スポーツ基本法及びスポーツにおけるドーピングの防止活動の推進に関する法律の一部を改正する法律案
(スポーツ基本法の一部改正)
第一条 スポーツ基本法(平成二十三年法律第七十八号)の一部を次のように改正する。
目次中「第二十四条」を「第二十四条の二」に、「第三節 競技水準の向上等(第二十五条―第二十九
「第三節 競技水準の向上等(第二十五条―第二十八条)
条)」を に、「第三十五
第四節 スポーツの公正及び公平の確保等(第二十九条―第二十九条の五)」
条」を「第三十六条」に改める。
前文のうち第二項中「下に」の下に「、人種、性別、年齢、障害の有無等にかかわらず」を加え、「が確保されなければならない」を「、スポーツに関し集う機会、スポーツを通じてつながる機会等が確保されることにより、多様な国民一人一人が生きがいを持ち幸福を享受できるようにするとともに、豊かさを実感できる社会の実現が図られなければならない」に改め、第五項中「高めるものである」の下に「。また、スポーツと文化芸術との連携が、人々に感動と希望をもたらし、人々の創造性を育み、人々が共に生きる絆(きずな)の形成に広く寄与するなど、スポーツと他の分野との連携は、多様な国民一人一人の幸福の享受及び豊かさを実感できる社会の実現により一層つながるものである」を加え、「また、スポーツの」を「さらに、スポーツの」に改め、第七項中「の重要性」を「は、多様な国民一人一人が、スポーツに親しみ、スポーツを楽しみ、又はスポーツを支える活動に参画すること、スポーツに関し集うこと、スポーツを通じてつながること等によって果たされるものであり、その重要性」に、「二十一世紀の」を「将来における」に改める。
第二条第一項中「鑑み」の下に「、人種、性別、年齢、障害の有無等にかかわらず」を、「すること」の下に「により、多様な国民一人一人が生きがいを持ち幸福を享受できるようにするとともに、豊かさを実感できる社会を実現すること」を加え、同条第三項中「となる」の下に「こと等により、地域振興に資する」を加え、同条第四項中「図られる」の下に「とともに、これを通じて、健康で活力に満ちた長寿社会の実現に資する」を加え、同条第五項中「障害者」の下に「をはじめとする全ての国民」を、「程度」の下に「その他の事由」を、「しつつ」の下に「、共生社会の実現に資することを旨として、」を加え、同条第六項中「(プロスポーツの選手を含む。以下同じ。)」を削り、「パラリンピック競技大会」の下に「、デフリンピック競技大会、スペシャルオリンピックス世界大会」を加え、同条第八項中「スポーツは」の下に「、障害者基本法(昭和四十五年法律第八十四号)、男女共同参画社会基本法(平成十一年法律第七十八号)、性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律(令和五年法律第六十八号)その他の関係法律の規定を踏まえ」を、「旨として」の下に「、スポーツにおけるドーピングの防止に関する国際規約その他関係法律の規定を踏まえ」を加える。
第五条第二項を次のように改める。
2 スポーツ団体は、自主的かつ自立的にスポーツの振興のための事業を行うことができるよう、その運営基盤を強化し、健全な運営の確保を図るよう努めるものとする。
第五条第三項を削る。
第七条中「及び」の下に「スポーツ、文化芸術その他の分野の」を加える。
第十条第一項中「)は」の下に「、単独で又は共同して」を加え、同条第二項を同条第三項とし、同条第一項の次に次の一項を加える。
2 地方スポーツ推進計画は、スポーツに関連する他の計画と一体のものとして定めることができる。
第十二条に次の一項を加える。
3 国及び地方公共団体は、スポーツ施設の整備及び活用に当たっては、スポーツ施設、他の施設及び周辺地域の総合的かつ複合的な整備並びにスポーツ産業の事業者その他の関係者との連携により、まちづくりとの一体的な推進を図り、地域経済の活性化及び地域内外の交流の促進等を通じて、活力ある地域社会の形成に資するよう努めるものとする。
