衆議院

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第二一一回

衆第四号

   副首都機能の整備の推進に関する法律案

目次

 第一章 総則(第一条−第六条)

 第二章 副首都地域における副首都機能の整備の推進

  第一節 副首都地域の指定等(第七条・第八条)

  第二節 基本方針(第九条−第十六条)

 第三章 副首都機能整備推進本部(第十七条−第二十七条)

 附則

   第一章 総則

 (目的)

第一条 この法律は、東京圏への政治、行政、経済等の中枢機能及び人口の一極集中により、東京圏とその他の地域との間における経済的格差が生じていること、災害その他非常の事態(以下「災害等」という。)の発生により首都中枢機能(東京圏における政治、行政、経済等の中枢機能をいう。以下同じ。)を維持することが困難となるおそれがあること及び我が国における少子化が進展し、人口の減少が継続するおそれがあることに鑑み、副首都機能の整備を推進するため、その基本理念を定め、国及び関係地方公共団体の責務を明らかにし、並びに副首都地域の指定及び副首都地域における副首都機能の整備の推進に関する基本方針について定めるとともに、副首都機能整備推進本部を設置することにより、政治、行政、経済等の中枢機能及び人口の一極集中を是正し、もって国民経済の発展及び国民生活の安定向上に資することを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において「副首都機能」とは、東京圏と並ぶ我が国の経済の中心として我が国の経済の成長を牽(けん)引するとともに、災害等の発生により首都中枢機能の全部又は一部の機能を維持することが困難となった場合に当該機能を代替する機能をいう。

2 この法律において「副首都地域」とは、副首都機能を整備すべき地域として内閣総理大臣が指定する地域をいう。

 (基本理念)

第三条 副首都機能の整備の推進は、経済基盤の強化、事業の高度化及び生産性の向上並びに新たな事業の創出の促進等により、副首都地域における産業競争力の強化及び国際的な経済活動の拠点の形成を図ることを旨として行われなければならない。

2 副首都機能の整備の推進は、災害等の発生により首都中枢機能の全部又は一部の機能を維持することが困難となった場合において、国民生活及び経済活動に及ぼす影響が最小となるようにするため、副首都地域において迅速かつ確実に当該機能を代替することができるようにすることを旨として行われなければならない。

3 副首都機能の整備の推進は、東京圏をはじめとする産業及び人口が集積している地域における少子化の進展の状況に鑑み、副首都地域における少子化に的確に対処するため、良好な子育て環境を整備することを旨として行われなければならない。

4 副首都機能の整備の推進に当たっては、地域の創意工夫及び民間の活力を生かして、効果的かつ効率的に行われるようにしなければならない。

 (国の責務)

第四条 国は、前条の基本理念(次条において単に「基本理念」という。)にのっとり、副首都機能の整備の推進に関する施策を策定し、及び実施する責務を有する。

2 国は、広報活動等を通じて、副首都機能の整備が我が国の経済の成長並びに災害等の発生時における国民生活及び経済活動の維持に果たす役割に関する国民の理解を深めるよう努めなければならない。

 (関係地方公共団体の責務)

第五条 関係地方公共団体は、基本理念にのっとり、副首都地域における副首都機能の整備の推進に関する施策を策定し、及び実施する責務を有する。

 (関係者相互の連携及び協力)

第六条 国、関係地方公共団体、関係事業者その他の関係者は、副首都地域における副首都機能の整備を推進するため、相互に連携を図りながら協力するよう努めるものとする。

   第二章 副首都地域における副首都機能の整備の推進

    第一節 副首都地域の指定等

 (副首都地域の指定)

第七条 第二条第二項の規定による副首都地域の指定(以下単に「副首都地域の指定」という。)は、この法律の施行後一年以内を目途として、次に掲げる要件のいずれにも該当する地域のうちから、行うものとする。

 一 人口及び都市機能の集積の程度が高く、経済活動が活発に行われている地域であること。

 二 東京圏が災害により著しい被害を受ける場合に同一の災害により著しい被害を受けるおそれが少ないと見込まれる地域であること。

2 前項に定めるもののほか、副首都地域の指定に際しての関係地方公共団体からの意見の聴取その他の副首都地域の指定の手続に関し必要な事項は、別に法律で定める。

 (副首都地域会議)

