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第二一七回

閣第二九号

   人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律案

目次

 第一章 総則(第一条−第十条)

 第二章 基本的施策(第十一条−第十七条)

 第三章 人工知能基本計画(第十八条)

 第四章 人工知能戦略本部(第十九条−第二十八条)

 附則

   第一章 総則

 (目的)

第一条 この法律は、人工知能関連技術が我が国の経済社会の発展の基盤となる技術であることに鑑み、人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する施策について、基本理念並びに人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する基本的な計画の策定その他の施策の基本となる事項を定めるとともに、人工知能戦略本部を設置することにより、科学技術・イノベーション基本法(平成七年法律第百三十号)及びデジタル社会形成基本法(令和三年法律第三十五号)その他の関係法律による施策と相まって、人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図り、もって国民生活の向上及び国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において、「人工知能関連技術」とは、人工的な方法により人間の認知、推論及び判断に係る知的な能力を代替する機能を実現するために必要な技術並びに入力された情報を当該技術を利用して処理し、その結果を出力する機能を実現するための情報処理システムに関する技術をいう。

 (基本理念)

第三条 人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進は、科学技術・イノベーション基本法第三条に定める科学技術・イノベーション創出の振興に関する方針及びデジタル社会形成基本法第二章に定める基本理念のほか、この条に定める基本理念に基づいて行うものとする。

2 人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進は、人工知能関連技術が、その適正かつ効果的な活用によって行政事務及び民間の事業活動の著しい効率化及び高度化並びに新産業の創出をもたらすものとして経済社会の発展の基盤となる技術であるとともに、安全保障の観点からも重要な技術であることに鑑み、我が国において人工知能関連技術の研究開発を行う能力を保持するとともに、人工知能関連技術に関する産業の国際競争力を向上させることを旨として、行うものとする。

3 人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進は、人工知能関連技術の基礎研究から国民生活及び経済活動における活用に至るまでの各段階の関係者による取組が相互に密接な関連を有することに鑑み、これらの取組を総合的かつ計画的に推進することを旨として、行うものとする。

4 人工知能関連技術の研究開発及び活用は、不正な目的又は不適切な方法で行われた場合には、犯罪への利用、個人情報の漏えい、著作権の侵害その他の国民生活の平穏及び国民の権利利益が害される事態を助長するおそれがあることに鑑み、その適正な実施を図るため、人工知能関連技術の研究開発及び活用の過程の透明性の確保その他の必要な施策が講じられなければならない。

5 人工知能関連技術の研究開発及び活用は、我が国及び国際社会の平和と発展に寄与するものとなるよう、国際的協調の下に推進することを旨とし、我が国が人工知能関連技術の研究開発及び活用に関する国際協力において主導的な役割を果たすよう努めるものとする。

 (国の責務)

第四条 国は、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する施策を総合的かつ計画的に策定し、及び実施する責務を有する。

2 国は、行政事務の効率化及び高度化を図るため、国の行政機関における人工知能関連技術の積極的な活用を進めるものとする。

 (地方公共団体の責務)

第五条 地方公共団体は、基本理念にのっとり、人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関し、国との適切な役割分担の下、地方公共団体が実施すべき施策として、その地方公共団体の区域の特性を生かした自主的な施策を策定し、及び実施する責務を有する。

 (研究開発機関の責務等)

第六条 大学、科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律(平成二十年法律第六十三号)第二条第九項に規定する研究開発法人その他の人工知能関連技術の研究開発を行う機関(以下「研究開発機関」という。)は、基本理念にのっとり、人工知能関連技術の研究開発及びその成果の普及並びに専門的かつ幅広い知識を有する人材の育成に積極的に努めるとともに、第四条の規定に基づき国が実施する施策及び前条の規定に基づき地方公共団体が実施する施策に協力するよう努めるものとする。

2 国及び地方公共団体は、人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する施策で大学に係るものを策定し、及び実施するに当たっては、大学における研究活動の活性化を図るよう努めるとともに、研究者の自主性の尊重その他の大学における研究の特性に配慮しなければならない。

3 研究開発機関は、人工知能関連技術の研究開発を効果的に進めるに当たっては、人文科学及び自然科学に関する多様な分野の知見を総合的に活用することが必要であることに鑑み、学際的又は総合的な研究開発に努めるものとする。

 (活用事業者の責務)

