衆議院

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第一八六回

衆第三四号

   総合的な行財政改革を推進するための基盤の整備に関する法律案

目次

 第一章 総則(第一条−第四条)

 第二章 総合的な行政改革を推進するための基盤の整備(第五条−第十条)

 第三章 財政健全化に向けた基盤の整備(第十一条−第十四条)

 附則

   第一章 総則

 (目的)

第一条 この法律は、我が国の行政及び財政に対する国民の信頼を速やかに回復し、並びに我が国の厳しい財政状況に対処するために中長期的に持続可能な財政運営を確保することが喫緊の課題であることに鑑み、総合的な行財政改革を推進するための基盤の整備に関し必要な事項を定めることにより、国の責任ある行政運営及び財政運営の確保を図り、もって豊かな国民生活及び活力ある国民経済の実現に寄与することを目的とする。

 (基本理念)

第二条 総合的な行財政改革の推進は、政府及び独立行政法人等の事務及び事業の効率性及び透明性を高め、国民による適切な監視の下で行政運営及び財政運営が行われる体制を整備するとともに、健全な財政を実現するために、歳入を法令に基づいて適切に確保し、及び歳出を削減し、並びに事務及び事業の徹底した効率化を進めることを旨として行われなければならない。

 (国の責務)

第三条 国は、前条に定める基本理念にのっとり、総合的な行財政改革を推進するための基盤の整備を行う責務を有する。

 (地方公共団体の責務)

第四条 地方公共団体は、第二条に定める基本理念にのっとり、総合的な行財政改革を推進するための基盤の整備を行うよう努めなければならない。

   第二章 総合的な行政改革を推進するための基盤の整備

 (行政事業レビューによる事務及び事業の見直し等)

第五条 政府は、各府省が所掌する事務及び事業について、次に掲げる取組(次項において「行政事業レビュー」という。)を実施し、定期的に、その事務及び事業の見直しを行うものとする。

 一 各府省が所掌する事務及び事業に係る予算の執行状況等について、個別の事務及び事業ごとに整理した上で、毎会計年度終了後速やかに必要性並びに経済性、効率性及び有効性の観点その他必要な観点から検証して当該事務及び事業の見直しを行い、その結果を予算の概算要求及び執行に反映させるとともに、それらの結果を公表すること。

 二 前号の検証を行うに当たっては、各府省が所掌する事務及び事業に係る予算の執行状況等を分かりやすい形で公表するとともに、予算の執行、業務の効率化その他行政運営に関して識見を有する者(以下この号において「学識経験者」という。)の意見を聴くこと。この場合において、一定以上の規模の事務及び事業その他事務及び事業のうち適当と認められるものについては、学識経験者を参画させた公開の会合における評価を求めること。

2 行政事業レビューの実施に当たっては、前項第一号の公表、同項第二号の評価その他の関連する手続について、各府省に共通する手続を定め、これを統一的に実施するものとする。

 (調達の効率化並びに調達改善計画の作成及び評価)

第六条 政府は、物品及び役務の調達(以下単に「調達」という。)について、政府全体としてその効率化を推進するため、個別の調達について、経済性、効率性及び有効性の観点その他必要な観点から検証を行うものとし、各府省において次に掲げる措置が講ぜられるよう、必要な措置を講ずるものとする。

 一 調達の効率化を図るため、具体的な目標を定めるとともに、当該目標を達成するために当該府省が取り組むべき事項について定める計画(次号において「調達改善計画」という。)を作成し、随意契約の見直し、各府省が共同して行う調達の推進、競り下げの方法を用いる調達その他調達の効率化に関する事項について評価を行い、当該評価に基づき、調達の改善のために必要な措置を講ずること。

 二 調達改善計画の内容及び実施の状況について、定期的に検証し、その検証の結果を公開するとともに、当該結果に基づき、調達の改善のために必要な措置を講ずること。

 (歳入庁の設置)

第七条 政府は、別に法律で定めるところにより、内閣府の外局として、国税庁が所掌している内国税の賦課及び徴収に関する事務等並びに厚生労働省が所掌している労働者災害補償保険及び雇用保険の保険料の徴収等に関する事務並びに日本年金機構が行っている厚生年金保険及び国民年金の保険料、全国健康保険協会が管掌する健康保険の保険料その他の保険料の徴収等に関する事務を一元的に行う歳入庁を置くために必要な法制上の措置その他の措置を講ずるものとする。

 (一括交付金の交付)

第八条 国は、国と地方公共団体の関係の抜本的な改革が行われるまでの間の措置として、毎年度、地方公共団体に対して、裁量的に使用することができる財源として、一括交付金を交付するものとする。

