第一八六回
参第二七号
女性の健康の包括的支援に関する法律案
(目的)
第一条 この法律は、国民の健康の増進に関し、女性の健康についてはその心身の状態が人生の各段階に応じて大きく変化するという特性に着目した対策を行うことが重要であること、女性の就業等の増加、婚姻をめぐる変化、平均寿命の伸長等に伴う女性の健康に関わる問題の変化に応じた対策が必要となっていること、女性の健康に関する調査研究を推進し、その成果の普及及び活用を図る必要があること等に鑑み、女性の健康の一層の増進を図るために女性の健康を生涯にわたり包括的に支援すること(以下「女性の健康の包括的支援」という。)について、基本理念を定め、並びに国及び地方公共団体の責務を明らかにするとともに、女性の健康の包括的支援に関する施策の基本となる事項を定めること等により、女性の健康の包括的支援に関する施策を総合的に推進することを目的とする。
(基本理念)
第二条 女性の健康の包括的支援は、次に掲げる事項を基本理念として行われなければならない。
一 長期的、継続的かつ総合的な視点に立って女性の健康の増進を生涯にわたり支援していくことの重要性を踏まえ、人生の各段階における女性の心身の状態に応じて、適切かつ効果的な支援が行われること。
二 社会的状況等の変化に伴う女性の健康に関わる問題の変化に応じた必要な支援が行われること。
三 女性がその心身の状態、変化等を自覚し、自らの健康の保持増進に主体的に取り組むようにすることを基本とするとともに、女性の健康に係る社会的環境の整備が図られるようにすること。
四 保健、医療、福祉、教育、労働その他の関連施策の有機的な連携が図られ、総合的に女性の健康の包括的支援が行われること。
(国及び地方公共団体の責務)
第三条 国は、前条の基本理念(次項において「基本理念」という。)にのっとり、女性の健康の包括的支援に関する施策を策定し、及び実施する責務を有する。
2 地方公共団体は、基本理念にのっとり、女性の健康の包括的支援に関する施策に関し、国との連携を図りつつ、その地域の状況に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。
(知識の普及等)
第四条 国及び地方公共団体は、女性の健康の包括的支援に関し、広く国民の理解を深めるよう、女性の健康に関する教育活動、広報活動等を通じた知識の普及及び啓発を行うとともに、女性の健康の増進に関する社会的な取組を促進するために必要な施策を講ずるものとする。
(女性の健康週間)
第五条 国民の間に広く女性の健康の包括的支援に関する関心と理解を深めるため、女性の健康週間を設ける。
2 女性の健康週間は、三月三日から同月九日までとする。
3 国及び地方公共団体は、女性の健康週間においてその趣旨にふさわしい行事が実施されるよう努めるものとする。
(女性の心身の特性に応じた保健医療サービスを提供する体制の整備等)
第六条 国及び地方公共団体は、女性がその保健医療に関する多様な需要、特別の需要等に応じた適切な保健医療サービスを受けられるよう、その心身の特性に応じた保健医療サービスを専門的又は総合的に提供する体制の整備、福祉等との連携その他の必要な支援を図るための施策を講ずるものとする。
(出産に必要な医療を提供する施設の確保等)
第七条 国及び地方公共団体は、地域において出産に必要な医療を提供する施設が減少し、不足している状況等に鑑み、安心して子どもを生み、育てることができるよう、当該医療を提供する施設の確保、当該医療を提供する施設等に関する情報の提供その他の必要な支援を図るための施策を講ずるものとする。
(情報の収集提供体制及び相談体制の整備等)
第八条 国及び地方公共団体は、女性の健康の増進に関する情報の収集及び提供を行う体制を整備するために必要な施策を講ずるとともに、女性の健康に関する各種の相談、助言又は指導を受けることができるようにするための体制の整備その他の必要な支援を図るための施策を講ずるものとする。
(女性の健康に関する調査研究の推進等)
第九条 国及び地方公共団体は、女性の健康に影響を及ぼす社会的要因に関する調査研究、女性の心身の特性に応じた保健医療の在り方等に関する調査研究その他の女性の健康に関する調査研究の推進並びにその成果の普及及び活用の促進のために必要な施策を講ずるものとする。
(人材の確保等)
第十条 国及び地方公共団体は、女性の健康の包括的支援に必要な保健、医療、福祉、教育等に係る人材の確保、養成及び資質の向上が図られるよう、必要な施策を講ずるものとする。
(連携の強化)
第十一条 国及び地方公共団体は、医療機関、関係団体その他女性の健康の包括的支援に関係する者と相互に連携を図りながら協力することにより、女性の健康の包括的支援の総合的かつ効果的な推進が図られることに鑑み、これらの者との連携の強化に必要な施策を講ずるものとする。
(国際的な動向及び連携についての配慮)
第十二条 国は、女性の健康の増進及びその支援に係る国際的な動向及び連携について配慮するものとする。