第十四条中「整備」の下に「、スポーツの実施のための環境の整備」を加え、同条に次の一項を加える。
2 国及び地方公共団体は、前項の措置を講ずるに当たっては、気候の変動への対応に特に留意しなければならない。
第十五条を次のように改める。
第十五条 削除
第十六条第一項中「歯学」の下に「、薬学」を、「生理学」の下に「、栄養学、法学、経済学、社会学」を加え、「力学」を「倫理学、教育学」に改め、同条の次に次の二条を加える。
(スポーツの推進に寄与する情報通信技術の活用)
第十六条の二 国は、スポーツの推進に寄与する情報通信技術の活用のための環境の整備、当該情報通信技術の活用を支援する人材の確保及び当該情報通信技術の活用に関する調査研究の推進に必要な施策を講ずるものとする。
2 地方公共団体は、前項の国の施策を勘案し、その地方公共団体の地域の状況に応じたスポーツの推進に寄与する情報通信技術の活用のための施策の推進を図るよう努めるものとする。
3 スポーツ団体は、スポーツの振興のための事業の状況に応じ、その事業活動に寄与する情報通信技術の活用に努めるものとする。
(発達段階に応じて継続的に多様なスポーツに親しむ機会の確保)
第十六条の三 国、地方公共団体及びスポーツ団体は、幼児、児童、生徒、学生等のスポーツを取り巻く環境等を踏まえ、相互に連携を図りながら、これらの者がその発達段階に応じて学校の内外を問わず継続的に多様なスポーツに親しむ機会を確保するために必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
第十七条の次に次の三条を加える。
(中学校の生徒が継続的にスポーツに親しむ機会の確保)
第十七条の二 地方公共団体は、中学校(義務教育学校の後期課程、中等教育学校の前期課程及び特別支援学校の中学部を含む。以下この項において同じ。)の生徒の数の減少及びこれに伴う中学校の部活動の実施に係る状況を踏まえ、中学校の生徒が継続的に多様なスポーツに親しむことができるよう、地域の実情に応じて、学校、住民が主体的に運営するスポーツ団体(第二十一条及び第二十二条第一項において「地域スポーツクラブ」という。)その他の団体との緊密な連携の下に、中学校の生徒が地域においてスポーツに親しむ機会を確保するために必要な施策を講ずるよう努めなければならない。
2 国は、地方公共団体に対し、前項の施策の円滑な実施のために必要な助言、指導、経費の補助その他の援助を行うよう努めるものとする。
(高等学校の生徒のスポーツの推進)
第十七条の三 国、地方公共団体及びスポーツ団体は、高等学校(中等教育学校の後期課程及び特別支援学校の高等部を含む。以下この条において同じ。)の生徒のスポーツが人格の形成及びスポーツの普及のみならず、競技水準の向上の基盤の強化等においても重要な役割を果たすことに鑑み、相互に連携を図りながら、高等学校の生徒のスポーツの推進に必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
(大学におけるスポーツの推進等)
第十七条の四 国は、大学におけるスポーツがスポーツの普及、競技水準の向上、スポーツへの国民の参加の促進及び地域振興を図る上で重要な役割を果たすものであることに鑑み、大学におけるスポーツの推進及びスポーツに関する教育研究の推進に必要な施策を講ずるものとする。
第十八条中「又は競技水準の向上」を「、競技水準の向上、スポーツへの国民の参加の促進及び地域振興」に改め、「鑑み」の下に「、スポーツを通じた活力に満ちた国民経済及び地域経済の発展並びにスポーツの更なる振興に資するよう」を加える。
第二十一条中「住民が主体的に運営するスポーツ団体(以下「地域スポーツクラブ」という。)」を「地域スポーツクラブ」に改め、同条の次に次の一条を加える。
(多様な需要に応じたスポーツを楽しむ機会等の確保)
