電気の供給構造の維持が困難となったこと、及び当該事故後における全国の原子力発電所の稼働停止の長期化等により、電気の需給がひっ迫する事態が生じたことから、従来の電気の供給体制の下においては電気の安定供給の確保に支障が生じ得ることが認識されたことを踏まえ、電気の需給に係る規制を緩和し、市場原理に基づいた電気の需給調整の仕組みを構築すること等により原子力発電を利用せずに電気の安定供給を実現するための抜本的な改革(以下「電力自由化」という。)を行うことが喫緊の課題となっていることに鑑み、電力自由化について、その基本理念及び基本方針その他の基本となる事項を定めるとともに、電力自由化推進本部を設置することにより、これを総合的に推進することを目的とする。

 (基本理念)

第二条 電力自由化は、次に掲げる事項を基本として行われるものとする。

 一 電気の需給に係る公平かつ公正な競争が行われる環境を整備すること。

 二 市場原理に基づいた電気の需給調整の機能が適切に発揮されるようにすること。

 三 電気の需給に係る競争の徹底により、電気の小売に係る料金の低廉化、新たなサービスの提供等による電気の使用者の利益の増進を図ること。

 (国の責務)

第三条 国は、前条の基本理念にのっとり、電力自由化を推進する責務を有する。

   第二章 電力自由化の基本方針

 (平成二十六年までに実施すべき措置)

第四条 政府は、次に掲げる措置を平成二十六年までに実施するため、直ちに検討に着手し、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。

 一 主として大口の電気の使用者に係る電気の需給に係る公平かつ公正な競争が行われる環境の整備及び効率的な調整を実現するために必要な次に掲げる措置

  イ 特定規模電気事業者(電気事業法(昭和三十九年法律第百七十号)第二条第一項第八号に規定する特定規模電気事業者をいう。)に係る発電量の総量を当該特定規模電気事業者に係る電気の使用量の総量に一致させるようにするための仕組みについて、電気事業者(同項第十号に規定する電気事業者をいう。)間の公平かつ公正な競争を阻害することとならないように改めるものとすること。

  ロ あらかじめ計画した発電量及び電気の使用量に応じて発電及び電気の使用を行うことを基本とし、当該計画された発電量と実際の発電量との差及び当該計画された電気の使用量と実際の電気の使用量との差について、それぞれ市場価格に基づいて精算が行われることを基本とする仕組みを導入すること。

  ハ ロの市場価格の適正な形成に資するよう、発電機ごとの発電に要する費用について第五号の新たな行政組織に対する報告等を義務付けること。

  ニ 実際の電気の使用量がロの計画された電気の使用量を下回る場合に、当該下回る量の電気について、競争入札によって取引をすることができる仕組みを導入すること。

 二 発電所の設置又は変更の工事の事業に係る環境影響評価(環境影響評価法(平成九年法律第八十一号)第二条第一項に規定する環境影響評価をいう。)に関し、その手続の迅速化その他事業者の負担を軽減するために必要な措置

 三 卸電力市場(電気の卸売に係る電気について取引をするための市場をいう。)の活性化のために必要な措置

 四 電気の需給状況の悪化の際に電気の需給調整を行うこと等により電気事業の遂行に当たっての広域的運営を推進する新たな組織の設立のための措置

 五 電気事業の規制(電気の需給に係る公平かつ公正な競争が行われる環境の整備を含む。)に関する事務をつかさどる独立性及び高度の専門性を有する新たな行政組織を整備するための措置

 (平成二十八年までに実施すべき措置)

第五条 政府は、次に掲げる措置を平成二十八年までに(第一号に掲げる措置については、実施可能なものからできるだけ早く)実施するため、早急に検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。

 一 同一の者が変電、送電及び配電に係る業務(以下「送配電等業務」という。)と電気の小売業又は卸売業とを兼営しないようにするための措置並びにこれと併せて講ずべき送配電等業務を営む者の役員の兼職に関する規制措置

 二 電気の小売業への参入の全面自由化を実施するための措置

 (法的分離の実施後二年以内に講ずべき措置)

第六条 政府は、次に掲げる事項について、前条第一号に掲げる措置の実施後遅くとも二年以内に(第一号に掲げる事項については、可能なものからできるだけ早く)、検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。