第七条 人工知能関連技術を活用した製品又はサービスの開発又は提供をしようとする者その他の人工知能関連技術を事業活動において活用しようとする者(以下「活用事業者」という。)は、基本理念にのっとり、自ら積極的な人工知能関連技術の活用により事業活動の効率化及び高度化並びに新産業の創出に努めるとともに、第四条の規定に基づき国が実施する施策及び第五条の規定に基づき地方公共団体が実施する施策に協力しなければならない。

 (国民の責務)

第八条 国民は、基本理念にのっとり、人工知能関連技術に対する理解と関心を深めるとともに、第四条の規定に基づき国が実施する施策及び第五条の規定に基づき地方公共団体が実施する施策に協力するよう努めるものとする。

 (連携の強化)

第九条 国は、国、地方公共団体、研究開発機関及び活用事業者が相互に連携を図りながら協力することにより人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進が図られることに鑑み、これらの者の間の連携の強化に必要な施策を講ずるものとする。

 (法制上の措置等)

第十条 国は、人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する施策を実施するため必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講ずるものとする。

   第二章 基本的施策

 (研究開発の推進等)

第十一条 国は、人工知能関連技術の基礎研究から実用化のための研究開発に至るまでの一貫した研究開発の推進、研究開発機関における研究開発の成果の移転のための体制の整備、研究開発の成果に係る情報の提供その他の施策を講ずるものとする。

 (施設及び設備等の整備及び共用の促進)

第十二条 国は、人工知能関連技術の研究開発及び活用に当たって必要となる大規模な情報処理、情報通信、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。)の保管等に係る施設及び設備並びにデータセット(特定の目的をもって収集した情報の集合物をいう。)その他の知的基盤(科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律第二十四条の四に規定する知的基盤をいう。以下この条において同じ。)を研究開発機関及び活用事業者が広く利用できるようにするため、これらの施設及び設備並びに知的基盤の整備及び共用の促進のために必要な施策を講ずるものとする。

 (適正性の確保)

第十三条 国は、人工知能関連技術の研究開発及び活用の適正な実施を図るため、国際的な規範の趣旨に即した指針の整備その他の必要な施策を講ずるものとする。

 (人材の確保等)

第十四条 国は、地方公共団体、研究開発機関及び活用事業者と緊密な連携協力を図りながら、人工知能関連技術の基礎研究から国民生活及び経済活動における活用に至るまでの各段階において必要となる専門的かつ幅広い知識を有する多様な分野の人材の確保、養成及び資質の向上に必要な施策を講ずるものとする。

 (教育の振興等)

第十五条 国は、国民が広く人工知能関連技術に対する理解と関心を深めるよう、人工知能関連技術に関する教育及び学習の振興、広報活動の充実その他の必要な施策を講ずるものとする。

 (調査研究等)

第十六条 国は、国内外の人工知能関連技術の研究開発及び活用の動向に関する情報の収集、不正な目的又は不適切な方法による人工知能関連技術の研究開発又は活用に伴って国民の権利利益の侵害が生じた事案の分析及びそれに基づく対策の検討その他の人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に資する調査及び研究を行い、その結果に基づいて、研究開発機関、活用事業者その他の者に対する指導、助言、情報の提供その他の必要な措置を講ずるものとする。

 (国際協力)

第十七条 国は、人工知能関連技術の研究開発及び活用に関する国際協力を推進するとともに、国際的な規範の策定に積極的に参画するものとする。

   第三章 人工知能基本計画

第十八条 政府は、基本理念にのっとり、前章に定める基本的施策を踏まえ、人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する基本的な計画(以下「人工知能基本計画」という。)を定めるものとする。

2 人工知能基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。

 一 人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する施策についての基本的な方針

 二 人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関し、政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策

 三 前二号に掲げるもののほか、人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する施策を政府が総合的かつ計画的に推進するために必要な事項

3 内閣総理大臣は、人工知能戦略本部の作成した人工知能基本計画の案について閣議の決定を求めるものとする。

4 内閣総理大臣は、前項の閣議の決定があったときは、遅滞なく、人工知能基本計画を公表するものとする。

5 前二項の規定は、人工知能基本計画の変更について準用する。

   第四章 人工知能戦略本部

 (設置)

第十九条 人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する施策を総合的かつ計画的に推進するため、内閣に、人工知能戦略本部(以下「本部」という。)を置く。

 (所掌事務)

第二十条 本部は、次に掲げる事務をつかさどる。

 一 人工知能基本計画の案の作成及び実施の推進に関すること。

 二 前号に掲げるもののほか、人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する施策で重要なものの企画及び立案並びに総合調整に関すること。