第二十一条の二 国及び地方公共団体は、多様な需要に応じてスポーツを楽しむ機会等を確保するとともに、これを通じて、スポーツ産業の事業者その他の事業者の事業機会の増大及び地域経済の活性化を図るため、スポーツを楽しむ機会等に関連する良質かつ付加価値の高いサービスの提供に必要な環境の整備その他の必要な施策を講ずるよう努めなければならない。
第三章第二節中第二十四条の次に次の一条を加える。
(情報通信技術を活用したスポーツの機会の充実)
第二十四条の二 国及び地方公共団体は、スポーツ団体と連携して、情報通信技術を活用したスポーツの機会の充実が図られるよう努めなければならない。
2 スポーツ団体は、前項の連携に当たっては、特に、スポーツを行う者の心身の健康の保持増進及び安全の確保に配慮しつつ、スポーツに関するあらゆる活動を公正かつ適切に実施することを旨として、当該連携を行うよう努めなければならない。
第二十六条の見出し中「全国障害者スポーツ大会」を「全国パラスポーツ大会」に改め、同条第一項中「以下」を「第三項及び第二十九条の五第一項において」に、「共同して」を「共同し、各運動競技に係るスポーツ団体と連携して」に改め、「とする」の下に「とともに、広く国民がスポーツに親しむ機会を提供することにより、地域振興に資するものとする」を加え、同条第二項中「全国障害者スポーツ大会」を「全国パラスポーツ大会」に、「公益財団法人日本障がい者スポーツ協会」を「公益財団法人日本パラスポーツ協会」に、「共同して」を「共同し、各運動競技に係るスポーツ団体と連携して」に改め、「とする」の下に「とともに、広く国民がスポーツに親しむ機会を提供することにより、地域振興に資するものとする」を加え、同条第三項中「全国障害者スポーツ大会」を「全国パラスポーツ大会」に、「公益財団法人日本障がい者スポーツ協会」を「公益財団法人日本パラスポーツ協会」に改める。
第二十七条第二項中「をいう」の下に「。第二十九条の五第一項において同じ」を加え、「公益財団法人日本障がい者スポーツ協会」を「公益財団法人日本パラスポーツ協会」に改め、同項を同条第三項とし、同条第一項の次に次の一項を加える。
2 国は、国際競技大会の我が国への招致又はその開催が適正になされるよう、当該国際競技大会の実施及び運営を行うことを目的とする法人の運営の透明性の確保及び当該招致又は開催に係る人材の育成に必要な施策を講ずるものとする。
第二十八条の見出し中「、大学」を削り、同条中「又は競技水準の向上」を「、競技水準の向上、スポーツへの国民の参加の促進及びスポーツを通じた地域振興」に改め、「のスポーツチーム」及び「、大学」を削り、同条の次に次の節名を付する。
第四節 スポーツの公正及び公平の確保等
第二十九条を次のように改める。
(暴力等の防止)
第二十九条 国及び地方公共団体は、スポーツを行う者に対する、暴力、優越的な関係を背景とした言動であって業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの、性的な言動(性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律(令和五年法律第六十七号)第二条から第六条までの罪に当たる行為を含む。)、インターネット上の誹(ひ)謗(ぼう)中傷等(次項において「暴力等」という。)によりスポーツを行う者の環境が害されることのないよう、必要な措置を講じなければならない。
2 スポーツ団体は、その行う事業について、スポーツを行う者に対する暴力等によりスポーツを行う者の環境が害されることのないよう努めるものとする。
第三章中第二十九条の次に次の四条を加える。
(スポーツに係る競技の不正な操作等の防止)
第二十九条の二 国は、スポーツ団体と連携して、スポーツに係る競技の不正な操作その他これに関連する違法行為又は不正行為により、スポーツにおける公正な環境が害されることのないよう、必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
(ドーピング防止活動の推進)
