衆議院

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第二〇四回

衆第六号

   我が国の経済及び財政等に関する将来の推計を信頼性のある統計等の情報に基づき中立公正に実施するための経済財政等将来推計委員会の設置に関する法律案

目次

 第一章 総則(第一条)

 第二章 経済財政等将来推計委員会の設置及び組織等(第二条−第九条)

 第三章 推計等(第十条−第十五条)

 第四章 財政措置(第十六条)

 附則

   第一章 総則

 (目的)

第一条 この法律は、我が国において、人口の減少や少子高齢化の進展に対応しつつ、経済の活力の向上及び持続的な発展を実現し、並びに持続可能な財政構造を確立することが課題となっており、中長期的な視点に立って政策を立案することの重要性が増大している現状に鑑み、我が国の経済及び財政等に関する将来の推計を信頼性のある統計等の情報に基づき中立公正に実施するため、国会に経済財政等将来推計委員会を設置し、国会がその推計の結果を活用できるようにすることにより、財政(租税を含む。)に対する民主的統制その他の日本国憲法に定める国会の権能が十全に発揮されるようにすることを目的とする。

   第二章 経済財政等将来推計委員会の設置及び組織等

 (設置)

第二条 国会に、経済財政等将来推計委員会(以下「委員会」という。)を置く。

 (組織)

第三条 委員会は、委員長及び委員六人をもって組織する。

2 委員長及び委員は、非常勤とする。

3 委員長は、委員会の事務を統理し、委員会を代表する。

4 委員長は、委員会の議決を経て、かつ、事前に、時宜によっては事後に、両議院の議長の承認を得て、委員会の業務の遂行上必要な諸規程を定めることができる。

5 委員長に事故があるとき又は委員長が欠けたときは、あらかじめその指名する委員がその職務を代行する。

 (委員長及び委員の任命)

第四条 委員長及び委員は、経済及び財政等に関する将来の推計に関し優れた識見を有する者のうちから、国会法(昭和二十二年法律第七十九号)第百二十九条の二に規定する経済及び財政等に関する将来の推計に係る両議院の議院運営委員会の合同協議会(以下「両院合同協議会」という。)の推薦に基づき、両議院の議長が、両議院の承認を得て、これを任命する。

 (委員長及び委員の任期)

第五条 委員長及び委員の任期は、五年とする。ただし、補欠の委員長又は委員の任期は、前任者の残任期間とする。

2 委員長及び委員は、二回に限り再任されることができる。

3 委員長及び委員の任期が満了したときは、当該委員長及び委員は、後任者が任命されるまで引き続きその職務を行うものとする。

 (委員長及び委員の身分保障)

第六条 委員長及び委員は、心身の故障のため職務の遂行ができないこと又は職務の執行上の義務違反その他委員長若しくは委員たるに適しない非行があったことについて両議院の議決があったときを除いては、罷免されることはない。

 (委員長及び委員の服務)

第七条 委員長及び委員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も同様とする。

2 委員長及び委員は、在任中、政党その他の政治団体の役員となり、又は積極的に政治活動をしてはならない。

3 委員長及び委員は、公選による公職の候補者となり、又は公選による公職と兼ねてはならない。

 (会議及び会議録)

第八条 委員会がこの法律の規定によってその所掌に属させられた事項を決定する場合においては、委員会の議決を経なければならない。

2 委員会の会議は、公開することを基本とする。

3 委員会は、会議録二部を作成し、委員長及び委員がこれに署名し、各議院に送付する。この場合において、各議院は、送付を受けた会議録を保存する。

4 委員会の会議録は、これを印刷して各議院の議員に配付する。ただし、特に秘密を要するものと委員会で議決した部分については、この限りでない。

 (事務局)

第九条 委員会の事務を処理させるため、委員会に事務局を置く。

2 事務局に、事務局長一人その他所要の職員を置く。

3 事務局長その他の職員は、両議院の議長が協議して定めるところにより、両院合同協議会の意見を聴いて、委員長が任命する。

4 事務局長その他の職員は、民間の有識者を積極的に登用するものとする。

5 事務局に、その事務を分掌するため、部及び課を置く。

6 第二項から前項までに定めるもののほか、事務局に関し必要な事項は、両議院の議長が協議して定める。

   第三章 推計等

 (推計の実施)

