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第一八九回

参第二号

   臨床研究の実施の適正化等に関する施策の推進に関する法律案

 (目的)

第一条 この法律は、我が国における臨床研究について、その適正な実施が強く求められている状況にあることに鑑み、あわせてそれが医療の発展に不可欠であり、医療の需要に対応した臨床研究が積極的に行われる必要があることを踏まえ、臨床研究の実施の適正化(臨床研究の促進を含む。以下「臨床研究の実施の適正化等」という。)に関し、基本理念を定め、及び国の責務を明らかにするとともに、施策の策定に係る基本的な方針を定めること等により、臨床研究の実施の適正化等に関する施策を総合的に推進し、もって臨床研究に対する信頼の確保とその健全な発展を図ることを目的とする。

 (基本理念)

第二条 臨床研究の実施の適正化等に関する施策は、次に掲げる事項を基本理念として行われなければならない。

 一 臨床研究の対象となる者(以下「研究対象者」という。)の生命、健康及び人権が十分に尊重されるようにすること。

 二 臨床研究に対する信頼が損なわれることとならないよう、臨床研究の公正性及び透明性が十分に確保されるようにすること。

 三 国、大学その他の研究機関、医療機関及び関連事業者の連携の確保及び強化により、臨床研究の実施の適正化等に関する施策が円滑かつ効果的に推進されるようにすること。

 四 臨床研究に係る国際的動向に配慮すること。

 (国の責務)

第三条 国は、前条の基本理念にのっとり、臨床研究の実施の適正化等に関する施策を策定し、及び実施する責務を有する。

 (法制上の措置等)

第四条 政府は、臨床研究の実施の適正化等に関する施策を実施するため必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講じなければならない。

 (研究計画の策定、審査等)

第五条 臨床研究の実施の適正化に関する施策の策定に当たっては、臨床研究(治験に該当するもの及び他の法令により治験の基準と同等の基準が定められているものを除く。以下この条から第十条までにおいて同じ。)に係る業務を統括する者(以下「研究責任者」という。)による臨床研究に関する計画(以下「研究計画」という。)の策定、医学又は法律学の専門家その他の学識経験者等から構成される臨床研究に関する委員会(以下「臨床研究委員会」という。)による研究計画の審査等その他臨床研究の実施の適否について適切な判断が行われるようにするための手続の実施に関し必要な措置が講じられなければならない。

2 前項の措置を講ずるに当たっては、臨床研究委員会について、地域ごとに又は臨床研究の分野等に応じてその集約化を図ることその他その機能を確保するための方策に関し検討するとともに、その審査等の業務が適切に実施されるようにするための体制の整備に関し必要な支援が行われるものとする。

 (研究対象者に対する適切な説明等)

第六条 臨床研究の実施の適正化に関する施策の策定に当たっては、臨床研究に携わる医師等が研究対象者に対して当該臨床研究について適切な説明を行うことの義務付けその他臨床研究に携わる医師等が当該臨床研究について研究対象者の十分な理解を得るようにするために必要な措置が講じられなければならない。

 (研究対象者に重大な有害事象が生じた場合等における措置)

第七条 臨床研究の実施の適正化に関する施策の策定に当たっては、臨床研究の実施により研究対象者に重大な有害事象が生じた場合において、当該臨床研究を実施している機関の長による当該臨床研究に係る研究計画の審査等を行った臨床研究委員会への迅速な報告並びに当該臨床研究委員会による当該臨床研究の実施の適否及び講ずべき措置についての検討が行われるようにするための措置その他関係者が迅速かつ適切に対応することができるようにするために必要な措置が講じられなければならない。

2 臨床研究の実施の適正化に関する施策の策定に当たっては、前項の場合であって、かつ、当該臨床研究の実施により保健衛生上の危害が発生し、又は拡大するおそれがある場合において、これを防止するために必要な措置を講ずることができるよう、当該重大な有害事象、当該臨床研究に係る臨床研究委員会による講ずべき措置についての検討の結果、当該臨床研究を実施している機関において講じられた措置の概要等を国が迅速かつ適切に把握することができるようにするために必要な措置が講じられなければならない。

