第二二一回
参第八号
内密出産に対応するための体制の整備等の促進に関する法律案
目次
第一章 総則(第一条−第四条)
第二章 基本的施策(第五条−第十四条)
附則
第一章 総則
(趣旨)
第一条 この法律は、女性が氏名、住所等の本人を特定する事項をその出産に係る保健医療サービスを提供する医療機関の一部の職員のみに明らかにしてする出産(以下「内密出産」という。)をめぐる現状等に鑑み、内密出産に対応するための体制の整備等の促進を図るため、その基本理念、国等の責務その他の基本となる事項を定めるものとする。
(基本理念)
第二条 内密出産に対応するための体制の整備等は、次に掲げる事項を旨として行われなければならない。
一 内密出産に対応することができる医療機関が確保され、内密出産を希望する妊娠中の女性が出産に係る保健医療サービスの提供を受けることができるようにするとともに、当該女性に対する支援が適切に実施されることを通じて、母子の健康の保護が図られるようにすること。
二 内密出産により生まれた子について、心身ともに健やかに育成されるよう、できる限り家庭と同様の養育環境の確保が図られるようにすること。
三 内密出産により生まれた子が自らの出自に関する情報を知ることについて、必要な配慮がなされるようにすること。
(国及び地方公共団体の責務)
第三条 国は、前条の基本理念にのっとり、内密出産に対応するための体制の整備等に関する施策を策定し、及び実施する責務を有する。
2 地方公共団体は、前条の基本理念にのっとり、内密出産に対応するための体制の整備等に関し、国との適切な役割分担を踏まえ、その地方公共団体の区域の実情に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。
(法制上の措置等)
第四条 政府は、内密出産に対応するための体制の整備等に関する施策を実施するため必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講じなければならない。
第二章 基本的施策
(医療機関の確保等)
第五条 国は、内密出産を希望する妊娠中の女性が出産に係る保健医療サービスの提供を受けることができるよう、内密出産として当該提供を行う医療機関の確保のために必要な措置を講ずるものとする。
2 国は、前項の医療機関による内密出産への対応が適切かつ円滑に行われるよう、地方公共団体及び当該医療機関その他の医療機関の間における連携協力体制の整備を図るために必要な措置を講ずるものとする。
3 国は、第一項の措置を講ずるに当たっては、同項の医療機関による出産に係る保健医療サービスの提供に係る経済的負担の軽減その他当該医療機関による内密出産への対応の適切な実施の確保について必要な配慮をするものとする。
(内密出産を希望する妊娠中の女性等に対する支援体制の充実等)
第六条 国は、内密出産を希望する妊娠中の女性その他家庭環境等の事情により妊娠、出産、育児等に関し深刻な悩みを抱える妊娠中の女性が児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)第六条の三第十八項に規定する妊産婦等生活援助事業(次条において「妊産婦等生活援助事業」という。)、民間団体が行う支援等を利用しやすい環境を整備するため、妊娠、出産、育児等に関する相談等の支援に係る体制の充実、広報活動を通じた当該支援の周知その他の必要な措置を講ずるものとする。
2 国は、前項に定めるもののほか、同項の女性が貧困、暴力、虐待等の問題を抱えている場合にこれらの問題の解決に資する施策との連携を図るために必要な措置を講ずるものとする。
(内密出産としての対応を希望しないこととした場合における連携協力の確保等)
第七条 国は、出産の前後において内密出産としての対応を希望しないこととした女性で妊娠、出産、育児等に関し深刻な悩みを抱えているものに対して妊産婦等生活援助事業、児童福祉法第六条の三第二十二項に規定する妊婦等包括相談支援事業等による必要な支援が確実に提供されるよう、地方公共団体、当該女性に対して出産に係る保健医療サービスを提供する医療機関その他の関係機関の間における連携協力の確保その他の必要な措置を講ずるものとする。
(内密出産により生まれた子の良好な養育環境の確保のための連携協力の確保等)
第八条 国は、内密出産により生まれた子の良好な養育環境の確保が図られるよう、児童相談所その他の地方公共団体の関係機関、第五条第一項の医療機関その他の関係機関の間における連携協力の確保その他の必要な措置を講ずるものとする。
(内密出産により生まれた子が自らの出自に関する情報を知ることに資するための措置等)
第九条 国は、内密出産により生まれた子が自らの出自に関する情報を知ることに資するよう、年齢に関する要件その他の一定の要件の下での当該情報の開示等の制度の構築その他の当該子による当該情報の入手に関し必要な措置を講ずるものとする。
2 国は、前項の措置による情報の入手に係る機会の確保が図られることの重要性に鑑み、内密出産により生まれた子がその事実を知ることができるようにするために当該子を養育する者により当該子の年齢及び発達の程度に応じた適切な配慮がなされることに資するよう、当該子を養育する者に対する相談その他の支援が行われるための環境の整備に必要な措置を講ずるものとする。
3 国は、内密出産により生まれた子が、当該子が受けた前項の配慮、当該子による第一項の情報の入手等に関し、当該子の年齢及び発達の程度等に応じた相談その他の支援を受けるための環境の整備に必要な措置を講ずるものとする。
(医療機関の職員等の理解の増進)
第十条 国は、出産に係る保健医療サービスを提供する医療機関の職員及び児童相談所の職員その他の内密出産により生まれた子の養育環境の確保に関する職務に従事する者が内密出産に関する理解を深めるための研修の実施、啓発その他の必要な措置を講ずるものとする。
(実態調査等)
第十一条 国は、内密出産における母子の健康の保護を図るための施策及び内密出産により生まれた子の養育環境の確保のための施策の適切かつ効果的な実施に資するよう、内密出産をめぐる状況、当該養育環境に係る実態等に関する調査を定期的に行い、その結果を公表するものとする。
2 前項の調査及びその結果の公表に当たっては、内密出産をした女性若しくは内密出産により生まれた子又はこれらの者の家族の秘密又は私生活の平穏が害されることがないよう、適切な配慮がなされなければならない。
(関係行政機関の連携協力)
第十二条 内閣総理大臣、厚生労働大臣及び法務大臣は、内密出産に対応するための体制の整備等に関する施策が適切かつ効果的に策定され、及び実施されるよう、相互に又は関係行政機関の長との間において緊密な連携協力を図るものとする。
(地方公共団体の措置)
第十三条 地方公共団体は、内密出産に対応するための体制の整備等に関する国の施策を勘案し、その地方公共団体の区域の実情に応じ、当該体制の整備等に関する措置を講ずるものとする。
(援助方針の策定に必要な調査に係る業務を行うに当たっての配慮)
第十四条 児童相談所は、児童福祉法の規定に基づき内密出産により生まれた子の援助の方針の策定に必要な調査に係る業務を行うに当たっては、当該子の出産が内密出産によるものであったことに配慮するものとする。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から施行する。
(検討)
2 政府は、この法律の施行後速やかに、特別養子縁組制度に関し、内密出産により生まれた子について利用を促進する観点から検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
3 政府は、内密出産に対応することができる医療機関の確保の状況等を踏まえ、内密出産に関し必要な情報が適切に提供されるよう、内密出産についての周知を図るための方策に関し検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
4 女性が氏名、住所等の本人を特定する事項をその出産に係る保健医療サービスを提供する医療機関の職員を含め明らかにせず出産することを希望する場合の取扱いについては、その実態等を踏まえ、適宜、検討が加えられ、その結果に基づき、必要な措置が講ぜられるものとする。
理 由
内密出産をめぐる現状等に鑑み、内密出産に対応するための体制の整備等の促進を図るため、その基本理念、国等の責務その他の基本となる事項を定める必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

