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   障害者及びその家族に対する福祉、教育等に係る支援に関する施策の総合的な推進に関する法律案
目次
 第一章 総則(第一条―第五条)
 第二章 基本的施策(第六条―第十六条)
 附則
   第一章 総則
 (目的)
第一条 この法律は、十八歳に達し、又は高等学校、中等教育学校の後期課程、特別支援学校の高等部等(以下「高等学校等」という。)を卒業した障害者について、家族による養護を受けられない間における居場所の提供、多様な学習及び就労の機会の確保、その家族の負担の軽減等を図ることが喫緊の課題となっていること等に鑑み、障害者及びその家族に対する福祉、教育等に係る支援に関する施策に関し、基本理念を定め、並びに国及び地方公共団体の責務を明らかにするとともに、その施策の基本となる事項を定めることにより、障害者及びその家族が福祉、教育等に係る支援を切れ目なく受けられるようにするための施策を総合的に推進し、もって障害者の生涯にわたる自立及び社会参加の促進並びに障害者及びその家族の生活の質の維持向上を図ることを目的とする。
 (定義)
第二条 この法律において「障害者」とは、障害者基本法(昭和四十五年法律第八十四号)第二条第一号に規定する障害者をいう。
 (基本理念)
第三条 障害者及びその家族に対する福祉、教育等に係る支援に関する施策は、当該支援が切れ目なく提供されることにより、これらの者が抱える各般の問題に適切に対応し、その生活の質の維持向上を図ることを旨として行われなければならない。
2 障害者及びその家族に対する福祉、教育等に係る支援に関する施策は、当該支援が社会全体として取り組むべき課題であるとの認識に立って、国、地方公共団体、関係機関及び民間団体その他の関係者の相互の密接な連携の下に、総合的に行われなければならない。
3 障害者及びその家族に対する福祉、教育等に係る支援に関する施策を講ずるに当たっては、個々の障害者の特性に配慮するとともに、障害者及びその家族の実態を考慮し、かつ、これらの者の意向を十分に尊重しなければならない。
 (国及び地方公共団体の責務)
第四条 国は、前条の基本理念にのっとり、障害者及びその家族に対する福祉、教育等に係る支援に関する施策を総合的に策定し及び実施する責務を有する。
2 地方公共団体は、前条の基本理念にのっとり、障害者及びその家族に対する福祉、教育等に係る支援に関する施策に関し、国との連携を図りつつ、その地域の状況に応じた施策を策定し及び実施する責務を有する。
 (法制上の措置等)
第五条 政府は、この法律の目的を達成するため、必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講じなければならない。
   第二章 基本的施策
 (障害者及びその家族の実態調査等)
第六条 国は、障害者及びその家族の置かれている環境を把握し、障害者が十八歳に達し、又は高等学校等を卒業したことによる影響その他の障害者の人生の各段階において生ずる問題を明らかにするため、障害者の日常生活上の支援、障害者の就労の支援、障害者の移動の支援その他の障害者及びその家族に対する福祉サービスの利用の状況、これらの者の当該福祉サービスに対する需要の状況、障害者の家族の就業の状況、障害者の属する世帯の所得の状況その他の障害者及びその家族の実態について、障害者の障害の種類及び程度並びに年齢ごとにきめ細かく調査を行い、その結果を公表するものとする。
2 国及び地方公共団体は、前項の調査の結果に基づき、障害者及びその家族に対する福祉サービス、教育等に関する施策又は制度の見直しその他の必要な措置を講ずるものとする。
 (障害者の居場所に関する支援)
第七条 国及び地方公共団体は、十八歳に達し、又は高等学校等を卒業した障害者及びその家族の福祉サービスに対する需要に適切に対応するとともに、これを通じて、障害者の養護に係る家族の負担の軽減を図るため、次に掲げる措置その他の必要な措置を講ずるものとする。
 一 施設において行われる障害者の日常生活上の支援、障害者の就労の支援その他の障害者及びその家族に対する福祉サービスに関し、これを利用することができる時間帯の拡充をはじめ、家族が労働等により家庭にいない間における障害者の居場所の提供について一層の充実を図ること。
 二 障害者の家族が休息等により心身の健康の確保及び増進を図るために必要な時間における障害者の居場所の確保に資する環境を整備すること。
 (障害者の学習に関する支援)
第八条 国及び地方公共団体は、障害者が十八歳に達し、又は高等学校等を卒業した後も、その人生の段階に応じた多様な学習の機会を障害者に提供できるようにするため、特別支援学校の高等部の専攻科の設置の促進、当該専攻科における教育に係る経済的負担の軽減その他の必要な措置を講ずるものとする。
 (障害者の就労に関する支援)
