衆議院

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第一九七回

衆第一一号

   公文書等の管理の適正化の推進に関する法律案

目次

 第一章 総則(第一条−第五条)

 第二章 基本方針(第六条−第九条)

 第三章 公文書等管理審議会(第十条−第二十条)

 附則

   第一章 総則

 (目的)

第一条 この法律は、公文書等(公文書等の管理に関する法律(平成二十一年法律第六十六号。以下「公文書管理法」という。)第二条第八項に規定する公文書等をいう。以下同じ。)の管理の適正化の推進について、その基本理念を定め、国の責務を明らかにし、及び基本方針その他の基本となる事項を定めるとともに、公文書等管理審議会を設置することにより、これを総合的かつ集中的に行うことを目的とする。

 (基本理念)

第二条 公文書等の管理の適正化の推進は、国及び独立行政法人等(公文書管理法第二条第二項に規定する独立行政法人等をいう。以下この項及び第六条において同じ。)の諸活動や歴史的事実の記録である公文書等が、健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源として、主権者である国民が主体的に利用し得るものであることに鑑み、国民主権の理念にのっとり、行政が適正かつ効率的に運営されるようにするとともに、国及び独立行政法人等の有するその諸活動を現在及び将来の国民に正確かつ確実に説明する責務が全うされるようにすることを基本として行われるものとする。

2 公文書等の管理の適正化の推進は、公文書等に係る虚偽の記載又は記録、公文書等の改ざん、隠蔽及び不適正な廃棄その他公文書等の不適切な取扱いを防止するための措置が実効的に講じられるようにすることを基本として行われるものとする。

 (国の責務)

第三条 国は、前条の基本理念にのっとり、公文書等の管理の適正化を推進する責務を有する。

 (法制上の措置等)

第四条 政府は、次章に定める基本方針に基づき、公文書等の管理の適正化を推進するものとし、このために必要な措置を講ずるものとする。この場合において、必要となる法制上の措置については、この法律の施行後二年以内を目途として講じなければならない。

2 内閣総理大臣は、前項に規定する法制上の措置を講じようとするときは、あらかじめ、公文書等管理審議会の意見を聴かなければならない。

 (国会への報告等)

第五条 政府は、この法律の施行後一年を目途として、前条第一項に規定する法制上の措置に係る検討の状況に関する報告書を作成し、これを国会に提出しなければならない。

2 政府は、各議院又は各議院の委員会から審査又は調査のため、前条第一項に規定する法制上の措置に係る検討の状況に関し必要な報告又は記録の提出が求められたときは、直ちに、その求めに応じなければならない。

3 衆議院にあっては四十人以上、参議院にあっては二十人以上の議員は、連名で、その議員の属する議院の委員会が前項の求めをするよう要請する書面を、議長に提出することができる。

4 各議院の議長は、前項の書面の提出を受けたときは、これをその議院の適当の委員会に送付する。

5 各議院の委員会は、前項の規定による書面の送付を受けたときは、第二項の求めをするものとする。ただし、当該送付を受けた委員会において同項の求めをしないことをその理由を明らかにして議決したときは、この限りでない。

   第二章 基本方針

 (行政機関等の職員が作成しなければならない文書の範囲等)

第六条 政府は、国及び独立行政法人等の諸活動について、国民の的確な理解を得、及び責任の所在を明確化することができるよう、当該諸活動に関する情報が記録された文書(図画及び電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られた記録をいう。第十六条第三項において同じ。)を含む。以下この条において同じ。)が幅広く作成され、及び保存されなければならないとの観点から、次に掲げる記録の取扱いを含め、行政機関(公文書管理法第二条第一項に規定する行政機関をいう。次条第二項第二号及び第三項において同じ。)及び独立行政法人等(以下この条及び第十五条において「行政機関等」という。)の職員が作成しなければならない文書の範囲、行政文書(公文書管理法第二条第四項に規定する行政文書をいう。)及び法人文書(同条第五項に規定する法人文書をいう。)の範囲等について検討を加え、その結果に基づき、必要な措置を講ずるものとする。