第八条 副首都地域の指定があったときは、当該副首都地域における副首都機能の整備を国及び関係地方公共団体が相互に連携協力して一体的に推進するために必要な協議を行うため、別に法律で定めるところにより、副首都機能整備担当大臣(内閣総理大臣の命を受けて、副首都機能の整備の推進に関し内閣総理大臣を助けることをその職務とする国務大臣をいう。第二十一条第一項において同じ。)、関係地方公共団体の長等で組織する副首都地域会議を設けるものとする。

    第二節 基本方針

 (基本方針に基づく副首都地域における副首都機能の整備の推進)

第九条 国及び関係地方公共団体は、副首都地域の指定があったときは、次条から第十五条までに定める基本方針(第十六条において単に「基本方針」という。)に基づき、当該副首都地域における副首都機能の整備を推進するものとする。

 (経済基盤の強化)

第十条 副首都地域における副首都機能の整備の推進に当たっては、経済基盤の強化を図るため、副首都地域内及び国内外の他の地域との間の交流及び物資の流通を促進するための交通施設の整備並びに交通の利便性の向上及び円滑化の促進、国際会議場施設の整備その他の都市機能の増進に寄与するまちづくりの推進、安定的かつ適切なエネルギーの需給構造の構築の促進その他の必要な措置が講ぜられなければならない。

 (事業の高度化及び生産性の向上並びに新たな事業の創出の促進)

第十一条 副首都地域における副首都機能の整備の推進に当たっては、事業の高度化及び生産性の向上並びに新たな事業の創出の促進を図るため、必要な規制緩和の推進、国及び関係地方公共団体が保有するデータの事業者による活用の促進、起業を志望する者及び新たに事業を開始した者に対する助言、情報の提供その他の支援を行う事業者に対する援助、外国法人又は外国人若しくは外国法人が経営を支配する法人によるその事業の用に供する施設の新増設の促進その他の必要な措置が講ぜられなければならない。

 (人材の育成及び確保)

第十二条 副首都地域における副首都機能の整備の推進に当たっては、副首都地域における産業競争力の強化及び国際的な経済活動の拠点の形成に寄与する人材の育成及び確保を図るため、教育の充実並びに職業能力の開発及び向上の促進、高度の専門的な能力を有する外国人の受入れの促進その他の必要な措置が講ぜられなければならない。

 (首都中枢機能の代替)

第十三条 副首都地域における副首都機能の整備の推進に当たっては、災害等の発生により首都中枢機能の全部又は一部の機能を維持することが困難となった場合に副首都地域において迅速かつ確実に当該機能を代替することができるよう、必要な施設の確保及び体制の整備、首都中枢機能の代替のための拠点の形成に資する副首都地域への国の行政機関の官署及び独立行政法人(独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号)第二条第一項に規定する独立行政法人をいう。第二十三条第一項において同じ。)の事務所の移転、副首都地域における災害等による被害の発生を防止し、又は軽減するために必要な公共施設等の整備その他の必要な措置が講ぜられなければならない。

 (良好な子育て環境の整備)

第十四条 副首都地域における副首都機能の整備の推進に当たっては、良好な子育て環境を整備するため、妊娠、出産、育児等の各段階に応じた支援の充実、全ての子どもが等しく質の高い教育を受ける機会の確保、子どもの養育及び成長に適した良質な住宅及び良好な居住環境の確保その他の必要な措置が講ぜられなければならない。

 (地域の創意工夫及び民間の活力)

第十五条 副首都地域における副首都機能の整備の推進に当たっては、副首都機能の整備に地域の創意工夫及び民間の活力を生かすため、国から関係地方公共団体への必要な権限の移譲、副首都地域内の市町村とこれを包括する道府県の事務の分担及び事務の処理に当たっての連携の在り方の見直し、民間の資金、経営能力及び技術的能力の活用その他の必要な措置が講ぜられなければならない。

 (財政上の措置等)

第十六条 政府は、基本方針に基づく施策を実施するため必要な財政上の措置その他の措置を講ずるものとする。

   第三章 副首都機能整備推進本部

 (設置)

第十七条 副首都機能の整備の推進を総合的かつ集中的に行うため、内閣に、副首都機能整備推進本部(以下「本部」という。)を置く。

 (所掌事務)

第十八条 本部は、次に掲げる事務をつかさどる。

 一 副首都機能の整備の推進に関する総合調整に関すること。

 二 副首都地域の指定及び副首都地域会議に関し必要な法律案の立案に関すること。

 三 前二号に掲げるもののほか、副首都機能の整備の推進に関する施策で重要なものの企画に関する審議及びその施策の実施の推進に関すること。

 (組織)

