衆議院

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第二〇八回

衆第五〇号

   インターネット投票の導入の推進に関する法律案

 (目的)

第一条 この法律は、日本国憲法の精神にのっとり、年齢、身体的な条件、地理的な制約その他の要因に基づき投票所への移動に困難を有する者を含む全ての選挙人等の投票の機会を等しく確保することが重要であることに鑑み、選挙等が健全な民主主義の根幹に関わるものであり、その公正及びこれに対する信頼等が確保されなければならないことも踏まえつつ、インターネット投票の導入について、その目標時期並びに基本方針及びインターネット投票が満たすべき条件を定めるとともに、インターネット投票導入推進会議を設置すること等により、これを推進することを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において「選挙等」とは、公職(公職選挙法(昭和二十五年法律第百号)第三条に規定する公職をいう。第六条第一項第六号において同じ。)の選挙、最高裁判所裁判官国民審査及び国民投票(日本国憲法の改正手続に関する法律(平成十九年法律第五十一号)第一条に規定する国民投票をいう。次項において同じ。)をいう。

2 この法律において「選挙人等」とは、選挙人、最高裁判所裁判官国民審査の審査人及び国民投票の投票人をいう。

3 この法律において「インターネット投票」とは、選挙等においてインターネットを利用する投票方法をいう。

 (インターネット投票の導入及び目標時期)

第三条 インターネット投票は、次条の基本方針に基づき、かつ、第五条から第七条までに定めるインターネット投票が満たすべき条件に従って、在外インターネット投票(在外選挙人名簿に登録されている選挙人(公職選挙法第四十九条の二第一項に規定する政令で定めるものを除く。)及び在外投票人名簿に登録されている投票人(第九条において「在外選挙人及び在外投票人」という。)が行うインターネット投票をいう。以下この条において同じ。)については令和六年七月一日(第九条において「在外インターネット投票導入基準日」という。)以後初めてその期日を公示される衆議院議員の総選挙又は参議院議員の通常選挙のうちその期日が早いものから、在外インターネット投票以外のインターネット投票については令和七年にその期日を公示される参議院議員の通常選挙(地方公共団体の議会の議員及び長の選挙にあっては、当該通常選挙の期日以後初めてその期日を告示されるもの)から、導入されるものとする。

 (基本方針)

第四条 インターネット投票の導入に当たっては、次に掲げる事項を基本方針とする。

 一 全ての選挙人等の投票の利便性の向上が図られるものでなければならないこと。

 二 投票の記録の保全並びにインターネット投票に係る情報システムの安全性及び信頼性の確保等を通じて、選挙等の公正及びこれに対する信頼等の確保が図られるものでなければならないこと。

 三 投票用紙を用いる方法と併用されるものでなければならないこと。

 (選挙人等の投票の利便性の向上に関する条件)

第五条 インターネット投票は、選挙人等の投票の利便性の向上に関し、次に掲げる条件その他必要な条件を満たすものでなければならない。

 一 選挙等の期日の公示又は告示がなされた日の翌日から当該期日の前日までの間、原則として時間を問わず、投票を行うことができること。

 二 インターネットへの接続が可能な場所であれば、選挙人等の現在する場所のいかんを問わず、投票を行うことができること。

 三 年齢、身体的な条件、地理的な制約その他の要因に基づき情報通信技術の利用に困難がある者がインターネット投票を簡便に利用することができる環境が整備されること。

 四 インターネット投票の利用の方法に関する次に掲げる条件

  イ 広く利用されている通信端末機器(入出力装置を含む。以下この号及び次条において同じ。)を使用し、簡便な操作により投票を行うことができること。

  ロ 投票のための通信端末機器の操作の方法その他のインターネット投票の利用の方法について十分な周知及び啓発が図られること。

  ハ 投票のための通信端末機器の操作の方法その他のインターネット投票の利用の方法に関する選挙人等からの問合せに対応する十分な体制が確保されること。

 (選挙等の公正及びこれに対する信頼等の確保に関する条件)

第六条 インターネット投票は、選挙等の公正及びこれに対する信頼の確保に関し、次に掲げる条件その他必要な条件を満たすものでなければならない。

 一 選挙人等が一の選挙等において二以上の投票を行うことを防止できること。

 二 本人以外の者が投票を行うことの防止に関する次に掲げる条件

  イ 電子署名及び認証業務に関する法律(平成十二年法律第百二号)第二条第一項に規定する電子署名その他の確実な本人確認の手段により選挙人名簿及び在外選挙人名簿又は投票人名簿及び在外投票人名簿の対照が行われること。

  ロ 詐偽投票等に係る罰則が整備されるとともに、当該罰則に係る十分な周知及び啓発が図られること。

 三 選挙人等が自らの意思によって投票を行うことのできる環境の確保に関する次に掲げる条件

  イ インターネット投票による投票についてはその訂正のための投票が認められるとともに、選挙人等が投票用紙を用いる方法により投票を行った場合は、当該投票が有効とされること。