(基本方針等)
第十三条 厚生労働大臣は、第四条から第十一条までの規定により講ずべき施策その他女性の健康の包括的支援に関する施策の推進を図るための基本的な方針(以下「基本方針」という。)を定めるものとする。
2 基本方針は、健康増進法(平成十四年法律第百三号)第七条第一項に規定する基本方針その他の法律の規定による方針、指針又は計画であって保健、医療又は福祉に関する事項を定めるものと調和が保たれたものでなければならない。
3 厚生労働大臣は、基本方針を定め、又はこれを変更しようとするときは、あらかじめ、関係行政機関の長に協議するとともに、女性の健康包括的支援推進会議の意見を聴くものとする。
4 厚生労働大臣は、基本方針を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表するものとする。
第十四条 都道府県は、基本方針を勘案して、かつ、地域の状況に応じて、当該都道府県において第四条から第十一条までの規定により講ずべき施策その他女性の健康の包括的支援に関する施策につき、それらの推進に関する方針その他の基本的事項を定めるよう努めなければならない。
2 前項の方針その他の基本的事項は、健康増進法第八条第一項に規定する都道府県健康増進計画その他の法律の規定による計画であって保健、医療又は福祉に関する事項を定めるものと調和が保たれたものでなければならない。
(施策の実施の状況の公表)
第十五条 政府は、女性の健康の包括的支援に関する施策の実施の状況等について、適時に、かつ、適切な方法により、公表するものとする。
(女性の健康包括的支援調整会議)
第十六条 政府は、厚生労働省、内閣府、文部科学省その他の関係行政機関の職員をもって構成する女性の健康包括的支援調整会議を設け、女性の健康の包括的支援の総合的、効果的かつ効率的な実施を図るための連絡調整を行うものとする。
(女性の健康包括的支援推進会議)
第十七条 厚生労働省に、女性の健康包括的支援推進会議(以下「会議」という。)を置く。
2 会議は、基本方針に関し第十三条第三項に規定する事項を処理する。
3 会議は、前項に定めるもののほか、女性の健康の包括的支援に関する施策に係る重要事項に関し、必要があると認めるときは、厚生労働大臣に対し、意見を述べることができる。
第十八条 会議は、委員二十人以内で組織する。
2 会議の委員は、女性に係る保健医療の業務に従事する者、女性の健康に関係する団体を代表する者及び学識経験のある者のうちから、厚生労働大臣が任命する。
3 会議の委員は、非常勤とする。
4 前三項に定めるもののほか、会議の組織及び運営に関し必要な事項は、政令で定める。
(組織の整備)
第十九条 政府は、女性の健康の包括的支援に関する施策を講ずるにつき、必要な組織の整備を図るものとする。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
(厚生労働省設置法の一部改正)
2 厚生労働省設置法(平成十一年法律第九十七号)の一部を次のように改正する。
第六条第二項中「がん対策推進協議会」を
「 |
女性の健康包括的支援推進会議 |
|
|
がん対策推進協議会 |
」 |
に改める。
第十一条の三を第十一条の四とし、第十一条の二を第十一条の三とし、第十一条の次に次の一条を加える。
(女性の健康包括的支援推進会議)
第十一条の二 女性の健康包括的支援推進会議については、女性の健康の包括的支援に関する法律(平成二十六年法律第▼▼▼号。これに基づく命令を含む。)の定めるところによる。
(アレルギー疾患対策基本法の一部改正)
3 アレルギー疾患対策基本法(平成二十六年法律第▼▼▼号)の一部を次のように改正する。
附則第二条のうち厚生労働省設置法第十一条の三の次に一条を加える改正規定中「第十一条の三」を「第十一条の四」に改め、第十一条の四を第十一条の五とする。
(検討)
4 この法律の規定については、この法律の施行後五年を目途として、この法律の実施状況等を勘案して検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるものとする。
理 由
国民の健康の増進に関し、女性の健康についてはその心身の状態が人生の各段階に応じて大きく変化するという特性に着目した対策を行うことが重要であること、女性の就業等の増加、婚姻をめぐる変化、平均寿命の伸長等に伴う女性の健康に関わる問題の変化に応じた対策が必要となっていること、女性の健康に関する調査研究を推進し、その成果の普及及び活用を図る必要があること等に鑑み、女性の健康の包括的支援に関する施策を総合的に推進するため、女性の健康の包括的支援について、基本理念を定め、並びに国及び地方公共団体の責務を明らかにするとともに、女性の健康の包括的支援に関する施策の基本となる事項を定める等の必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。