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少年法等の一部を改正する法律案要綱


第一 少年法の一部改正
 一 被害者等による記録の閲覧及び謄写
1 裁判所は、第三条第一項第一号に掲げる少年に係る保護事件について、第二十一条の決定があった後、最高裁判所規則の定めるところにより当該保護事件の被害者等(被害者又はその法定代理人若しくは被害者が死亡した場合若しくはその心身に重大な故障がある場合におけるその配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹をいう。以下この項及び十において同じ。)又は被害者等から委託を受けた弁護士から、その保管する当該保護事件の記録(当該保護事件の非行事実(犯行の動機、態様及び結果その他の当該犯罪に密接に関連する重要な事実を含む。以下同じ。)に係る部分に限る。)の閲覧又は謄写の申出があるときは、当該被害者等の損害賠償請求権の行使のために必要があると認める場合その他正当な理由がある場合であって、少年の健全な育成に対する影響、事件の性質、調査又は審判の状況その他の事情を考慮して相当と認めるときは、申出をした者にその閲覧又は謄写をさせることができるものとすること。第三条第一項第二号に掲げる少年に係る保護事件についても、同様とすること。(第五条の二第一項関係)
2 1の申出は、その申出に係る保護事件を終局させる決定が確定した後三年を経過したときは、することができないものとすること。(第五条の二第二項関係)
3 1により記録の閲覧又は謄写をした者は、正当な理由がないのに閲覧又は謄写により知り得た少年の氏名その他少年の身上に関する事項を漏らしてはならず、かつ、閲覧又は謄写により知り得た事項をみだりに用いて、少年の健全な育成を妨げ、関係人の名誉若しくは生活の平穏を害し、又は調査若しくは審判に支障を生じさせる行為をしてはならないものとすること。(第五条の二第三項関係)
4 1による記録の閲覧又は謄写の手数料については、その性質に反しない限り、民事訴訟費用等に関する法律第七条から第十条まで及び別表第二の一の項の規定を準用するものとすること。(第五条の三関係)
 二 被害者等の申出による意見の聴取
 家庭裁判所は、最高裁判所規則の定めるところにより第三条第一項第一号又は第二号に掲げる少年に係る事件の被害者又はその法定代理人若しくは被害者が死亡した場合におけるその配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹から、被害に関する心情その他の事件に関する意見の陳述の申出があるときは、自らこれを聴取し、又は家庭裁判所調査官に命じてこれを聴取させるものとすること。ただし、事件の性質、調査又は審判の状況その他の事情を考慮して、相当でないと認めるときは、この限りでないものとすること。(第九条の二関係)
 三 観護措置期間の延長
 1 第三条第一項第一号に掲げる少年に係る死刑、懲役又は禁錮に当たる罪の事件でその非行事実の認定に関し証人尋問、鑑定若しくは検証を行うことを決定したもの又はこれを行ったものについて、少年を収容しなければ審判に著しい支障が生じるおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある場合には、第十七条第一項第二号の措置の期間の更新は、現行の一回を超えて、更に二回を限度として、行うことができるものとすること。(第十七条第四項関係)
 2 第十七条第一項第二号の措置については、収容の期間は、通じて八週間を超えることができないものとすること。ただし、その収容の期間が通じて四週間を超えることとなる決定を行うときは、1の事由がなければならないものとすること。(第十七条第九項関係)
 3 少年、その法定代理人又は付添人は、第十七条第一項第二号の措置をとる決定又はその期間を更新する決定
に対して、保護事件の係属する家庭裁判所に異議の申立てをすることができるものとすること。ただし、付添人は、選任者である保護者の明示した意思に反して、異議の申立てをすることができないものとすること。(第十七条の二第一項関係)
 4 3の異議の申立ては、審判に付すべき事由がないことを理由としてすることはできないものとすること。(第十七条の二第二項関係)
 5 3の異議の申立てについては、家庭裁判所は、合議体で決定をしなければならないものとすること。この場合において、その決定には、原決定に関与した裁判官は、関与することができないものとすること。(第十七条の二第三項関係)
 6 第三十二条の三、第三十三条及び第三十四条の規定は、3の異議の申立てがあった場合について準用するものとすること。この場合において、第三十三条第二項中「取り消して、事件を原裁判所に差し戻し、又は他の家庭裁判所に移送しなければならない」とあるのは、「取り消し、必要があるときは、更に裁判をしなければならない」と読み替えるものとすること。(第十七条の二第四項関係)
