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   難民等の保護に関する法律案要綱


第一 総則
 一 目的
  この法律は、難民認定委員会による適正かつ迅速な難民の認定の手続及び在留難民等に対する生活上の支援(以下「生活支援」という。)に関する措置等について定めるとともに、難民の認定に係る上陸及び在留の特別の許可制度を創設することにより、難民等の権利利益の保護を図り、もって難民問題を解決するための国際社会の取組に寄与することを目的とするものとすること。    (第一条関係)
 二 定義
1 この法律において「難民」とは、難民の地位に関する条約(以下「難民条約」という。)第一条の規定又は難民の地位に関する議定書第一条の規定により難民条約の適用を受ける難民をいうものとすること。
2 この法律において「在留難民等」とは、難民及び難民条約第一条A(2)に規定する理由に準ずる理由又は戦争、内乱、暴動、大規模な人権侵害若しくは公の秩序を著しく乱すその他の事情により、その生命、身体又は身体の自由を害されるおそれのあった領域から逃れて本邦に入った外国人(日本の国籍を有しない者をいう。以下同じ。)であって、適法に本邦に在留するものをいうものとすること。
                                        (第二条関係)
第二 難民の認定
 一 難民の認定
1 難民認定委員会は、本邦にある外国人から難民認定委員会規則で定める手続により申請があったときは、その提出した資料に基づき、その者が難民である旨の認定(以下「難民の認定」という。)を行うことができるものとすること。
2 難民の認定に関する処分は、1の申請があった日から六月以内にしなければならないものとすること。ただし、事務処理上の困難その他正当な理由があるときは、この限りでないものとすること。
3 2のただし書の場合においては、難民認定委員会は、当該外国人に対し、遅滞なく、2の期間内に当該処分をすることができない理由及び当該処分に要すると見込まれる期間を書面により通知しなければならないものとすること。
4 難民認定委員会は、難民の認定をしたときは、難民認定委員会規則で定める手続により、当該外国人に対し、難民認定証明書を交付し、その認定をしないときは、当該外国人に対し、理由を付した書面をもって、その旨を通知するものとすること。                (第三条関係)
 二 難民認定基準
  1 難民認定委員会は、難民の認定をするかどうかを判断するために必要とされる基準(以下「難民認定基準」という。)を定めるものとすること。
  2 難民認定基準は、難民の認定に関する国際的動向を踏まえたものでなければならないものとすること。
  3 難民認定委員会は、難民認定基準を公にしておかなければならないものとすること。
                                        (第四条関係)
 三 情報の提供
  難民認定委員会は、一の1の申請をしようとする外国人又は一の1の申請をしている外国人(以下「難民認定申請者」という。)の求めに応じ、一の1の申請に必要な情報の提供を行うものとすること。
                                        (第五条関係)
 四 難民の認定の取消し
1 難民認定委員会は、本邦に在留する外国人で難民の認定を受けているものについて、次のいずれかの事実が判明したときは、難民認定委員会規則で定める手続により、その難民の認定を取り消すものとすること。
 @ 偽りその他不正の手段により難民の認定を受けたこと。
 A 難民条約第一条C(1)から(6)までのいずれかに掲げる場合に該当することとなったこと。
 B 難民の認定を受けた後に、難民条約第一条F(a)又は(c)に掲げる行為を行ったこと。
2 難民認定委員会は、1により難民の認定を取り消す場合には、当該外国人に対し、理由を付した書面をもって、その旨を通知するとともに、当該外国人に係る難民認定証明書がその効力を失った旨を官報に告示するものとすること。
3 2により難民の認定の取消しの通知を受けたときは、難民認定証明書の交付を受けている外国人は、速やかに、難民認定委員会に難民認定証明書を返納しなければならないものとすること。
                                       (第六条関係)
 五 事実の調査
1 難民認定委員会は、一の1により提出された資料のみでは適正な難民の認定ができないおそれがある場合その他難民の認定又はその取消しに関する処分を行うため必要がある場合には、難民認定調査官に事実の調査をさせることができるものとすること。
2 難民認定調査官は、1の調査のため必要があるときは、関係人に対し出頭を求め、質問をし、又は文書の提示を求めることができるものとすること。
3 難民認定申請者は、2により出頭を求められたときは、補佐人とともに出頭することができるものとすること。