3 臨床研究の実施の適正化に関する施策の策定に当たっては、臨床研究の実施により研究対象者に健康被害が生じた場合において当該臨床研究を実施している機関の長等が当該研究対象者に対して適切な補償を行うことを確保するために必要な措置が講じられなければならない。

 (臨床研究の公正性及び透明性の確保を図るための措置)

第八条 臨床研究の実施の適正化に関する施策の策定に当たっては、研究対象者の個人情報、研究の独創性及び知的財産権の保護に配慮しつつ、研究責任者による臨床研究に関する記録の作成及び保存並びに臨床研究の実施状況の公開のための措置、事業者からの臨床研究に携わる医師等への利益の供与に関する情報の開示が行われるようにするための措置、臨床研究に必要な資金を提供する者と臨床研究に携わる医師等との利益が相反する事項を研究責任者が適切に管理するようにするための措置その他臨床研究の公正性及び透明性の確保を図るために必要な措置が講じられなければならない。

 (臨床研究の実施に関する基準の策定等)

第九条 臨床研究の実施の適正化に関する施策の策定に当たっては、第五条から前条までの規定により講じられる措置のほか、臨床研究の実施に関する状況、臨床研究の実施の適正化に関する施策に係る国際的動向等に配慮しつつ、臨床研究の実施に関する基準を策定することその他の臨床研究の適正な実施を図るために必要な措置が講じられなければならない。

 (実効性の確保を図るための措置)

第十条 臨床研究の実施の適正化に関する施策の策定に当たっては、その適正な実施を適切かつ効果的に確保するため法令による規制を行う必要がある臨床研究については、第五条から前条までの規定により講ずる措置の実効性の確保を図るため、これらの措置に基づき臨床研究が適正に実施されていないと認められる場合における国による関係者に対する必要な調査又は研究責任者等に対する当該臨床研究の適正な実施を図るための必要な指導若しくは命令若しくは当該命令に従わなかった場合の制裁等を適確に行うことができるようにするために必要な措置が講じられなければならない。

 (人材の確保等)

第十一条 臨床研究の実施の適正化等に関する施策の策定に当たっては、臨床研究の適正な実施等に必要な人材の確保、養成及び資質の向上が図られるよう、医学等に関する大学及び大学院における教育の充実に資するための措置、臨床研究に携わる関係者に対して必要な研修が行われるようにするための措置その他の必要な措置が講じられなければならない。

 (関係者の連携協力)

第十二条 臨床研究の実施の適正化等に関する施策の策定に当たっては、臨床研究の促進に関する施策の円滑かつ効果的な実施を図るため、関係行政機関の職員、大学その他の研究機関又は医療機関において臨床研究に携わる医師等、研究対象者、医薬品、医療機器等の製造販売等を行う事業者等による協議の場を設ける等、関係者の連携協力に関し必要な措置が講じられなければならない。

 (臨床研究を実施するための資金の確保)

第十三条 臨床研究の実施の適正化等に関する施策の策定に当たっては、関連事業者その他の関係者の協力が得られるようにするための環境の整備に配意しつつ、臨床研究を実施するための資金の確保が図られるよう必要な措置が講じられなければならない。

 (組織の整備)

第十四条 政府は、臨床研究の実施の適正化等に関する施策を講ずるにつき、必要な組織の整備を図るものとする。

   附 則

 この法律は、公布の日から施行する。


     理 由

 我が国における臨床研究について、その適正な実施が強く求められている状況にあることに鑑み、あわせてそれが医療の発展に不可欠であり、医療の需要に対応した臨床研究が積極的に行われる必要があることを踏まえ、臨床研究の実施の適正化等に関する施策を総合的に推進し、もって臨床研究に対する信頼の確保とその健全な発展を図るため、臨床研究の実施の適正化等に関し、基本理念を定め、及び国の責務を明らかにするとともに、施策の策定に係る基本的な方針を定める等の必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

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