第二一七回
閣第二七号
鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律の一部を改正する法律案
鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律(平成十四年法律第八十八号)の一部を次のように改正する。
目次中「第四章 狩猟の適正化」を
「 |
第三章の二 緊急銃猟(第三十四条の二−第三十四条の六) |
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|
第四章 狩猟の適正化 |
」 |
に改める。
第二条第十項中「第七項」を「第八項」に改め、同項を同条第十一項とし、同条中第九項を第十項とし、第六項から第八項までを一項ずつ繰り下げ、第五項の次に次の一項を加える。
6 この法律において「危険鳥獣」とは、熊その他の人の日常生活圏に出現した場合に人の生命又は身体に危害を及ぼすおそれが大きいものとして政令で定める鳥獣をいう。
第三条第二項中第五号を第六号とし、第四号の次に次の一号を加える。
五 危険鳥獣の管理に関する事項
第四条第二項中第九号を第十号とし、第八号を第九号とし、第七号の次に次の一号を加える。
八 危険鳥獣の当該都道府県の区域内における生息の状況その他の事情を勘案して必要があると認める場合においては、当該危険鳥獣の人の日常生活圏への侵入の防止に関する事項
第十一条第一項第一号中「次章第一節」を「第四章第一節」に改める。
第十二条第六項中「第二条第十項」を「第二条第十一項」に改める。
第三章の次に次の一章を加える。
第三章の二 緊急銃猟
(緊急銃猟)
第三十四条の二 市町村長(特別区の区長を含む。以下この章において同じ。)は、危険鳥獣が、住居、広場その他の人の日常生活の用に供されている場所又は電車、自動車、船舶その他の人の日常生活の用に供されている乗物(以下この項において「住居等」という。)に侵入していること又は侵入するおそれが大きいことを把握し、かつ、当該危険鳥獣による人の生命又は身体に対する危害を防止するための措置を緊急に講ずる必要があると認める場合において、銃器を使用した鳥獣の捕獲等(以下「銃猟」という。)以外の方法によっては的確かつ迅速に当該危険鳥獣の捕獲等をすることが困難であり、かつ、第三十四条の四の規定による措置その他の措置を講ずることにより銃猟によって人に弾丸の到達するおそれその他の人の生命又は身体に危害を及ぼすおそれがないと認めるときは、住居等又はその付近において、当該危険鳥獣について銃猟をすることができる。
2 市町村長は、前項の規定による銃猟(以下「緊急銃猟」という。)をしようとするときは、その職員に緊急銃猟を実施させ、又はその職員以外の者に委託して緊急銃猟を実施させることができる。この場合において、市町村長は、緊急銃猟を実施する場所、緊急銃猟の実施に当たり留意すべき事項その他の緊急銃猟の実施に関する事項をこれらの者に明らかにするものとする。
3 市町村長は、前項の規定により緊急銃猟を実施させる場合には、第三十九条第一項に規定する狩猟免許を受けた者であることその他の適正に緊急銃猟を実施するために必要な経験、技能及び知識を有する者として政令で定める要件を備える者に緊急銃猟を実施させるものとする。
4 緊急銃猟を実施する者は、その身分を示す証票を携帯し、関係者の請求があるときは、これを提示しなければならない。
5 緊急銃猟として実施する行為については、第八条、第十五条第四項、第十七条、第三十五条第二項及び第三項並びに第三十八条の規定は、適用しない。ただし、同条第三項(弾丸の到達するおそれのある人に向かってする銃猟の制限に係る部分に限る。)の規定については、市町村長の指揮を受け、人の生命又は身体に危害を及ぼすことがないように当該緊急銃猟を実施する場合に限る。
(緊急銃猟等のための土地の立入り等)
第三十四条の三 市町村長は、緊急銃猟をし、又は緊急銃猟により捕獲等をした危険鳥獣の適切な処理をするために必要な限度において、その職員に他人の土地に立ち入らせ、若しくは障害物を除去させ、又はその職員以外の者に委託して他人の土地に立ち入らせ、若しくは障害物を除去させることができる。
2 前項の規定による措置を実施する者は、その身分を示す証票を携帯し、関係者の請求があるときは、これを提示しなければならない。
