衆議院

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第二〇四回

衆第一号

   新型コロナウイルス感染症対応医療従事者等を慰労するための給付金の支給に関する法律案

 (趣旨)

第一条 この法律は、新型コロナウイルス感染症対応医療従事者等が、継続して行われる必要がある医療及び介護、保育その他の福祉サービスの提供等に係る業務において、新型コロナウイルス感染症の発生及びそのまん延防止のための措置を講じつつ新型コロナウイルス感染症にかかった場合にその症状が重度となるおそれが高い患者、高齢者等と接触すること等により、身体的及び心理的負担を受ける中、強い使命感を持って当該業務に従事していること等に鑑み、新型コロナウイルス感染症対応医療従事者等を慰労するための給付金(以下「慰労金」という。)を支給するため必要な事項を定めるものとする。

 (定義)

第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

 一 新型コロナウイルス感染症 新型インフルエンザ等対策特別措置法(平成二十四年法律第三十一号)附則第一条の二第一項に規定する新型コロナウイルス感染症をいう。

 二 対象期間 新型コロナウイルス感染症が発生した日又はこれに相当する日として厚生労働省令で都道府県ごとに定める日から令和三年一月三十一日までの期間をいう。

 三 濃厚接触者 都道府県知事又は保健所を設置する市若しくは特別区の長が新型コロナウイルス感染症の患者(新型コロナウイルス感染症の無症状病原体保有者を含む。)と厚生労働省令で定める一定の接触があったものと認める者をいう。

 四 特定医療機関等 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成十年法律第百十四号)第六条第十二項に規定する感染症指定医療機関その他の新型コロナウイルス感染症の患者(新型コロナウイルス感染症の疑似症患者及び無症状病原体保有者を含む。以下同じ。)の医療を担当する施設又は新型コロナウイルス感染症に係る検体の採取等を行う施設として、厚生労働省令で定める施設をいう。

 五 一般医療機関等 健康保険法(大正十一年法律第七十号)第六十三条第三項第一号に規定する保険医療機関(特定医療機関等に該当するものを除く。)及び医療法(昭和二十三年法律第二百五号)第二条第一項に規定する助産所をいう。

 六 医療機関等 特定医療機関等及び一般医療機関等をいう。

 七 保険薬局 健康保険法第六十三条第三項第一号に規定する保険薬局をいう。

 八 介護・障害福祉サービス事業所等 次に掲げる事業所又は施設をいう。

  イ 介護保険法(平成九年法律第百二十三号)第四十一条第一項本文の指定に係る同法第八条第一項に規定する居宅サービス事業、同法第五十三条第一項本文の指定に係る同法第八条の二第一項に規定する介護予防サービス事業その他の厚生労働省令で定める事業を行う事業所

  ロ 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成十七年法律第百二十三号)第二十九条第一項の指定に係る同法第五条第一項に規定する障害福祉サービス事業その他の厚生労働省令で定める事業を行う事業所

  ハ その他厚生労働省令で定める要介護者、障害児等が入所する施設

 九 子ども・子育て支援施設等 次に掲げる施設又は事業をいう。

  イ 子ども・子育て支援法(平成二十四年法律第六十五号)第七条第四項に規定する教育・保育施設

  ロ 児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)第六条の三第二項及び第九項から第十二項までに規定する事業(ニに掲げる施設において行われる事業を除く。)

  ハ 児童福祉法第七条第一項に規定する児童福祉施設(介護・障害福祉サービス事業所等に該当するもの及びイに掲げるものを除く。)

  ニ 児童福祉法第五十九条の二第一項に規定する施設(同項の規定による届出がされたものに限る。)

  ホ 幼稚園と類似の機能を有する施設であって学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第四条第一項の規定による都道府県知事の認可を受けていないもの

  ヘ その他子ども等に保育、教育等を行う施設及び事業として主務省令で定める施設及び事業

 十 新型コロナウイルス感染症対応医療従事者等 次条第一項に規定する医療従事者等、第四条第一項に規定する医療従事者その他の者、第五条第一項に規定する者、第六条第一項に規定する薬剤師、第七条第一項に規定する職員及び第八条第一項に規定する業務従事者をいう。

 (医療従事者等に対する慰労金の支給)

第三条 国は、対象期間に、医療機関等において、患者等と接する業務として厚生労働省令で定める業務に十日以上従事した医師、看護師等の医療従事者その他の者(令和二年七月一日以後に当該業務に従事していない者を除く。次項及び第五条第一項において「医療従事者等」という。)に対して、その者の請求により、慰労金を支給する。