  7 第三十五条第一項の規定は、5の決定について準用するものとすること。この場合において、第三十五条第
一項中「二週間」とあるのは、「五日」と読み替えるものとすること。(第十七条の三第一項関係)
8 6並びに十一の7及び8は、7による抗告があった場合について準用するものとすること。(第十七条の三第二項関係)
 四 検察官への送致が可能な年齢制限の撤廃
 検察官への送致が可能な年齢制限(十六歳以上)を撤廃するものとすること。(第二十条第一項関係)
 五 故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件の検察官への送致
 第二十条第一項の規定にかかわらず、家庭裁判所は、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件であって、その罪を犯すとき十六歳以上の少年に係るものについては、検察官に送致する旨の決定をしなければならないものとすること。ただし、調査の結果、犯行の動機及び態様、犯行後の情況、少年の性格、年齢、行状及び環境その他の事情を考慮し、刑事処分以外の措置を相当と認めるときは、この限りでないものとすること。(第二十条第二項関係)
 六 審判の方式
 審判は、懇切を旨として、和やかに行うとともに、非行のある少年に対し自己の非行について内省を促すものとしなければならないものとすること。(第二十二条第一項関係)
 七 検察官及び弁護士たる付添人が関与した審理の導入
  1 家庭裁判所は、第三条第一項第一号に掲げる少年に係る事件であって、次に掲げる罪のものにおいて、その非行事実を認定するための審判の手続に検察官が関与する必要があると認めるときは、決定をもって、審判に検察官を出席させることができるものとすること。(第二十二条の二第一項関係)
   (一) 故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪
   (二) (一)に掲げるもののほか、死刑又は無期若しくは短期二年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪
  2 家庭裁判所は、1の決定をするには、検察官の申出がある場合を除き、あらかじめ、検察官の意見を聴かなければならないものとすること。(第二十二条の二第二項関係)
  3 検察官は、1の決定があった事件において、その非行事実の認定に資するため必要な限度で、最高裁判所規則の定めるところにより、事件の記録及び証拠物を閲覧し及び謄写し、審判の手続(事件を終局させる決定の告知を含む。)に立ち会い、少年及び証人その他の関係人に発問し、並びに意見を述べることができるものとすること。(第二十二条の二第三項関係)
4 家庭裁判所は、1の決定をした場合において、少年に弁護士である付添人がないときは、弁護士である付添人を付さなければならないものとすること。(第二十二条の三第一項関係)
5 4により家庭裁判所が付すべき付添人は、最高裁判所規則の定めるところにより、選任するものとすること。(第二十二条の三第二項関係)
6 5により選任された付添人は、旅費、日当、宿泊料及び報酬を請求することができるものとすること。(第二十二条の三第三項関係)
7 6により付添人に支給すべき旅費、日当、宿泊料及び報酬の額については、刑事訴訟法第三十八条第二項の規定により弁護人に支給すべき旅費、日当、宿泊料及び報酬の例によるものとすること。(第三十条第四項関係)
8 家庭裁判所は、少年又はこれを扶養する義務がある者から5により選任された付添人に支給した旅費、日当、宿泊料及び報酬の全部又は一部を徴収することができるものとすること。(第三十一条第一項関係)
  9 5により選任された付添人については、第四十五条第六号の規定の適用がないものとすること。(第四十五
条第六号関係)
八 保護者に対する措置
 家庭裁判所は、必要があると認めるときは、保護者に対し、少年の監護に関する責任を自覚させ、その非行を防止するため、調査又は審判において、自ら訓戒、指導その他の適当な措置をとり、又は家庭裁判所調査官に命じてこれらの措置をとらせることができるものとすること。(第二十五条の二関係)
 九 保護処分終了後における救済手続の整備
  1 保護処分が終了した後においても、審判に付すべき事由の存在が認められないにもかかわらず保護処分をし
たことを認め得る明らかな資料を新たに発見したときは、保護処分をした家庭裁判所は、決定をもって、その保護処分を取り消さなければならないものとすること。ただし、本人が死亡した場合は、この限りでないものとすること。(第二十七条の二第二項関係)
