第二〇一回
衆第九号
中小企業者等の事業用不動産に係る賃料相当額の支払猶予及びその負担軽減に関する法律案
(目的)
第一条 この法律は、新型コロナウイルス感染症(新型インフルエンザ等対策特別措置法(平成二十四年法律第三十一号)附則第一条の二第一項に規定する新型コロナウイルス感染症をいう。以下同じ。)が中小企業者等の事業活動に甚大な影響を及ぼしていることに鑑み、その事業の用に供する不動産に係る賃料についての株式会社日本政策金融公庫(以下「公庫」という。)による代位弁済並びにそれによって得た求償権の適切な行使及び放棄等について定めるとともに、中小企業者等の事業の用に供する不動産に係る賃料の負担を軽減するための補助その他の財政上の措置について定めることにより、中小企業者等が負担することとなる当該賃料に相当する額の支払を猶予し、及びその負担を軽減することを通じて中小企業者等を支援し、もって国民生活及び国民経済の安定に寄与することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「中小企業者」とは、次の各号のいずれかに該当する者をいう。
一 資本金の額又は出資の総額が三億円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が三百人以下の会社及び個人であって、製造業、建設業、運輸業その他の業種(次号から第四号までに掲げる業種及び第五号の政令で定める業種を除く。)に属する事業を主たる事業として営むもの
二 資本金の額又は出資の総額が一億円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が百人以下の会社及び個人であって、卸売業(第五号の政令で定める業種を除く。)に属する事業を主たる事業として営むもの
三 資本金の額又は出資の総額が五千万円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が百人以下の会社及び個人であって、サービス業(第五号の政令で定める業種を除く。)に属する事業を主たる事業として営むもの
四 資本金の額又は出資の総額が五千万円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が五十人以下の会社及び個人であって、小売業(次号の政令で定める業種を除く。)に属する事業を主たる事業として営むもの
五 資本金の額又は出資の総額がその業種ごとに政令で定める金額以下の会社並びに常時使用する従業員の数がその業種ごとに政令で定める数以下の会社及び個人であって、その政令で定める業種に属する事業を主たる事業として営むもの
六 企業組合
七 協業組合
八 事業協同組合、事業協同小組合、商工組合、協同組合連合会その他の特別の法律により設立された組合及びその連合会であって、政令で定めるもの
2 この法律において「中小企業者等」とは、次の各号のいずれかに該当する者をいう。
一 中小企業者
二 組合等(前号に掲げる者を除く。)
三 資本金の額又は出資の総額が政令で定める金額以下の会社その他政令で定める法人(第一号に掲げる者を除く。)
四 常時使用する従業員の数が政令で定める数以下の会社その他政令で定める法人及び個人(前三号に掲げる者を除く。)
五 事業を営んでいない個人であって、新たに事業を開始する具体的な計画を有し、かつ、当該事業の用に供するため不動産の賃貸借契約を新型インフルエンザ等対策特別措置法第三十二条第一項の規定により新型コロナウイルス感染症に係る新型インフルエンザ等緊急事態宣言がされた令和二年四月七日より前に締結し、賃料債務(当該賃料債務に係る賃貸借関係から生じた債務又はその不動産の使用若しくは収益に随伴して必要となる費用に係る債務であって政令で定めるものを含む。以下同じ。)を負担しているもの(次号に掲げるものを除く。)
六 事業を営んでいない個人であって、新たに会社を設立し、かつ、当該新たに設立される会社が事業を開始する具体的な計画を有するとともに、当該事業の用に供するため不動産の賃貸借契約を前号に掲げる日より前に締結し、賃料債務を負担しているもの
(中小企業者等が負担する不動産に係る賃料債務の代位弁済)
第三条 公庫は、株式会社日本政策金融公庫法(平成十九年法律第五十七号)第十一条の規定にかかわらず、次に掲げる中小企業者等が負担している事業の用に供する不動産に係る賃料債務(新型コロナウイルス感染症が中小企業者等の事業活動に及ぼす影響を勘案して政令で定める期間内に発生するものに限る。)の全部又は一部について、当該中小企業者等の申請に基づき、当該中小企業者等に代わって弁済することができる。
一 新型コロナウイルス感染症の影響による休業等により売上金額が大幅に減少した中小企業者等として政令で定めるもの
二 前条第二項第五号及び第六号に掲げる中小企業者等であって新型コロナウイルス感染症の影響により事業を開始することができないものその他の前号に掲げる中小企業者等の状況に類する状況にある中小企業者等として政令で定めるもの