4 難民認定委員会又は難民認定調査官は、1の調査について、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができるものとすること。              (第七条関係)
 六 退去強制令書の発付に伴う難民認定証明書の返納
  本邦に在留する外国人で難民の認定を受けているものが、退去強制令書の発付を受けたときは、当該外国人は、速やかに、難民認定委員会にその所持する難民認定証明書を返納しなければならないものとすること。                                  (第八条関係)
第三 難民認定委員会
 一 設置
   内閣府設置法第四十九条第三項の規定に基づいて、内閣府の外局として、難民認定委員会(以下「委員会」という。)を設置するものとすること。                  (第九条関係)
二 任務
   委員会は、適正かつ迅速に難民の認定を行うことを任務とするものとすること。  (第十条関係)
三 所掌事務
   委員会は、二の任務を達成するため、次に掲げる事務をつかさどるものとすること。
  @ 難民の認定又はその取消しに関する処分に関すること。
  A 難民認定基準の策定及び公表に関すること。
  B 難民に関する調査、資料の収集等に関すること。
  C 難民の認定に係る相談に応ずること。
  D @からCまでに掲げるもののほか、法律(法律に基づく命令を含む。)に基づき委員会に属させられた事務                                 (第十一条関係)
 四 職権の行使
   委員会の委員は、独立してその職権を行うものとすること。          (第十二条関係)
 五 組織
   委員会は、委員十人をもって組織するものとすること。            (第十三条関係)
 六 委員の任命
  1 委員は、人格が高潔であって、国際情勢及び難民問題に関して優れた識見を有する者のうちから、両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命するものとすること。
  2 内閣総理大臣は、1による委員の任命に当たっては、委員のうちに難民の保護に関する活動を行う民間の団体の関係者が含まれるように努めなければならないものとすること。
  3 委員の任期が満了し、又は欠員を生じた場合において、国会の閉会又は衆議院の解散のために両議院の同意を得ることができないときは、内閣総理大臣は、1にかかわらず、1に定める資格を有する者のうちから、委員を任命することができるものとすること。
  4 3の場合においては、任命後最初の国会で両議院の事後の承認を得なければならないものとすること。この場合において、両議院の事後の承認が得られないときは、内閣総理大臣は、直ちに、その委員を罷免しなければならないものとすること。                (第十四条関係)
七 任期
  1 委員の任期は、五年とするものとすること。ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とするものとすること。
  2 委員は、再任されることができるものとすること。
3 委員の任期が満了したときは、当該委員は、後任者が任命されるまで引き続きその職務を行うものとすること。                               (第十五条関係)
八 身分保障
   委員は、次のいずれかに該当する場合を除いては、在任中、その意に反して罷免されることがないものとすること。
  @ 破産の宣告を受けたとき。
  A 禁錮以上の刑に処せられたとき。
  B 委員会により、心身の故障のため職務の執行ができないと認められたとき、又は職務上の義務違反その他委員たるに適しない非行があると認められたとき。           (第十六条関係)
九 罷免
   内閣総理大臣は、委員が八の@からBまでのいずれかに該当するときは、その委員を罷免しなければならないものとすること。                          (第十七条関係)
十 委員の服務等
  1 委員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならないものとすること。その職を退いた後も、同様とするものとすること。
  2 委員は、在任中、政党その他の政治的団体の役員となり、又は積極的に政治運動をしてはならないものとすること。
  3 委員は、在任中、内閣総理大臣の許可のある場合を除くほか、報酬を得て他の職務に従事し、又は営利事業を営み、その他金銭上の利益を目的とする業務を行ってはならないものとすること。
  4 委員の給与は、別に法律で定めるものとすること。             (第十八条関係)
 十一 委員長
  1 委員長は、委員のうちから互選した者について、内閣総理大臣が任命するものとすること。
  2 委員長は、会務を総理し、委員会を代表するものとすること。
