衆議院

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第二〇八回

衆第二七号

   子ども育成基本法案

目次

 第一章 総則(第一条−第八条)

 第二章 子どもの育成に関する基本的施策(第九条−第十三条)

 第三章 子ども育成会議(第十四条−第十八条)

 第四章 教育子ども福祉省の設置に関する基本方針(第十九条)

 附則

   第一章 総則

 (目的)

第一条 この法律は、次代の社会を担う子どもの育成への支援は日本社会の未来への投資であるとの認識の下、子どもの教育、福祉等に関する政策に係る縦割り行政の弊害を除去し、子どもの教育、福祉等に係る施策を一体のものとして実施することにより子どもの育成を支援する社会を実現するため、子どもの育成に関する施策に関し、基本理念を定め、及び国の責務等を明らかにするとともに、子どもの育成に関する施策の基本となる事項及び教育子ども福祉省の設置に関する基本方針を定めること等により、子どもの育成に関する施策を総合的かつ計画的に推進することを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において「子ども」とは、心身の発達の過程にある者をいう。

 (基本理念)

第三条 子どもの育成に関する施策は、次に掲げる事項を基本理念として行われなければならない。

 一 全ての子どもについて、子どもはそれぞれが異なる個性を持つ多様な存在であるとの認識の下、個人として尊重されるとともに、その最善の利益が優先して考慮されるものとすること。

 二 全ての子どもについて、不当な差別的取扱いを受けることがないようにすること。

 三 全ての子どもについて、その家庭の経済的な状況、居住する地域、障害の有無等にかかわらず、等しく質の高い教育を受ける機会が確保されるとともに、適切に養育されること、その生活を保障されることその他の福祉を等しく保障されること。

 四 全ての子どもについて、その年齢及び発達の程度に応じて、その意見が尊重され、社会における活動に参画する機会が確保されること。

 五 子どもの育成に関する施策の実施に当たっては、子どもの教育を基軸として、これに係る施策と子どもの福祉に係る施策とを適切に組み合わせて一体的に行われることが確保されなければならず、かつ、そのための態勢の確保が図られなければならないこと。

 六 子どもの育成に関する施策の実施に当たっては、子どもの教育及び子育てについての第一義的責任を父母その他の保護者が有するとの認識の下、これらの者に対する妊娠、出産、育児等の各段階に応じた切れ目のない支援を確保すること。

 (国の責務)

第四条 国は、前条の基本理念(以下単に「基本理念」という。)にのっとり、子どもの育成に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。

 (地方公共団体の責務)

第五条 地方公共団体は、基本理念にのっとり、子どもの育成に関し、国の施策に準じた施策及びその他のその地方公共団体の区域の特性に応じた子どもの育成に関する施策を策定し、及び実施する責務を有する。

 (国民の努力)

第六条 国民は、家庭、学校、地域、職域その他の社会のあらゆる分野において、基本理念にのっとり、子どもの育成に寄与するように努めなければならない。

 (法制上の措置等)

第七条 政府は、子どもの育成に関する施策を実施するため必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講じなければならない。

 (年次報告等)

第八条 政府は、毎年、国会に、我が国における子どもの状況及び政府が講じた子どもの育成に関する施策についての報告を提出しなければならない。

2 政府は、毎年、前項の報告に係る我が国における子どもの状況を考慮して講じようとする子どもの育成に関する施策を明らかにした文書を作成し、これを国会に提出しなければならない。

   第二章 子どもの育成に関する基本的施策

 (子ども育成基本計画)

第九条 政府は、子どもの育成に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、子どもの育成に関する基本的な計画(以下「子ども育成基本計画」という。)を定めなければならない。

2 子ども育成基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。

 一 総合的かつ長期的に講ずべき子どもの育成に関する施策の大綱

 二 前号に掲げるもののほか、子どもの育成に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項

3 内閣総理大臣は、子ども育成基本計画の案につき閣議の決定を求めなければならない。

4 内閣総理大臣は、前項の規定による閣議の決定があったときは、遅滞なく、子ども育成基本計画を公表しなければならない。

5 前二項の規定は、子ども育成基本計画の変更について準用する。

 (都道府県子ども育成計画等)

第十条 都道府県は、子ども育成基本計画を勘案して、当該都道府県の区域における子どもの育成に関する施策についての基本的な計画(次項及び第三項において「都道府県子ども育成計画」という。)を定めるように努めなければならない。

