婚姻前の氏の通称使用に関する法律案
(目的)
第一条 この法律は、夫婦の氏が同一であり、かつ、子は基本的にその父母である夫婦の氏を称するという氏の原則を維持しつつ、婚姻によって氏を改めた者が婚姻前の氏を通称として使用する機会を法制上確保するため、戸籍に通称として使用する婚姻前の氏を記載し又は記録する制度を設けるとともに、国、地方公共団体、事業者その他公私の団体が婚姻によって氏を改めた者の婚姻前の氏の通称使用のために必要な措置を講ずべきことを定め、もって婚姻によって氏を改めた者が社会生活上の不利益を受けることの防止に資することを目的とする。
(戸籍法の一部改正)
第二条 戸籍法(昭和二十二年法律第二百二十四号)の一部を次のように改正する。
第十三条第一項第九号を同項第十号とし、同項第八号の次に次の一号を加える。
九 第七十四条の二第一項の規定による届出をした者については、同項に規定する婚姻前の氏
第七十四条の次に次の一条を加える。
第七十四条の二 婚姻によつて氏を改めた者は、戸籍に通称として使用する婚姻前の氏及びその氏の振り仮名(次項において「婚姻前の氏」という。)を記載することを求めようとするときは、その旨を届け出なければならない。
前項の規定による届出をした者は、戸籍に記載されている婚姻前の氏を削除することを求めようとするときは、その旨を届け出なければならない。この場合においては、同項の規定による届出は、その効力を失うものとする。
(法制上の措置等)
第三条 国は、法令(戸籍法及びこれに基づく命令を除く。)の規定により氏名を記載し又は記録することとされている場合において、同法第十三条第一項(第九号に係る部分に限る。)の規定により戸籍に通称として使用する婚姻前の氏が記載され又は記録されている者については、氏名に代えて婚姻前の氏及び名を記載し又は記録することとなるよう、必要な法制上の措置その他の措置を講ずるものとする。
2 前項に定めるもののほか、国、地方公共団体、事業者その他公私の団体は、同項に規定する者が、職業生活その他の社会生活の幅広い分野における活動において、氏名に代えて婚姻前の氏及び名を通称として使用する機会を確保するため、当該活動の内容、性質等を踏まえ、必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
(経過措置)
2 この法律の施行に関し必要な経過措置は、政令で定める。
理 由
夫婦の氏が同一であり、かつ、子は基本的にその父母である夫婦の氏を称するという氏の原則を維持しつつ、婚姻によって氏を改めた者が婚姻前の氏を通称として使用する機会を法制上確保するため、戸籍に通称として使用する婚姻前の氏を記載し又は記録する制度を設けるとともに、国、地方公共団体、事業者その他公私の団体が婚姻によって氏を改めた者の婚姻前の氏の通称使用のために必要な措置を講ずべきことを定める必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。