 一 送配電等業務を営む者と電気の小売業又は卸売業を営む者との間の資本関係を遮断するための措置を講ずること。

 二 送配電等業務の用に供する電線路の利用に係る送電及び受電の料金については、地点料金制(当該送電及び受電の料金が地域ごとの電気の需給状況を踏まえて設定されることを基本とする仕組みをいう。)によるものとすること。

 三 送配電等業務の用に供する電線路を通じて供給される電気の周波数の値を全国的に統一すること。

 (電気の小売に係る料金の全面自由化を平成三十二年までに達成するための措置)

第七条 政府は、電気の小売に係る料金の全面自由化を平成三十二年までに達成するために必要な施策について検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。この場合において、当該措置は、電気の需給に係る競争の進展状況を十分踏まえつつ、講ずるものとする。

 (原子力発電を利用しない電気の供給構造の平成四十二年までの実現に向けた措置)

第八条 政府は、原子力発電を利用しない電気の供給構造の平成四十二年までのできるだけ早い時期における実現に向けた再生可能エネルギー電気(太陽光、風力等の再生可能エネルギー源を変換して得られる電気をいう。)の利用の拡大等のために必要な施策について検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。

 (その他電力自由化の推進のために必要な措置)

第九条 政府は、第四条から前条までに規定するもののほか、電力自由化の推進のために必要な施策について随時検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。

   第三章 電力自由化推進本部

 (設置)

第十条 電力自由化を総合的かつ集中的に推進するため、内閣に、電力自由化推進本部(以下「本部」という。)を置く。

 (所掌事務)

第十一条 本部は、次に掲げる事務をつかさどる。

 一 電力自由化の推進に関する企画及び立案並びに総合調整に関すること。

 二 電力自由化に関する施策の実施の推進に関すること。

 (組織)

第十二条 本部は、電力自由化推進本部長、電力自由化推進副本部長及び電力自由化推進本部員をもって組織する。

 (電力自由化推進本部長)

第十三条 本部の長は、電力自由化推進本部長(以下「本部長」という。)とし、内閣総理大臣をもって充てる。

2 本部長は、本部の事務を総括し、所部の職員を指揮監督する。

 (電力自由化推進副本部長)

第十四条 本部に、電力自由化推進副本部長(以下「副本部長」という。)を置き、国務大臣をもって充てる。

2 副本部長は、本部長の職務を助ける。

 (電力自由化推進本部員)

第十五条 本部に、電力自由化推進本部員(以下「本部員」という。)を置く。

2 本部員は、次に掲げる者をもって充てる。

 一 本部長及び副本部長以外の全ての国務大臣

 二 電力自由化の推進に関し優れた識見を有する者のうちから、内閣総理大臣が任命する者

 (資料の提出その他の協力)

第十六条 本部は、その所掌事務を遂行するため必要があると認めるときは、国の行政機関の長に対して、資料の提出、意見の開陳、説明その他の必要な協力を求めることができる。

2 本部は、その所掌事務を遂行するため特に必要があると認めるときは、前項に規定する者以外の者に対しても、必要な協力を依頼することができる。

 (事務)

第十七条 本部に関する事務は、内閣官房において処理し、命を受けて内閣官房副長官補が掌理する。

 (主任の大臣)

第十八条 本部に係る事項については、内閣法(昭和二十二年法律第五号)にいう主任の大臣は、内閣総理大臣とする。

 (政令への委任)

第十九条 この法律に定めるもののほか、本部に関し必要な事項は、政令で定める。

   附 則

 この法律は、公布の日から起算して一月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。


     理 由

 平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故等により、従来の電気の供給体制の下においては電気の安定供給の確保に支障が生じ得ることが認識されたことを踏まえ、電気の需給に係る規制を緩和し、市場原理に基づいた電気の需給調整の仕組みを構築すること等により原子力発電を利用せずに電気の安定供給を実現するための抜本的な改革を行うことが喫緊の課題となっていることに鑑み、当該改革について、その基本理念及び基本方針その他の基本となる事項を定めるとともに、電力自由化推進本部を設置することにより、これを総合的に推進する必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

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