  2 保護処分の取消しの事件の手続は、その性質に反しない限り、保護事件の例によるものとすること。(第二
十七条の二第六項関係)
 十 被害者等に対する少年審判の結果等の通知
  1 家庭裁判所は、第三条第一項第一号又は第二号に掲げる少年に係る事件を終局させる決定をした場合において、最高裁判所規則の定めるところにより当該事件の被害者等から申出があるときは、その申出をした者に対し、次に掲げる事項を通知するものとすること。ただし、その通知をすることが少年の健全な育成を妨げるおそれがあり相当でないと認められるものについては、この限りでないものとすること。(第三十一条の二第一項関係)
  (一) 少年及びその法定代理人の氏名及び住居
  (二) 決定の年月日、主文及び理由の要旨
  2 1の申出は、1の決定が確定した後三年を経過したときは、することができないものとすること。(第三十一条の二第二項関係)
3 一の3は、1により通知を受けた者について、準用するものとすること。(第三十一条の二第三項関係)
 十一 検察官による抗告受理の申立て
1 検察官は、七の1の決定がされた場合においては、保護処分に付さない決定又は保護処分の決定に対し、七の1の決定があった事件の非行事実の認定に関し、決定に影響を及ぼす法令の違反又は重大な事実の誤認があることを理由とするときに限り、高等裁判所に対し、二週間以内に、抗告審として事件を受理すべきことを申し立てることができるものとすること。(第三十二条の四第一項関係)
2 1による申立て(以下「抗告受理の申立て」という。)は、申立書を原裁判所に差し出してしなければならないものとすること。この場合において、原裁判所は、速やかにこれを高等裁判所に送付しなければならないものとすること。(第三十二条の四第二項関係)
3 高等裁判所は、抗告受理の申立てがされた場合において、抗告審として事件を受理するのを相当と認めるときは、これを受理することができるものとすること。この場合においては、その旨の決定をしなければならないものとすること。(第三十二条の四第三項関係)
4 高等裁判所は、3の決定をする場合において、抗告受理の申立ての理由中に重要でないと認めるものがあるときは、これを排除することができるものとすること。(第三十二条の四第四項関係)
5 3の決定は、高等裁判所が原裁判所から2の申立書の送付を受けた日から二週間以内にしなければならないものとすること。(第三十二条の四第五項関係)
6 3の決定があった場合には、抗告があったものとみなすものとすること。この場合において、7及び8の適用については、抗告受理の申立ての理由中4により排除されたもの以外のものを抗告の趣意とみなすものとすること。(第三十二条の四第六項関係)
 7 抗告裁判所は、抗告の趣意に含まれている事項に限り、調査をするものとすること。(第三十二条の二第一
項関係)
 8 抗告裁判所は、抗告の趣意に含まれていない事項であっても、抗告の理由となる事由に関しては、職権で調
査をすることができるものとすること。(第三十二条の二第二項関係)
  9 抗告裁判所は、決定をするについて必要があるときは、事実の取調べをすることができるものとすること。
(第三十二条の三第一項関係)
  10 9の取調べは、合議体の構成員にさせ、又は家庭裁判所の裁判官に嘱託することができるものとすること。
(第三十二条の三第二項関係)
  11 3の決定があった場合において、少年に弁護士である付添人がないときは、抗告裁判所は、弁護士である付添人を付さなければならないものとすること。(第三十二条の五関係)
  12 7から11までのほか、抗告審の審理については、その性質に反しない限り、家庭裁判所の審判に関する規定
を準用するものとすること。(第三十二条の六関係)
 十二 決定の効力
  1 七の1の決定がされた場合において、当該決定があった事件につき、審判に付すべき事由の存在が認められないこと又は保護処分に付する必要がないことを理由とした保護処分に付さない旨の決定が確定したときは、その事件についても、刑事訴追をし、又は家庭裁判所の審判に付することはできないものとすること。(第四十六条第二項関係)
  2 1は、第二十七条の二第一項の規定による保護処分の取消しの決定が確定した事件については、適用しないものとすること。ただし、当該事件につき九の2によりその例によることとされる七の1の決定がされた場合であって、その取消しの理由が審判に付すべき事由の存在が認められないことであるときは、この限りでないものとすること。(第四十六条第三項関係)
 十三 無期刑の緩和の制限
 罪を犯すとき十八歳に満たない者に対しては、無期刑をもって処断すべきときであっても、有期の懲役又は禁錮を科することができるものとすること。この場合において、その刑は、十年以上十五年以下において言い渡すものとすること。(第五十一条第二項関係)