2 公庫は、前項の弁済によって得た求償権については、社会経済情勢、対象となる中小企業者等の事業の状況その他の事情を考慮して、適切に行使し、又は放棄等をするものとする。
3 前二項に定めるもののほか、公庫が中小企業者等に代わってする弁済並びにこれによって得た求償権に係る債務の履行期、支払方法その他その行使及び放棄等に関し必要な事項は、政令で定める。
(株式会社日本政策金融公庫法等の適用)
第四条 前条の規定により公庫が行う業務についての株式会社日本政策金融公庫法の規定の適用については、次の表の上欄に掲げる同法の規定中同表の中欄に掲げる字句は、それぞれ同表の下欄に掲げる字句とするほか、必要な技術的読替えは、政令で定める。
第四条第三項 |
第四十一条 |
中小企業者等の事業用不動産に係る賃料相当額の支払猶予及びその負担軽減に関する法律(令和二年法律第▼▼▼号。以下「賃料相当額支払猶予法」という。)第四条第一項の規定により読み替えて適用する第四十一条 |
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業務 |
業務及び特定賃料代位弁済業務(賃料相当額支払猶予法第三条の規定により行う業務をいう。以下同じ。) |
第十一条第一項第六号 |
掲げる業務 |
掲げる業務及び特定賃料代位弁済業務 |
第十二条第一項 |
業務の |
業務及び特定賃料代位弁済業務の |
第十四条第四項 |
及び |
及び特定賃料代位弁済業務並びに |
第三十一条第二項第一号 |
次に掲げる業務 |
次に掲げる業務及び特定賃料代位弁済業務 |
第三十一条第二項第二号 |
業務 |
業務及び特定賃料代位弁済業務 |
第三十一条第四項 |
業務 |
業務並びに特定賃料代位弁済業務 |
第三十五条第二項 |
、第三十一条、第三十三条及び前条 |
、第三十三条及び前条並びに賃料相当額支払猶予法第四条第一項の規定により読み替えて適用する第三十一条 |
第三十六条第二項 |
、第三十一条、第三十三条及び第三十四条 |
、第三十三条及び第三十四条並びに賃料相当額支払猶予法第四条第一項の規定により読み替えて適用する第三十一条 |
第四十一条 |
次に掲げる業務 |
次に掲げる業務及び特定賃料代位弁済業務 |
第四十二条第一項 |
前条 |
賃料相当額支払猶予法第四条第一項の規定により読み替えて適用する前条 |
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同法第二百九十五条第二項 |
会社法第二百九十五条第二項 |
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額」とあるのは「株式会社日本政策金融公庫法第四十一条 |
額」とあるのは「中小企業者等の事業用不動産に係る賃料相当額の支払猶予及びその負担軽減に関する法律(令和二年法律第▼▼▼号。以下「賃料相当額支払猶予法」という。)第四条第一項の規定により読み替えて適用する株式会社日本政策金融公庫法第四十一条 |
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株式会社日本政策金融公庫法第四十一条の規定により設けられた勘定に属する資本金 |
賃料相当額支払猶予法第四条第一項の規定により読み替えて適用する株式会社日本政策金融公庫法第四十一条の規定により設けられた勘定に属する資本金 |
第四十二条第二項 |
第四十七条第一項 |
賃料相当額支払猶予法第四条第一項の規定により読み替えて適用する第四十七条第一項 |
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前条 |
賃料相当額支払猶予法第四条第一項の規定により読み替えて適用する前条 |
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同法第四百四十八条第一項 |
会社法第四百四十八条第一項 |
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株式会社日本政策金融公庫法第四十一条 |
賃料相当額支払猶予法第四条第一項の規定により読み替えて適用する株式会社日本政策金融公庫法第四十一条 |
第四十二条第三項 |
前条 |
賃料相当額支払猶予法第四条第一項の規定により読み替えて適用する前条 |
第四十七条第一項及び第五項 |
業務 |
業務及び特定賃料代位弁済業務 |
第四十七条第七項 |
及び第四十一条各号に掲げる業務 |
並びに第四十一条各号に掲げる業務及び特定賃料代位弁済業務 |
第四十九条第二項 |
業務 |
業務及び特定賃料代位弁済業務 |
第四十九条第二項各号 |
及び |
並びに |
第五十一条第一項 |
第四十九条 |
賃料相当額支払猶予法第四条第一項の規定により読み替えて適用する第四十九条 |
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第四十一条 |
賃料相当額支払猶予法第四条第一項の規定により読み替えて適用する第四十一条 |
|
業務 |
業務及び特定賃料代位弁済業務 |
第五十一条第二項 |
