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第二一一回

閣第三〇号

   裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律の一部を改正する法律案

 裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律(平成十六年法律第百五十一号)の一部を次のように改正する。

 目次中「第二十七条」を「第二十七条の十一」に改める。

 第二条に次の一号を加える。

 五 特定和解 認証紛争解決手続において紛争の当事者間に成立した和解であって、当該和解に基づいて民事執行をすることができる旨の合意がされたものをいう。

 第十一条第二項中「掲示しなければ」を「掲示し、又はインターネットの利用その他の方法により公表しなければ」に改める。

 第十四条中「いう」の下に「。第二十七条の二第三項において同じ」を加える。

 第三章に次の十条を加える。

 (特定和解の執行決定)

第二十七条の二 特定和解に基づいて民事執行をしようとする当事者は、債務者を被申立人として、裁判所に対し、執行決定(特定和解に基づく民事執行を許す旨の決定をいう。以下この章において同じ。)を求める申立てをしなければならない。

2 前項の申立てをする者(次項及び第四項において「申立人」という。)は、次に掲げる書面を提出しなければならない。

 一 当事者が作成した特定和解の内容が記載された書面

 二 認証紛争解決事業者又は手続実施者が作成した特定和解が認証紛争解決手続において成立したものであることを証明する書面

3 前項の書面については、これに記載すべき事項を記録した電磁的記録に係る記録媒体の提出をもって、当該書面の提出に代えることができる。この場合において、当該記録媒体を提出した申立人は、当該書面を提出したものとみなす。

4 第一項の申立てを受けた裁判所は、他の裁判所又は仲裁廷に対して当該特定和解に関する他の申立てがあった場合において、必要があると認めるときは、同項の申立てに係る手続を中止することができる。この場合において、裁判所は、申立人の申立てにより、被申立人に対し、担保を立てるべきことを命ずることができる。

5 第一項の申立てに係る事件は、次に掲げる裁判所の管轄に専属する。

 一 当事者が合意により定めた地方裁判所

 二 当該事件の被申立人の普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所

 三 請求の目的又は差し押さえることができる被申立人の財産の所在地を管轄する地方裁判所

6 前項の規定により二以上の裁判所が管轄権を有するときは、先に申立てがあった裁判所が管轄する。

7 裁判所は、第一項の申立てに係る事件の全部又は一部がその管轄に属しないと認めるときは、申立てにより又は職権で、これを管轄裁判所に移送しなければならない。

8 裁判所は、第六項の規定により管轄する事件について、相当と認めるときは、申立てにより又は職権で、当該事件の全部又は一部を同項の規定により管轄権を有しないこととされた裁判所に移送することができる。

9 前二項の規定による決定に対しては、その告知を受けた日から二週間の不変期間内に、即時抗告をすることができる。

10 裁判所は、次項の規定により第一項の申立てを却下する場合を除き、執行決定をしなければならない。

11 裁判所は、第一項の申立てがあった場合において、次の各号に掲げる事由のいずれかがあると認めるとき(第一号から第五号までに掲げる事由にあっては、被申立人が当該事由の存在を証明した場合に限る。)に限り、当該申立てを却下することができる。

 一 特定和解が、無効、取消しその他の事由により効力を有しないこと。

 二 特定和解に基づく債務の内容を特定することができないこと。

 三 特定和解に基づく債務の全部が履行その他の事由により消滅したこと。

 四 認証紛争解決事業者又は手続実施者がこの法律若しくはこの法律に基づく法務省令の規定又は認証紛争解決手続を実施する契約において定められた手続の準則(公の秩序に関しないものに限る。)に違反した場合であって、その違反する事実が重大であり、かつ、当該特定和解の成立に影響を及ぼすものであること。

 五 手続実施者が、当事者に対し、自己の公正性又は独立性に疑いを生じさせるおそれのある事実を開示しなかった場合であって、当該事実が重大であり、かつ、当該特定和解の成立に影響を及ぼすものであること。

