永住外国人に対する地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権及び被選挙権の付与に関する法律案要綱
第一 総論
一 目的 (第一条関係)
この法律は、永住外国人に対する地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権及び被選挙権の付与に関し、地方自治法及び公職選挙法の特例を定めることを目的とするものとすること。
二 永住外国人の定義 (第二条関係)
この法律において「永住外国人」とは、次のいずれかに該当する者をいうものとすること。
1 出入国管理及び難民認定法別表第二の上欄の永住者の在留資格をもって在留する者
2 日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法に定める特別永住者
第二 普通地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権及び被選挙権に関する地方自治法及び公職選挙法の特例
一 選挙権に関する地方自治法及び公職選挙法の特例 (第三条関係)
申請により永住外国人選挙人名簿に登録された年齢満二十年以上の永住外国人で引き続き三箇月以上市町村の区域内に住所を有するものは、その属する普通地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権を有するものとすること。
二 被選挙権に関する地方自治法及び公職選挙法の特例 (第四条関係)
申請により永住外国人選挙人名簿に登録された永住外国人は、次の区分に従い、それぞれ当該議員又は長の被選挙権を有するものとすること。
1 都道府県の議会の議員については、その選挙権を有する者で年齢満二十五年以上のもの
2 都道府県知事については、年齢満三十年以上の者
3 市町村の議会の議員については、その選挙権を有する者で年齢満二十五年以上のもの
4 市町村長については、年齢満二十五年以上の者
第三 永住外国人選挙人名簿及び普通地方公共団体の議会の議員及び長の選挙の投票等に関する公職選挙法の特例
一 永住外国人選挙人名簿
1 永住外国人選挙人名簿 (第五条関係)
(1) 市町村の選挙管理委員会は、永住外国人選挙人名簿の調製及び保管を行うものとすること。
(2) 永住外国人選挙人名簿は、永久に据え置くものとし、かつ、都道府県の議会の議員及び長の選挙並びに市町村の議会の議員及び長の選挙を通じて一の名簿とするものとすること。
(3) 市町村の選挙管理委員会は、毎年三月、六月、九月及び十二月(以下「登録月」という。)並びに普通地方公共団体の議会の議員又は長の選挙を行う場合に、永住外国人選挙人名簿の登録を行うものとすること。
(4) 永住外国人選挙人名簿は、磁気ディスク(これに準ずる方法により一定の事項を確実に記録しておくことができる物を含む。)をもって調製することができるものとすること。
2 被登録資格等 (第七条・第八条関係)
(1) 永住外国人選挙人名簿の登録は、年齢満二十年以上の永住外国人(公民権停止中の者を除く。(2)において同じ。)で当該市町村の区域内に引き続き三箇月以上住所を有するものについて、登録されたことがない者についてはその申請により、登録されたことがある者については職権により、市町村の選挙管理委員会が行うものとすること。
(2) 市町村の区域内に住所を有する年齢満二十年以上の永住外国人で、永住外国人選挙人名簿に登録されたことがない者は、文書で、当該市町村の選挙管理委員会に永住外国人選挙人名簿の登録の申請をすることができるものとすること。
3 登録 (第十条関係)
市町村の選挙管理委員会は、永住外国人選挙人名簿に登録される資格を有する者を、定時登録については登録月の一日現在により当該登録月の二日に、普通地方公共団体の議会の議員又は長の選挙を行う場合の登録については当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会が定めるところにより、申請又は職権によって、永住外国人選挙人名簿に登録しなければならないものとすること。
4 永住外国人選挙人名簿の登録に関する異議の申出及び訴訟 (第十二条・第十三条関係)
都道府県の議会の議員及び長の選挙の選挙人は、当該都道府県の区域内の市町村の永住外国人選挙人名簿の登録に不服があるときは、縦覧期間内に当該市町村の選挙管理委員会に異議を申し出ることができるものとし、異議の申出に関する決定に不服がある異議申出人又は関係人は、決定の通知を受けた日から七日以内に当該市町村の選挙管理委員会を被告として出訴することができるものとすること。
5 登録の抹消 (第十六条関係)
