賃金上昇を上回る所得税の負担増加に対処するために所得税に関し講ずべき措置に関する法律案
(趣旨)
第一条 この法律は、物価が上昇し、日常生活を営むのに必要な費用が増加している現下の経済状況において、名目賃金の水準の上昇に伴うその上昇率を上回る率の国民の所得税の負担の増加(以下「賃金上昇を上回る所得税の負担増加」という。)に対処するための取組が行われる中で、基礎控除の額に所得の状況による新たな差異が生じていること等に鑑み、当該差異を是正するために講ずべき措置について定め、あわせて、賃金上昇を上回る所得税の負担増加に対処するために所得税に関し講ずべきその他の措置について定めるものとする。
(基礎控除の額の差異を是正するための措置)
第二条 健康で文化的な最低限度の生活を営むための費用は所得の状況にかかわらず生じるものであることを踏まえ、所得課税においてその費用に相当する額が所得金額から控除されるようにする観点から、令和八年分以後の所得税について、原則として所得の状況によって基礎控除の額に差異が生じないようにするものとし、政府は、このために必要な法制上の措置その他の措置を講ずるものとする。
2 政府は、前項の措置を講ずることにより地方公共団体の財政状況に悪影響を及ぼすことのないようにするものとする。
(賃金上昇を上回る所得税の負担増加に対処するためのその他の措置)
第三条 令和九年分以後の所得税に係る扶養控除について、控除対象扶養親族(所得税法(昭和四十年法律第三十三号)第二条第一項第三十四号の二に規定する控除対象扶養親族をいう。)に年齢十六歳未満の扶養親族を加えるものとし、政府は、このために必要な法制上の措置を講ずるものとする。
2 前条第一項及び前項に定めるもののほか、政府は、この法律の施行後速やかに、物価上昇率、名目賃金上昇率、地域別最低賃金(最低賃金法(昭和三十四年法律第百三十七号)第九条第一項に規定する地域別最低賃金をいう。次条第一項及び第二項において同じ。)の平均額の上昇率、租税収入の動向等を勘案して、所得税の税率構造における各税率区分の幅を定める金額の引上げ及び税率区分の細分化その他賃金上昇を上回る所得税の負担増加を緩和する措置について検討を行い、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
3 前条第二項の規定は、前二項の措置を講ずる場合について準用する。
(継続的な検討)
第四条 政府は、基礎控除の額及び給与所得控除の最低保障額について、物価の上昇、名目賃金の上昇、地域別最低賃金の平均額の上昇等に応じて、その引上げについて不断に検討を行い、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
2 前項に定めるもののほか、政府は、前二条の措置が講ぜられた後においても、賃金上昇を上回る所得税の負担増加に対処する観点から、毎年、物価の状況、名目賃金の水準、地域別最低賃金の平均額の状況、国民の所得税の負担の状況等を踏まえ、所得税の課税最低限(所得税を課されることとなる収入水準の下限をいう。)の引上げ、所得税の税率構造の見直し等を行う必要の有無及びその内容について検討を行い、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。
3 第二条第二項の規定は、前二項の措置を講ずる場合について準用する。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から施行する。
(所得税における人的控除等の抜本的な改革)
2 政府は、令和十年末までを目途に、所得税における人的控除をはじめとする各種控除の在り方の抜本的な改革について検討を加え、その結果に基づき、必要な法制上の措置を講ずるものとする。
理 由
物価が上昇し、日常生活を営むのに必要な費用が増加している現下の経済状況において、賃金上昇を上回る所得税の負担増加に対処するための取組が行われる中で、基礎控除の額に所得の状況による新たな差異が生じていること等に鑑み、当該差異を是正するために講ずべき措置について定め、あわせて、賃金上昇を上回る所得税の負担増加に対処するために所得税に関し講ずべきその他の措置について定める必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