第十九条 本部は、副首都機能整備推進本部長、副首都機能整備推進副本部長及び副首都機能整備推進本部員をもって組織する。

 (副首都機能整備推進本部長)

第二十条 本部の長は、副首都機能整備推進本部長(以下「本部長」という。)とし、内閣総理大臣をもって充てる。

2 本部長は、本部の事務を総括し、所部の職員を指揮監督する。

 (副首都機能整備推進副本部長)

第二十一条 本部に、副首都機能整備推進副本部長(次項及び次条第二項において「副本部長」という。)を置き、内閣官房長官及び副首都機能整備担当大臣をもって充てる。

2 副本部長は、本部長の職務を助ける。

 (副首都機能整備推進本部員)

第二十二条 本部に、副首都機能整備推進本部員(次項において「本部員」という。)を置く。

2 本部員は、本部長及び副本部長以外の全ての国務大臣をもって充てる。

 (資料の提出その他の協力)

第二十三条 本部は、その所掌事務を遂行するため必要があると認めるときは、関係行政機関、地方公共団体、独立行政法人及び地方独立行政法人(地方独立行政法人法(平成十五年法律第百十八号)第二条第一項に規定する地方独立行政法人をいう。)の長並びに特殊法人(法律により直接に設立された法人又は特別の法律により特別の設立行為をもって設立された法人であって、総務省設置法(平成十一年法律第九十一号)第四条第一項第八号の規定の適用を受けるものをいう。)の代表者に対して、資料の提出、意見の開陳、説明その他の必要な協力を求めることができる。

2 本部は、その所掌事務を遂行するため特に必要があると認めるときは、前項に規定する者以外の者に対しても、必要な協力を依頼することができる。

 (副首都機能整備推進会議)

第二十四条 本部に、副首都機能整備推進会議(以下この条において「推進会議」という。)を置く。

2 推進会議は、学識経験を有する者のうちから、内閣総理大臣が任命する委員二十人以内で組織する。

3 推進会議は、副首都機能の整備の推進に関する事項について調査審議し、本部長に意見を述べるものとする。

4 推進会議は、前項の規定により意見を述べたときは、遅滞なく、その内容を公表しなければならない。

5 本部長は、第三項の規定による意見に基づき措置を講じたときは、その旨を推進会議に通知しなければならない。

 (事務)

第二十五条 本部に関する事務は、内閣府において処理する。

 (主任の大臣)

第二十六条 本部に係る事項については、内閣法(昭和二十二年法律第五号)にいう主任の大臣は、内閣総理大臣とする。

 (政令への委任)

第二十七条 この法律に定めるもののほか、本部に関し必要な事項は、政令で定める。

   附 則

 (施行期日)

1 この法律は、公布の日から施行する。ただし、第三章の規定は、公布の日から起算して一月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

 (内閣府設置法の一部改正)

2 内閣府設置法(平成十一年法律第八十九号)の一部を次のように改正する。

  第四条第一項第三号中「第十一号」を「第十一号の二」に改め、同項第十一号の次に次の一号を加える。

  十一の二 副首都機能(副首都機能の整備の推進に関する法律(令和五年法律第▼▼▼号)第二条第一項に規定するものをいう。第三項第三号の八において同じ。)の整備の推進を図るための基本的な政策に関する事項

  第四条第三項第三号の七の次に次の一号を加える。

  三の八 副首都機能の整備の推進に関する法律第二条第二項に規定する副首都地域の指定に関すること及び副首都機能の整備の推進に関する関係行政機関の事務の調整に関すること。

  第四十条の二第一項中「、第十号及び第十一号」を「及び第十号から第十一号の二まで」に、「、第三号の六及び第三号の七」を「及び第三号の六から第三号の八まで」に改める。


     理 由

 東京圏への政治、行政、経済等の中枢機能及び人口の一極集中により、東京圏とその他の地域との間における経済的格差が生じていること、災害等の発生により首都中枢機能を維持することが困難となるおそれがあること及び我が国における少子化が進展し、人口の減少が継続するおそれがあることに鑑み、副首都機能の整備を推進するため、その基本理念を定め、国及び関係地方公共団体の責務を明らかにし、並びに副首都地域の指定及び副首都地域における副首都機能の整備の推進に関する基本方針について定めるとともに、副首都機能整備推進本部を設置する必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

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