第九条 国及び地方公共団体は、十八歳に達し、又は高等学校等を卒業した障害者がその能力に応じて適切な職業に従事することを通じてその自立及び社会参加を促進するため、職業訓練の実施、就労の機会の確保、就労の定着のための支援その他の必要な措置を講ずるものとする。
 (障害者である児童及び生徒に対する教育の充実)
第十条 国及び地方公共団体は、障害者である児童及び生徒がその特性に応じて生涯にわたる長期的な視点に立った十分な教育を受けられるようにするため、次に掲げる措置その他の必要な措置を講ずるものとする。
一 個別の教育支援計画(教育に関する業務を行う関係機関と福祉、労働、医療、保健等に関する業務を行う関係機関及び民間団体その他の関係者の相互の連携の下に行う個別の長期的な支援に関する計画をいう。)及び個別の指導に関する計画の適切な作成及び活用を推進すること。
二 教育課程、在学期間等の弾力的な取扱いを促進すること。
三 他者との関わりに関する教育、消費者教育等の日常生活及び社会生活における自立のために必要な教育を推進すること。
 (教員の特別支援教育に関する研修の機会の確保等)
第十一条 国及び地方公共団体は、学校における障害者である児童及び生徒に対する教育の充実を図るため、学校の教員に対する特別支援教育に関する体系的な研修の機会の確保、学校の教員による特別支援学校の教員の免許状の取得の促進、学校の教員になろうとする者による特別支援教育、福祉等に関する科目の履修の促進その他の必要な措置を講ずるものとする。
 (学校において障害者である児童及び生徒の支援を行う者等の確保)
第十二条 国及び地方公共団体は、学校の教員の負担を軽減し、障害者である児童及び生徒に対する教育の充実を図るため、学校において障害者である児童及び生徒に対して必要な支援を行う者、心理、福祉等に関する専門的知識を有する者であって教育相談に応じるもの等の配置が促進されるよう、人材の確保その他の必要な措置を講ずるものとする。
 (特別支援学校等の施設の活用促進)
第十三条 国及び地方公共団体は、障害者及びその家族に対する福祉、教育等に係る支援を提供するための場所の一層の確保を図るため、放課後若しくは終業後又は休業日において十分に活用されていない特別支援学校、障害者就労施設等の施設の活用の促進その他の必要な措置を講ずるものとする。
 (障害者の移動の支援を行う体制の拡充等)
第十四条 国及び地方公共団体は、障害者の円滑な移動の確保を図ることを通じてその自立及び社会参加を促進するため、障害者の通勤、通学、通所等のための移動の支援を行う体制の拡充、当該支援に従事する人材の確保その他の必要な措置を講ずるものとする。
 (障害者及びその家族に対する情報の提供、相談等)
第十五条 国及び地方公共団体は、障害者及びその家族がその置かれている状況その他の事情に応じた適切な支援を切れ目なく受けられるようにするため、これらの者に対する福祉サービス、教育等に関する情報の提供、相談及び助言その他の必要な措置を講ずるものとする。
2 国及び地方公共団体は、前項の措置の適切かつ円滑な実施に資するため、障害者及びその家族に対する支援についての先進的な取組に関する情報その他の必要な情報を収集すること、福祉、教育、療育、労働、医療、保健等に関する業務に従事する者に対して当該情報を提供することその他の必要な措置を講ずるものとする。
 (関係者相互の有機的な連携の確保等)
第十六条 国及び地方公共団体は、障害者及びその家族に対する福祉、教育等に係る支援が適正かつ円滑に行われるよう、福祉、教育、療育、労働、医療、保健等に関する業務を行う関係機関及び民間団体その他の関係者の相互の有機的な連携の確保その他の必要な措置を講ずるものとする。
2 国及び地方公共団体は、前項の有機的な連携の確保に資するため、個人情報の適正な取扱いを確保しつつ、国及び地方公共団体の福祉に関する業務を担当する部局、教育に関する業務を担当する部局その他関連する業務を担当する部局の相互間の情報の共有の促進その他の必要な措置を講ずるものとする。
   附 則
 この法律は、公布の日から施行する。
     理 由
 十八歳に達し、又は高等学校等を卒業した障害者について、家族による養護を受けられない間における居場所の提供、多様な学習及び就労の機会の確保、その家族の負担の軽減等を図ることが喫緊の課題となっていること等に鑑み、障害者の生涯にわたる自立及び社会参加の促進並びに障害者及びその家族の生活の質の維持向上を図るため、これらの者に対する福祉、教育等に係る支援に関する施策に関し、基本理念を定め、並びに国及び地方公共団体の責務を明らかにするとともに、その施策の基本となる事項を定めることにより、障害者及びその家族が福祉、教育等に係る支援を切れ目なく受けられるようにするための施策を総合的に推進する必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

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