 (組織)

第二十一条 本部は、人工知能戦略本部長、人工知能戦略副本部長及び人工知能戦略本部員をもって組織する。

 (人工知能戦略本部長)

第二十二条 本部の長は、人工知能戦略本部長(以下「本部長」という。)とし、内閣総理大臣をもって充てる。

2 本部長は、本部の事務を総括し、所部の職員を指揮監督する。

 (人工知能戦略副本部長)

第二十三条 本部に、人工知能戦略副本部長(次項及び次条第二項において「副本部長」という。)を置き、内閣官房長官及び人工知能戦略担当大臣(内閣総理大臣の命を受けて、人工知能関連技術の研究開発及び活用の総合的かつ計画的な推進に関し内閣総理大臣を助けることをその職務とする国務大臣をいう。)をもって充てる。

2 副本部長は、本部長の職務を助ける。

 (人工知能戦略本部員)

第二十四条 本部に、人工知能戦略本部員(次項において「本部員」という。)を置く。

2 本部員は、本部長及び副本部長以外の全ての国務大臣をもって充てる。

 (資料の提出その他の協力)

第二十五条 本部は、その所掌事務を遂行するため必要があると認めるときは、関係行政機関、地方公共団体、独立行政法人(独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号)第二条第一項に規定する独立行政法人をいう。)及び地方独立行政法人(地方独立行政法人法(平成十五年法律第百十八号)第二条第一項に規定する地方独立行政法人をいう。)の長並びに特殊法人(法律により直接に設立された法人又は特別の法律により特別の設立行為をもって設立された法人であって、総務省設置法(平成十一年法律第九十一号)第四条第一項第八号の規定の適用を受けるものをいう。)の代表者に対して、資料の提出、意見の表明、説明その他必要な協力を求めることができる。

2 本部は、その所掌事務を遂行するために特に必要があると認めるときは、前項に規定する者以外の者に対しても、必要な協力を依頼することができる。

 (事務)

第二十六条 本部に関する事務は、内閣府において処理する。

 (主任の大臣)

第二十七条 本部に係る事項については、内閣法(昭和二十二年法律第五号)にいう主任の大臣は、内閣総理大臣とする。

 (政令への委任)

第二十八条 この法律に定めるもののほか、本部に関し必要な事項は、政令で定める。

   附 則

 (施行期日)

第一条 この法律は、公布の日から施行する。ただし、第三章及び第四章並びに附則第三条及び第四条の規定は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

 (検討)

第二条 政府は、人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する諸施策についての国際的動向その他の社会経済情勢の変化を勘案しつつ、この法律の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。

 (内閣府設置法の一部改正)

第三条 内閣府設置法(平成十一年法律第八十九号)の一部を次のように改正する。

  第四条第一項第十七号の次に次の一号を加える。

  十七の二 人工知能関連技術(人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律(令和七年法律第▼▼▼号)第二条に規定するものをいう。第三項第七号の九において同じ。)の研究開発及び活用の総合的かつ計画的な推進を図るための基本的な政策に関する事項

  第四条第三項中第七号の九を第七号の十とし、第七号の八の次に次の一号を加える。

  七の九 人工知能関連技術の研究開発及び活用に関する施策の推進に関すること。

  第四条第三項第十五号中「第七号の九」を「第七号の十」に改める。

  第九条の二及び第十六条の二第二項中「第三項第七号の九」を「第三項第七号の十」に改める。

  第四十条の四第一項中「第十六号まで」の下に「及び第十七号の二」を、「第七号の三まで」の下に「、第七号の九」を加える。

  附則第二条の二第一項及び第三項中「第三項第七号の九」を「第三項第七号の十」に改める。

 (調整規定)

第四条 附則第一条ただし書に規定する規定の施行の日が災害対策基本法等の一部を改正する法律(令和七年法律第▼▼▼号)の施行の日前である場合には、同法第六条のうち内閣府設置法第十六条の次に一条を加える改正規定中「第三項第七号の九」とあるのは、「第三項第七号の十」とし、前条のうち同法第十六条の二第二項の改正規定は、適用しない。


     理 由

 人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図り、もって国民生活の向上及び国民経済の健全な発展に寄与するため、人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する施策について、基本理念並びに人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する基本的な計画の策定その他の施策の基本となる事項を定めるとともに、人工知能戦略本部を設置する必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

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