  ロ 投票立会人による投票の立会いに相当する措置が整備されること。

  ハ 投票干渉等に係る罰則が整備されるとともに、当該罰則に係る十分な周知及び啓発が図られること。

 四 投票に関する電磁的記録を暗号化する情報通信技術、投票に関する電磁的記録が不正に作られ又は取得された場合にその旨を確実に把握することのできる情報通信技術等を導入するとともに、それらが適切に作動していることを確認するための体制を整備することにより、選挙人等の行った投票の内容を政府、地方公共団体その他の本人以外の者が知ることができないようにする等、投票の秘密が侵されないこと。

 五 投票の記録の保全並びにインターネット投票に係る情報システムの安全性及び信頼性の確保に関する次に掲げる条件

  イ 選挙人等の投票に関する事項を電磁的記録媒体(電磁的記録に係る記録媒体をいう。)に確実に記録し、選挙等の投票又は開票の後に、投票の結果を検証することができるようにすること。

  ロ 予想される事故等に対するインターネット投票に係る情報システムの安全性が確保されることその他事故等への対処のための体制が整備されること。

 六 通信端末機器の映像面の表示について、公職の候補者の間若しくは公職選挙法第八十六条の二第一項若しくは第八十六条の三第一項の規定による届出をした政党その他の政治団体の間、最高裁判所裁判官の間又は日本国憲法の改正手続に関する法律第十四条第一項第一号に規定する憲法改正案に対する賛否の間の公平が確保されること。

2 選挙人等によるインターネット投票のための通信端末機器の操作に係る情報その他の選挙人等が行うインターネット投票に関する情報について、前項第四号に掲げる投票の秘密に関する条件が満たされるほか、他の目的のために利用されることが防止されるよう、必要な措置が講ぜられなければならない。

 (インターネット投票に係る情報システムの整備及びその費用負担に関する条件)

第七条 インターネット投票の導入に当たっては、インターネット投票に係る情報システムの整備及びその費用負担に関し、次に掲げる条件その他必要な条件が満たされなければならない。

 一 選挙人名簿及び在外選挙人名簿並びに投票人名簿及び在外投票人名簿の調製及び管理に係る情報システムの規格の統一、互換性の確保等が図られること。

 二 国庫の負担においてインターネット投票に係る情報システムが整備されること。

 (インターネット投票導入推進会議)

第八条 政府は、内閣府、総務省その他の関係行政機関の職員をもって構成するインターネット投票導入推進会議を設け、附則第三項の規定による検討を行うに当たっての連絡調整を行うものとする。

2 前項の関係行政機関は、インターネット投票の導入の推進に関し専門的知識を有する者によって構成するインターネット投票導入推進有識者会議を設け、同項の連絡調整を行うに際しては、その意見を聴くものとする。

 (インターネットを利用した在外選挙人名簿等の登録の申請等)

第九条 政府は、在外インターネット投票導入基準日の一年前の日までに、在外選挙人及び在外投票人がインターネットを利用して在外選挙人名簿及び在外投票人名簿の登録の申請その他の在外選挙人名簿及び在外投票人名簿に関する手続を行うことができるよう、法制上の措置その他の必要な措置を講ずるものとする。

   附 則

 (施行期日)

1 この法律は、公布の日から施行する。

 (移動支援の一層の充実等)

2 政府は、第三条に定めるところによりインターネット投票が導入されるまでの間、年齢、身体的な条件、地理的な制約その他の要因に基づき投票所への移動に困難を有する者に対する投票所への移動支援の一層の充実その他これらの者の投票の利便性の向上を図るために必要な措置を重点的に講ずるものとし、同条に定めるところによりインターネット投票が導入された後においても、継続的にこれらの措置を講ずるものとする。

 (インターネット投票の導入に関する制度上及び技術上の課題に関する検討等)

3 政府は、この法律の施行後一年を目途として、第五条から第七条までに定めるインターネット投票が満たすべき条件に係るインターネット投票の導入に関する制度上及び技術上の課題について検討を加え、その結果を国会に報告するとともに、インターネットの利用その他適切な方法により公表しなければならない。


     理 由

 日本国憲法の精神にのっとり、年齢、身体的な条件、地理的な制約その他の要因に基づき投票所への移動に困難を有する者を含む全ての選挙人等の投票の機会を等しく確保することが重要であることに鑑み、選挙等が健全な民主主義の根幹に関わるものであり、その公正及びこれに対する信頼等が確保されなければならないことも踏まえつつ、インターネット投票の導入について、その目標時期並びに基本方針及びインターネット投票が満たすべき条件を定めるとともに、インターネット投票導入推進会議を設置すること等により、これを推進する必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

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