(安全を確保するための措置)
第三十四条の四 市町村長は、緊急銃猟をしようとする場合において、緊急銃猟の実施に伴う人の生命又は身体に対する危害を防止するため必要があると認めるときは、政令で定める手続に従い、当該危害が発生するおそれのある場所の通行を禁止し、又は制限することができる。
2 市町村長は、緊急銃猟をしようとする場合において、緊急銃猟の実施に伴う人の生命又は身体に対する危害を防止するため必要があると認めるときは、当該危害が発生するおそれのある地域の住民に対し、避難すべき旨を指示することができる。
(都道府県知事に対する応援の要求等)
第三十四条の五 市町村長は、緊急銃猟をする必要があると認めるときは、都道府県知事に対し、的確かつ迅速に当該緊急銃猟をし、又は第三十四条の三第一項若しくは前条の規定による措置を講ずるため、応援を求めることができる。この場合において、当該応援を求められた都道府県知事は、正当な理由がない限り、応援を拒んではならない。
2 前項の応援に従事する者は、同項に規定する措置の実施については、当該応援を求めた市町村長の指揮の下に行動するものとする。
3 第一項の規定により都道府県知事の応援を受けた市町村長は、当該応援に要した費用を負担しなければならない。
(損失の補償)
第三十四条の六 市町村長は、緊急銃猟の実施又は第三十四条の三第一項の規定による措置のため損失を受けた者に対し、通常生ずべき損失の補償をする。
2 前項の補償を受けようとする者は、市町村長にその請求をしなければならない。
3 市町村長は、前項の請求を受けたときは、補償すべき金額を決定し、その請求をした者に通知しなければならない。
4 前項の規定による金額の決定に不服がある者は、同項の規定による通知を受けた日から六月を経過する日までの間に、訴えをもってその増額の請求をすることができる。
5 前項の訴えにおいては、市町村(特別区を含む。)を被告とする。
第三十五条第十二項中「前条第三項」を「第三十四条第三項」に、「次条第十二項」を「第三十五条第十二項」に改める。
第三十八条第一項中「銃器を使用した鳥獣の捕獲等(以下「銃猟」という。)」を「銃猟」に改める。
第三十九条第三項の表中「第二条第六項」を「第二条第七項」に改める。
第五十五条第一項ただし書中「及び第十一条第一項第二号」を「、第十一条第一項第二号」に改め、「掲げる場合」の下に「及び緊急銃猟を実施する場合」を加える。
第八十三条第一項中「者は」を「場合には、当該違反行為をした者は」に改め、同項第一号中「者(」を「とき(」に、「を除く。)」を「であるときを除く。)。」に改め、同項第二号中「者(」を「とき(」に、「者及び」を「者であるとき及び」に、「を除く。)」を「であるときを除く。)。」に改め、同項第六号中「受けた者」を「受けたとき。」に改め、同号を同項第七号とし、同項第五号中「者」を「とき。」に改め、同号を同項第六号とし、同項第四号中「者」を「とき。」に改め、同号を同項第五号とし、同項第三号中「者」を「とき。」に改め、同号を同項第四号とし、同項第二号の二中「者(」を「とき(」に、「者及び」を「者であるとき及び」に、「を除く。)」を「であるときを除く。)。」に改め、同号を同項第三号とし、同条第二項及び第三項中「第二号の二」を「第三号」に、「第四号」を「第五号」に、「第五号」を「第六号」に改める。
第八十四条第一項中「者は」を「場合には、当該違反行為をした者は」に改め、同項第一号中「者」を「とき。」に改め、同項第二号中「使用させた者」を「使用させたとき。」に改め、同項第三号中「使用した者」を「使用したとき。」に改め、同項第四号から第七号までの規定中「者」を「とき。」に改め、同条の次に次の一条を加える。
第八十四条の二 第三十四条の四第一項の規定による通行の禁止又は制限に違反したときは、当該違反行為をした者は、三月以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金に処する。
第八十五条第一項中「者は」を「場合には、当該違反行為をした者は」に改め、同項第一号中「者」を「とき。」に改め、同項第二号中「した者」を「したとき。」に改め、同項第三号及び第四号中「者」を「とき。」に改め、同項第五号中「若しくは」を「又は」に、「者」を「とき。」に改め、同項第六号及び第七号中「者」を「とき。」に改める。
