衆議院

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第一九〇回

衆第五九号

   チーム学校運営の推進等に関する法律案

 (目的)

第一条 この法律は、家庭及び地域を取り巻く環境の変化に伴い学校が直面する諸課題が複雑化している状況に鑑み、学校の教職員等がそれぞれの専門的な知識又は技能を活用しつつ、チームとして連携し、及び協働して行う学校運営(以下「チーム学校運営」という。)を推進するための施策、学校の教職員等と学校の関係者等との連携及び協働を推進するための施策その他の学校が直面する諸課題に対応するために必要な施策(以下「チーム学校運営推進等施策」という。)に関し、基本理念を定め、並びに国及び地方公共団体の責務等を明らかにするとともに、チーム学校運営推進等施策の基本となる事項を定めることにより、チーム学校運営推進等施策を総合的かつ効果的に推進し、もって学校教育の水準の維持向上を図るとともに、学校の関係者等が児童等に対する教育に自主的かつ積極的に取り組む地域社会の実現に寄与することを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において「学校」とは、学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第一条に規定する小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校及び特別支援学校(幼稚部を除く。)をいう。

2 この法律において「専門的知識等を有する者」とは、学校における教育活動の充実のための専門的な知識又は技能を有する者であって校長の監督を受けるもの(学校の教職員を除く。)をいう。

3 この法律において「学校の教職員等」とは、学校の教職員及び専門的知識等を有する者をいう。

4 この法律において「児童等」とは、学校に在籍する児童又は生徒をいう。

5 この法律において「学校の関係者等」とは、児童等の保護者(学校教育法第十六条に規定する保護者をいう。第十七条において同じ。)、地域住民、児童等に対する教育に関する活動を行う民間の団体その他の学校の関係者並びに医療機関、当該学校の所在する地域の児童相談所及び保健所、当該地域を管轄する警察署その他の関係機関をいう。

 (基本理念)

第三条 チーム学校運営推進等施策は、次に掲げる事項を基本理念として行われなければならない。

 一 チーム学校運営において中心的な役割を果たす学校の教職員と専門的知識等を有する者とが、校長の監督の下に適切に校務を分担して、それぞれの専門的な知識又は技能を十分に発揮して個々の児童等の状況に応じたきめ細かな指導を行うとともに、これらの者が連携し、及び協働することにより、児童等に対する教育の充実が図られるようにすること。

 二 学校運営に社会を構成する多様な主体の協力を得ることが、学校が直面する諸課題に対応するとともに、児童等に対する教育の充実を図るため特に重要であるという認識の下に、学校の教職員等と学校の関係者等との連携及び協働を促進すること。

 三 学校の関係者等が学校の教職員等と連携し、及び協働することを通じて、児童等に対する教育におけるそれぞれの役割と責任を自覚し、自ら学校をめぐる課題に取り組む意欲を高めるようにすることにより、全ての学校の関係者等が児童等に対する教育に自主的かつ積極的に取り組む地域社会の実現に寄与すること。

 (国の責務)

第四条 国は、前条の基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、チーム学校運営推進等施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。

 (地方公共団体の責務)

第五条 地方公共団体は、基本理念にのっとり、チーム学校運営推進等施策に関し、国と協力しつつ、その地域の状況に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。

 (学校の教職員等の努力)

第六条 学校の教職員等は、基本理念にのっとり、他の学校の教職員等及び学校の関係者等との連携及び協働を図りつつ、チーム学校運営推進等施策を活用すること等により、学校運営の改善を積極的に進めるよう努めるものとする。

 (法制上の措置等)

第七条 国は、チーム学校運営推進等施策を実施するため必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講ずるものとする。

 (私立の学校の自主性の尊重)

第八条 国及び地方公共団体は、チーム学校運営推進等施策で私立の学校に係るものを策定し、及びこれを実施する場合においては、私立の学校の特性に鑑み、その自主性を尊重しなければならない。

 (教員の指導体制の充実)

第九条 国及び地方公共団体は、チーム学校運営により、学校の教職員の適切な役割分担が確保され、個々の児童等の状況に応じたきめ細かな指導の一層の充実、障害のある児童等、日本語に通じない児童等及び相当の期間学校を欠席している児童等への支援等、いじめの防止等(いじめ防止対策推進法(平成二十五年法律第七十一号)第一条に規定するいじめの防止等をいう。)その他の学校が直面する諸課題への対応が図られるよう、学習指導、生徒指導等に係る体制の充実のための教員の配置、他の学校の教職員等との適切な連携及び協働を図るための教員に対する研修の充実その他の児童等に対する指導体制の充実のために必要な施策を講ずるよう努めるものとする。

 (専門的知識等を有する者の確保等)