 十四 少年院における刑の執行
 懲役又は禁錮の言渡しを受けた十六歳に満たない少年に対しては、刑法第十二条第二項又は第十三条第二項の規定にかかわらず、十六歳に達するまでの間、少年院において、その刑を執行することができるものとすること。この場合において、その少年には、矯正教育を授けるものとすること。(第五十六条第三項関係)
 十五 死刑を無期刑に減軽された者の仮出獄可能期間の短縮の制限
 第五十一条第一項の規定により無期刑の言渡しを受けた者については、少年のとき無期刑の言渡しを受けた者には七年を経過した後仮出獄を許すことができるとする第五十八条第一項第一号の規定を適用しないものとすること。(第五十八条第二項関係)
 十六 その他所要の規定の整備を行うこと。
第二 裁判所法の一部改正
一 家庭裁判所は、審判又は裁判を行うときは、二の場合を除いて、一人の裁判官でその事件を取り扱うものとすること。(第三十一条の四第一項関係)
二 次に掲げる事件は、裁判官の合議体でこれを取り扱うものとすること。ただし、審判を終局させる決定並びに法廷ですべき審理及び裁判を除いて、その他の事項につき他の法律に特別の定めがあるときは、その定めに従うものとすること。(第三十一条の四第二項関係)
1 合議体で審判又は審理及び裁判をする旨の決定を合議体でした事件
2 他の法律において合議体で審判又は審理及び裁判をすべきものと定められた事件
三 二の合議体の裁判官の員数は、三人とし、そのうち一人を裁判長とするものとすること。(第三十一条の四第三項関係)
第三 家事審判法の一部改正
 一 家庭裁判所は、最高裁判所の定めるところにより、合議体の構成員に命じて終局審判以外の審判を行わせるこ
とができるものとすること。(第五条第一項関係)
 二 一により合議体の構成員が行うこととされる審判は、判事補が単独ですることができるものとすること。(第  五条第二項関係)
 三 その他所要の規定の整備を行うこと。
第四 少年院法の一部改正
一 十六歳未満の者であっても、少年院収容受刑者については、特別少年院に収容することができるものとすること。(第二条第四項関係)
二 少年院収容受刑者は、十六歳に達した日の翌日から起算して十四日以内に、監獄に移送しなければならないものとすること。ただし、その期間内に刑の執行が終了すべきときは、この限りでないものとすること。(第十条の二関係)
三 少年院収容受刑者については、逃走した時から四十八時間を経過した後は、刑事訴訟法第四百八十五条の収監状によって収監しなければならないものとすること。(第十四条第五項関係)
四 少年鑑別所は、懲役又は禁錮の言渡しを受けた十六歳未満の少年に対する刑の執行に資するためにも、少年の資質の鑑別を行うものとすること。(第十六条関係)
五 少年院収容受刑者については、監獄法第二十二条第一項、第四十三条、第四十四条及び第六十三条から第七十条までの規定を準用するものとすること。(第十七条の六第一項関係)
六 五により準用する監獄法第二十二条第一項の規定により解放された少年院収容受刑者が解放後二十四時間以内に少年院、監獄又は警察官署に出頭しないときは、刑法第九十七条の例によるものとすること。(第十七条の六第二項関係)
 七 その他所要の規定の整備を行うこと。
第五 附則
 一 施行期日
この法律は、平成十三年四月一日から施行すること。(附則第一条関係)
 二 経過措置
  1 この法律の施行の際現に係属している事件についてとられる少年法第十七条第一項第二号の措置における収
容の期間の更新及び通算した収容の期間の限度については、第一による改正後の同法(以下「新法」という)の規定にかかわらず、なお従前の例によるものとすること。(附則第二条第一項関係)
  2 新法第十七条の二の規定は、1の少年法第第十七条第一項第二号の措置及びその収容の期間の更新の決定に
ついては、適用しないものとすること。(附則第二条第二項関係)
  3 新法第二十二条の二の規定(新法において準用し、又はその例による場合を含む。)は、この法律の施行の
際現に係属している事件の手続並びにこの法律の施行後に係属する当該事件の抗告審及び再抗告審の手続については、適用しないものとすること。(附則第二条第三項関係)
  4 新法第二十七条の二第二項の規定は、この法律の施行後に終了する保護処分について適用するものとするこ
と。(附則第二条第四項関係)
5 この法律の施行前にした行為に係る検察官への送致、刑の適用及び仮出獄を許すことができるまでの期間については、なお従前の例によるものとすること。(附則第二条第五項関係)
 三 その他関係法律について所要の整備を行うこと。(附則第三条から第六条まで関係)


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