雇用保険の財政の安定化及び求職者等に対する能力開発支援のための緊急措置に関する法律案要綱
第一 総則
一 目的
この法律は、最近における経済社会の急速な変化に伴い、雇用及び失業に関する状況が悪化し、多数の者が離職又はその営む事業の廃止を余儀なくされていることにかんがみ、雇用保険法による求職者給付の水準を確保するために必要な緊急の財政措置を講ずるとともに、求職者給付が終わった求職者、失業している廃業者等に対して、就職及び新たな事業の開始を促進するための能力開発を支援する求職者等能力開発給付を行う緊急の措置を講じ、もって失業している者の生活の安定を図ることを目的とするものとすること。(第一条関係)
二 定義
1 この法律において「失業」とは、離職し、又は事業を廃止し、就業の意思及び能力を有するにもかかわらず、就職することができず、又は新たに事業を開始することができない状態をいうものとすること。(第二条第一項関係)
2 この法律において「能力開発訓練」とは、就職又は新たな事業の開始の促進を図るために必要な教育訓練として厚生労働大臣が指定するものをいうものとすること。(第二条第二項関係)
3 この法律において「特定廃業者」とは、次のいずれかに該当する事由によりその営む事業(農林、畜産、養蚕及び水産の事業を除く。)を廃止した小規模企業者(小規模企業共済法第二条第一項第一号から第四号までに掲げる者をいう。)をいうものとすること。(第二条第三項関係)
イ 破産、再生手続開始、更生手続開始、整理開始又は特別清算開始の申立てその他厚生労働大臣が定める事由が生じたこと。
ロ 破産、再生手続開始、更生手続開始、整理開始又は特別清算開始の申立てその他厚生労働大臣が定める事由が生じた事業者に対する売掛金債権その他厚生労働省令で定める債権の回収が困難になったことその他厚生労働省令で定める事由により、当該小規模企業者の事業の継続が困難になったこと。
第二 雇用保険の財政の安定化を図るための措置
国は、雇用保険法による求職者給付の水準を確保するため、雇用保険の財政の安定化を図るための措置を講ずるものとすること。(第三条関係)
第三 求職者等能力開発給付
一 求職者等能力開発給付
1 国は、能力開発訓練を受ける者に対して、求職者等能力開発給付を行うものとすること。(第四条第一項関係)
2 求職者等能力開発給付は、能力開発手当とすること。(第四条第二項関係)
二 能力開発手当の受給資格
能力開発手当は、次に掲げる者であって引き続き失業しているもの(イ及びロに掲げる者にあってはイ及びロの求職者給付の受給資格に係る離職の日、ハに掲げる者にあってはその事業を廃止した日において六十五歳以上である者を除く。)が能力開発訓練を受ける場合に、当該能力開発訓練を受ける期間内の日(その者が当該能力開発訓練を受けるため待期している期間(政令で定める期間に限る。)内の日を含み、公共職業安定所において失業していることについての認定及び厚生労働省令で定める基準に従って能力開発訓練を受けていることについての認定(以下「失業及び能力開発訓練の認定」という。)を受けた日に限る。)について支給するものとすること。(第五条関係)
イ 雇用保険法第二十三条第三項に規定する特定受給資格者(以下「特定受給資格者」という。)であって、当該受給資格に係る同法による求職者給付が終わったもの
ロ 特定受給資格者以外の雇用保険法第十五条第一項に規定する受給資格者であって、当該受給資格に係る同法による求職者給付が終わったもののうち、当該受給資格に係る離職の日から起算して一年を経過した者
ハ 特定廃業者
三 認定等
1 能力開発手当の支給を受けようとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、公共職業安定所に出頭し、二の受給資格者に該当する旨の認定を受けなければならないものとすること。(第六条第一項関係)
2 1の認定を受けた者は、能力開発訓練を受けることとなったときは、厚生労働省令で定めるところにより、速やかに、その旨を公共職業安定所長に届け出なければならないものとすること。(第六条第二項関係)
3 失業及び能力開発訓練の認定を受けようとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、公共職業安定所に出頭し、申請をしなければならないものとすること。この場合において、失業及び能力開発訓練の認定を受けようとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、隔地者が映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話をすることができる方法であって厚生労働省令で定めるものによって公共職業安定所と通信を行うことをもって、当該公共職業安定所への出頭に代えることができるものとすること。(第六条第三項関係)
