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第一八六回

参第一号

   労働基準法等の一部を改正する法律案

 (労働基準法の一部改正)

第一条 労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)の一部を次のように改正する。

  第三十五条第一項中「少くとも」を「少なくとも」に改め、「休日を」の下に「直前の休日の翌日から七日以内に」を加え、同条第二項を削る。

  第三十六条第二項中「前項」を「第一項」に改め、同項に後段として次のように加える。

   この場合において、一日を超え三箇月以内の期間及び一年間についての労働時間の延長の限度の基準は、その性質上当該基準を適用することが適当でない事業又は業務として厚生労働大臣が定める事業又は業務に係る場合を除き、三箇月については百二十時間を、一年については三百六十時間を、それぞれ超えないものとする。

  第三十六条第四項中「第二項」を「第三項」に改め、同条第一項の次に次の一項を加える。

   使用者は、前項の協定をする場合には、一日並びに一日を超え三箇月以内の期間及び一年間についての延長することができる時間又は労働させることができる休日その他厚生労働省令で定める事項について、協定しなければならない。

  第三十八条の四第五項中「第三十六条第二項」を「第三十六条第三項」に、「同条第三項」を「同条第四項」に、「同条第四項」を「同条第五項」に改める。

  第百七条の次に次の一条を加える。

  (労働時間管理台帳)

 第百七条の二 使用者は、事業場ごとに労働時間管理台帳を調製し、各労働者について労働した日ごとに、始業及び終業の時刻、時間外及び休日の労働の時間数その他厚生労働省令で定める事項を厚生労働省令で定めるところにより記入しなければならない。

  第百八条の次に次の一条を加える。

  (労働者名簿等の閲覧)

 第百八条の二 使用者は、労働者から、当該労働者について調製した労働者名簿、労働時間管理台帳(当該労働者に係る部分に限る。)及び賃金台帳(当該労働者に係る部分に限る。)の閲覧の請求があつたときは、その閲覧を拒んではならない。

  第百九条中「労働者名簿」の下に「、労働時間管理台帳」を加える。

  第百二十条第一号中「又は第百六条から第百九条まで」を「、第百六条、第百七条、第百八条の二又は第百九条」に改め、同条に次の一号を加える。

  六 第百七条の二又は第百八条の規定に違反して、労働時間管理台帳若しくは賃金台帳を調製せず、又はこれらに記入すべき事項を記入せず、若しくは虚偽の記入をした者

 (職業安定法の一部改正)

第二条 職業安定法(昭和二十二年法律第百四十一号)の一部を次のように改正する。

  第五条の三第三項に後段として次のように加える。

   この場合において、賃金に関する事項に係る厚生労働省令は、所定労働時間の労働に係る賃金と所定労働時間を超える時間の労働に係る賃金等とを区分して定めるものとする。

  第四十一条の次に次の一条を加える。

  (雇入労働者数及び退職者数の公表)

 第四十一条の二 労働者の募集を行う者は、労働者の適切な職業選択に資するため、厚生労働省令で定めるところにより、一定の期間内に雇い入れた労働者の数及び当該労働者のうち退職した者の数を公表するように努めなければならない。

  第四十八条中「第三十三条の六」の下に「、第四十一条の二」を加える。

  第五十一条の三中「公共職業安定所」の下に「その他の職業安定機関」を、「及び」の下に「労働者の適切な職業選択に資する情報(この法律、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)その他の労働に関する法令の規定の違反に係る事例に関する情報を含む。次条において同じ。)の提供、」を加え、「ことができる」を「ものとする」に改め、同条の次に次の一条を加える。

  (労働者の適切な職業選択に資する情報の公表)

 第五十一条の四 厚生労働大臣は、労働者の適切な職業選択に資する情報を整理し、これを公表するものとする。

 (労働安全衛生法の一部改正)

第三条 労働安全衛生法(昭和四十七年法律第五十七号)の一部を次のように改正する。

  目次中「第七章の二 快適な職場環境の形成のための措置(第七十一条の二−第七十一条の四)」を

第七章の二 快適な職場環境の形成のための措置(第七十一条の二−第七十一条の四)

 

 

第七章の三 職場における優位性を不当に利用して労働者に苦痛を与える行為等を防止するための措置(第七十一条の五−第七十一条の八)

 に改める。

  第七章の二の次に次の一章を加える。

    第七章の三 職場における優位性を不当に利用して労働者に苦痛を与える行為等を防止するための措置

  (事業者の講ずべき措置)