第四十九条第二項 |
賃料相当額支払猶予法第四条第一項の規定により読み替えて適用する第四十九条第二項 |
第五十七条 |
この法律に |
賃料相当額支払猶予法並びにこれらに |
第五十八条及び第五十九条第一項 |
この法律 |
この法律、賃料相当額支払猶予法 |
第六十四条第一項各号列記以外の部分 |
この法律 |
この法律(賃料相当額支払猶予法第四条第一項の規定により読み替えて適用する場合を含む。) |
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とする。 |
とする。ただし、特定賃料代位弁済業務並びに当該業務に係る財務及び会計に関する事項については、経済産業大臣及び財務大臣とする。 |
第七十一条 |
第五十九条第一項 |
賃料相当額支払猶予法第四条第一項の規定により読み替えて適用する第五十九条第一項 |
第七十三条第一号 |
この法律 |
この法律(賃料相当額支払猶予法第四条第一項の規定により読み替えて適用する場合を含む。) |
第七十三条第三号 |
第十一条 |
第十一条及び賃料相当額支払猶予法第三条 |
第七十三条第七号 |
第五十八条第二項 |
第五十八条第二項(賃料相当額支払猶予法第四条第一項の規定により読み替えて適用する場合を含む。) |
2 前項の規定により読み替えて適用する株式会社日本政策金融公庫法第十四条第四項の規定により沖縄振興開発金融公庫に対し前条の規定により公庫が行う業務が委託される場合における沖縄振興開発金融公庫法(昭和四十七年法律第三十一号)第十二条の二、第二十条、第二十一条、第三十二条、第三十六条及び第三十九条の規定の適用については、同法第十二条の二第二項第一号中「この法律」とあるのは「この法律(中小企業者等の事業用不動産に係る賃料相当額の支払猶予及びその負担軽減に関する法律(令和二年法律第▼▼▼号。以下「賃料相当額支払猶予法」という。)第四条第二項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)」と、同条第三項中「前項」とあるのは「賃料相当額支払猶予法第四条第二項の規定により読み替えて適用する前項」と、同条第四項中「第二項各号」とあるのは「第二項各号(同項第一号の規定を賃料相当額支払猶予法第四条第二項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)」と、同法第二十条第一項中「次条第一項」とあるのは「賃料相当額支払猶予法第四条第二項の規定により読み替えて適用する次条第一項」と、同条第二項中「前項」とあるのは「賃料相当額支払猶予法第四条第二項の規定により読み替えて適用する前項」と、同条第三項中「第一項」とあるのは「賃料相当額支払猶予法第四条第二項の規定により読み替えて適用する第一項」と、同法第二十一条第一項中「掲げる業務」とあるのは「掲げる業務若しくは賃料相当額支払猶予法第三条の規定による業務」と、同法第三十二条第二項、第三十六条第一項及び第三十九条第一号中「この法律」とあるのは「この法律(賃料相当額支払猶予法第四条第二項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)」と、同条第三号中「第二十一条」とあるのは「第二十一条(賃料相当額支払猶予法第四条第二項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)」と、同条第六号中「第三十二条第二項」とあるのは「第三十二条第二項(賃料相当額支払猶予法第四条第二項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)」とするほか、必要な技術的読替えは、政令で定める。
(賃料負担軽減のための補助その他の財政上の措置)
第五条 前二条に定めるもののほか、国は、中小企業者等の事業の用に供する不動産に係る賃料の負担を軽減するため、又は地方公共団体が行う取組を支援するため、当該不動産に係る賃貸人が当該中小企業者等の賃料債務を減額した場合において当該賃料債務の減額分の一部を補助する等必要な財政上の措置を講ずるものとする。
附 則
この法律は、公布の日から起算して一月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
理 由
新型コロナウイルス感染症が中小企業者等の事業活動に甚大な影響を及ぼしていることに鑑み、その事業の用に供する不動産に係る賃料についての株式会社日本政策金融公庫による代位弁済並びにそれによって得た求償権の適切な行使及び放棄等について定めるとともに、中小企業者等の事業の用に供する不動産に係る賃料の負担を軽減するための補助その他の財政上の措置について定めることにより、中小企業者等が負担することとなる当該賃料に相当する額の支払を猶予し、及びその負担を軽減することを通じて中小企業者等を支援する必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。
本案施行に要する経費
本案施行に要する経費としては、約五兆円の見込みである。