 六 特定和解の対象である事項が、和解の対象とすることができない紛争に関するものであること。

 七 特定和解に基づく民事執行が、公の秩序又は善良の風俗に反すること。

12 裁判所は、口頭弁論又は当事者双方が立ち会うことができる審尋の期日を経なければ、第一項の申立てについての決定をすることができない。

13 第一項の申立てについての決定に対しては、その告知を受けた日から二週間の不変期間内に、即時抗告をすることができる。

 (適用除外)

第二十七条の三 前条の規定は、次に掲げる特定和解については、適用しない。

 一 消費者(消費者契約法(平成十二年法律第六十一号)第二条第一項に規定する消費者をいう。)と事業者(同条第二項に規定する事業者をいう。)との間で締結される契約に関する紛争に係る特定和解

 二 個別労働関係紛争(個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律(平成十三年法律第百十二号)第一条に規定する個別労働関係紛争をいう。)に係る特定和解

 三 人事に関する紛争その他家庭に関する紛争に係る特定和解(民事執行法(昭和五十四年法律第四号)第百五十一条の二第一項各号に掲げる義務に係る金銭債権に係るものを除く。)

 四 調停による国際的な和解合意に関する国際連合条約の実施に関する法律(令和五年法律第▼▼▼号)第二条第三項に規定する国際和解合意に該当する特定和解であって、同法の規定の適用を受けるもの

 (任意的口頭弁論)

第二十七条の四 執行決定の手続に関する裁判は、口頭弁論を経ないですることができる。

 (事件の記録の閲覧等)

第二十七条の五 執行決定の手続について利害関係を有する者は、裁判所書記官に対し、次に掲げる事項を請求することができる。

 一 事件の記録の閲覧又は謄写

 二 事件の記録中の電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られた記録の複製

 三 事件の記録の正本、謄本又は抄本の交付

 四 事件に関する事項の証明書の交付

 (期日の呼出し)

第二十七条の六 執行決定の手続における期日の呼出しは、呼出状の送達、当該事件について出頭した者に対する期日の告知その他相当と認める方法によってする。

2 呼出状の送達及び当該事件について出頭した者に対する期日の告知以外の方法による期日の呼出しをしたときは、期日に出頭しない者に対し、法律上の制裁その他期日の不遵守による不利益を帰することができない。ただし、その者が期日の呼出しを受けた旨を記載した書面を提出したときは、この限りでない。

 (公示送達の方法)

第二十七条の七 執行決定の手続における公示送達は、裁判所書記官が送達すべき書類を保管し、いつでも送達を受けるべき者に交付すべき旨を裁判所の掲示場に掲示してする。

 (電子情報処理組織による申立て等)

第二十七条の八 執行決定の手続における申立てその他の申述(以下この条において「申立て等」という。)のうち、当該申立て等に関するこの法律その他の法令の規定により書面等(書面、書類、文書、謄本、抄本、正本、副本、複本その他文字、図形等人の知覚によって認識することができる情報が記載された紙その他の有体物をいう。次項及び第四項において同じ。)をもってするものとされているものであって、最高裁判所の定める裁判所に対してするもの(当該裁判所の裁判長、受命裁判官、受託裁判官又は裁判所書記官に対してするものを含む。)については、当該法令の規定にかかわらず、最高裁判所規則で定めるところにより、電子情報処理組織(裁判所の使用に係る電子計算機(入出力装置を含む。以下この項及び第三項において同じ。)と申立て等をする者の使用に係る電子計算機とを電気通信回線で接続した電子情報処理組織をいう。)を用いてすることができる。

2 前項の規定によりされた申立て等については、当該申立て等を書面等をもってするものとして規定した申立て等に関する法令の規定に規定する書面等をもってされたものとみなして、当該申立て等に関する法令の規定を適用する。