第八十六条中「者は」を「場合には、当該違反行為をした者は」に改め、同条第一号中「者」を「とき。」に改め、同条第十一号中「者」を「とき。」に改め、同号を同条第十二号とし、同条第十号中「者」を「とき。」に改め、同号を同条第十一号とし、同条第九号中「者」を「とき。」に改め、同号を同条第十号とし、同条第八号中「者」を「とき。」に改め、同号を同条第九号とし、同条第七号中「者」を「とき。」に改め、同号を同条第八号とし、同条第六号中「した者」を「したとき。」に改め、同号を同条第七号とし、同条第五号中「者」を「とき。」に改め、同号を同条第六号とし、同条第四号中「者」を「とき。」に改め、同号を同条第五号とし、同条第三号中「者」を「とき。」に改め、同号を同条第四号とし、同条第二号中「者」を「とき。」に改め、同号を同条第三号とし、同条第一号の二中「者」を「とき。」に改め、同号を同条第二号とする。
第八十八条中「第八十三条から第八十六条まで」を「第八十三条第一項若しくは第二項、第八十四条、第八十四条の二、第八十五条第一項又は第八十六条」に改める。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。
一 次条及び附則第三条の規定 公布の日
二 第三条第二項及び第四条第二項の改正規定 公布の日から起算して二年六月を超えない範囲内において政令で定める日
(施行前の準備)
第二条 環境大臣は、前条第二号に掲げる規定の施行の日(次項及び次条において「第二号施行日」という。)前においても、この法律による改正後の鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律(以下「新法」という。)第三条の規定の例により、同条第一項の基本指針を定め、公表し、都道府県知事に通知することができる。
2 前項の規定により定められ、公表され、都道府県知事に通知された新法第三条第一項の基本指針は、第二号施行日において同条の規定により定められ、公表され、都道府県知事に通知されたものとみなす。
第三条 都道府県知事は、第二号施行日前においても、新法第四条の規定の例により、同条第一項の鳥獣保護管理事業計画を定め、公表し、環境大臣に報告することができる。
2 前項の規定により定められ、公表され、環境大臣に報告された新法第四条第一項の鳥獣保護管理事業計画は、第二号施行日において同条の規定により定められ、公表され、環境大臣に報告されたものとみなす。
(検討)
第四条 政府は、この法律の施行後五年を経過した場合において、新法の施行の状況を勘案し、必要があると認めるときは、新法の規定について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
(地方税法及び銃砲刀剣類所持等取締法の一部改正)
第五条 次に掲げる法律の規定中「第二条第九項」を「第二条第十項」に改める。
一 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)附則第三十二条の二第一項ただし書
二 銃砲刀剣類所持等取締法(昭和三十三年法律第六号)第十条の二第一項
(道州制特別区域における広域行政の推進に関する法律の一部改正)
第六条 道州制特別区域における広域行政の推進に関する法律(平成十八年法律第百十六号)の一部を次のように改正する。
第十六条第一項中「第八十三条第一項第三号」を「第八十三条第一項第四号」に改める。
(鳥獣による農林水産業等に係る被害の防止のための特別措置に関する法律の一部改正)
第七条 鳥獣による農林水産業等に係る被害の防止のための特別措置に関する法律(平成十九年法律第百三十四号)の一部を次のように改正する。
第四条第二項第四号中「第二条第七項」を「第二条第八項」に改める。
第六条第一項中「第三号まで及び第六号」を「第四号まで及び第七号」に、「第二号並びに」を「第三号並びに」に、「第二号の二」を「第三号」に、「同項第三号」を「同項第四号」に、「同項第六号」を「同項第七号」に、「同条第二号」を「同条第三号」に改める。
理 由
最近における一部の鳥獣の生息地の範囲の拡大等に起因する人の生命又は身体に対する危害の発生の実情に鑑み、当該危害を防止するため、危険鳥獣の銃器を使用した捕獲等に関する制度を創設する必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。