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債権管理回収業に関する特別措置法案要綱


第一 目的
この法律は、許可制度を実施することにより弁護士法の特例として債権回収会社が業として特定金銭債権の管理及び回収を行うことができるようにするとともに、債権回収会社について必要な規制を行うことによりその業務の適正な運営の確保を図り、もって国民経済の健全な発展に資することを目的とすること。(第一条関係)
第二 定義
一 この法律において「特定金銭債権」とは、次に掲げるものをいうこと。(第二条第一項関係)
 1 預金保険法に規定する金融機関、農水産業協同組合貯金保険法に規定する農水産業協同組合及び保険業法に規定する保険会社が有する貸付債権
 2 特定債権等に係る事業の規制に関する法律に規定する特定債権
 3 貸金業の規制等に関する法律に規定する貸金業者であって、政令で定めるものが有する貸付債権
 4 1から3までの金銭債権に類するものとして政令で定めるもの
 二 この法律において「債権管理回収業」とは、弁護士以外の者が委託を受けて法律事件に関する法律事務である特定金銭債権の管理及び回収を行う営業又は他人から譲り受けて訴訟、調停、和解その他の手段によって特定金銭債権の管理及び回収を行う営業をいうこと。(第二条第二項関係)
 三 この法律において「債権回収会社」とは、第三の許可を受けた株式会社をいうこと。(第二条第三項関係)
第三 営業の許可
債権管理回収業は、法務大臣の許可を受けた株式会社でなければ、営むことができないこと。(第三条関係)
第四 許可の基準
  法務大臣は、許可の申請があったときは、許可申請者が次のいずれかに該当する場合を除き、第三の許可をしなければならないこと。(第五条関係)
一 資本の額が五億円以上の株式会社でない者
二 第七の五1により第三の許可を取り消され、その取消しの日から五年を経過しない株式会社
三 この法律若しくは弁護士法又はこれらに相当する外国の法令の規定により罰金の刑(これに相当する外国の法令による刑を含む。)に処せられ、その刑の執行を終わり、又はその刑の執行を受けることがなくなった日から五年を経過しない株式会社
四 常務に従事する取締役のうちにその職務を公正かつ的確に遂行することができる知識及び経験を有する弁護士のない株式会社
五 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律に規定する暴力団員又は暴力団員でなくなった日から五年を経過しない者(以下「暴力団員等」という。)がその事業活動を支配する株式会社
六 暴力団員等をその業務に従事させ、又はその業務の補助者として使用するおそれのある株式会社
七 取締役(相談役、顧問その他いかなる名称を有する者であるかを問わず、会社に対し取締役と同等以上の支配力を有するものと認められる者を含む。)又は監査役(以下「役員等」という。)のうちに次のいずれかに該当する者のある株式会社
1 禁治産者若しくは準禁治産者又は外国の法令上これらと同様に取り扱われている者
2 破産者で復権を得ないもの又は外国の法令上これと同様に取り扱われている者
3 禁以上の刑(これに相当する外国の法令による刑を含む。)に処せられ、その刑の執行を終わり、又はその刑の執行を受けることがなくなった日から五年を経過しない者
4 この法律若しくは弁護士法又はこれらに相当する外国の法令の規定により罰金の刑(これに相当する外国の法令による刑を含む。)に処せられ、その刑の執行を終わり、又はその刑の執行を受けることがなくなった日から五年を経過しない者
5 債権の管理又は回収に関し、刑法、暴力行為等処罰に関する法律、貸金業の規制等に関する法律若しくは暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律又はこれらに相当する外国の法令により罰金の刑(これに相当する外国の法令による刑を含む。)に処せられ、その刑の執行を終わり、又はその刑の執行を受けることがなくなった日から五年を経過しない者
6 暴力団員等
7 債権回収会社が第七の五1により第三の許可を取り消された場合において、その取消しの日前三十日以内に当該債権回収会社の役員等であった者で取消しの日から五年を経過しないもの
8 債権管理回収業に関し不正又は不誠実な行為をするおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者
八 債権管理回収業を適正に遂行するに足りる人的構成を有しない株式会社
第五 許可に関する意見聴取
 一 法務大臣は、第三の許可をしようとするときは、第四の五、六及び七6に該当する事由の有無について、警察庁長官の意見を聴くものとすること。(第六条第一項関係)
 二 法務大臣は、第三の許可をしようとするときは、弁護士である取締役について、当該取締役がその職務を公正かつ的確に遂行することができる知識及び経験を有するものであるか否かに関し、日本弁護士連合会の意見を聴くものとすること。ただし、当該取締役がその所属する弁護士会の推薦を受けた者であるときは、この限りでないこと。(第六条第二項関係)
 三 その他許可の申請、許可申請書の記載事項に係る変更等の届出、債権管理回収業の譲渡及び譲受け並びに会社の合併の場合の法務大臣の認可、廃業の届出等に関し、所要の規定を整備すること。(第四条及び第七条から第十条まで関係)