2 前項の慰労金の額は、次の各号に掲げる医療従事者等の区分に応じ、当該各号に定める額とする。

 一 令和二年七月一日から令和三年一月三十一日までの間に新型コロナウイルス感染症の患者に対する診療等が行われた医療機関等において、当該診療等が行われた日から同月三十一日までの間に前項に規定する業務に従事した医療従事者等 二十万円

 二 特定医療機関等における医療従事者等のうち、前号に掲げる医療従事者等以外の者 十万円

 三 一般医療機関等における医療従事者等のうち、第一号に掲げる医療従事者等以外の者 五万円

 (医療機関等以外の場所において新型コロナウイルス感染症の患者と接する業務に従事する者に対する慰労金の支給)

第四条 国は、対象期間に、都道府県知事又は保健所を設置する市若しくは特別区の長からの委託等に基づき、新型コロナウイルス感染症の患者が滞在する医療機関等以外の施設又は新型コロナウイルス感染症の患者の居宅若しくはこれに相当する場所において、新型コロナウイルス感染症の患者と接する業務として厚生労働省令で定める業務に十日以上従事した医師、看護師等の医療従事者その他の者(令和二年七月一日以後に当該業務に従事していない者を除く。)に対して、その者の請求により、慰労金を支給する。

2 前項の慰労金の額は、二十万円とする。

 (医療の提供に密接に関連する業務の従事者に対する慰労金の支給)

第五条 国は、対象期間に、医療機関等において、医薬品、医療機器等の卸売販売に係る業務その他の医療の提供に密接に関連する業務として厚生労働省令で定める業務に十日以上従事した者(医療従事者等に該当する者を除く。)に対して、その者の請求により、慰労金を支給する。

2 前項の慰労金の額は、五万円とする。

 (保険薬局の薬剤師に対する慰労金の支給)

第六条 国は、対象期間に、患者又は現にその看護に当たっている者と接する業務として厚生労働省令で定める業務に十日以上従事した保険薬局の薬剤師に対して、その者の請求により、慰労金を支給する。

2 前項の慰労金の額は、五万円とする。

 (介護・障害福祉サービス事業所等の職員に対する慰労金の支給)

第七条 国は、対象期間に、介護・障害福祉サービス事業所等のサービスを利用する者(次項第一号及び第二号において「利用者」という。)と接する業務として厚生労働省令で定める業務に十日以上従事した介護・障害福祉サービス事業所等の職員(令和二年七月一日以後に当該業務に従事していない者を除く。同項において単に「職員」という。)に対して、その者の請求により、慰労金を支給する。

2 前項の慰労金の額は、次の各号に掲げる職員の区分に応じ、当該各号に定める額とする。

 一 利用者の居宅等を訪問してサービスを提供する介護・障害福祉サービス事業所等として厚生労働省令で定めるもの(次号において「訪問系サービス事業所等」という。)の職員であって、令和二年七月一日から令和三年一月三十一日までの間に新型コロナウイルス感染症の患者又は濃厚接触者である利用者に前項に規定する業務としてサービスを提供したもの 二十万円

 二 令和二年七月一日から令和三年一月三十一日までの間に新型コロナウイルス感染症の患者又は濃厚接触者である利用者にサービスを提供した介護・障害福祉サービス事業所等(訪問系サービス事業所等を除く。)において、当該利用者が新型コロナウイルス感染症の症状を呈した日その他厚生労働省令で定める日又は第二条第三号の厚生労働省令で定める一定の接触があった日から同月三十一日までの間に前項に規定する業務に従事した職員 二十万円

 三 前二号に掲げる職員以外の職員 五万円

 (子ども・子育て支援施設等の業務従事者に対する慰労金の支給)

第八条 国は、対象期間に、子ども・子育て支援施設等で保育、教育等を受ける子ども等(次項第一号及び第二号において単に「子ども等」という。)と接する業務として主務省令で定める業務に十日以上従事した子ども・子育て支援施設等の業務に従事する者(同項において「業務従事者」という。)に対して、その者の請求により、慰労金を支給する。

2 前項の慰労金の額は、次の各号に掲げる業務従事者の区分に応じ、当該各号に定める額とする。

 一 児童福祉法第六条の三第十一項に規定する居宅訪問型保育事業その他子ども等の居宅等において業務を行う事業として厚生労働省令で定める事業(次号において「居宅訪問型保育事業等」という。)の業務従事者であって、対象期間に新型コロナウイルス感染症の患者又は濃厚接触者である子ども等に前項に規定する業務として保育等を行ったもの 二十万円