第十条 国及び地方公共団体は、チーム学校運営により、学校の教職員等の適切な役割分担が確保され、個々の児童等の状況に応じた助言、指導その他の援助が専門的な知識又は技能に基づき適切に行われるよう、心理、福祉等に関する専門的知識を有する者その他の専門的知識等を有する者の確保、これらの者に対する研修の充実その他の必要な施策を講ずるよう努めるものとする。

 (事務職員の配置等)

第十一条 国及び地方公共団体は、チーム学校運営において、事務職員がより重要な役割を担うことにより教育活動の充実に資することとなるよう、事務職員と事務職員以外の学校の教職員が分担すべき役割を見直すとともに、事務職員の配置、事務職員に対する研修の充実その他の必要な施策を講ずるよう努めるものとする。

 (校長の職務を補佐する体制の整備等)

第十二条 国及び地方公共団体は、チーム学校運営が校長の監督の下に適切に行われるよう、校長の職務を補佐する体制の整備、校長及び校長の職務を補佐する者に対する研修の充実その他の必要な施策を講ずるよう努めるものとする。

 (情報通信技術を活用した事務の簡素化等)

第十三条 国及び地方公共団体は、情報通信技術を活用した事務の簡素化及び効率化並びに学校の教職員等の間の情報の共有その他のチーム学校運営を円滑に行うための取組を促進するために必要な施策を講ずるよう努めるものとする。

 (学校の教職員等と学校の関係者等との連携協働体制の整備)

第十四条 国及び地方公共団体は、学校の教職員等と学校の関係者等との継続的かつ安定的な連携協働体制の整備を図るため、学校の関係者等との連携及び協働の推進を担当する学校の教職員の配置並びにこれらの学校の教職員に対する研修の充実に努めるとともに、学校の教職員等と連携し、及び協働する学校の関係者等の確保並びにこれらの学校の関係者等の間の連携及び協働の促進を図るための取組に対する支援その他の必要な施策を講ずるよう努めるものとする。

 (学校の関係者等の理解の増進)

第十五条 国及び地方公共団体は、学校の教職員等と学校の関係者等との連携及び協働を推進するため、これらの者の間の学校運営の方針その他の学校運営に関する情報の共有、これらの者の間の連携及び協働の状況に関する情報の積極的な提供、学校の関係者等の理解及び協力を得るための啓発その他の学校の関係者等の理解の増進を図るための取組に対する支援その他の必要な施策を講ずるよう努めるものとする。

 (学校施設の整備等)

第十六条 国及び地方公共団体は、学校の教職員等と多様な学校の関係者等との連携及び協働を推進するため、学校の教職員等と学校の関係者等との交流の促進、高齢者、障害者その他学校の教職員等との連携及び協働に関し特に配慮を要する学校の関係者等の利便性の向上等を図るための学校施設の整備その他の必要な施策を講ずるよう努めるものとする。

 (学校運営協議会の設置の促進等)

第十七条 国及び地方公共団体は、学校運営が学校の教職員等と児童等の保護者、地域住民その他の学校の関係者との連携及び協働の下に行われるよう、学校運営協議会の設置の促進、これらの学校の関係者に対する学校運営協議会に関する理解を深めるための普及啓発その他の必要な施策を講ずるよう努めるものとする。

 (学校の関係者等による教育活動の促進に係る取組への支援)

第十八条 国及び地方公共団体は、学校の関係者等が児童等に対する教育活動に自主的かつ積極的に取り組むこととなるよう、学校の関係者等に対する当該教育活動に資する学習の機会の提供等学校の関係者等による児童等に対する教育活動の促進を図るための取組に対する支援その他の必要な施策を講ずるよう努めるものとする。

 (校長に対する権限の付与等)

第十九条 国及び地方公共団体は、校長がチーム学校運営並びに学校の教職員等と学校の関係者等との連携及び協働の推進を円滑かつ適切に行うことができるよう、校長に対する必要な権限の付与その他の必要な施策を講ずるよう努めるものとする。

 (大学等との連携)

第二十条 国及び地方公共団体は、第九条から第十二条まで及び第十四条に規定する研修等の施策を講ずるに当たっては、大学その他の学校の教職員等の養成等に関係する機関との連携に努めるものとする。

 (教育を担う優れた人材の確保)

第二十一条 国及び地方公共団体は、学校における教育を担う優れた人材の確保を図るため、学校の教職員等の処遇の改善その他の必要な施策を講ずるよう努めるものとする。

   附 則

 この法律は、公布の日から施行する。


     理 由

 家庭及び地域を取り巻く環境の変化に伴い学校が直面する諸課題が複雑化している状況に鑑み、チーム学校運営推進等施策を総合的かつ効果的に推進するため、チーム学校運営推進等施策に関し、基本理念を定め、並びに国及び地方公共団体の責務等を明らかにするとともに、チーム学校運営推進等施策の基本となる事項を定める必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

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