第二二二回
閣第一五号
警察官職務執行法の一部を改正する法律案
警察官職務執行法(昭和二十三年法律第百三十六号)の一部を次のように改正する。
第三条第二項中「すみやかに」を「速やかに」に、「その事件を適当な」を「適当な」に改め、同条第三項中「こえて」を「超えて」に改め、同項ただし書中「但し」を「ただし」に、「以下」を「第五項において」に改め、同条第四項中「前項但書」を「前項ただし書」に、「基き」を「基づき」に、「已むを得ない」を「やむを得ない」に、「こえて」を「超えて」に改める。
第五条の見出しを「(犯罪が正に行われようとする場合の措置)」に改め、同条中「まさに」を「正に」に、「又、」を「また、」に、「虞」を「おそれ」に改める。
第六条の二第二項中「。以下この項」の下に「及び第九条」を加え、同条第十項中「次項」の下に「及び第九条第十項」を加える。
第八条中「の外」を「ほか」に改め、同条を第十条とし、第七条の次に次の二条を加える。
(被害切迫者に対する被害を防止するための措置)
第八条 警察官は、人の生命若しくは身体に危険を及ぼし、又は財産に重大な損害を及ぼすおそれのある犯罪(以下この条及び次条第二項において「重大犯罪」という。)が行われ、又は実行に着手されたことを認めた場合において、次の各号に掲げる場合のいずれかに該当し、かつ、当該各号に定める被害を受ける者(以下この条及び同項において「被害切迫者」という。)が特定されているときは、当該被害切迫者に対して、直ちに当該被害を防止するための方法の指導その他の当該被害切迫者において当該被害が拡大し、又は発生することを防止するために必要な措置をとらなければならない。
一 当該重大犯罪の態様その他の事情から合理的に判断して、既に行われた重大犯罪による被害が拡大し、又はその実行に着手された重大犯罪による被害が発生すると認められるとき これらの被害
二 当該重大犯罪を行い、又はその実行に着手した者による同種の重大犯罪により、人の生命、身体又は財産に対する被害が発生することとなると判断すべき具体的な事実が認められるとき 当該被害
(被害防止電子計算機調査)
第九条 警察庁長官は、警察庁又は都道府県警察の警察官のうちから、次項及び第六項から第八項までの規定による処置を適正にとるために必要な知識及び能力を有すると認められる警察官を被害防止電子計算機調査官として指名するものとする。
2 被害防止電子計算機調査官は、前条の規定による措置(以下この項及び第八項において「被害防止措置」という。)の実施に当たる警察官(以下この条において「被害防止措置実施警察官」という。)から提供された資料により、重大犯罪が行われ、又は実行に着手されたことを認めた場合において、次の各号のいずれにも該当するときは、当該被害防止措置実施警察官に提供するため、当該被害防止電子計算機調査官の使用に係る電子計算機を当該重大犯罪の犯人が犯人間の相互連絡又は被害切迫者への連絡に用いたと認める合理的な理由のある電子計算機(電気通信回線に接続しているものに限る。以下この条において同じ。)に電気通信回線を介して接続して、当該電子計算機に記録された電磁的記録のうち、被害防止措置の対象となるべき被害切迫者の氏名又は住所、当該被害切迫者に係る重大犯罪(以下この項及び第八項第二号において「切迫重大犯罪」という。)が行われる日時その他の被害防止措置をとるために必要な当該被害切迫者又は切迫重大犯罪の実行に関する事項を示す情報(第三号において「被害防止措置用情報」という。)に係るものを複写し、これを取得することができる。この場合において、当該被害防止電子計算機調査官は、当該接続、複写及び取得のために必要な処分をすることができる。
一 当該行われ、又は実行に着手された重大犯罪の態様その他の事情から合理的に判断して、当該重大犯罪が数人の共謀により行われ、又は実行に着手されたと認められるとき。
二 前条各号に掲げる場合のいずれかに該当し、かつ、当該各号に定める被害の拡大又は発生を防止するため緊急の必要があるとき。
三 他の方法によつては被害防止措置用情報を速やかに収集することが著しく困難であるとき。
3 被害防止電子計算機調査官は、前項前段の規定による措置(以下この条において「被害防止電子計算機調査」という。)を実施する場合には、あらかじめ、次に掲げる事項を明らかにした書面(その作成に代えて電磁的記録を作成する場合における当該電磁的記録を含む。)及びその疎明資料を提出して、当該被害防止電子計算機調査官が所属する警察庁又は都道府県警察本部の所在地を管轄する地方裁判所又は簡易裁判所の裁判官の許可を得なければならない。
一 被害防止電子計算機調査を実施することができる場合に該当すると認める理由
二 対象となる電子計算機及び当該電子計算機を対象とする理由
三 被害防止電子計算機調査により複写及び取得を行う電磁的記録(以下この条において「対象電磁的記録」という。)の範囲
