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行政情報の公開に関する法律案要綱

第一 総則
一 目的
この法律は、国民主権の理念にのっとり、行政情報の開示を請求する国民の権利について定めることにより、行政運営の公開性の向上を図り、もって国民の知る権利を保障するとともに、政府の諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにし、国民の行政に対する監視及び参加の充実に資することを目的とするものとすること。(第一条関係)
二 定義
1 この法律において「行政機関」とは、法律の規定に基づき内閣に置かれる機関、国の行政機関として置かれる機関、法律の規定に基づき内閣の所轄の下に置かれる機関、施設等機関及び特別の機関のうち政令で定めるもの、会計検査院並びに特殊法人をいうものとすること。(第二条第一号関係)
2 この法律において「行政情報」とは、行政機関が保有する情報をいうものとすること。(第二条第二号関係)
3 この法律において「行政資料」とは、行政機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書、図画、写真、フィルム、磁気テープ、磁気ディスク、光ディスクその他の採録物であって、当該行政機関が保有するものをいう。ただし、一般に容易に入手することができるもの又は一般に利用することができる施設において閲覧(視聴を含む。以下同じ。)に供されているものを除くものとすること。(第二条第三号関係)

第二 行政情報の開示等
一 行政情報の開示
1 何人も、行政機関の長に対し、行政情報(行政資料に記録されているものに限る。以下第四までにおいて同じ。)の開示を請求することができるものとすること。(第三条第一項関係)
2 行政機関の長は、開示請求があったときは、二の1若しくは2又は三に該当する場合を除き、開示請求者に対し、当該開示請求に係る行政情報を開示しなければならないものとすること。(第三条第二項関係)
二 行政情報の不開示等
1 行政機関の長は、開示請求に係る行政情報の全部又は一部が次に掲げる情報(以下「不開示情報」という。)のいずれかに該当すると認めるときは、当該全部又は一部を開示しないことができるものとすること。(第四条第一項関係)
一 個人の思想、宗教、身体的特徴、健康状態、家族構成、職業、学歴、出身、住所、所属団体、財産、所得等個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって、特定の個人が識別されるもの(当該情報のみでは識別することができないが、一般に容易に入手することができる他の情報と照合することにより識別され得るものを含む。)のうち、一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められるもの。ただし、次に掲げる情報を除く。
イ 法令の規定により又は慣行として公にされている情報又は公にすることが予定されている情報
   ロ 公務員(特殊法人の職員を含む。)の職務の遂行に係る情報に含まれる当該公務員の職及び氏名に関する情報
   ハ 開示しないことにより保護される個人の正当な利益よりも、人の生命、身体、健康、財産又は生活を保護するため、開示することが必要であると認められる情報
二 法人等(国及び地方公共団体を除く。)に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、開示することにより、当該法人等又は当該個人の基本的な権利、その競争上又は事業運営上の地位その他正当な利益を害することが明らかであるもの。ただし、開示しないことにより保護される当該法人等又は当該個人の正当な利益よりも、当該法人等又は当該個人の事業活動によって生ずる危害又は侵害から人の生命、身体若しくは健康又は財産若しくは生活を保護するため、開示することが必要であると認められる情報を除く。
三 開示することにより、国の安全が害されること、他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれること又は他国若しくは国際機関との交渉上不利益を被ることが明らかである情報(当該情報に係る行政資料を作成し、又は取得した日から起算して二十年を経過しないものに限る。)
四 開示することにより、犯罪の予防若しくは捜査、公訴の提起若しくは維持、刑の執行又は警備の目的を達成することができないことが明らかである情報その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすことが明らかである情報
五 監査、検査、取締り、争訟、交渉、契約、試験、調査、研究、人事管理、現業の事業経営その他行政機関の事務又は事業に関する情報であって、当該事務又は事業の性質上、開示することにより当該事務又は事業の目的を達成することができないことが明らかであるもの
2 行政機関の長は、開示請求に係る行政情報が記録されている行政資料に不開示情報とそれ以外の情報とが記録されている場合において、当該不開示情報が記録されている部分とそれ以外の情報が記録されている部分とを分離することが困難であると認めるときは、開示請求者に対し、当該行政資料に記録されている行政情報の全部を開示しないことができるものとすること。(第四条第二項関係)
3 行政機関の長は、開示請求に係る行政情報が1の一又は二に規定する不開示情報に該当する場合であっても、当該行政情報に係る個人又は法人等がその開示について承諾したときは、開示請求者に対し、当該行政情報を開示するものとすること。(第四条第三項関係)
4 行政機関の長は、開示請求に係る行政情報が不開示情報に該当する場合において、開示しないことにより保護される正当な利益に優越する公益上の理由が明らかにあると認めるときは、開示請求者に対し、当該行政情報を開示するものとすること。(第四条第四項関係)
三 行政情報の存否に関する情報
開示請求に係る行政情報が二の1の一、三又は四に該当する場合において、当該行政情報の存否を答えるだけで、これらの規定により保護される利益が当該行政情報を開示した場合と同様に害されることとなることが明らかであるときは、行政機関の長は、開示請求に係る行政情報の存否を明らかにしないで、当該開示請求を拒否することができるものとすること。(第五条関係)
四 開示請求の方法
開示請求は、開示請求者の氏名、開示請求をする行政情報及び行政情報の開示の方法を記載した請求書を提出して、行わなければならないものとすること。(第六条関係)
五 開示決定等
行政機関の長は、原則として、開示請求を受理した日から起算して十四日以内に開示決定等をし、開示請求者に対し、書面により通知しなければならないものとするとともに、行政機関の長が期間内に開示決定等を行わない場合の取扱い及び開示請求に係る行政情報が記録されている行政資料が著しく大量である場合における特例について必要な規定を設けること。(第七条及び第八条関係)
六 事案の移送
行政機関の長は、相当の理由があるときは、事案を他の行政機関の長に移送することができるものとすること。(第九条関係)
七 第三者保護に関する手続
開示請求に係る行政情報が記録されている行政資料に第三者に関する情報が記録されている場合における当該第三者の意見の聴取及び当該意見を聴取した場合における開示の実施時期について、必要な規定を設けること。(第十条関係)
八 開示の方法
1 行政情報の開示は、原則として、当該行政情報が記録されている行政資料を閲覧に供し、又は複写させることにより行うものとすること。(第十一条第一項及び第二項関係)
2 開示請求に係る行政情報が記録されている行政資料が歴史的な資料等として特別に保有されているものである場合には、当該行政情報の開示の方法について特別の定めをすることができるものとすること。(第十一条第三項関係)
九 手数料等
1 行政資料を閲覧に供することにより行う行政情報の開示は、これを無償とするものとすること。(第十二条第一項関係)
2 開示請求者が行政資料の写しの交付を受けるときは、実費の範囲内において定める額の手数料を納付しなければならないものとするとともに、行政資料の写しの送付を受ける場合には、併せて郵送料を納付しなければならないものとすること。(第十二条第二項及び第四項関係)
3 行政機関の長は、開示請求者に経済的困難その他特別の理由があると認めるときは、手数料を免除し、又は減額することができる。開示請求に公益上の理由があると認めるときも、同様とするものとすること。(第十二条第三項関係)
十 権限又は事務の委任
行政機関の長は、第二に定める権限又は事務を当該行政機関の職員に委任することができるものとすること。(第十三条関係)