第二十九条の三 国は、スポーツにおけるドーピングの防止に関する国際規約に従ってドーピングの防止活動を実施するため、公益財団法人日本アンチ・ドーピング機構(平成十三年九月十六日に財団法人日本アンチ・ドーピング機構という名称で設立された法人をいう。)その他の関係機関と連携を図りつつ、ドーピングの検査、ドーピングの防止に関する教育及び啓発並びに調査及び研究その他のドーピングの防止活動の実施に係る体制の整備、国際的なドーピングの防止に関する機関等への支援その他の必要な施策を講ずるものとする。
(スポーツに関する紛争の迅速かつ適正な解決)
第二十九条の四 国は、スポーツに関する紛争の仲裁又は調停の中立性及び公正性が確保され、スポーツを行う者の権利利益の保護が図られるよう、スポーツに関する紛争の仲裁又は調停を行う機関への支援、仲裁人等の資質の向上、紛争解決手続についてのスポーツ団体の理解の増進その他のスポーツに関する紛争の迅速かつ適正な解決に資するために必要な施策を講ずるものとする。
2 スポーツ団体は、スポーツに関する紛争について、迅速かつ適正な解決に努めるものとする。
(スポーツ団体の組織運営の状況についての報告等)
第二十九条の五 国は、公益財団法人日本スポーツ協会、公益財団法人日本オリンピック委員会及び公益財団法人日本パラスポーツ協会に対し、それぞれに加盟する全国的な規模のスポーツ団体の組織運営に関する指導等の状況について報告を求め、必要に応じ、助言を行うものとする。
2 スポーツ団体は、第九条第二項の政令で定める審議会等の意見を聴いてスポーツ庁長官が定めるスポーツ団体の適正な運営に関する指針に基づき、その事業活動に関し、自らが遵守すべき基準を作成し、当該指針に従って講じた措置の状況等を公表すること等により、その運営の公正性及び透明性の確保を図るよう努めるものとする。
第三十三条第一項第一号中「全国障害者スポーツ大会」を「全国パラスポーツ大会」に改める。
本則に次の一条を加える。
(スポーツの振興のために必要な資金等)
第三十六条 国は、スポーツの振興を通じてこれに関する知識、人材及び資金の好循環を実現するよう努めなければならない。
2 国は、スポーツを支える者の協力の下に、地方公共団体又はスポーツ団体が行うスポーツの振興を目的とする事業に要する資金その他のスポーツの振興のために必要な資金を得るための措置を講ずるものとする。
3 前項の資金の支給を受ける地方公共団体又はスポーツ団体は、当該資金に係る事業を通じて、社会の発展及び地域振興に貢献するよう努めるものとする。
(スポーツにおけるドーピングの防止活動の推進に関する法律の一部改正)
第二条 スポーツにおけるドーピングの防止活動の推進に関する法律(平成三十年法律第五十八号)の一部を次のように改正する。
第八条中「日本アンチ・ドーピング機構」の下に「、一般社団法人日本スポーツフェアネス推進機構(平成三十年十一月十六日に一般社団法人日本スポーツフェアネス推進機構という名称で設立された法人をいう。)」を加える。
附 則
この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、第一条中スポーツ基本法第二十六条の見出しの改正規定、同条第二項の改正規定(「全国障害者スポーツ大会」を「全国パラスポーツ大会」に改める部分に限る。)及び同条第三項の改正規定(「全国障害者スポーツ大会」を「全国パラスポーツ大会」に改める部分に限る。)並びに同法第三十三条第一項第一号の改正規定は、令和十三年一月一日から施行する。
理 由
スポーツを取り巻く環境の変化に対応するため、スポーツ基本法について、前文及び基本理念の見直し、地方スポーツ推進計画に係る規定の整備、基本的施策の拡充等の措置を講ずるとともに、スポーツにおけるドーピングの防止活動の推進に関する法律について、国等が連携を図る関係者として一般社団法人日本スポーツフェアネス推進機構を明記する必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。