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第二〇四回

参第二三号

   発電用原子炉の運転が政治主導の下で行われることを明確化するための改革の推進に関する法律案

 (目的)

第一条 この法律は、発電用原子炉の運転が政治主導の下で行われることを明確化することが、発電用原子炉の運転に関し国及び地方公共団体の果たすべき役割と責任を明らかにするために重要であるとともに、これに関し原子力事業者その他の関係者の果たすべき役割と責任を明らかにすることにも資することに鑑み、発電用原子炉の運転が政治主導の下で行われることを明確化するための改革(以下「原発運転政治主導明確化改革」という。)について、その基本理念及び基本方針その他の基本となる事項を定めることにより、これを総合的に推進することを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において「発電用原子炉」とは、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号)第二条第五項に規定する発電用原子炉をいう。

 (基本理念)

第三条 原発運転政治主導明確化改革は、次に掲げる事項を基本として行われるものとする。

 一 発電用原子炉の運転は、これが電気の安定供給において重要な役割を果たすものである一方で、これに起因する事故が発生すれば国民の生命、身体及び財産への危害並びに国民生活及び国民経済への重大な影響を及ぼし得るものであるという基本的認識の下に、国民の利益の観点からの総合的な判断を踏まえて行われるようにするとともに、発電用原子炉の運転に起因する事故が発生した場合における国の責任が明確化されるようにすること。

 二 発電用原子炉の運転は、これに起因する事故が発生すれば地域住民の生命、身体及び財産への深刻な被害を及ぼし得るものである一方で、地域経済において重要な役割を果たすものであることを踏まえ、関係地方公共団体及びその住民の十分な関与と理解の下に行われるようにすること。

 三 発電用原子炉の運転を将来においても継続するためには放射性廃棄物の最終的な処分に現世代において道筋を付けることが避けることのできない国民的な課題であることに鑑み、放射性廃棄物の最終的な処分のために必要となる施設が確実に整備されるようにすること。

 (国の責務)

第四条 国は、前条の基本理念にのっとり、原発運転政治主導明確化改革を推進する責務を有する。

 (改革の実施及び目標時期)

第五条 政府は、次条から第九条までに定める基本方針に基づき、原発運転政治主導明確化改革を行うものとし、このために必要な措置を講ずるものとする。この場合において、必要となる法制上の措置については、この法律の施行後一年以内を目途として講じなければならない。

 (発電用原子炉の運転に関する規制の手続における政治主導の明確化)

第六条 発電用原子炉の運転に関する規制については、原子力事業者は、その設置の許可(核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律第四十三条の三の五第一項の規定による原子力規制委員会の許可をいう。)のほか、次に掲げる手続を経た上で経済産業大臣及び内閣総理大臣の許可を受けなければならないこととするものとする。

 一 当該発電用原子炉の運転の許可の申請に当たって、あらかじめ、その運転について、当該発電用原子炉に係る原子力災害対策を重点的に実施すべき都道府県の知事に協議し、その同意を得ること。

 二 前号の都道府県の知事が同号の同意をするかどうかを決定するに当たって、あらかじめ、当該発電用原子炉に係る原子力災害対策を重点的に実施すべき市町村の長の意見を聴くこと。

 (原子力災害対策における政治主導の明確化等)

第七条 原子力災害対策が国の責任の下で実効的に行われるようにするため、原子力災害に関する地域防災計画(災害対策基本法(昭和三十六年法律第二百二十三号)第二条第十号に規定する地域防災計画をいう。以下この条において同じ。)の作成及び実施に関する手続及び国の関与の在り方については、次に掲げるところにより見直しを行うものとする。

 一 内閣総理大臣は、発電用原子炉が設置されている原子力事業所の区域をその区域に含む都道府県及び当該都道府県と相互に連携協力して原子力災害対策を実施する必要がある都道府県(以下この号において「対象都道府県」という。)の地域ごとに、その地域内のそれぞれの原子力災害に関する地域防災計画の作成及び実施に関し必要な協議を行うため、内閣総理大臣、関係行政機関の長及び当該対象都道府県の知事その他関係者をもって構成する地域原子力防災協議会を組織するものとすること。この場合において、地域原子力防災協議会は、必要に応じて、関係市町村長、当該原子力事業所に係る原子力事業者又は学識経験者の意見を聴くものとすること。