3 第一項の規定によりされた申立て等は、同項の裁判所の使用に係る電子計算機に備えられたファイルへの記録がされた時に、当該裁判所に到達したものとみなす。

4 第一項の場合において、当該申立て等に関する他の法令の規定により署名等(署名、記名、押印その他氏名又は名称を書面等に記載することをいう。以下この項において同じ。)をすることとされているものについては、当該申立て等をする者は、当該法令の規定にかかわらず、当該署名等に代えて、最高裁判所規則で定めるところにより、氏名又は名称を明らかにする措置を講じなければならない。

5 第一項の規定によりされた申立て等が第三項に規定するファイルに記録されたときは、第一項の裁判所は、当該ファイルに記録された情報の内容を書面に出力しなければならない。

6 第一項の規定によりされた申立て等に係るこの法律その他の法令の規定による事件の記録の閲覧若しくは謄写又はその正本、謄本若しくは抄本の交付は、前項の書面をもってするものとする。当該申立て等に係る書類の送達又は送付も、同様とする。

 (裁判書)

第二十七条の九 執行決定の手続に係る裁判の裁判書を作成する場合には、当該裁判書には、当該裁判に係る主文、当事者及び法定代理人並びに裁判所を記載しなければならない。

2 前項の裁判書を送達する場合には、当該送達は、当該裁判書の正本によってする。

 (民事訴訟法の準用)

第二十七条の十 特別の定めがある場合を除き、執行決定の手続に関しては、その性質に反しない限り、民事訴訟法(平成八年法律第百九号)第一編から第四編までの規定(同法第七十一条第二項、第九十一条の二、第九十二条第九項及び第十項、第九十二条の二第二項、第九十四条、第百条第二項、第一編第五章第四節第三款、第百十一条、第一編第七章、第百三十三条の二第五項及び第六項、第百三十三条の三第二項、第百五十一条第三項、第百六十条第二項、第百八十五条第三項、第二百五条第二項、第二百十五条第二項、第二百二十七条第二項並びに第二百三十二条の二の規定を除く。)を準用する。この場合において、別表の上欄に掲げる同法の規定中同表の中欄に掲げる字句は、それぞれ同表の下欄に掲げる字句に読み替えるものとする。

 (最高裁判所規則)

第二十七条の十一 この法律に定めるもののほか、執行決定の手続に関し必要な事項は、最高裁判所規則で定める。

 第三十二条第一項中「者」を「ときは、当該違反行為をした者」に改め、同条第二項中「者は」を「ときは、当該違反行為をした者は」に改め、同条第三項中「者は」を「場合には、当該違反行為をした者は」に改め、同項各号中「者」を「とき。」に改める。

 第三十四条第一項第一号中「よる掲示を」を「よる掲示及び公表のいずれも」に、「した」を「し、若しくは虚偽の公表をした」に改める。

 附則の次に次の別表を加える。

別表(第二十七条の十関係)

第百十二条第一項本文

前条の規定による措置を開始した

裁判所書記官が送達すべき書類を保管し、いつでも送達を受けるべき者に交付すべき旨の裁判所の掲示場への掲示を始めた

第百十二条第一項ただし書

前条の規定による措置を開始した

当該掲示を始めた

第百十三条

書類又は電磁的記録

書類

 

記載又は記録

記載

 

第百十一条の規定による措置を開始した

裁判所書記官が送達すべき書類を保管し、いつでも送達を受けるべき者に交付すべき旨の裁判所の掲示場への掲示を始めた

第百三十三条の三第一項

記載され、又は記録された書面又は電磁的記録

記載された書面

 

当該書面又は電磁的記録

当該書面

 

又は電磁的記録その他これに類する書面又は電磁的記録

その他これに類する書面

第百五十一条第二項及び第二百三十一条の二第二項

方法又は最高裁判所規則で定める電子情報処理組織を使用する方法

方法

第百六十条第一項

最高裁判所規則で定めるところにより、電子調書(期日又は期日外における手続の方式、内容及び経過等の記録及び公証をするためにこの法律その他の法令の規定により裁判所書記官が作成する電磁的記録をいう。以下同じ。)