  3 委員長に事故があるときは、あらかじめその指名する委員が、その職務を代理するものとすること。
                                        (第十九条関係)
 十二 会議
  1 委員会は、委員長が招集するものとすること。
  2 委員会は、委員長を含む過半数の委員の出席がなければ、会議を開き、議決をすることができないものとすること。
  3 委員会の議事は、出席者の過半数でこれを決し、可否同数のときは、委員長の決するところによるものとすること。
  4 委員会が八のBによる認定をするには、3にかかわらず、本人を除く全員の一致がなければならないものとすること。
  5 委員長に事故がある場合の2の適用については、十一の3の委員は、委員長とみなすものとすること。                                   (第二十条関係)
十三 規則の制定
   委員会は、その所掌事務について、法律若しくは政令を実施するため、又は法律若しくは政令の特別の委任に基づいて、難民認定委員会規則を制定することができるものとすること。(第二十一条関係)
 十四 資料の提出等の要求
   委員会は、その所掌事務を遂行するため必要があると認めるときは、関係行政機関の長に対し、資料の提出その他必要な協力を求めることができるものとすること。        (第二十二条関係)
十五 国会に対する報告
   委員会は、毎年、内閣総理大臣を経由して、国会に対し、難民の認定に関する状況を報告しなければならないものとすること。                         (第二十三条関係)
十六 事務局の組織
  1 委員会の事務を処理させるため、委員会に事務局を置くものとすること。
  2 事務局に、事務局長を置くものとすること。
  3 事務局長は、委員長の命を受けて、局務を掌理するものとすること。
  4 難民の認定に関する事実の調査に関する事務を行わせるため、事務局に、難民認定調査官を置くものとすること。
  5 難民の認定に係る相談に関する事務を行わせるため、事務局に、難民認定相談員を置くものとすること。                                 (第二十四条関係)
十七 地方事務所
  1 委員会の事務局の地方機関として、所要の地に地方事務所を置くものとすること。
  2 1の地方事務所の名称、位置及び管轄区域は、政令で定めるものとすること。(第二十五条関係)
十八 委員会の運営
   この法律に定めるもののほか、委員会の運営に関し必要な事項は、委員会が定めるものとすること。
                                       (第二十六条関係)
第四 生活支援
 一 基本理念
   生活支援に関する施策は、本邦に定住する意思を有する在留難民等が地域社会において安定した日常生活及び社会生活を営むことができるよう、地域社会の理解と協力を得つつ、総合的かつ計画的に推進されなければならないものとすること。                   (第二十七条関係)
 二 国の責務
   国は、一の基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、生活支援に関する総合的な施策を策定し、及び実施するものとすること。                    (第二十八条関係)
 三 地方公共団体の責務
   地方公共団体は、基本理念にのっとり、生活支援に関し、その地域の実情に応じた施策を策定し、及び実施するものとすること。                        (第二十九条関係)
 四 国民の協力等
  1 国民は、在留難民等の人権に関する理解を深めるとともに、地域社会において、国及び地方公共団体が実施する施策に協力するよう努めるものとすること。
  2 国及び地方公共団体は、在留難民等の人権に関する国民の理解を深めるための教育及び啓発に努めるものとすること。                            (第三十条関係)
 五 生活支援推進計画
  1 政府は、生活支援に関する施策を総合的かつ計画的に推進するための計画(以下「生活支援推進計画」という。)を定めなければならないものとすること。
  2 生活支援推進計画は、次に掲げる事項について定めるものとすること。
   @ 生活支援に関する基本的な方針
   A 次に掲げる施策の推進に関する事項
    イ 日常生活及び社会生活に関する相談への対応、日本語の習得の援助その他在留難民等が日常生活又は社会生活を円滑に営むことができるようにするために必要な施策
    ロ 健康診断の実施、医療の提供その他在留難民等の保健及び医療の確保を図るために必要な施策
    ハ 公営住宅等の供給の促進その他在留難民等の居住の安定を図るために必要な施策
    ニ 職業訓練の実施、就職のあっせんその他在留難民等の雇用の機会の確保を図るために必要な施策
    ホ 就学の円滑化、教育の充実その他在留難民等が必要な教育を受けることができるようにするために必要な施策