 二 都道府県防災会議(災害対策基本法第十四条第一項に規定する都道府県防災会議をいう。)、市町村防災会議(同法第十六条第一項に規定する市町村防災会議をいい、これを設置しない市町村にあっては、当該市町村の長とする。)、都道府県防災会議の協議会(同法第十七条第一項に規定する都道府県防災会議の協議会をいう。)又は市町村防災会議の協議会(同項に規定する市町村防災会議の協議会をいう。)(以下この号において「都道府県防災会議等」と総称する。)は、原子力災害に関する地域防災計画を作成したときは、原子力規制委員会に報告するものとするとともに、原子力規制委員会は、必要があると認めるときは、都道府県防災会議等に対し、原子力災害に関する地域防災計画の作成又は実施に関し必要な助言又は勧告をすることができるものとすること。

 (原子力損害が生じた場合における負担の在り方の見直し)

第八条 発電用原子炉の運転に起因する事故が発生した場合における国の責任を明確化するため、発電用原子炉の運転により原子力損害が生じた場合において原子力事業者が当該原子力損害の賠償に関し負担する金額の上限を設けるものとし、当該原子力損害について賠償すべき金額が当該上限を超える場合には、当該超える金額は、国が負担するものとする。

2 政府による原子力損害賠償・廃炉等支援機構に対する資金の交付の制度(原子力損害賠償・廃炉等支援機構法(平成二十三年法律第九十四号)第五十一条及び第六十八条に規定するものをいう。)は、廃止するものとする。

 (整備計画による最終処分施設の確実な整備)

第九条 発電用原子炉の運転に伴って発生する放射性廃棄物の最終的な処分のために必要となる施設が確実に整備されるようにするため、特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律(平成十二年法律第百十七号)第二条第十四項に規定する最終処分施設を含む原子力発電関連施設の整備は、次に掲げるところにより、一体的に行うものとする。

 一 政府は、次に掲げる手続を経た上で、閣議の決定により、原子力発電関連施設の整備に関する計画(以下この条において「整備計画」という。)を速やかに策定するものとすること。この場合において、整備計画は、一定期間ごとに見直しを行い、必要があるときは、所要の変更を行うものとすること。

  イ 整備計画の案(整備計画の変更の案を含む。ロ及びハにおいて同じ。)の作成に当たって、あらかじめ、関係都道府県知事及び関係市町村長の意見を聴くこと。この場合において、関係市町村長が意見を述べようとするときは、あらかじめ広く住民の意見を求めること。

  ロ 整備計画の案の作成に当たって、あらかじめ、当該整備計画の案に記載しようとする原子力発電関連施設を設置する者(次号において「施設設置者」という。)に協議し、その同意を得ること。

  ハ 整備計画の案について、国と地方の協議の場に関する法律(平成二十三年法律第三十八号)第一条に規定する国と地方の協議の場において協議すること。

 二 施設設置者は、整備計画(整備計画の変更があったときは、その変更後のもの。次号において同じ。)に従って原子力発電関連施設を整備するものとすること。

 三 整備計画に基づく原子力発電関連施設の整備に関する事業については、土地収用法(昭和二十六年法律第二百十九号)に定める手続により土地を収用し、又は使用することができる事業とするものとすること。

   附 則

 この法律は、公布の日から施行する。


     理 由

 発電用原子炉の運転が政治主導の下で行われることを明確化することが、発電用原子炉の運転に関し国及び地方公共団体の果たすべき役割と責任を明らかにするために重要であるとともに、これに関し原子力事業者その他の関係者の果たすべき役割と責任を明らかにすることにも資することに鑑み、発電用原子炉の運転が政治主導の下で行われることを明確化するための改革を総合的に推進するため、その基本理念及び基本方針その他の基本となる事項を定める必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

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