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第二〇四回

閣第五三号

   取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益の保護に関する法律案

 (目的)

第一条 この法律は、情報通信技術の進展に伴い取引デジタルプラットフォームが国民の消費生活にとって重要な基盤となっていることに鑑み、取引デジタルプラットフォーム提供者による消費者の利益の保護に資する自主的な取組の促進、内閣総理大臣による取引デジタルプラットフォームの利用の停止等に係る要請及び消費者による販売業者等情報の開示の請求に係る措置並びに官民協議会の設置について定めることにより、取引デジタルプラットフォームを利用して行われる通信販売(特定商取引に関する法律(昭和五十一年法律第五十七号)第二条第二項に規定する通信販売をいう。以下同じ。)に係る取引の適正化及び紛争の解決の促進に関し取引デジタルプラットフォーム提供者の協力を確保し、もって取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益を保護することを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において「取引デジタルプラットフォーム」とは、特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律(令和二年法律第三十八号)第二条第一項に規定するデジタルプラットフォームのうち、当該デジタルプラットフォームにより提供される場が次の各号のいずれかの機能を有するものをいう。

 一 当該デジタルプラットフォームを利用する消費者が、その使用に係る電子計算機の映像面に表示される手続に従って当該電子計算機を用いて送信することによって、販売業者等に対し、通信販売に係る売買契約又は役務を有償で提供する契約(以下「役務提供契約」という。)の申込みの意思表示を行うことができる機能

 二 当該デジタルプラットフォームを利用する消費者が、その使用に係る電子計算機の映像面に表示される手続に従って当該電子計算機を用いて送信することによって、競りその他の政令で定める方法により販売業者等の通信販売に係る売買契約又は役務提供契約の相手方となるべき消費者を決定する手続に参加することができる機能(前号に該当するものを除く。)

2 この法律において「取引デジタルプラットフォーム提供者」とは、事業として、取引デジタルプラットフォームを単独で又は共同して提供する者をいう。

3 この法律において「消費者」とは、個人(商業、工業、金融業その他の事業を行う場合におけるものを除く。)をいう。

4 この法律において「販売業者等」とは、販売業者又は役務の提供の事業を営む者(自らが提供する取引デジタルプラットフォームを利用して商品若しくは特定権利(特定商取引に関する法律第二条第四項に規定する特定権利をいう。次条第一項第二号及び第四条第一項において同じ。)の販売又は役務の提供を行う場合におけるものを除く。)をいう。

 (取引デジタルプラットフォーム提供者の努力義務)

第三条 取引デジタルプラットフォーム提供者は、その提供する取引デジタルプラットフォームを利用して行われる通信販売に係る取引の適正化及び紛争の解決の促進に資するため、次に掲げる措置を講ずるよう努めなければならない。

 一 当該取引デジタルプラットフォームを利用して行われる通信販売に係る取引について、消費者が販売業者等と円滑に連絡することができるようにするための措置を講ずること。

 二 当該取引デジタルプラットフォームにより提供される場における販売業者等による商品若しくは特定権利の販売条件又は役務の提供条件の表示に関し当該取引デジタルプラットフォームを利用する消費者から苦情の申出を受けた場合において、当該苦情に係る事情の調査その他の当該表示の適正を確保するために必要と認める措置を講ずること。

 三 当該取引デジタルプラットフォームを利用する販売業者等に対し、必要に応じて、その所在に関する情報その他の販売業者等の特定に資する情報の提供を求めること。

2 取引デジタルプラットフォーム提供者は、内閣府令で定めるところにより、その提供する取引デジタルプラットフォームを利用する消費者に対し、前項の規定に基づき当該取引デジタルプラットフォーム提供者が講じた措置の概要及び実施の状況その他の内閣府令で定める事項を開示するものとする。

3 内閣総理大臣は、取引デジタルプラットフォーム提供者が行う前二項の措置に関して、その適切かつ有効な実施に資するために必要な指針を定めるものとする。

4 内閣総理大臣は、前項の指針を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。

 (取引デジタルプラットフォームの利用の停止等に係る要請)

第四条 内閣総理大臣は、取引デジタルプラットフォームにより提供される場における商品若しくは特定権利の販売条件又は役務の提供条件の表示が次の各号に掲げる要件のいずれにも該当する場合において、当該取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益が害されるおそれがあると認めるときは、当該取引デジタルプラットフォームを提供する取引デジタルプラットフォーム提供者に対し、販売業者等による当該商品若しくは当該特定権利の販売又は当該役務の提供に係る当該取引デジタルプラットフォームの利用の停止その他の必要な措置をとることを要請することができる。

 一 商品の安全性の判断に資する事項その他の商品の性能又は特定権利若しくは役務の内容に関する重要事項として内閣府令で定めるものについて、著しく事実に相違する表示であると認められること、又は実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると人を誤認させる表示であると認められること。

 二 前号の表示をした販売業者等が特定できないこと、その所在が明らかでないことその他の事由により、同号の表示をした販売業者等によって当該表示が是正されることを期待することができないこと。

2 内閣総理大臣は、前項の規定による要請をしたときは、その旨を公表することができる。

3 取引デジタルプラットフォーム提供者は、第一項の規定による要請を受けて当該要請に係る措置をとった場合において、当該措置により販売業者等に生じた損害については、賠償の責任を負わない。

 (販売業者等情報の開示請求)