 一 行政機関等の職員による自己の執務の便宜のための記録及び決裁を経ていない立案の段階における記録

 二 行政機関等の内部又は相互間における審議、検討又は協議に関する記録

 三 行政機関等の職員が行政機関等の職員以外の者と接触をした場合における当該接触に関する記録

 四 行政機関等において意思決定に至らなかった事案に係る過程及びその内容に関する記録

 (公文書記録管理院の設置)

第七条 政府は、別に法律で定めるところにより、内閣の所轄の下に公文書記録管理院(次項に規定する事務を行う行政組織をいう。同項及び第三項において同じ。)を置くために必要な措置を講ずるものとする。

2 公文書記録管理院は、公文書等の管理の適正化の推進等に関し、次に掲げる事務をつかさどるものとし、当該事務の適正かつ確実な遂行が確保されるよう編成するものとする。

 一 公文書等の管理に関する基本的な政策の企画及び立案並びに推進に関する事務

 二 各行政機関の公文書等の管理に関する業務の実施状況の評価及び監視に関する事務

 三 歴史公文書等(公文書管理法第二条第六項に規定する歴史公文書等をいう。次号において同じ。)の保存及び利用に関する事務

 四 歴史公文書等に関連する調査研究の実施に関する事務

 五 その他公文書等の管理等に関し必要な事務

3 公文書記録管理院は、行政機関の長に対する公文書等の管理についての勧告、公文書管理法及びこれに基づく命令の制定又は改廃に関する意見の申出その他公文書等の管理の適正化を図るために必要な措置を講ずることができるものとする。

 (公文書等の管理に関する専門的知識を有する人材の育成及び確保)

第八条 政府は、公文書等の管理に関する専門的知識を有する人材の育成及び確保を図るため、公文書等の管理に関する教育、研究及び普及の事業の充実その他必要な措置を講ずるものとする。

 (公文書等の適正な管理を図るための規制)

第九条 政府は、公文書等の適正な管理を図るための規制の在り方について検討を加え、その結果に基づき、必要な措置を講ずるものとする。

   第三章 公文書等管理審議会

 (設置)

第十条 内閣府に、公文書等管理審議会(以下「審議会」という。)を置く。

 (所掌事務)

第十一条 審議会は、次に掲げる事務をつかさどる。

 一 第四条第一項に規定する法制上の措置に関し、同条第二項に規定する事項を処理すること。

 二 前号に規定する事項に関し、調査審議し、必要があると認めるときは、内閣総理大臣に対し、意見を述べること。

 (組織)

第十二条 審議会は、会長及び委員九人以内で組織する。

2 委員は、非常勤とする。

3 会長は、会務を総理し、審議会を代表する。

4 会長に事故があるときは、あらかじめその指名する委員が、その職務を代理する。

 (会長及び委員)

第十三条 会長及び委員は、公文書等の管理に関し公正かつ中立な判断をすることができる学識経験者のうちから、両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命する。

2 前項の場合において、国会の閉会又は衆議院の解散のために両議院の同意を得ることができないときは、内閣総理大臣は、同項の規定にかかわらず、同項に定める資格を有する者のうちから、会長又は委員を任命することができる。

3 前項の場合においては、任命後最初の国会で両議院の事後の承認を得なければならない。この場合において、両議院の事後の承認が得られないときは、内閣総理大臣は、直ちにその会長又は委員を罷免しなければならない。

4 内閣総理大臣は、会長若しくは委員が破産手続開始の決定を受け、又は禁錮以上の刑に処せられたときは、その会長又は委員を罷免しなければならない。

5 内閣総理大臣は、会長若しくは委員が心身の故障のため職務の執行ができないと認めるとき又は会長若しくは委員に職務上の義務違反その他会長若しくは委員たるに適しない非行があると認めるときは、両議院の同意を得て、その会長又は委員を罷免することができる。