第三 不服申立て
一 行政情報開示不服審査会に対する諮問
開示決定等(会計検査院長がする開示決定等を除く。)に係る不服申立てに対して決定又は裁決をしようとするときは、原則として、当該不服申立てに係る処分庁、審査庁又は再審査庁は、行政情報開示不服審査会に諮問をしなければならないものとすること。(第十四条関係)
二 答申の尊重
一の諮問をした処分庁、審査庁又は再審査庁(以下「諮問庁」という。)は、当該諮問に対する答申を受けたときは、これを尊重しなければならないものとすること。(第十五条関係)
三 行政情報開示不服審査会の設置及び組織等
1 行政機関の長の諮問に応じ不服申立てについて調査審議させるため、総理府に、行政情報開示不服審査会(以下「審査会」という。)を置くものとすること。(第十六条関係)
2 審査会は、人格が高潔であって、情報公開に関し優れた識見を有する者のうちから、両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命する委員六人をもって組織するものとするとともに、委員の任免、服務等について、必要な規定(罰則を含む。)を設けること。(第十七条〜第二十一条、第二十三条、第二十四条及び第三十八条関係)
3 審査会の会長、合議体及び事務局について、必要な規定を設けること。(第二十二条、第二十七条第一項及び第二十九条関係)
四 行政情報開示不服審査会の調査審議の手続
1 不開示決定に係る不服申立てについて調査審議する場合においては、審査会は、当該不開示決定に関する行政情報が記録されている行政資料について、必要があると認めるときは、諮問庁に対し、第二の二の1及び2並びに三の趣旨に反しない限度において、当該行政資料の標目並びに当該行政資料に記録されている行政情報のうち開示しない部分について、これを特定するに足りる事項、その内容の要旨及びこれを開示しない理由その他必要な事項を、審査会の定める方式に従って分類し、かつ、整理することその他の方法により記載した書面の提出を求めることができるものとすること。(第二十五条第一項関係)
2 審査会は、1により書面の提出を受けた場合においても、なお必要があると認めるときは、諮問庁に対し、当該行政資料の提示をさせることができる。この場合においては、何人も、その提示された行政資料の開示を求めることができないものとすること。(第二十五条第二項関係)
3 1及び2に定めるもののほか、審査会の調査権限について、必要な規定を設けること。(第二十五条第三項関係)
4 不服申立人等は、審査会に対し、口頭で意見を陳述し、又は意見書若しくは資料を提出することができるものとすること。(第二十六条第一条及び第二項関係)
5 不服申立人等は、審査会に対し、審査会に提出された意見書又は資料の閲覧(複写を含む。以下同じ。)又は写しの交付を求めることができるものとするとともに、審査会は、第三者の利益を害するおそれがあるときその他正当な理由があるときでなければ、その閲覧又は写しの交付を拒むことができないものとすること。(第二十六条第三項及び第四項関係)
6 委員による調査手続、審査会がした処分に対する不服申立ての制限、答申の公表等について、必要な規定を設けること。(第二十六条第五項、第二十七条第二項、第二十八条及び第三十条関係)