   B 在留難民等生活支援事業(在留難民等に対し、一定期間宿泊場所を提供した上、日常生活に必要な便宜を供与するとともに、Aのイからホまでに掲げる施策を総合的に実施する事業をいう。)の実施に関する事項
 C 生活支援を行う民間の団体との連携に関する事項
 D @からCまでに掲げるもののほか、生活支援に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項
3 内閣総理大臣は、関係行政機関の長に協議するとともに、在留難民等生活支援審議会の意見を聴いて、生活支援推進計画の案を作成し、閣議の決定を求めなければならないものとすること。
  4 内閣総理大臣は、3による閣議の決定があったときは、遅滞なく、生活支援推進計画を国会に報告するとともに、公表しなければならないものとすること。
  5 3及び4は、生活支援推進計画の変更について準用するものとすること。  (第三十一条関係)
 六 財政上の措置等
   国は、生活支援に関する施策を推進するため、生活支援に関する施策を実施する地方公共団体及び生活支援を行う民間の団体を支援するための財政上の措置その他必要な措置を講ずるよう努めるものとすること。                                 (第三十二条関係)
 七 民間の団体の能力の活用等
   国及び地方公共団体は、生活支援に関する施策を実施するに当たっては、生活支援について民間の団体が果たしている役割の重要性に留意し、これらの団体との緊密な連携の確保に努めるとともに、その能力の積極的な活用を図るものとすること。                 (第三十三条関係)
八 国及び地方公共団体の連携
   国及び地方公共団体は、生活支援に関する施策を実施するに当たっては、相互の緊密な連携の確保に努めるものとすること。                          (第三十四条関係)
第五 在留難民等生活支援審議会
 一 設置
   内閣府に、在留難民等生活支援審議会(以下「審議会」という。)を置くものとすること。
                                       (第三十五条関係)
 二 権限
  1 審議会は、この法律の規定によりその権限に属させられた事項を処理するほか、内閣総理大臣又は関係各大臣の諮問に応じ、第四の規定の施行に関する重要事項を調査審議するものとすること。
  2 審議会は、1の事項に関し内閣総理大臣又は関係各大臣に意見を述べることができるものとすること。                                  (第三十六条関係)
 三 組織
  1 審議会は、委員二十人以内で組織するものとすること。
  2 委員は、二の1の事項に関し優れた識見を有する者のうちから、内閣総理大臣が任命するものとすること。
  3 内閣総理大臣は、2による委員の任命に当たっては、委員のうちに生活支援を行う民間の団体の関係者が含まれるように努めなければならないものとすること。
  4 委員は、非常勤とするものとすること。                 (第三十七条関係)
 四 資料の提出等の要求
   審議会は、その所掌事務を遂行するため必要があると認めるときは、関係行政機関の長、関係地方公共団体の長その他の関係者に対し、資料の提出、意見の開陳、説明その他必要な協力を求めることができるものとすること。                           (第三十八条関係)
 五 委任規定
   この法律に定めるもののほか、審議会の組織、所掌事務及び運営に関し必要な事項は、政令で定めるものとすること。                             (第三十九条関係)
第六 雑則
 一 難民の認定に職務上関係のある者による配慮等
  1 難民の認定に職務上関係のある者は、その職務を行うに当たっては、難民認定申請者の心身の状況、その置かれている環境等を踏まえ、難民認定申請者の人権に十分な配慮をしなければならないものとすること。
  2 国は、難民の認定に職務上関係のある者に対し、難民認定申請者の人権に関する理解を深めるために必要な研修及び啓発を行うものとすること。
3 2のほか、国は、難民の認定に職務上関係のある者に対し、国際情勢及び難民問題に関する理解を深めるために必要な専門的、技術的な研修を行うものとすること。       (第四十条関係)
 二 生活支援に職務上関係のある者による配慮等
  1 生活支援に職務上関係のある者は、その職務を行うに当たっては、在留難民等の心身の状況、その置かれている環境等を踏まえ、在留難民等の人権に十分な配慮をしなければならないものとすること。
  2 国及び地方公共団体は、生活支援に職務上関係のある者に対し、在留難民等の人権に関する理解を深めるために必要な研修及び啓発を行うものとすること。          (第四十一条関係)
 三 難民認定申請者に係る援助