6 会長及び委員は、職務上知ることができた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も同様とする。

7 会長及び委員は、在任中、政党その他の政治的団体の役員となり、又は積極的に政治運動をしてはならない。

8 会長は、在任中、内閣総理大臣の許可のある場合を除くほか、報酬を得て他の職務に従事し、又は営利事業を営み、その他金銭上の利益を目的とする業務を行ってはならない。

 (会長及び委員の給与)

第十四条 会長及び委員の給与は、別に法律で定める。

 (資料提出その他の協力)

第十五条 審議会は、その所掌事務を遂行するために必要があると認めるときは、行政機関等に対して、資料の提出、意見の開陳、説明その他必要な協力を求めることができる。

2 審議会は、その所掌事務を遂行するため特に必要があると認めるときは、行政機関等以外の者に対しても、必要な協力を依頼することができる。

 (審議の公開等)

第十六条 審議会の調査審議は、公開して行う。

2 審議会の議事については、内閣府令で定めるところにより、議事録を作成し、議事録が書面をもって作成されているときは、出席した会長及び委員は、これに署名し、又は記名押印しなければならない。

3 前項の議事録が電磁的記録をもって作成されている場合における当該電磁的記録に記録された事項については、内閣府令で定める署名又は記名押印に代わる措置をとらなければならない。

4 審議会は、第一項の調査審議に用いられた資料及び第二項の議事録を公表しなければならない。

 (事務局)

第十七条 審議会の事務を処理させるため、審議会に事務局を置く。

2 事務局に、事務局長(関係のある他の職を占める者をもって充てられるものとする。)のほか、所要の職員を置く。

3 事務局長は、会長の命を受けて、局務を掌理する。

 (設置期限)

第十八条 審議会は、その設置の日から起算して二年を経過する日まで置かれるものとする。

 (主任の大臣)

第十九条 審議会に係る事項については、内閣法(昭和二十二年法律第五号)にいう主任の大臣は、内閣総理大臣とする。

 (政令への委任)

第二十条 この法律に定めるもののほか、審議会に関し必要な事項は、政令で定める。

   附 則

 (施行期日)

第一条 この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、第十三条第一項中両議院の同意を得ることに関する部分は、公布の日から施行する。

 (検討)

第二条 政府は、国又は地方公共団体が資本金の二分の一以上を出資している法人の文書の管理の在り方について、公文書管理法の趣旨、当該法人の業務の目的及び性質等を踏まえて検討を加え、その結果に基づき、必要な措置を講ずるものとする。

 (特別職の職員の給与に関する法律の一部改正)

第三条 特別職の職員の給与に関する法律(昭和二十四年法律第二百五十二号)の一部を次のように改正する。

  第一条第十七号の次に次の一号を加える。

  十七の二 公文書等管理審議会会長

  第一条第五十二号の次に次の一号を加える。

  五十二の二 公文書等管理審議会委員

  別表第一官職名の欄中「総合科学技術・イノベーション会議の常勤の議員」を

総合科学技術・イノベーション会議の常勤の議員

 

 

公文書等管理審議会会長

 に改める。

 (内閣府設置法の一部改正)

第四条 内閣府設置法(平成十一年法律第八十九号)の一部を次のように改正する。

  附則第四条に次の一項を加える。

 3 公文書等の管理の適正化の推進に関する法律(平成三十年法律第▼▼▼号)第十八条に規定する期限までの間、同法の定めるところにより内閣府に置かれる公文書等管理審議会は、本府に置く。


     理 由

 公文書等の管理の適正化の推進を総合的かつ集中的に行うため、公文書等の管理の適正化の推進について、その基本理念を定め、国の責務を明らかにし、及び基本方針その他の基本となる事項を定めるとともに、公文書等管理審議会を設置する必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。


   本案施行に要する経費

 本案施行に要する経費としては、平成三十一年度において約三千万円の見込みである。

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