第四 訴訟
一 訴訟の管轄
開示決定等(開示決定等に係る不服申立てに対する決定又は裁決を含む。)に係る抗告訴訟は、これを提起しようとする者の住所地の裁判所にも、提起することができるものとすること。(第三十一条関係)
二 不開示決定に関する行政資料の標目等を記載した書面の提出命令等
1 不開示決定(開示決定に係る不服申立てに対して、当該開示決定を取り消し、当該開示決定に係る行政情報の全部又は一部を開示しない旨の決定又は裁決を含む。以下同じ。)に係る抗告訴訟においては、裁判所は、当該不開示決定に関する行政情報が記録されている行政資料について、必要があると認めるときは、行政機関の長に対し、当事者の申立てにより又は職権で、決定をもって、第二の二の1及び2並びに三の趣旨に反しない限度において、当該行政資料の標目並びに当該行政資料に記録されている行政情報のうち開示しない部分について、これを特定するに足りる事項、その内容の要旨及びこれを開示しない理由その他必要な事項を、その裁判所の定める方式に従って分類し、かつ、整理することその他の方法により記載した書面の提出を命ずることができるものとすること。(第三十二条第一項関係)
2 1の抗告訴訟において不開示決定に関する行政情報が記録されている行政資料につき文書提出命令の申立てがあったときは、原則として、当該行政資料を保有する行政機関の長は、その提出を拒むことができないものとすること。(第三十二条第二項関係)
3 裁判所は、2の文書提出命令の申立てがあった場合において、1により提出を受けた書面によっても、なお当該行政資料が前項の規定により提出を拒むことができないものであるかどうかの判断をすることが困難であると認めるときは、行政機関の長に対し、決定をもって、その提示をさせることができる。この場合においては、何人も、その提示された行政資料の開示を求めることができないものとすること。(第三十二条第三項関係)

第五 行政情報の公開の総合的な推進等
一 行政情報の公開の総合的な推進
政府は、行政情報を開示するほか、行政情報の提供その他の行政情報の公開に関する施策の充実を図り、国民に対する行政情報の公開の総合的な推進に努めるものとするものとすること。(第三十三条関係)
二 行政情報検索ファイルの作成、行政情報サービスセンターの設置その他の利便の提供
1 行政機関の長は、当該行政機関に係る行政情報の検索ファイルを作成し、一般の閲覧に供しなければならないものとすること。(第三十四条第一項関係)
2 行政情報の開示を請求する者の利便に資するため、総務庁に、各都道府県をその管轄区域とする地方支分部局として、行政情報サービスセンターを置くものとすること。(第三十四条第二項関係)
3 政府は、1及び2に定めるもののほか、この法律の円滑な運用を確保するため、行政情報の報道機関への積極的な提供及び広報手段の充実に努めるとともに、総合的な案内窓口の整備、行政資料の閲覧施設等行政情報を提供するための施設の整備その他行政情報の開示を請求する者の利便を考慮した適切な措置を講ずるものとするものとすること。(第三十四条第三項関係)
三 国会に対する報告等
政府は、毎年度、国会に対しこの法律の施行の状況を報告するとともに、その概要を公表しなければならないものとすること。(第三十五条関係)
四 行政資料の管理に関する制度の整備
1 行政機関は、行政資料の管理に関する定めを制定し、これを公にするとともに、当該定めに従い行政資料の適切な管理を行うものとすること。(第三十六条第一項関係)
2 1の定めに規定すべき行政資料の分類、収受、作成、決裁、供覧、公表、整理保管、保存及び廃棄に関する基準並びにその基準を遵守する義務及びその基準に違反した場合における罰則その他必要な事項については、別に法律で定めるものとすること。(第三十六条第二項関係)
3 行政機関は、行政資料の管理に関する事務を適正に行うため、情報管理専門官を置くものとすること。(第三十六条第三項関係)
五 地方公共団体の施策
地方公共団体は、この法律に規定する国の施策に準じて、その保有する情報の公開に関し必要な施策を策定し、及びこれを実施するよう努めなければならないものとすること。(第三十九条関係)
六 その他
この法律の実施のため必要な事項の政令への委任について、必要な規定を設けること。(第三十七条関係)

第六 附則
この法律は、審査会の委員の任命についての規定のうち両議院の同意に関する部分を除き、平成十一年四月一日から施行するものとすること。

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