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第二〇八回

衆第二八号

   保育等従業者の人材確保のための処遇の改善等に関する特別措置法案

目次

 第一章 総則(第一条・第二条)

 第二章 保育等従業者の処遇の改善等

  第一節 保育等従業者処遇改善助成金の支給(第三条−第五条)

  第二節 都道府県等の職員である保育等従業者の給与の改善のための措置(第六条)

  第三節 保育等従業者の処遇の改善等に関するその他の施策(第七条−第十二条)

 第三章 子ども・子育て支援に関する事業に従事する者の処遇の改善(第十三条)

 第四章 雑則(第十四条−第十六条)

 第五章 罰則(第十七条)

 附則

   第一章 総則

 (目的)

第一条 この法律は、一人一人の子どもが健やかに成長することができる社会を実現するために保育等従業者が重要な役割を担っているにもかかわらずその賃金が他の業種に属する事業に従事する者と比較して低い水準にあること、小学校就学前の子どもの教育及び保育に対する多様な需要への対応の重要性が著しく増大していること等に鑑み、保育等従業者の賃金をはじめとする処遇の改善のための特別の措置等を定めることにより、優れた人材を確保し、もって子ども・子育て支援(子ども・子育て支援法(平成二十四年法律第六十五号)第七条第一項に規定する子ども・子育て支援をいう。第十三条第一項及び附則第二条において同じ。)の水準の向上に資することを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において「保育事業者等」とは、次に掲げる者をいう。

 一 子ども・子育て支援法第二十七条第一項に規定する特定教育・保育施設の設置者

 二 子ども・子育て支援法第二十九条第一項に規定する特定地域型保育事業者

 三 子ども・子育て支援法第三十条第一項第四号の特例保育を行う事業者

 四 子ども・子育て支援法第三十条の十一第三項に規定する特定子ども・子育て支援提供者

 五 前各号に掲げる者のほか、小学校就学前の子どもの教育又は保育に関する事業を行う者で政令で定めるもの

2 この法律において「保育等従業者」とは、保育事業者等の従業者(政令で定める者を除く。)をいう。

   第二章 保育等従業者の処遇の改善等

    第一節 保育等従業者処遇改善助成金の支給

 (保育等従業者処遇改善助成金の支給)

第三条 都道府県知事は、保育等従業者の賃金を改善するための措置を講ずる保育事業者等(都道府県、市町村(特別区を含む。)その他政令で定める者(第六条において「都道府県等」という。)を除く。第三項及び第十四条第一項において同じ。)に対し、その申請に基づき、当該措置に要する費用に充てるための助成金(以下「保育等従業者処遇改善助成金」という。)を支給する。

2 保育等従業者処遇改善助成金の支給の要件、額、申請の方法その他保育等従業者処遇改善助成金の支給に関し必要な事項は、政令で定める。

3 前項の政令を定めるに当たっては、一人一人の子どもが健やかに成長することができる社会を実現するために保育等従業者が重要な役割を担っていること並びに小学校就学前の子どもの教育及び保育に対する多様な需要への対応の重要性が著しく増大していることを踏まえるとともに、保育事業者等における保育等従業者の職責等に応じた処遇の体系、他の業種に属する事業に従事する者の平均的な賃金水準等を勘案し、かつ、第一項の申請に係る保育事業者等の負担に配慮するものとする。

 (不正利得の徴収)

第四条 偽りその他不正の手段により保育等従業者処遇改善助成金の支給を受けた者があるときは、都道府県知事は、国税徴収の例により、その者から、その支給を受けた保育等従業者処遇改善助成金の額に相当する金額の全部又は一部を徴収することができる。

2 前項の規定による徴収金の先取特権の順位は、国税及び地方税に次ぐものとする。

 (交付金)

第五条 国は、保育等従業者処遇改善助成金の支給に要する費用の全額に相当する金額を都道府県に交付する。

2 国は、毎年度、予算の範囲内で、保育等従業者処遇改善助成金に関する事務の執行に要する費用に相当する金額を都道府県に交付する。

    第二節 都道府県等の職員である保育等従業者の給与の改善のための措置

第六条 国は、保育事業者等である都道府県等であって、その職員である保育等従業者の給与を改善するための措置(保育等従業者処遇改善助成金の支給の要件を勘案して政令で定める要件に該当するものに限る。)を講ずるものに対し、当該措置に要する費用に対する補助、地方交付税制度の拡充その他の必要な財政上の措置を講ずるものとする。

    第三節 保育等従業者の処遇の改善等に関するその他の施策

 (人件費の割合その他の情報の取りまとめ及び公表)

第七条 国及び地方公共団体は、保育等従業者になろうとする者がその就業先の選択を適切に行うことができるよう、保育事業者等が設置し又は運営する施設又は事業の状況に関する情報のうち、各年度における事業費の総額に占める保育等従業者に係る人件費の総額の割合その他の保育等従業者の処遇に関する情報の取りまとめ及びその結果の公表その他の必要な施策を講ずるものとする。

 (保育等従業者等の子どもの養育の状況等に応じた就業の継続等)

第八条 国及び地方公共団体は、保育等従業者及び保育等従業者になろうとする者がその子どもの養育の状況その他の事情に応じて保育等従業者として就業することができるよう、保育等従業者の就業の継続を図るための制度の充実、保育士資格を有する者であって保育に関する業務に従事した後に離職したものの再就職の促進のために必要な体制の整備その他の必要な施策を講ずるものとする。

 (保育等従業者の業務に係る負担の軽減)

第九条 国及び地方公共団体は、保育等従業者の業務に係る負担の軽減を図るため、行政機関に対する申請に係る書類の作成その他の保育等従業者の業務に関する事務に関し、情報通信技術の活用等による簡素化の促進その他の必要な施策を講ずるものとする。