2 市町村は、子ども育成基本計画(都道府県子ども育成計画が定められているときは、子ども育成基本計画及び都道府県子ども育成計画)を勘案して、当該市町村の区域における子どもの育成に関する施策についての基本的な計画(次項において「市町村子ども育成計画」という。)を定めるように努めなければならない。

3 都道府県又は市町村は、都道府県子ども育成計画又は市町村子ども育成計画を定め、又は変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。

 (広報活動等)

第十一条 国は、広報活動等を通じて、基本理念に関する国民の理解を深めるよう適切な措置を講じなければならない。

2 地方公共団体は、広報活動等を通じて、基本理念に関する住民の理解を深めるよう適切な措置を講ずるように努めるものとする。

 (調査研究)

第十二条 国は、子どもの育成に関する施策の策定に必要な調査研究を推進するように努めるものとする。

 (地方公共団体及び民間の団体に対する支援)

第十三条 国は、地方公共団体が実施する子どもの育成に関する施策及び民間の団体が子どもの育成に関して行う活動を支援するため、情報の提供その他の必要な措置を講ずるように努めるものとする。

   第三章 子ども育成会議

 (設置)

第十四条 内閣府に、特別の機関として、子ども育成会議(以下この章において「会議」という。)を置く。

 (所掌事務)

第十五条 会議は、次に掲げる事務をつかさどる。

 一 子ども育成基本計画の案を作成すること。

 二 前号に掲げるもののほか、子どもの育成に関する重要事項について審議し、及び子どもの育成に関する施策の実施を推進すること。

 (組織)

第十六条 会議は、会長及び委員をもって組織する。

2 会長は、内閣総理大臣をもって充てる。

3 委員は、会長以外の国務大臣のうちから、内閣総理大臣が指定する者をもって充てる。

 (資料提出の要求等)

第十七条 会議は、その所掌事務を遂行するために必要があると認めるときは、関係行政機関の長に対し、資料の提出、意見の開陳、説明その他必要な協力を求めることができる。

2 会議は、その所掌事務を遂行するために特に必要があると認めるときは、前項に規定する者以外の者に対しても、必要な協力を依頼することができる。

 (政令への委任)

第十八条 この章に定めるもののほか、会議の組織及び運営に関し必要な事項は、政令で定める。

   第四章 教育子ども福祉省の設置に関する基本方針

第十九条 別に法律で定めるところにより、教育子ども福祉省(次項に規定する事務を行う行政組織をいう。以下この条において同じ。)を設置するものとする。

2 教育子ども福祉省は、子どもの教育を基軸として、これに係る施策と子どもの福祉に係る施策とを適切に組み合わせて一体的に行うべき子どもの育成に関する国の施策及びその他の教育に関する国の施策に係る事務をつかさどるものとし、当該事務の効率的かつ円滑な遂行が確保されるよう編成するものとする。

3 教育子ども福祉省は、できるだけ早期に設置することとし、政府は、前二項に定めるところにより、教育子ども福祉省を設置するために必要な措置について検討を行い、可能な限り早い時期に法制上の措置を講ずるものとする。

   附 則

 (施行期日)

1 この法律は、公布の日から施行する。ただし、第九条、第十条及び第三章並びに次項の規定は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

 (内閣府設置法の一部改正)

2 内閣府設置法(平成十一年法律第八十九号)の一部を次のように改正する。

  第四条第三項第二十六号の三の次に次の一号を加える。

  二十六の四 子ども育成基本法(令和四年法律第▼▼▼号)第九条第一項に規定する子ども育成基本計画の作成及び推進に関すること。

  第四条第三項第二十七号中「前二号」を「前三号」に改める。

  第四十条第三項の表子ども・若者育成支援推進本部の項の次に次のように加える。

子ども育成会議

子ども育成基本法


     理 由

 次代の社会を担う子どもの育成への支援は日本社会の未来への投資であるとの認識の下、子どもの教育、福祉等に関する政策に係る縦割り行政の弊害を除去し、子どもの教育、福祉等に係る施策を一体のものとして実施することにより子どもの育成を支援する社会を実現するため、子どもの育成に関する施策に関し、基本理念を定め、及び国の責務等を明らかにするとともに、子どもの育成に関する施策の基本となる事項及び教育子ども福祉省の設置に関する基本方針を定めること等により、子どもの育成に関する施策を総合的かつ計画的に推進する必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

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