2 国は、一括交付金の交付に当たっては、地方自治の本旨を尊重するものとし、条件を付し、又はその使途を制限してはならない。

3 地方公共団体は、一括交付金が国民から徴収された税金その他の貴重な財源で賄われるものであることに留意し、一括交付金を公正かつ効率的に使用しなければならない。

4 一括交付金に関する事務は、内閣府において行うものとする。

 (人事評価における行政の事務及び事業の効率化等に関する目標の設定等)

第九条 政府は、政府全体としての行政の事務及び事業の効率化を図り、並びに歳出の無駄の排除を徹底するため、内閣人事局による幹部人事一元化制度の導入も踏まえ、国家公務員の人事評価において、当該効率化及び当該無駄の排除に関する目標の設定を指示する取組を行うよう、標準職務遂行能力(国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)第三十四条第一項第五号に規定する標準職務遂行能力をいう。)の見直しその他必要な措置を講ずるものとする。

 (行政機関の情報システムの改善又は刷新等)

第十条 政府は、行政機関の情報システムに関し、その現況並びに短期及び中長期の見通しを踏まえ、国民の利便性の向上、行政手続の簡素化、行政の事務及び事業の効率化並びに情報システムに係る経費の削減等の観点から、その調達及び運用の改善又は刷新を進めるとともに、当該改善又は刷新に係る効果の定量的な評価及び公表の在り方について検討し、必要な措置を講ずるものとする。

   第三章 財政健全化に向けた基盤の整備

 (会計検査院の機能の強化)

第十一条 会計検査院の機能については、その強化を図るため、次に掲げる措置その他の法制上の措置が講ぜられるものとする。

 一 実地の検査をした結果等の検査報告への掲記の義務付け

 二 検査報告に掲記された不当事項への対処に関する検査制度の創設及び懲戒の処分を要求することができる場合の拡大

 三 会計検査院による検察庁への告発制度の創設

 (公会計の導入)

第十二条 政府は、企業会計の慣行を参考とした複式簿記及び発生主義による国の財務書類等の作成並びに当該財務書類等の国会への提出等による財務情報の開示等を行うことができるよう、必要な法制上の措置を講ずるものとする。

 (国の財政の監視機能の強化)

第十三条 国の財政を監視する機能については、その強化を図るため、政策の評価その他の行政改革に資する施策を担当する総務省の部局その他の既存の行政改革を所掌する組織との整理が行われた上で、次に掲げる機能を担う組織を創設する等必要な法制上の措置が講ぜられるものとする。

 一 政府が定める中期的な財政運営の目標と内外の経済及び財政状況との整合性に関する検証並びに国の財政の健全化の推進に関する計画の実施状況の監視

 二 正確性、効率性、適正性及び透明性の観点その他必要な観点からの政府の事務及び事業に関する監視、調査及び評価

 三 政府に設けられた基金その他の国の保有する財産並びに国の出資に係る基金及び投資又は融資を行う機関に対する監視

 (予算編成の在り方等の見直し)

第十四条 政府は、補正予算を含む予算の編成に関し、国の責任ある財政運営の確保等の観点からその在り方を見直すとともに、国民に分かりやすい形で、かつ、国民が利用し、又は活用しやすい方法により情報を提供するための方策を検討し、必要な措置を講ずるものとする。

   附 則

 (施行期日)

1 この法律は、公布の日から施行する。

 (検討)

2 衆議院の決算行政監視委員会並びに参議院の決算委員会及び行政監視委員会における審議の在り方については、一層の活性化が図られるよう、政府による決算の国会への提出の早期化、国会において歳出の経済性、効率性及び有効性の観点その他必要な観点から各府省が所掌する事務及び事業の検証を行う行政監視に関する仕組みの充実その他必要な措置が講ぜられるものとする。

3 政府は、第七条の規定により歳入庁を設置するに当たり、労働保険料及び年金保険料等の徴収等に関する事務と内国税の賦課及び徴収に関する事務との一体化により、実効性及び効率性が向上されるよう検討を行い、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。

4 政府は、第八条第一項の趣旨を踏まえ、国と地方公共団体の役割分担の抜本的な見直し並びに事務及び事業の移譲を進めるとともに、国の行政機関の地方支分部局の見直し及び広域行政制度の在り方について道州制の導入も含めた検討を速やかに行い、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。


     理 由

 我が国の行政及び財政に対する国民の信頼を速やかに回復し、並びに我が国の厳しい財政状況に対処するために中長期的に持続可能な財政運営を確保することが喫緊の課題であることに鑑み、国の責任ある行政運営及び財政運営の確保を図るため、総合的な行財政改革を推進するための基盤の整備に関し必要な事項を定める必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

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