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第二〇四回

参第三一号

   離婚の際の父母の間における養育費の定めの確保に関する施策の推進に関する法律案

 (目的)

第一条 この法律は、養育費が、離婚をした父母の子が心身ともに健やかに育成されるために必要なものであるにもかかわらず、その定めが離婚のときに必ずしもなされていない現状に鑑み、離婚の際の父母の間における養育費の定めの確保(父母が離婚をする場合において当該父母の間における離婚後の子の監護に関する事項としての養育費の定めが離婚の時以前になされることを確保することをいう。以下同じ。)に関する施策に関し、基本理念を定め、並びに国及び地方公共団体の責務を明らかにするとともに、離婚の際の父母の間における養育費の定めの確保に関する施策の基本となる事項を定めることにより、離婚の際の父母の間における養育費の定めの確保に関する施策を総合的に推進することを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において「養育費」とは、離婚後における子の監護に要する費用のうち当該子を監護しない父又は母が負担するものをいう。

 (基本理念)

第三条 離婚の際の父母の間における養育費の定めの確保に関する施策の推進は、次に掲げる事項を旨として行われなければならない。

 一 養育費の定めがその確実な履行の確保に配意しつつ離婚の時以前に適確になされるようにすること。

 二 養育費の定めの内容が子の利益の観点から適切なものとなるようにすること。

 三 離婚の際に協議による養育費の定めをすることが困難な状況にある父母に対し、その状況に応じた必要な支援等が行われるようにすること。

 (国の責務)

第四条 国は、前条の基本理念(次条において「基本理念」という。)にのっとり、離婚の際の父母の間における養育費の定めの確保に関する施策を策定し、及び実施する責務を有する。

 (地方公共団体の責務)

第五条 地方公共団体は、基本理念にのっとり、離婚の際の父母の間における養育費の定めの確保に関する施策に関し、国と協力しつつ、当該地域の状況に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。

 (法制上の措置等)

第六条 政府は、離婚の際の父母の間における養育費の定めの確保に関する施策を実施するため必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講じなければならない。

 (養育費の定めが離婚の時以前に適確になされるようにするための制度の整備等)

第七条 国は、離婚の際の父母の間における養育費の定めがその確実な履行の確保に配意しつつ離婚の時以前に適確になされるようにするため、父母が離婚をする場合において養育費の定めであって当該定めにより生ずる債権について執行証書(民事執行法(昭和五十四年法律第四号)第二十二条第五号に規定する執行証書をいう。第九条において同じ。)その他の債務名義のあるものがその離婚の時以前になされなければならないようにするための制度の整備その他の必要な施策を講ずるものとする。

2 国は、前項の施策を講ずるに当たっては、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(平成十三年法律第三十一号)第一条第一項に規定する配偶者からの暴力を受けていることその他の事情により離婚の時以前に協議による養育費の定めをすることが困難な状況にある父母に対し、必要な配慮をするものとする。

 (養育費の定めに関する紛争に係る民間紛争解決手続の利用の促進)

第八条 国及び地方公共団体は、養育費の定めに関する紛争に係る民間紛争解決手続(裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律(平成十六年法律第百五十一号)第二条第一号に規定する民間紛争解決手続をいう。)が、公正な第三者の専門的な知見を反映しつつ離婚の際の父母の状況に応じて迅速に養育費の定めをするための手続として重要なものであることに鑑み、これを行う民間事業者との連携協力を図りつつ、その利用の促進を図るために必要な施策を講ずるよう努めるものとする。

 (養育費の定めがなされるために必要な費用の負担を軽減する措置等)

第九条 国及び地方公共団体は、離婚の際に父又は母の経済的理由により養育費の定めがなされることが困難となることのないよう、執行証書の作成に要する費用その他の養育費の定めがなされるために必要な費用の負担を軽減する措置その他の必要な施策を講ずるよう努めるものとする。

 (情報の提供、相談等の体制の整備及び充実)

第十条 国及び地方公共団体は、離婚の際の父母の間における養育費の定めが適確になされるよう、必要な情報の提供、相談その他の援助を行う体制の整備及び充実に努めるものとする。

 (施策の推進に関する基本的事項の策定等)

第十一条 法務大臣、内閣総理大臣及び厚生労働大臣は、第七条から前条までの規定により講ぜられる施策につき、それらの推進に関する基本的事項を定めるものとする。

2 法務大臣、内閣総理大臣及び厚生労働大臣は、前項の基本的事項を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表するものとする。

   附 則

 (施行期日)

1 この法律は、公布の日から施行する。

 (検討)

2 政府は、この法律の施行後における父母の間においてなされた養育費の定めに関する実態、その履行の状況等を勘案しつつ、父母の間においてなされた養育費の定めが履行されない場合における国による立替払に係る制度の整備その他の養育費の支払の確保に関する施策の拡充について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。


     理 由

 養育費が、離婚をした父母の子が心身ともに健やかに育成されるために必要なものであるにもかかわらず、その定めが離婚のときに必ずしもなされていない現状に鑑み、離婚の際の父母の間における養育費の定めの確保に関する施策を総合的に推進するため、離婚の際の父母の間における養育費の定めの確保に関する施策に関し、基本理念を定め、並びに国及び地方公共団体の責務を明らかにするとともに、離婚の際の父母の間における養育費の定めの確保に関する施策の基本となる事項を定める必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

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