 第七十一条の五 事業者は、職場において、職務上の地位、人間関係等における優位性を不当に利用し、かつ、業務上必要な範囲を超えて、労働者に対して行われる精神的若しくは身体的な苦痛を与える行為又は職場環境を悪化させる行為を防止するため、労働者に対する周知及び啓発、労働者からの相談に応じ適切に対応するために必要な体制の整備その他の必要な措置を講じなければならない。

  (指針)

 第七十一条の六 厚生労働大臣は、前条の規定に基づき事業者が講ずべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るため必要な指針を公表するものとする。

  (報告の徴収並びに助言、指導及び勧告)

 第七十一条の七 厚生労働大臣又は都道府県労働局長は、第七十一条の五の行為を防止するため必要があると認めるときは、前条の指針に従い、事業者に対し、報告を求め、又は助言、指導若しくは勧告をすることができる。

  (公表)

 第七十一条の八 厚生労働大臣は、第七十一条の五の規定に違反している事業者に対し、前条の規定による勧告をした場合において、その勧告を受けた者がこれに従わなかつたときは、その旨を公表することができる。

 (労働時間等の設定の改善に関する特別措置法の一部改正)

第四条 労働時間等の設定の改善に関する特別措置法(平成四年法律第九十号)の一部を次のように改正する。

  目次中「第四章 労働時間等設定改善実施計画(第八条−第十四条)」を

第四章 労働時間等設定改善実施計画(第八条−第十四条)

 

 

第五章 時間外労働等管理規程(第十五条−第十八条)

 

 

第六章 罰則(第十九条・第二十条)

 に改める。

  第一条中「かんがみ」を「鑑み」に改め、「講ずる」を「講じ、あわせて時間外労働等の適正な管理及び削減のために事業主が講ずべき措置等について定める」に改める。

  第一条の二に次の一項を加える。

 3 この法律において「時間外労働等」とは、所定労働時間を超える時間の労働及び休日の労働をいう。

  第二条の見出しを削り、同条の前に見出しとして「(事業主等の責務等)」を付し、同条第一項中「時刻の設定」の下に「、時間外労働等の実態の把握及び削減」を加え、同条の次に次の一条を加える。

 第二条の二 事業主は、その雇用する労働者の健康の保持及び仕事と生活の調和が図られるよう、終業から次の始業までの間に少なくとも十一時間の休息のための時間を確保するように努めなければならない。

  第四条第一項中「第二条」の下に「及び第二条の二」を加える。

  第七条第一項中「及び第三十六条第三項」を「及び第三十六条第四項」に、「第三十六条第三項及び第四項」を「第三十六条第四項及び第五項」に、「第三十六条第三項中」を「第三十六条第四項中」に、「第三十六条第二項から第四項まで」を「第三十六条第三項から第五項まで」に改める。

  本則に次の二章を加える。

    第五章 時間外労働等管理規程

  (時間外労働等管理規程の作成等)

 第十五条 事業主は、常時十人以上の労働者を使用する事業場ごとに、厚生労働省令で定めるところにより、時間外労働等の適正な管理及び削減のための措置に関する規程(以下「時間外労働等管理規程」という。)を作成し、厚生労働大臣に届け出なければならない。当該時間外労働等管理規程を変更したときも、同様とする。

 2 時間外労働等管理規程には、次に掲げる事項を記載しなければならない。

  一 時間外労働等の実態の正確な把握のために必要な措置に関する事項

  二 時間外労働等に係る割増賃金の算定及び支払に関する事項

  三 時間外労働等に係る割増賃金が支払われない場合に労働者が当該割増賃金の額に加えて支払を請求することができる金額に関する事項

  四 時間外労働等の適正な管理及び削減のために必要な労働者の配置等雇用管理に関する事項

 3 事業主は、第一項の規定により時間外労働等管理規程を作成するに当たっては、次条第一項の規定により設置された時間外労働等管理委員会の意見を聴かなければならない。当該時間外労働等管理規程を変更するときも、同様とする。

 4 事業主は、時間外労働等管理規程を、常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること、書面を交付することその他の厚生労働省令で定める方法によって、労働者に周知させなければならない。

 5 厚生労働大臣は、事業主が時間外労働等管理規程を適正に作成し、実施するために必要な指針を定め、これを公表するものとする。

 6 厚生労働大臣は、第一項の規定により届け出られた時間外労働等管理規程が著しく不適当であると認めるときは、当該時間外労働等管理規程を作成した事業主に対してその変更を勧告することができる。

 7 厚生労働大臣は、特に必要があると認めるときは、第一項の規定により時間外労働等管理規程を届け出た事業主に対して、その適正な実施に関し、勧告をすることができる。

 8 厚生労働大臣は、前二項の規定による勧告を受けた事業主がこれらの勧告に従わないときは、その旨を公表することができる。

  (時間外労働等管理委員会)