 二 対象期間に新型コロナウイルス感染症の患者又は濃厚接触者である子ども等が保育、教育等を受けた子ども・子育て支援施設等(居宅訪問型保育事業等を除く。)において、当該子ども等が新型コロナウイルス感染症の症状を呈した日その他厚生労働省令で定める日又は第二条第三号の厚生労働省令で定める一定の接触があった日から令和三年一月三十一日までの間に前項に規定する業務に従事した業務従事者 二十万円

 三 前二号に掲げる業務従事者以外の業務従事者 五万円

 (令和二年度ひとり親世帯臨時特別給付金等に係る差押禁止等に関する法律第三項第二号に掲げる給付金との調整)

第九条 慰労金は、第三条第一項、第五条第一項、第六条第一項、第七条第一項及び前条第一項の規定にかかわらず、第三条第二項第二号及び第三号に掲げる医療従事者等、第五条第一項に規定する者、第六条第一項に規定する薬剤師、第七条第二項第三号に掲げる職員並びに前条第二項第三号に掲げる業務従事者のうち、令和二年度ひとり親世帯臨時特別給付金等に係る差押禁止等に関する法律(令和二年法律第五十五号)第三項第二号に掲げる給付金の支給を受けた者には、支給しない。

 (既に支給を受けた慰労金との調整)

第十条 慰労金は、新型コロナウイルス感染症対応医療従事者等がこの法律の規定により既に慰労金の支給を受けた場合には、支給しない。

2 前項の規定にかかわらず、この法律の規定により既に慰労金の支給を受けた新型コロナウイルス感染症対応医療従事者等が、既に支給を受けた慰労金の額よりも高い額の慰労金を請求することができる場合において、当該慰労金の請求をしたときは、当該慰労金の額から既に支給を受けた慰労金の額を控除した額の慰労金を支給する。

 (慰労金の支給手続等についての周知等)

第十一条 国は、新型コロナウイルス感染症対応医療従事者等に対し慰労金の支給手続の実施等について周知するための措置その他慰労金の請求に関し利便を図るための措置を適切に講ずるものとする。

2 国は、第三条第一項、第四条第一項、第五条第一項、第六条第一項、第七条第一項又は第八条第一項の規定による請求があった場合には、速やかに、慰労金を支給するものとする。

 (不正利得の徴収)

第十二条 偽りその他不正の手段により慰労金の支給を受けた者があるときは、主務大臣は、国税徴収の例により、その者から、当該慰労金の価額の全部又は一部を徴収することができる。

2 前項の規定による徴収金の先取特権の順位は、国税及び地方税に次ぐものとする。

 (譲渡等の禁止)

第十三条 慰労金の支給を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押さえることができない。

2 慰労金として支給を受けた金銭は、差し押さえることができない。

 (公課の禁止)

第十四条 租税その他の公課は、慰労金として支給を受けた金銭を標準として、課することができない。

 (主務大臣等)

第十五条 この法律における主務大臣は、政令で定めるところにより、内閣総理大臣、文部科学大臣又は厚生労働大臣とする。

2 この法律における主務省令は、主務大臣の発する命令とする。

 (政令への委任)

第十六条 この法律に定めるもののほか、慰労金の請求及び支給その他この法律を実施するため必要な事項は、政令で定める。

   附 則

 (施行期日)

第一条 この法律は、令和三年二月一日から施行する。

 (検討)

第二条 政府は、令和二年七月一日から令和三年一月三十一日までの間に患者等、介護・障害福祉サービス事業所等の利用者等と接する業務に従事する者で慰労金の支給を受けることができないものを慰労するための給付金の支給の必要性について検討を加え、その結果に基づいて必要な法制上及び財政上の措置を講ずるものとする。

2 政府は、今後の新型コロナウイルス感染症の発生及びそのまん延の状況を勘案し、医療従事者等、保険薬局の薬剤師、介護・障害福祉サービス事業所等の職員、子ども・子育て支援施設等の業務従事者等を慰労するための更なる給付金の支給の必要性について検討を加え、その結果に基づいて必要な法制上及び財政上の措置を講ずるものとする。


     理 由

 新型コロナウイルス感染症対応医療従事者等が、継続して行われる必要がある医療及び介護、保育その他の福祉サービスの提供等に係る業務において、新型コロナウイルス感染症の発生及びそのまん延防止のための措置を講じつつ新型コロナウイルス感染症にかかった場合にその症状が重度となるおそれが高い患者、高齢者等と接触すること等により、身体的及び心理的負担を受ける中、強い使命感を持って当該業務に従事していること等に鑑み、新型コロナウイルス感染症対応医療従事者等を慰労するための給付金を支給するため必要な事項を定める必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。


   本案施行に要する経費

 本案施行に要する経費としては、約二千七百億円の見込みである。

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