第十条 委員会は、次に掲げる事項についての推計を実施するものとする。

 一 経済及び財政の状況の中期見通し(推計を行う年以降おおむね十年の期間における見通しをいう。)

 二 財政の持続可能性の長期見通し(推計を行う年以降おおむね三十年から五十年までの期間における見通しをいう。)

2 委員会は、前項第一号に掲げる事項についての推計にあっては毎年一回、同項第二号に掲げる事項についての推計にあっては少なくとも五年に一回、実施するものとする。

3 第一項に定めるもののほか、委員会は、特に緊要な課題に対応するための施策であってその実施に要する費用が多額であることにより同項各号に掲げる事項に影響を及ぼすおそれがあるものに関する事項その他の同項各号に掲げる事項と関連する事項であって、委員会が必要と認めるものについての推計を実施することができる。

4 委員会は、第一項又は前項の推計を自ら実施することに代え、これらの推計の実施を大学その他の研究機関等(以下単に「研究機関等」という。)に委託することができる。この場合において、委員会は、同一の事項についての推計の実施を複数の研究機関等に委託するものとする。

 (推計の正確さを確保するための資料の提出等の要求)

第十一条 委員会は、前条第一項及び第三項の推計(同条第四項の規定により研究機関等が実施するものを含む。次条及び第十三条において同じ。)の正確さを確保するため必要があると認めるときは、これらの推計の実施に必要な公的統計(統計法(平成十九年法律第五十三号)第二条第三項に規定する公的統計をいう。以下この条において同じ。)に係る統計調査(同法第二条第五項に規定する統計調査をいう。)の実施の状況その他当該公的統計の作成に係る事項について、当該公的統計を作成する者に対し、資料の提出及び説明を求めることができる。

 (協力の要請)

第十二条 委員会は、前条に定める場合のほか、第十条第一項及び第三項の推計の実施に関し必要があると認めるときは、いつでも、国の行政機関の長、地方公共団体の長その他の関係者に対し、必要な協力を求めることができる。

 (両院合同協議会に対する国政調査の要請)

第十三条 委員会は、第十条第一項及び第三項の推計の正確さを確保するため特に必要があると認めるときその他同条第一項及び第三項の推計の実施に関し特に必要があると認めるときは、両院合同協議会に対し、国会法第百二十九条の三の規定により国政に関する調査を行うよう、要請することができるものとする。

 (推計の報告等)

第十四条 委員会は、第十条第一項第一号に掲げる事項についての推計にあっては毎年一月三十一日までに、同項第二号に掲げる事項についての推計又は同条第三項の推計にあってはこれらが実施された後速やかに、その経過及び結果(同条第四項の規定によりこれらの推計の実施を研究機関等に委託した場合にあっては、当該研究機関等が実施した推計の結果及びその平均、中央値その他の当該推計の結果の比較のために参考となるべき事項)を記載した報告書を両議院の議長に提出しなければならない。

2 委員会は、前項の報告書に、委員会又は研究機関等が実施した推計の結果を踏まえて講ずべき施策、当該推計と同一の事項について政府が実施した推計の結果との差異の有無(差異がある場合にあっては、その理由を含む。)その他当該推計の結果に関し必要と認める意見を併せて記載することができる。

3 委員会は、前項の規定によるもののほか、必要に応じ、委員会又は研究機関等が実施した推計の結果に関し必要と認める意見を記載した意見書を両議院の議長に提出することができる。

4 委員会は、第一項の報告書又は前項の意見書を提出したときは、速やかに、両議院の議長が協議して定めるところにより、内閣にこれらを送付するとともに、これらの内容を公表するものとする。

 (国会への報告)

第十五条 内閣は、前条第一項の報告書又は同条第三項の意見書の送付を受けたときは、遅滞なく、これらに記載された推計の結果を踏まえて講ずべき施策についての検討状況、当該推計と同一の事項について政府が実施した推計の結果との差異がある場合にあってはその理由、当該報告書又は当該意見書に関する見解その他必要と認める事項について、国会に報告するものとする。