四 被害防止電子計算機調査のために行う行為の具体的内容及び手順
4 地方裁判所又は簡易裁判所の裁判官は、前項の許可の求めがあつた場合において、当該求めが第二項の規定に照らして適切であると認めるときは、当該許可をするものとする。この場合において、当該裁判官は、当該許可に係る被害防止電子計算機調査の対象となる電子計算機及び対象電磁的記録の範囲並びに許可の有効期間、発付の年月日及び裁判所名を記載し、かつ、自己の記名押印をし、又はこれに代わる措置をとつた許可状を発付しなければならない。
5 被害防止電子計算機調査官は、被害防止電子計算機調査及び第二項後段の規定による処分(次項及び第十一項において「被害防止電子計算機調査等」という。)を実施するに際しては、みだりに関係者の正当な業務を妨害してはならない。
6 被害防止電子計算機調査官は、被害防止電子計算機調査等に際し、当該被害防止電子計算機調査等の対象となつた電子計算機に記録された電磁的記録のうち第四項の許可に係る対象電磁的記録に該当しないもの又はこれに係る情報を取り扱つた場合には、当該電磁的記録又は情報を被害防止措置実施警察官その他の者に提供してはならない。この場合において、当該被害防止電子計算機調査官は、当該被害防止電子計算機調査等が終了したときは、国家公安委員会規則で定めるところにより、直ちに、当該電磁的記録の全てを消去しなければならない。
7 被害防止電子計算機調査官は、被害防止電子計算機調査が終了したとき(前項の規定による消去を行つた場合にあつては、当該消去が終了したとき)は、国家公安委員会規則で定めるところにより、被害防止措置実施警察官に対し、第四項の許可に係る対象電磁的記録に該当するものとして当該被害防止電子計算機調査により複写及び取得を行つた電磁的記録(次項第五号において「取得電磁的記録」という。)又はこれに係る情報を提供するものとする。
8 被害防止電子計算機調査官は、被害防止電子計算機調査を実施したとき(第六項の規定による消去を行つた場合にあつては、当該消去が終了したとき)は、当該被害防止電子計算機調査の対象となつた電子計算機の使用者の所在が明らかでない場合その他通知をすることが困難である場合を除き、国家公安委員会規則で定めるところにより、遅滞なく、次に掲げる事項を当該電子計算機の使用者に通知するものとする。ただし、当該通知を行うことにより被害防止措置が妨げられるおそれがあるときは、当該おそれがなくなつた後速やかに通知するものとする。
一 当該電子計算機を特定するために必要な事項
二 当該被害防止電子計算機調査に係る切迫重大犯罪の罪名
三 第四項の許可状の発付の年月日
四 当該被害防止電子計算機調査を実施した年月日
五 取得電磁的記録を特定するために必要な事項
六 第六項の規定による消去を行つた場合にあつては、当該消去を行つた年月日
9 第二項及び前三項の規定により被害防止電子計算機調査官がとつた処置については、順序を経て所属の公安委員会にこれを報告しなければならない。
10 前項の規定による報告を受けた公安委員会は、当該報告に係る処置が第四項の許可の内容並びに第二項及び第五項から第八項までの規定に照らして適切に行われたかどうかを確認し、第二項及び第六項から第八項までの規定による処置に係る事務の適正な実施を確保するため必要があると認めるときは、当該確認の結果に基づき、当該報告に係る処置をとつた被害防止電子計算機調査官が所属する警察庁又は都道府県警察の警察庁長官等に対し、必要な措置をとるべきことを指示するものとする。
11 被害防止電子計算機調査等の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
(自衛隊法の一部改正)
2 自衛隊法(昭和二十九年法律第百六十五号)の一部を次のように改正する。
第八十九条第一項中「。第六条の二」の下に「、第八条及び第九条」を、「次項」の下に「及び第九条第十項」を加える。
第九十一条の三中「次項」の下に「及び第九条第十項」を加える。
第九十二条第二項中「(第六条の二」の下に「、第八条及び第九条」を、「次項」の下に「及び第九条第十項」を加える。
第九十五条の四第一項中「次項」の下に「及び第九条第十項」を加える。
理 由
最近における犯罪の実情に鑑み、一定の重大な犯罪による被害が拡大し、又は発生すると認められる場合における当該被害を受ける者に対する当該被害を防止するための措置に関する規定を整備するとともに、一定の重大な犯罪の犯人が犯人間の相互連絡等に用いたと認められる電子計算機に記録された当該措置の実施に必要な情報に係る電磁的記録を取得するための措置に関する規定の整備を行う必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