調書

第百六十条第三項

前項の規定によりファイルに記録された電子調書の内容に

調書の記載について

第百六十条第四項

第二項の規定によりファイルに記録された電子調書

調書

 

当該電子調書

当該調書

第百六十条の二第一項

前条第二項の規定によりファイルに記録された電子調書の内容

調書の記載

第百六十条の二第二項

その旨をファイルに記録して

調書を作成して

第二百五条第三項

事項又は前項の規定によりファイルに記録された事項若しくは同項の記録媒体に記録された事項

事項

第二百十五条第四項

事項又は第二項の規定によりファイルに記録された事項若しくは同項の記録媒体に記録された事項

事項

第二百三十一条の三第二項

若しくは送付し、又は最高裁判所規則で定める電子情報処理組織を使用する

又は送付する

第二百六十一条第四項

電子調書

調書

 

記録しなければ

記載しなければ

   附 則

 (施行期日)

第一条 この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、第十一条第二項の改正規定及び第三十四条第一項第一号の改正規定は、公布の日から起算して三月を経過した日から施行する。

 (特定和解の執行決定に関する経過措置)

第二条 この法律による改正後の裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律(次条において「新法」という。)第二十七条の二の規定は、この法律の施行の日以後に成立する特定和解について適用する。

 (民事訴訟法等改正法の施行の日の前日までの間における経過措置)

第三条 新法第二十七条の六から第二十七条の九までの規定は、民事訴訟法等の一部を改正する法律(令和四年法律第四十八号。次項において「民事訴訟法等改正法」という。)の施行の日の前日までの間は、適用しない。

2 民事訴訟法等改正法の施行の日の前日までの間における新法第二十七条の十の規定の適用については、同条中「第七十一条第二項、第九十一条の二、第九十二条第九項及び第十項、第九十二条の二第二項、第九十四条、第百条第二項、第一編第五章第四節第三款、第百十一条、第一編第七章、第百三十三条の二第五項及び第六項、第百三十三条の三第二項、第百五十一条第三項、第百六十条第二項、第百八十五条第三項、第二百五条第二項、第二百十五条第二項、第二百二十七条第二項並びに第二百三十二条の二の規定を除く。)を準用する。この場合において、別表の上欄に掲げる同法の規定中同表の中欄に掲げる字句は、それぞれ同表の下欄に掲げる字句に読み替えるものとする」とあるのは、「第八十七条の二の規定を除く。)を準用する」とする。

 (民事訴訟費用等に関する法律の一部改正)

第四条 民事訴訟費用等に関する法律(昭和四十六年法律第四十号)の一部を次のように改正する。

  別表第一の八の二の項中「又は調停による国際的な和解合意に関する国際連合条約の実施に関する法律(令和五年法律第▼▼▼号)第五条第一項」を「、調停による国際的な和解合意に関する国際連合条約の実施に関する法律(令和五年法律第▼▼▼号)第五条第一項の規定による申立て又は裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律(平成十六年法律第百五十一号)第二十七条の二第一項」に改める。

 (民事執行法の一部改正)

第五条 民事執行法(昭和五十四年法律第四号)の一部を次のように改正する。

  第二十二条第六号の四の次に次の一号を加える。

  六の五 確定した執行決定のある特定和解

  第三十三条第二項第一号中「第六号の四」を「第六号の五」に改める。

 (罰則に関する経過措置)

第六条 附則第一条ただし書に規定する規定の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。


     理 由

 我が国における裁判外紛争解決手続の利用を一層促進し、紛争の実情に即した迅速、適正かつ実効的な解決を図るため、認証紛争解決手続において成立した和解に基づく強制執行を可能とする制度を創設する等の必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

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