   第四章 財政措置

第十六条 この法律の施行に要する費用については、必要な予算が確保されるよう、財政上必要な措置が講ぜられるものとする。

   附 則

 (施行期日)

第一条 この法律は、国会法の一部を改正する法律(令和三年法律第▼▼▼号)の施行の日から施行する。ただし、次条の規定は、公布の日から施行する。

 (準備行為)

第二条 委員会の委員長及び委員の任命のために必要な行為その他委員会の設置のために必要な準備行為は、この法律の施行前においても行うことができる。

 (検討)

第三条 この法律の規定については、委員会の機能の拡充を図る観点から、この法律の施行後五年を目途として検討が加えられ、その結果に基づいて所要の措置が講ぜられるものとする。

 (国会職員法の一部改正)

第四条 国会職員法(昭和二十二年法律第八十五号)の一部を次のように改正する。

  第一条に次の一号を加える。

  六 経済財政等将来推計委員会の委員長及び委員並びに経済財政等将来推計委員会事務局の職員

  第五条及び第八条中「並びに国立国会図書館」を「、国立国会図書館」に改め、「専門調査員」の下に「並びに経済財政等将来推計委員会の委員長及び委員」を加える。

  第十五条の六中「定める」を「定め、経済財政等将来推計委員会事務局の職員については経済財政等将来推計委員会の委員長が両議院の議院運営委員会の承認を経て定める」に改める。

  第十六条中「専門調査員」の下に「、経済財政等将来推計委員会の委員長及び委員」を加える。

  第二十四条の三第一項中「並びに国立国会図書館の館長」を「、国立国会図書館の館長並びに経済財政等将来推計委員会の委員長及び委員」に改める。

  第二十八条第一項中「並びに国立国会図書館」を「、国立国会図書館」に改め、「専門調査員」の下に「並びに経済財政等将来推計委員会の委員長及び委員」を加える。

  第三十三条中「いう。)及び」を「いう。)、」に改め、「訴追委員会」という。)」の下に「及び経済財政等将来推計委員会」を加える。

  第三十八条の次に次の一条を加える。

 第三十八条の二 経済財政等将来推計委員会に設ける国会職員考査委員会の委員長は、経済財政等将来推計委員会の委員長、その委員には、経済財政等将来推計委員会の委員、各議院事務局の事務総長及び事務次長並びに各議院法制局の法制局長及び法制次長が、これに当たる。

 (国会に置かれる機関の休日に関する法律の一部改正)

第五条 国会に置かれる機関の休日に関する法律(昭和六十三年法律第百五号)の一部を次のように改正する。

  第一条第二項中「裁判官訴追委員会」の下に「、経済財政等将来推計委員会」を加える。

 (国会職員の育児休業等に関する法律の一部改正)

第六条 国会職員の育児休業等に関する法律(平成三年法律第百八号)の一部を次のように改正する。

  第二条中「並びに国立国会図書館」を「、国立国会図書館」に改め、「専門調査員」の下に「並びに経済財政等将来推計委員会の委員長及び委員」を加える。

 (国会職員の配偶者同行休業に関する法律の一部改正)

第七条 国会職員の配偶者同行休業に関する法律(平成二十五年法律第八十号)の一部を次のように改正する。

  第二条第一項中「並びに国立国会図書館」を「、国立国会図書館」に改め、「専門調査員」の下に「並びに経済財政等将来推計委員会の委員長及び委員」を加える。


     理 由

 我が国において、人口の減少や少子高齢化の進展に対応しつつ、経済の活力の向上及び持続的な発展を実現し、並びに持続可能な財政構造を確立することが課題となっており、中長期的な視点に立って政策を立案することの重要性が増大している現状に鑑み、我が国の経済及び財政等に関する将来の推計を信頼性のある統計等の情報に基づき中立公正に実施するため、国会に経済財政等将来推計委員会を設置する等の必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。


   本案施行に要する経費

 本案施行に要する経費としては、平年度約四億七千万円の見込みである。

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