第六 業務
一 受託債権の管理又は回収の権限等
  1 債権回収会社は、委託を受けて債権の管理又は回収の業務を行う場合には、委託者のために自己の名をもって、債権の管理又は回収に関する一切の裁判上又は裁判外の行為を行う権限を有すること。(第十一条第一項関係)
2 債権回収会社は、委託を受けて債権の管理若しくは回収の業務を行い、又は譲り受けた債権の管理若しくは回収の業務を行う場合において、次に掲げる手続については、弁護士に追行させなければならないこと。(第十一条第二項関係)
イ 簡易裁判所以外の裁判所における民事訴訟手続、民事保全の命令に関する手続及び執行抗告(民事保全の執行の手続に関する裁判に対する執行抗告を含む。)に係る手続
ロ 簡易裁判所における民事訴訟手続であって、訴訟の目的の価額が九十万円を超えるもの
ハ 簡易裁判所における民事保全の命令に関する手続であって、本案の訴訟の目的の価額が九十万円を超えるもの
 二 業務の範囲
   債権回収会社は、債権管理回収業及び次の業務以外の業務を営むことができないこと。ただし、債権回収会社が債権管理回収業を営む上において支障を生ずることがないと認められるものについて、法務大臣の承認を受けたときは、この限りでないこと。(第十二条関係)
 1 特定金銭債権の管理又は回収を行う業務であって、債権管理回収業に該当しないもの
2 債権管理回収業又は1の業務に付随する業務であって、政令で定めるもの
 三 商号
  1 債権回収会社は、その商号中に債権回収という文字を用いなければならないこと。(第十三条第一項関係)
  2 債権回収会社でない者は、その商号のうちに債権回収会社であると誤認されるおそれのある文字を用いてはならないこと。(第十三条第二項関係)
 四 名義貸しの禁止
   債権回収会社は、自己の名義をもって、他人に債権管理回収業を営ませてはならないこと。(第十四条関係)
 五 業務に関する規制
  1 債権回収会社の業務に従事する者は、その業務を行うに当たり、人を威迫し又はその私生活若しくは業務の平穏を害するような言動により、その者を困惑させてはならないこと。(第十七条第一項関係)
  2 債権回収会社の業務に従事する者は、その業務を行うに当たり、相手方の請求があったときは、債権回収会社の商号、自己の氏名その他法務省令で定める事項を、その相手方に明らかにしなければならないこと。(第十七条第二項関係)
  3 債権回収会社は、暴力団員等をその業務に従事させ、又はその業務の補助者として使用してはならないこと。(第十八条第一項関係)
  4 債権回収会社は、その業務に関して広告をするときは、著しく事実に相違する表示その他の人を誤認させるような表示をしてはならないこと。(第十八条第二項関係)
  5 債権回収会社は、債権管理回収業に係る債権の債務者又は保証人から、これらの者がその債権に係る債務の不履行の場合に直ちに強制執行を受けるべきことを記載した公正証書の作成を公証人に嘱託することを代理人に委任することを証する委任状を取得する場合においては、その債権の債権金額その他法務省令で定める事項を記載していない委任状を取得してはならないこと。(第十八条第三項関係)
  6 債権回収会社は、3から5までに定めるもののほか、債権の管理又は回収に関する行為であって、債務者等の保護に欠け、又は債権の管理若しくは回収の適正を害するおそれがあるものとして法務省令で定める行為をしてはならないこと。(第十八条第四項関係)
  7 その他受取証書の交付及び債権証書の返還について、所要の規制を整備すること。(第十五条及び第十六条関係)
 六 業務の委託及び債権譲渡の制限
  1 債権回収会社は、債権管理回収業に係る債権の管理又は回収を他の債権回収会社及び弁護士以外の者に委託してはならないこと。(第十九条第一項関係)
  2 債権回収会社は、債権管理回収業に係る債権譲渡をしようとする場合において、その相手方が次のいずれかに該当する者(以下「譲受け制限者」という。)であることを知り、若しくは知ることができるとき、又は債権譲渡の後譲受け制限者が債権を譲り受けることを知り、若しくは知ることができるときは、債権譲渡をしてはならないこと。(第十九条第二項関係)
イ 暴力団員等
ロ 暴力団員等がその運営を支配する法人その他の団体又は当該法人その他の団体の構成員
 ハ その債権の管理又は回収に当たり、五の1若しくは3から6までに違反し、又は刑法若しくは暴力行為等処罰に関する法律の罪を犯すおそれが明らかである者
第七 監督
一 業務に関する帳簿書類
債権回収会社は、法務省令で定めるところにより、その業務に関する帳簿書類を作成し、これを保存しなければならないこと。(第二十条関係)
二 事業報告書の提出
債権回収会社は、事業年度ごとに、法務省令で定めるところにより、事業報告書を作成し、毎事業年度経過後三月以内に、これを法務大臣に提出しなければならないこと。(第二十一条関係)
 三 立入検査等
  1 法務大臣は、債権回収会社の業務の適正な運営を確保するため必要があると認めるときは、債権回収会社に対し、その業務若しくは財産に関して報告若しくは資料の提出を命じ、又は当該職員に、債権回収会社の営業所若しくは事務所に立ち入り、その業務若しくは財産の状況若しくは帳簿書類その他の物件を検査させ、若しくは関係者に質問させることができること。(第二十二条第一項関係)