 第十六条 事業主は、前条第一項に規定する事業場ごとに、時間外労働等管理規程及びその実施状況並びに時間外労働等に係る労働者の苦情を調査審議させ、事業主に対し意見を述べさせるため、時間外労働等管理委員会を設けなければならない。

 2 事業主は、時間外労働等管理委員会の委員の半数については、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の推薦に基づき指名しなければならない。

  (報告及び検査)

 第十七条 厚生労働大臣は、前二条の規定の施行に必要な限度において、第十五条第一項の規定による時間外労働等管理規程の届出をした事業主に対し、当該時間外労働等管理規程の実施状況その他の事項について報告をさせ、又は所属の職員に、当該届出に係る事業場に立ち入り、帳簿、書類その他の物件を検査させ、若しくは関係者に質問させることができる。

 2 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者に提示しなければならない。

 3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。

  (権限の委任)

 第十八条 第十五条及び前条に規定する厚生労働大臣の権限は、厚生労働省令で定めるところにより、その一部を都道府県労働局長に委任することができる。

    第六章 罰則

 第十九条 次の各号のいずれかに該当する者は、二十万円以下の罰金に処する。

  一 第十五条第一項の規定に違反して時間外労働等管理規程を作成せず、又は届け出なかった者

  二 第十六条第一項の規定に違反して時間外労働等管理委員会を設置しなかった者

  三 第十七条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による立入り若しくは検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、若しくは同項の規定による質問に対して陳述をせず、若しくは虚偽の陳述をした者

 第二十条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して前条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、同条の刑を科する。

   附 則

 (施行期日)

第一条 この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

 (労働基準法の一部改正に伴う経過措置)

第二条 この法律の施行後第一条の規定による改正後の労働基準法(以下「新労働基準法」という。)第三十五条の規定により使用者(新労働基準法第十条に規定する使用者をいう。以下同じ。)が労働者に対して最初に与えるべき休日については、新労働基準法第三十五条中「直前の休日の翌日」とあるのは「労働基準法等の一部を改正する法律(平成二十六年法律第▼▼▼号)の施行の日」とする。

2 この法律の施行後前項の規定により読み替えて適用する新労働基準法第三十五条の規定により使用者が労働者に対して最初に与えるべき休日については、使用者は、同条の規定の趣旨を踏まえ、この法律の施行前に第一条の規定による改正前の労働基準法(以下「旧労働基準法」という。)第三十五条の規定により労働者に対して与えた休日でこの法律の施行の日(以下「施行日」という。)に最も近いものからの期間を十分に考慮して与えるようにするものとする。

3 使用者は、旧労働基準法第三十五条第二項の規定により四週間を通じ四日以上の休日を与えることとした場合において、これにより与えるべき休日のうち、この法律の施行の際まだ与えていない休日として厚生労働省令で定めるものがあるときは、施行日から起算して四週間以内に、当該与えていない休日の日数に相当する日数の休日を、新労働基準法第三十五条の規定により与える休日とは別の日に与えなければならない。

4 前項の規定により与える休日は、新労働基準法第三十五条に規定する直前の休日には含まれないものとする。

5 第三項の規定に違反した者は、六月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。

6 第三項の違反行為をした者が、事業主のために行為した代理人、使用人その他の従業者である場合においては、事業主に対しても前項の罰金刑を科する。

 (労働時間等の設定の改善に関する特別措置法の一部改正に伴う経過措置)

第三条 この法律の施行の際現に常時十人以上の労働者を事業場において使用する事業主については、第四条の規定による改正後の労働時間等の設定の改善に関する特別措置法第十五条第一項の規定は、施行日から起算して六十日間は、適用しない。

 (罰則に関する経過措置)

第四条 この法律の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。

 (政令への委任)

第五条 この附則に規定するもののほか、この法律の施行に関し必要な経過措置(罰則に関する経過措置を含む。)は、政令で定める。

 (労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律の一部改正)

第六条 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和六十年法律第八十八号)の一部を次のように改正する。

  第四十五条第一項中「及び第七十条」を「、第七十条及び第七十一条の五」に改める。


     理 由

 最近の労働者をめぐる社会経済情勢に鑑み、労働者の保護の強化を図るため、労働時間の管理及び休日に関する規制の強化、労働者の適切な職業選択に資する情報の充実、職場における優位性を不当に利用して労働者に苦痛を与える行為等の防止、時間外労働等管理規程の作成等に関し必要な措置を講ずる必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

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