  1 国は、難民の認定に関する処分があるまでの間の難民認定申請者の生活を援助するため、一時的な宿泊場所の提供、日常生活に必要な便宜の供与その他の措置を講ずるよう努めるものとすること。
  2 国は、難民認定申請者に対する第二の一の1の申請に係る情報の提供、難民認定申請者の生活の援助等を行う民間の団体に対し、必要な援助を行うよう努めるものとすること。 (第四十二条関係)
第七 罰則
  罰則について所要の規定を設けるものとすること。     (第四十三条から第四十五条まで関係)
第八 出入国管理及び難民認定法の一部改正
 一 題名の改正
   題名を「出入国管理法」に改めるものとすること。                (題名関係)
 二 難民の認定を受けようとする外国人の上陸の申請及び審査
  1 本邦に上陸しようとする外国人で難民の認定を受けようとするものは、その者が上陸しようとする出入国港において、法務省令で定める手続により、入国審査官に対し、難民の認定を受けるための上陸の申請をして、当該上陸のための審査を受けなければならないものとすること。
  2 入国審査官は、1の申請があったときは、当該外国人が出入国管理法第七条第一項第四号に掲げる上陸のための条件(上陸拒否の事由に該当しないこと。)に適合しているかどうかを審査しなければならないものとすること。         (出入国管理法第六条第三項及び第七条第二項関係)
 三 難民申請者上陸特別許可
  1 入国審査官は、審査の結果、二の1の申請をした外国人が二の2の上陸のための条件に適合していると認定した場合において、当該外国人による第二の一の1の難民認定委員会に対する申請があったときは、当該外国人に対し、難民の認定を受けるための上陸の許可(以下「難民申請者上陸特別許可」という。)を与えなければならないものとすること。
  2 入国審査官は、難民申請者上陸特別許可を与える場合には、当該外国人に難民申請者上陸特別許可書を交付しなければならないものとすること。この場合において、その難民申請者上陸特別許可は、当該交付のあった時に、その効力を生ずるものとすること。
  3 入国審査官は、難民申請者上陸特別許可を与える場合には、法務省令で定めるところにより、当該外国人に対し、上陸期間、住居及び行動範囲の制限その他必要と認める条件を付すことができるものとすること。
  4 二の1の申請をした外国人は、2の難民申請者上陸特別許可書の交付を受けなければ上陸してはならないものとすること。                   (出入国管理法第九条の二関係)
 四 一時庇護のための上陸の許可の制度の廃止
   一時庇護のための上陸の許可の制度を廃止するものとすること。
(出入国管理法第十八条の二の削除関係)
 五 難民申請者在留特別許可
  1 本邦に在留する外国人で難民の認定を受けようとするものは、法務省令で定める手続により、法務大臣に対し、難民の認定を受けるための在留の申請をすることができるものとすること。
  2 法務大臣は、1の申請があった場合において、当該外国人による第二の一の1の難民認定委員会に対する申請があったときは、当該外国人に対し、難民の認定を受けるための在留の許可(以下「難民申請者在留特別許可」という。)を与えなければならないものとすること。ただし、次のいずれかに該当する外国人については、特段の事情がない限り、難民申請者在留特別許可を与えてはならないものとすること。
   @ 収容令書又は退去強制令書の発付を受けて収容されている外国人
   A 出入国管理法第二十四条各号(退去強制事由)のいずれかに該当する外国人で、刑事訴訟に関する法令、刑の執行に関する法令又は少年院若しくは婦人補導院の在院者の処遇に関する法令の規定による手続が行われているもの
   B 第二の一の4の通知を受けた外国人で、当該通知を受けた後出国することなく第二の一の1の申請を難民認定委員会にしたもの
  3 法務大臣は、難民申請者在留特別許可を与える場合には、入国審査官に、難民申請者在留特別許可書を交付させるものとすること。この場合において、その難民申請者在留特別許可は、当該交付のあった時に、その効力を生ずるものとすること。
  4 三の3は、法務大臣が難民申請者在留特別許可を与える場合に準用するものとすること。
(出入国管理法第二十二条の二関係)
 六 難民在留特別許可
  1 本邦に在留する外国人で難民の認定を受けているものは、法務省令で定める手続により、法務大臣に対し、その地位に基づく在留の申請をすることができるものとすること。
  2 法務大臣は、1の申請があったときは、当該外国人に対し、1の地位に基づく在留の許可(以下「難民在留特別許可」という。)を与えなければならないものとすること。
  3 法務大臣は、難民在留特別許可を与える場合には、法務省令で定める手続により、当該外国人に難民在留特別許可書を交付しなければならないものとすること。この場合において、その難民在留特別許可は、当該交付のあった時に、その効力を生ずるものとすること。