  2 警察庁長官は、債権回収会社について、第四の五、六若しくは七6に該当する事由又は第六の五1、3若しくは第六の六2に違反する事実があると疑うに足りる相当な理由があり、かつ、第五の一、第七の五2又は第八の二に基づき意見を述べるために必要であると認められる場合には、法務大臣に協議の上、第四の五、六若しくは七6に該当する事由又は第六の五1、3若しくは第六の六2に違反する事実の有無を確認するために必要な限度で、債権回収会社に対し、その業務に関して報告若しくは資料の提出を命じ、又は警察庁職員に、債権回収会社の営業所若しくは事務所に立ち入り、その業務の状況若しくは帳簿書類その他の物件を検査させ、若しくは関係者に質問させることができること。(第二十二条第二項関係)
  3 警察庁長官は、2により報告若しくは資料の提出を命じ、又は立入検査若しくは質問をさせたときは、その結果を速やかに文書で法務大臣に通報するものとすること。(第二十二条第三項関係)
  4 1又は2により立入検査又は質問をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の請求があったときは、これを提示しなければならないこと。(第二十二条第四項関係)
  5 1又は2による立入検査又は質問の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならないこと。(第二十二条第五項関係)
 四 業務改善命令
   法務大臣は、債権回収会社の業務の適正な運営を確保するため必要があると認めるときは、債権回収会社に対し、業務の運営の改善に必要な措置をとるべきことを命ずることができること。(第二十三条関係)
五 許可の取消し等
  1 法務大臣は、債権回収会社が次のいずれかに該当するときは、第三の許可を取り消し、又は六月以内の期間を定めてその業務の全部若しくは一部の停止を命ずることができること。(第二十四条第一項関係)
   イ 第四の一から八までのいずれかに該当することとなったとき。
   ロ 不正の手段により第三の許可を受けたとき。
   ハ この法律若しくはこの法律に基づく命令又はこれらに基づく処分に違反したとき。
   ニ 債権管理回収業に関し、不正又は著しく不当な行為をした場合において、その情状が特に重いとき。
   ホ 第三の許可を受けてから六月以内に営業を開始せず、又は引き続き六月以上営業を休止し、現に営業を営んでいないとき。
  2 法務大臣は、1による処分をしようとするときは、第四の五、六若しくは七6に該当する事由又は第六の五1、3若しくは第六の六2に違反する事実の有無について、警察庁長官の意見を聴くことができること。(第二十四条第二項関係)
  3 法務大臣は、1による処分をしたときは、法務省令で定めるところにより、その旨を公告しなければならないこと。(第二十五条関係)
第八 その他
 一 協力依頼
  法務大臣は、この法律の施行のため必要があると認めるときは、官庁、公共団体その他の者に照会し、又は協力を求めることができること。(第二十六条関係)
 二 法務大臣への意見
  警察庁長官は、債権回収会社について、第四の五、六若しくは七6に該当する事由又は第六の五1、3若しくは第六の六2に違反する事実があると疑うに足りる相当な理由があるため、法務大臣が債権回収会社に対して適当な措置をとることが必要であると認める場合には、法務大臣に対し、その旨の意見を述べることができること。(第二十七条関係)
三 援助
  1 債権回収会社は、その業務を行うに当たり、暴力的不法行為等による被害を受け、又は被害を受けるおそれがあると認めるときは、警察庁長官に対し、必要な援助を受けたい旨の申出をすることができること。(第二十八条第一項関係)
  2 警察庁長官は、1の申出を相当と認めるときは、債権回収会社に対し、助言その他必要な援助を行うものとすること。(第二十八条第二項関係)
四 犯罪があると思料する場合の措置
  債権回収会社は、その役員又は職員がその業務を行うことにより犯罪があると思料するときは直ちに所要の報告をさせ、報告があったときは告発に向けて所要の措置をとらなければならないこと。(第二十九条関係)
五 警察庁長官への通報
   法務大臣は、第三の許可、第七の五1の許可の取消し等の処分をし、又は第五の三の許可申請書の記載事項に係る変更等の届出を受けたときは、その旨を速やかに文書で警察庁長官に通報するものとすること。(第三十条関係)
 六 罰則
   所要の罰則を設けること。(第三十三条から第三十七条まで関係)
第九 施行期日等
 一 施行期日
  この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行すること。(附則第一条関係)
 二 商号に関する経過措置
   第六の三2は、この法律の際現に債権回収会社であると誤認されるおそれのある文字を用いている者については、この法律の施行の日から起算して六月間は、適用しないこと。(附則第二条関係)
 三 その他所要の規定の整備を行うこと。

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