第五条 取引デジタルプラットフォームを利用する消費者は、当該取引デジタルプラットフォームを利用して行われる通信販売に係る販売業者等との間の売買契約又は役務提供契約に係る自己の債権(金銭の支払を目的とし、かつ、その額が内閣府令で定める額を超えるものに限る。)を行使するために、当該販売業者等の氏名又は名称、住所その他の当該債権の行使に必要な販売業者等に関する情報として内閣府令で定めるもの(以下この項及び次項において「販売業者等情報」という。)の確認を必要とする場合に限り、当該取引デジタルプラットフォームを提供する取引デジタルプラットフォーム提供者に対し、当該取引デジタルプラットフォーム提供者が保有する当該販売業者等に係る販売業者等情報の開示を請求することができる。ただし、当該消費者が、当該販売業者等情報を用いて当該販売業者等の信用を毀損する目的その他の不正の目的で当該請求を行う場合は、この限りでない。

2 前項の規定による請求をする消費者は、取引デジタルプラットフォーム提供者に対し、内閣府令で定めるところにより、次に掲げる事項を記載し、又は記録した書面又は電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。)を提出し、又は提供しなければならない。

 一 当該請求に係る販売業者等情報の確認を必要とする理由

 二 当該請求の対象となる販売業者等情報の項目

 三 開示を受けた販売業者等情報を前項ただし書に規定する不正の目的のために利用しないことを誓約する旨

3 取引デジタルプラットフォーム提供者は、第一項の規定による請求が同項本文の要件に該当し、かつ、同項ただし書に規定する不正の目的によるものでないと思料するときは、当該請求に係る販売業者等と連絡することができない場合を除き、開示するかどうかについて当該販売業者等の意見を聴かなければならない。

 (官民協議会)

第六条 内閣総理大臣は、取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益の保護のための取組を効果的かつ円滑に行うため、内閣総理大臣、国の関係行政機関、取引デジタルプラットフォーム提供者を構成員とする団体、独立行政法人国民生活センター、地方公共団体及び消費者団体により構成される取引デジタルプラットフォーム官民協議会(以下「官民協議会」という。)を組織するものとする。

2 官民協議会は、必要があると認めるときは、学識経験を有する者その他の官民協議会が必要と認める者をその構成員として加えることができる。

 (官民協議会の事務等)

第七条 官民協議会は、前条第一項の目的を達成するため、必要な情報を交換し、及び取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益の保護のための取組に関する協議を行うとともに、内閣総理大臣に対し、取引デジタルプラットフォームを利用して行われる通信販売に係る取引の適正化及び紛争の解決の促進に関する施策に関し意見を述べるものとする。

2 官民協議会の構成員(次項において単に「構成員」という。)は、前項の協議の結果に基づき、取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益の保護のために必要な取組を行うものとする。

3 官民協議会は、第一項の規定による情報の交換及び協議を行い、若しくは同項の意見を述べるため必要があると認めるとき、又は構成員が行う取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益の保護のための取組に関し他の構成員から要請があった場合その他の内閣府令で定める場合において必要があると認めるときは、構成員に対し、取引デジタルプラットフォームを利用して行われる通信販売に係る取引に関する情報の提供、意見の表明その他の必要な協力を求めることができる。

4 官民協議会の庶務は、消費者庁において処理する。

 (秘密保持義務)

第八条 官民協議会の事務に従事する者又は官民協議会の事務に従事していた者は、官民協議会の事務に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。

 (官民協議会の定める事項)

第九条 前三条に定めるもののほか、官民協議会の組織及び運営に関し必要な事項は、官民協議会が定める。

 (内閣総理大臣に対する申出)

第十条 何人も、取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益が害されるおそれがあると認めるときは、内閣総理大臣に対し、その旨を申し出て、適当な措置をとるべきことを求めることができる。

2 内閣総理大臣は、前項の規定による申出があったときは、必要な調査を行い、その申出の内容が事実であると認めるときは、この法律に基づく措置その他適当な措置をとらなければならない。

 (権限の委任)

第十一条 内閣総理大臣は、この法律による権限(第三条第三項及び第四項、第六条第一項並びに第七条第一項の規定によるものを除く。)を消費者庁長官に委任する。

 (内閣府令への委任)

第十二条 この法律に定めるもののほか、この法律の実施のため必要な手続その他この法律の施行に関し必要な事項は、内閣府令で定める。

 (罰則)

第十三条 第八条の規定に違反して秘密を漏らした者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

   附 則

 (施行期日)

第一条 この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

 (経過措置)

第二条 第五条の規定は、取引デジタルプラットフォームを利用する消費者が当該取引デジタルプラットフォームを利用して行う通信販売に係る売買契約又は役務提供契約であって、この法律の施行の日以後に販売業者等との間で締結するものについて適用する。

 (検討)

第三条 政府は、この法律の施行後三年を目途として、この法律の規定の施行の状況及び経済社会情勢の変化を勘案し、この法律の規定について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。

 (消費者庁及び消費者委員会設置法の一部改正)

第四条 消費者庁及び消費者委員会設置法(平成二十一年法律第四十八号)の一部を次のように改正する。

  第四条第一項第十三号の三の次に次の一号を加える。

  十三の四 取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益の保護に関する法律(令和三年法律第▼▼▼号)の規定による取引デジタルプラットフォームを利用する消費者(同法第二条第三項に規定するものをいう。)の利益の保護に関すること。


     理 由

 情報通信技術の進展に伴い取引デジタルプラットフォームが国民の消費生活にとって重要な基盤となっていることに鑑み、取引デジタルプラットフォームを利用して行われる通信販売に係る取引の適正化及び紛争の解決の促進に関し取引デジタルプラットフォーム提供者の協力を確保するため、取引デジタルプラットフォーム提供者による消費者の利益の保護に資する自主的な取組の促進、内閣総理大臣による取引デジタルプラットフォームの利用の停止等に係る要請及び消費者による販売業者等情報の開示の請求に係る措置並びに官民協議会の設置について定める必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

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