 (保育等従業者の資質の向上等)

第十条 国及び地方公共団体は、保育等従業者の資質の向上及び特定の保育の分野に係る専門的な能力を有する保育等従業者の育成を図るため、保育等従業者に対する研修の機会の確保、保育等従業者がその業務を行うために必要な情報の提供その他の必要な施策を講ずるものとする。

 (保育等従業者としての経験等についての適正な評価のための仕組みの構築等)

第十一条 国及び地方公共団体は、保育等従業者が保育等従業者としての経験、知識、技能等(以下この条において「保育等従業者としての経験等」という。)にふさわしい評価を受けることができるよう、保育等従業者としての経験等についての適正な評価方法の確立、保育事業者等その他の関係者間における保育等従業者としての経験等の評価に資する情報の共有を図るための仕組みの構築その他の必要な施策を講ずるものとする。

 (国民の関心と理解の増進)

第十二条 国及び地方公共団体は、小学校就学前の子どもの教育及び保育の重要性に対する国民の関心と理解を深め、保育等従業者の業務に対する社会的評価の向上を図るため、広報活動及び啓発活動の実施その他の必要な施策を講ずるものとする。

   第三章 子ども・子育て支援に関する事業に従事する者の処遇の改善

第十三条 前章に定めるもののほか、国は、次に掲げる者その他の社会的養護を含めた子ども・子育て支援に関する事業に従事する者の処遇の改善のために必要な措置を講ずるものとする。

 一 児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)第六条の三第一項に規定する児童自立生活援助事業及び同条第八項に規定する小規模住居型児童養育事業に従事する者並びに同法第三十七条に規定する乳児院、同法第三十八条に規定する母子生活支援施設、同法第四十一条に規定する児童養護施設、同法第四十三条の二に規定する児童心理治療施設及び同法第四十四条に規定する児童自立支援施設の従業者

 二 児童福祉法第六条の三第二項に規定する放課後児童健全育成事業及び放課後子供教室運営事業(地域住民等の参加を得て、放課後等に全ての児童を対象として学習活動、体験活動等を行う事業をいう。)に従事する者

2 国は、前項の措置については、政令で定めるところにより、他の法令の規定にかかわらずその費用の全額を負担することができるものとする。

   第四章 雑則

 (報告等)

第十四条 都道府県知事は、第二章第一節の規定の施行に必要な限度において、保育事業者等若しくは保育事業者等であった者若しくは当該保育事業者等の従業者であった者(以下この項において「保育事業者等であった者等」という。)に対し、報告若しくは帳簿書類その他の物件の提出若しくは提示を命じ、保育事業者等若しくは当該保育事業者等の従業者若しくは保育事業者等であった者等に対し出頭を求め、又は当該職員に関係者に対して質問させ、若しくは当該保育事業者等の事業所若しくは施設、事務所その他その業務に関係のある場所に立ち入り、その帳簿書類その他の物件を検査させることができる。

2 前項の規定による質問又は立入検査を行う場合においては、当該職員は、その身分を示す証明書を携帯し、かつ、関係者の請求があるときは、これを提示しなければならない。

3 第一項の規定による権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。

 (事務の区分)

第十五条 第三条第一項、第四条第一項及び前条第一項の規定により都道府県が処理することとされている事務は、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二条第九項第一号に規定する第一号法定受託事務とする。

 (厚生労働省令への委任)

第十六条 この法律に定めるもののほか、この法律の実施のため必要な事項は、厚生労働省令で定める。

   第五章 罰則

第十七条 第十四条第一項の規定による報告若しくは物件の提出若しくは提示をせず、若しくは虚偽の報告若しくは虚偽の物件の提出若しくは提示をし、又は同項の規定による当該職員の質問に対して、答弁せず、若しくは虚偽の答弁をし、若しくは同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者は、三十万円以下の罰金に処する。

2 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前項の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、同項の刑を科する。

   附 則

 (施行期日)

第一条 この法律は、公布の日から起算して一月を経過した日から施行する。

 (この法律の廃止)

第二条 この法律は、子ども・子育て支援に係る制度について見直しが行われ、保育等従業者に関し、優れた人材の確保に支障がなくなったときは、廃止するものとする。

 (地方自治法の一部改正)

第三条 地方自治法の一部を次のように改正する。

  別表第一に次のように加える。

保育等従業者の人材確保のための処遇の改善等に関する特別措置法(令和四年法律第▼▼▼号)

第三条第一項、第四条第一項及び第十四条第一項の規定により都道府県が処理することとされている事務

 (地方財政法の一部改正)

第四条 地方財政法(昭和二十三年法律第百九号)の一部を次のように改正する。

  第十条第三十三号の次に次の一号を加える。

  三十三の二 保育等従業者処遇改善助成金の支給に要する経費

 (社会保険労務士法の一部改正)

第五条 社会保険労務士法(昭和四十三年法律第八十九号)の一部を次のように改正する。

  別表第一第二十号の二十二の次に次の一号を加える。

  二十の二十二の二 保育等従業者の人材確保のための処遇の改善等に関する特別措置法(令和四年法律第▼▼▼号)


     理 由

 一人一人の子どもが健やかに成長することができる社会を実現するために保育等従業者が重要な役割を担っているにもかかわらずその賃金が他の業種に属する事業に従事する者と比較して低い水準にあること、小学校就学前の子どもの教育及び保育に対する多様な需要への対応の重要性が著しく増大していること等に鑑み、保育等従業者に優れた人材を確保し、もって子ども・子育て支援の水準の向上に資するため、保育等従業者の賃金をはじめとする処遇の改善のための特別の措置等を定める必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。


   本案施行に要する経費

 本案施行に要する経費としては、平年度約九百六十億円の見込みである。

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