4 失業及び能力開発訓練の認定は、3の公共職業安定所において、1の認定を受けた後最初に失業及び能力開発訓練の認定を受けた日から起算して一月に一回ずつ直前の月に属する各日について行うものとすること。(第六条第四項関係)
5 失業及び能力開発訓練の認定を受けようとする者は、厚生労働省令で定めるやむを得ない理由のために公共職業安定所に出頭すること(3の方法によって公共職業安定所と通信を行うことをもって当該公共職業安定所への出頭に代えた場合にあっては、当該通信を行うこと)ができなかったときは、3及び4にかかわらず、厚生労働省令で定めるところにより、その理由を記載した証明書を提出することによって、失業及び能力開発訓練の認定を受けることができるものとすること。(第六条第五項関係)
四 能力開発手当の支給期間、日額及び支給日数
能力開発手当は、三の1の認定の日から起算して三年(当該三年の期間内に妊娠、出産、育児その他厚生労働省令で定める理由により引き続き三十日以上能力開発訓練を受けることができない者が、厚生労働省令で定めるところにより公共職業安定所長にその旨を申し出た場合には、当該理由により能力開発訓練を受けることができない日数を加算するものとし、その加算された期間が五年を超えるときは、五年とする。)の期間内の能力開発訓練を受けている日について、日額三千三百円を、七百三十日分を限度として支給するものとすること。(第七条関係)
五 能力開発手当の支給方法及び支給期日
1 能力開発手当は、厚生労働省令で定めるところにより、一月に一回、失業及び能力開発訓練の認定を受けた日分を支給するものとすること。(第八条第一項関係)
2 公共職業安定所長は、三の1の認定を受けた者ごとに能力開発手当を支給すべき日を定め、その者に通知するものとすること。(第八条第二項関係)
六 調整
能力開発手当の支給を受けることができる者が、同一の事由により、雇用対策法の規定による職業転換給付金その他法令又は条例の規定による能力開発手当に相当する給付の支給を受けることができる場合には、当該支給事由によっては、能力開発手当は支給しないものとすること。ただし、当該相当する給付の額が能力開発手当の額に満たないときは、能力開発手当の額から当該相当する給付の額を控除した残りの額を能力開発手当として支給することができるものとすること。(第九条関係)
七 その他
罰則その他所要の規定を設けること。
第四 失業等給付資金の設置(附則第三条関係)
一 失業等給付資金の設置
1 労働保険特別会計の雇用勘定に失業等給付資金を置き、一般会計からの繰入金及び失業等給付資金の運用利益金をもってこれに充てるものとすること。
2 1の一般会計からの繰入金は、予算の定めるところにより、繰り入れるものとすること。
3 失業等給付資金は、失業等給付費及び雇用勘定からの徴収勘定への繰入金(労働保険料の返還金の財源に充てるための額に相当する額の繰入金に限る。)を支弁するため必要があるときは、予算の定めるところにより、使用することができるものとすること。
二 剰余金等の処理
雇用勘定において、毎会計年度の歳入額(雇用安定事業、能力開発事業及び雇用福祉事業に係る歳入額を控除した残りの額とする。)から当該年度の歳出額(雇用安定事業、能力開発事業及び雇用福祉事業に係る歳出額を控除した残りの額とする。)を控除して残余があるときはこれを同勘定の積立金として積み立て、不足があるときは同勘定の積立金からこれを補足し、なお不足があるときは失業等給付資金から当該不足分を補足するものとすること。
三 失業等給付資金の廃止
1 失業等給付資金は、失業等給付の支払財源の不足が解消し、その不足が当分の間生じないと認められる場合に廃止するものとすること。
2 失業等給付資金の廃止の際、失業等給付資金に残余があるときは、当該残余の額を一般会計に繰り入れるものとすること。
第五 附則
一 施行期日
この法律は、平成十五年七月一日から施行するものとすること。(附則第一条関係)
二 この法律の失効
この法律は、平成十八年六月三十日限り、その効力を失うものとすること。(附則第二条第一項関係)
三 この法律の失効に係る所要の規定を設けること。