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第一八九回

衆第二二号

   労働者の職務に応じた待遇の確保等のための施策の推進に関する法律案

 (目的)

第一条 この法律は、近年、雇用形態が多様化する中で、雇用形態により労働者の待遇や雇用の安定性について格差が存在し、それが社会における格差の固定化につながることが懸念されていることに鑑み、それらの状況を是正するため、労働者の職務に応じた待遇の確保等のための施策に関し、基本理念を定め、国の責務等を明らかにするとともに、労働者の雇用形態による職務及び待遇の相違の実態、雇用形態の転換の状況等に関する調査研究等について定めることにより、労働者の職務に応じた待遇の確保等のための施策を重点的に推進し、もって労働者がその雇用形態にかかわらず充実した職業生活を営むことができる社会の実現に資することを目的とする。

 (基本理念)

第二条 労働者の職務に応じた待遇の確保等のための施策は、次に掲げる事項を旨として行われなければならない。

 一 労働者が、その雇用形態にかかわらずその従事する職務に応じた待遇を受けることができるようにすること。

 二 正規労働者(期間の定めのない労働契約を締結している労働者(派遣労働者(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和六十年法律第八十八号)第二条第二号に規定する派遣労働者をいう。第六条第二項において同じ。)を除く。)であって一週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される他の労働者に比して短くないものをいう。以下同じ。)以外の労働者が正規労働者となることを含め、労働者がその意欲及び能力に応じて自らの希望する雇用形態により就労する機会が与えられるようにすること。

 三 労働者が主体的に職業生活設計(職業能力開発促進法(昭和四十四年法律第六十四号)第二条第四項に規定する職業生活設計をいう。次条第三項及び第八条において同じ。)を行い、自らの選択に応じ充実した職業生活を営むことができるようにすること。

 (国の責務等)

第三条 国は、前条の基本理念にのっとり、労働者の職務に応じた待遇の確保等のための施策を策定し、及び実施する責務を有する。

2 事業主は、国が実施する労働者の職務に応じた待遇の確保等のための施策に協力するよう努めるものとする。

3 労働者は、職業生活設計を行うことの重要性について理解を深めるとともに、主体的にこれを行うよう努めるものとする。

 (法制上の措置等)

第四条 政府は、労働者の職務に応じた待遇の確保等のための施策を実施するため、必要な法制上、財政上又は税制上の措置その他の措置を講ずるものとする。

 (調査研究)

第五条 国は、次に掲げる事項について調査研究を行うものとする。

 一 労働者の雇用形態の実態

 二 労働者の雇用形態による職務の相違及び賃金、福利厚生その他の待遇の相違の実態

 三 労働者の雇用形態の転換の状況

 四 職場における雇用形態による職務の分担及び管理的地位への登用の状況

2 国は、前項第三号に掲げる事項について調査研究を行うに当たっては、正規労働者以外の労働者が正規労働者への転換を希望する場合における処遇その他の取扱いの実態、当該転換を妨げている要因等について重点的にこれを行うものとする。

 (職務に応じた待遇の確保)

第六条 国は、雇用形態の異なる労働者についてもその待遇の相違が不合理なものとならないようにするため、事業主が行う正規労働者及び正規労働者以外の労働者の待遇に係る制度の共通化の推進その他の必要な施策を講ずるものとする。

2 政府は、派遣労働者の置かれている状況に鑑み、派遣労働者について、派遣元事業主(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律第二十三条第一項に規定する派遣元事業主をいう。)及び派遣先(同法第三十条の二第一項に規定する派遣先をいう。以下この項において同じ。)に対し派遣労働者の待遇についての規制等の措置を講ずることにより、派遣先に雇用される労働者との間においてその職務に応じた待遇の均等の実現を図るものとし、このために必要となる法制上の措置については、この法律の施行後一年以内に講ずるものとする。

 (雇用環境の整備)

第七条 国は、労働者がその意欲及び能力に応じて自らの希望する雇用形態により就労することが不当に妨げられることのないよう、労働者の採用及び管理的地位への登用等の雇用管理の方法の多様化の推進その他雇用環境の整備のために必要な施策を講ずるものとする。

2 国は、前項の施策を講ずるに当たっては、雇用形態により労働者の待遇や雇用の安定性について格差が存在する現状を踏まえ、正規労働者以外の労働者から正規労働者への転換が促進されるよう、必要な配慮を行うものとする。

 (教育の推進)

第八条 国は、国民が職業生活設計の重要性について理解を深めるとともに、労働者が主体的に職業生活設計を行い、自らの選択に応じ充実した職業生活を営むことができるよう、職業生活設計についての教育の推進その他必要な施策を講ずるものとする。

   附 則

 この法律は、公布の日から施行する。


     理 由

 近年、雇用形態が多様化する中で、雇用形態により労働者の待遇や雇用の安定性について格差が存在し、それが社会における格差の固定化につながることが懸念されていることに鑑み、それらの状況を是正するため、労働者の職務に応じた待遇の確保等のための施策に関し、基本理念を定め、国の責務等を明らかにするとともに、労働者の雇用形態による職務及び待遇の相違の実態、雇用形態の転換の状況等に関する調査研究等について定めることにより、労働者の職務に応じた待遇の確保等のための施策を重点的に推進する必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

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