  4 法務大臣は、難民在留特別許可を与える場合には、在留期間その他法務省令で定める事項について必要な条件を付することができるものとすること。
  5 法務大臣は、難民在留特別許可を受けている外国人が第二の四の1により難民の認定を取り消されたときは、当該難民在留特別許可を取り消さなければならないものとすること。
  6 法務大臣は、5により難民在留特別許可を取り消す場合には、当該外国人に対し書面をもってその旨を通知するとともに、当該外国人に係る難民在留特別許可書及び難民旅行証明書が効力を失った旨を官報に告示するものとすること。
  7 難民在留特別許可書又は難民旅行証明書の交付を受けている外国人は、6の通知を受けたときは、速やかに、当該難民在留特別許可書又は難民旅行証明書を法務大臣に返納しなければならないものとすること。                       (出入国管理法第二十二条の三関係)
 七 難民在留特別許可を受けている者の在留資格の取得
  1 難民在留特別許可を受けている外国人(在留資格を有しない外国人に限る。)で在留資格をもって在留しようとするものは、法務省令で定める手続により、法務大臣に対し在留資格の取得を申請しなければならないものとすること。
  2 法務大臣は、1の申請(永住者の在留資格の取得の申請を除く。)があった場合には、特段の事情がない限り、これを許可しなければならないものとすること。(出入国管理法第二十二条の五関係)
 八 退去強制
  1 次に掲げる者は、本邦からの退去を強制することができる対象者から除外するものとすること。
   @ 不法入国者のうち、難民申請者上陸特別許可を受けている者及び難民申請者在留特別許可を受けている者並びに難民在留者(難民の認定を受けている者であって、難民在留特別許可を受け、又は在留資格を有しているものをいう。以下同じ。)
   A 不法上陸者のうち、難民申請者在留特別許可を受けている者及び難民在留者
   B 不法残留者のうち、難民申請者在留特別許可を受けている者及び難民在留者
  2 次に掲げる者を、本邦からの退去を強制することができる対象者に追加するものとすること。
   @ 難民申請者上陸特別許可又は難民申請者在留特別許可を受けた者で、難民申請者上陸特別許可書又は難民申請者在留特別許可書に記載された期間を経過して本邦に残留するもの(難民在留者を除く。)
   A 七の1の者で、在留資格を取得することなく六の4により法務大臣が定める期間を経過して本邦に残留するもの
B 在留資格をもって在留する者で、第二の四の1(@又はBに係るものに限る。)により難民の認定を取り消されたもの
  3 退去強制令書の発付を受けた者が、五の1の申請をした外国人(五の2のBに該当する者を除く。)であるときは、その者について第二の一の2の難民の認定に関する処分がされるまでの間は、本邦外への送還及び引渡しを停止するものとすること。
(出入国管理法第二十四条及び第五十二条第四項関係)
 九 難民の認定等に関する規定の削除
   難民の認定等に関する規定を削除するものとすること。  (出入国管理法第七章の二の削除関係)
 十 難民認定委員会との連携
   法務大臣、入国審査官及び入国警備官は、難民の認定を受けようとする者又は難民の認定を受けようとした者の出入国の管理に関して、難民認定委員会に照会し、第二の一の1の申請の有無、第二の一の2の難民の認定に関する処分の内容その他必要な事項の報告を求めることができるものとすること。
(出入国管理法第六十一条の七の二関係)
 十一 罰則
  1 次に掲げる者は、三年以下の懲役若しくは禁錮若しくは三十万円以下の罰金に処し、又はその懲役若しくは禁錮及び罰金を併科するものとすること。
   @ 難民申請者上陸特別許可又は難民申請者在留特別許可を受けた者で、難民申請者上陸特別許可書又は難民申請者在留特別許可書に記載された期間を経過して本邦に残留するもの(難民在留者を除く。)
   A 七の1の者で、在留資格を取得することなく六の4により法務大臣が定める期間を経過して本邦に残留するもの
  2 その者の生命、身体又は身体の自由が難民条約第一条A(2)に規定する理由によって害されるおそれのあった領域から直接本邦に入ったものであることとする難民に関する不法入国罪等に関する刑の免除の要件を削除するものとすること。
  3 難民申請者上陸特別許可又は難民申請者在留特別許可を受けた者で、三の3又は五の4に基づき付された条件に違反して逃亡したものは、一年以下の懲役若しくは二十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科するものとすること。   (出入国管理法第七十条、第七十条の二及び第七十二条関係)
 十二 その他
   その他所要の規定を整備するものとすること。
第九 施行期日等
 一 この法律の施行期日、経過措置等について定めるものとすること。
 二 その他関係法律について所要の改正を行うものとすること。

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