市町村の選挙管理委員会は、当該市町村の永住外国人選挙人名簿に登録されている者について、死亡したこと又は永住外国人でなくなったことを知ったとき、当該市町村を包括する都道府県の区域外に住所を移したこと又は国内に住所を有しなくなったことを知ったとき、当該市町村の区域内に住所を有しなくなった旨の表示をされた者が当該市町村の区域内に住所を有しなくなった日後四箇月を経過するに至ったとき及び登録の際に登録されるべきでなかったことを知ったときは、これらの者を直ちに永住外国人選挙人名簿から抹消しなければならないものとすること。
6 住所を有しなくなる旨の届出 (第十九条関係)
永住外国人選挙人名簿に登録されている者で当該永住外国人選挙人名簿の属する市町村の区域内に住所を有しなくなるものは、あらかじめ、その旨を当該市町村の選挙管理委員会に届け出なければならないものとすること。
7 その他
永住外国人選挙人名簿の登録に関する縦覧、表示及び訂正、通報及び閲覧、再調製等について、選挙人名簿に準じて所要の規定を整備すること。
二 普通地方公共団体の議会の議員及び長の選挙の投票等 (第二十四条・第二十五条関係)
永住外国人の投票等は、公職選挙法の定めるところにより日本国民と同じ手続により行うこととし、これに伴い公職選挙法について必要な読替適用を行うこと。
三 罰則
1 詐偽登録 (第二十六条・第二十七条関係)
詐偽の方法をもって永住外国人選挙人名簿に登録をさせた者は、六月以下の禁錮又は三十万円以下の罰金に処するものとするとともに、この罪を犯した者に係る公民権停止の規定を設けること。
2 住所を有しなくなる旨の届出を怠った場合の過料 (第二十八条関係)
正当な理由がなくて一6による届出をしない者は、五千円以下の過料に処するものとすること。
第四 直接請求等に関する地方自治法等の特例
一 条例の制定及び監査の請求 (第二十九条関係)
1 この法律の規定により選挙権を有する永住外国人たる普通地方公共団体の住民は、その属する普通地方公共団体の条例(地方税の賦課徴収並びに分担金、使用料及び手数料の徴収に関するものを除く。)の制定又は改廃を請求する権利を有するものとすること。
2 この法律の規定により選挙権を有する永住外国人たる普通地方公共団体の住民は、その属する普通地方公共団体の事務の監査を請求する権利を有するものとすること。
二 解散及び解職の請求 (第三十条関係)
1 この法律の規定により選挙権を有する永住外国人たる普通地方公共団体の住民は、その属する普通地方公共団体の議会の解散を請求する権利を有するものとすること。
2 この法律の規定により選挙権を有する永住外国人たる普通地方公共団体の住民は、その属する普通地方公共団体の議会の議員、長、副知事若しくは助役、出納長若しくは収入役、選挙管理委員若しくは監査委員又は公安委員会の委員の解職を請求する権利を有するものとすること。
3 この法律の規定により選挙権を有する永住外国人たる普通地方公共団体の住民は、その属する普通地方公共団体の教育委員会の委員の解職を請求する権利を有するものとすること。
三 条例の制定及び監査の請求並びに解散及び解職の請求に関する特例 (第三十一条関係)
永住外国人の直接請求は、地方自治法の定めるところにより日本国民と同じ手続により行うこととし、これに伴い地方自治法について必要な読替適用を行うこと。
第五 選挙権及び被選挙権を有する永住外国人に付与される権利及び資格
第二の普通地方公共団体の選挙権及び被選挙権並びに第四の直接請求権の他に、選挙権を有する永住外国人に、市町村の合併の特例に関する法律に基づく合併協議会設置の請求権、住居表示に関する法律に基づく町又は字の区域の新設等についての市町村長の案に対する変更請求権、公職の候補者の推薦届出をする権利、町村総会への参加資格並びに投票管理者、投票立会人、開票管理者、開票立会人、選挙長、選挙立会人、選挙管理委員及び補充員、人権擁護委員、民生委員、民生委員推薦会委員並びに児童委員への就任資格を、被選挙権を有する永住外国人に、長の職務の臨時代理者、新村の設置があった場合の新村の長の職務執行者、都道府県公安委員会の委員、教育委員会の委員及び水防事務組合の議会の議員への就任資格を付与すること。
第六 施行期日その他
一 この法律は、永住外国人選挙人名簿の登録に関する部分は公布の日から一年以内で政令で定める日から、被選挙権、投票及び直接請求への参加に関する部分は公布の日から一年六月以内で政令で定める日から施行するものとすること。
二 特別区における永住外国人の選挙権、直接請求権等について普通地方公共団体におけると同様の措置を講じること。
三 選挙権を有する永住外国人の政治活動に関する寄附を解禁すること。
四 その他所要の規定を整備すること。