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臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律案要綱

一 目的の改正
  目的に「臓器等の移植が人間の尊厳の保持及び人権の保障に重大な影響を与える可能性があることにかんがみ」という文言を追加すること。

二 脳死した者の身体からの臓器の摘出及び当該臓器の移植
 1 脳死の定義の適正化
   「脳死」の定義を「脳幹を含む脳全体のすべての機能が不可逆的に喪失すること」に改めること(※)。
    (※)これに伴い、脳死判定基準(省令事項)に「脳血流及び脳代謝の途絶」を追加することとなる。
 2 脳死判定を開始することができる要件の明記
   医師が次のアからウまでの要件が満たされなければ法的脳死判定を開始することができないことを法律に明記すること。
   ア 深昏睡の状態及び自発呼吸を消失した状態と認められること。
   イ 器質的脳障害の原因となる疾患(原疾患)が確実に診断されていること。
   ウ 原疾患に対して行い得るすべての適切な治療を行った上で回復の可能性がないと認められること。

三 組織の摘出及び移植に関する規制
 1 組織の定義
   「組織」とは、人の心臓弁、膵島、眼球、皮膚、骨、血管その他細胞から構成される人体の部分(生殖に関係する部分を除く。)であって厚生労働省令で定めるものをいうこと。
 2 組織の摘出及び移植に関する規制
   生存中に死体からの組織の摘出を認める本人の意思が書面により表示されている場合には、死体からの臓器の摘出及び移植と同様の規制の下で、死体からの組織の摘出及び移植を行うことができること。ただし、脳死した者の身体からの組織の摘出は、認めないこととすること。

四 生体からの特定臓器の摘出及び当該臓器の移植
 1 ドナーの生命及び身体の安全の確保
   特定臓器(人の肺、肝臓、膵臓その他の厚生労働省令で定める内臓の一部及び腎臓の一側をいう。以下同じ。)の生体からの摘出に当たっては、当該特定臓器が摘出されることとなる者の生命及び身体の安全が最大限確保されなければならないこと。
 2 特定臓器の摘出
   医師は、特定臓器の機能に障害がある者(以下「移植対象者」という。)の親族(配偶者(婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)又は二親等以内の血族に限る。以下四において同じ。)が当該移植対象者に対する移植術に使用されるための特定臓器を提供する意思を書面により表示している場合であって、厚生労働省令で定める基準を満たした医療機関(※)の承認があったときは、当該医療機関において、当該移植対象者に対する移植術に使用されるための特定臓器を、当該親族から摘出することができること。
    (※)医療機関に倫理委員会が設置されていること、一定の医療水準の確保がされていること等を予定している。
 3 医療機関の承認
   2による特定臓器の摘出が行われる医療機関は、厚生労働省令で定めるところにより(※)、次のアからエまでのいずれにも該当することを確認した場合に限り、移植対象者に対する移植術に使用されるための移植対象者の親族からの特定臓器の摘出が当該医療機関で行われることを承認することができること。
   ア 特定臓器を摘出されることとなる者が当該移植対象者の親族であること。
   イ 当該親族本人が特定臓器を当該移植対象者に対する移植術に使用されるために提供する意思を書面により表示していること(当該者が当該意思の表示を二十歳に達した日後にした場合に限る。)。
   ウ 特定臓器の摘出が当該親族の生命及び身体の機能に重大な影響を与えるおそれがないとの判定が、必要な知識及び経験を有する二人以上の医師の判断の一致により行われたこと。
   エ 医師が、イの本人の意思が表示されるまでに、当該親族本人に対し、特定臓器の摘出が当該親族の生命及び身体に及ぼす影響その他の当該親族からの特定臓器の摘出及び当該特定臓器の移植対象者に対する移植に関する事項であって厚生労働省令で定めるものについて、当該親族本人が十分理解できるように説明していること。
    (※)この省令には、医療機関に設置された倫理委員会により認定が行われること等を予定している。また、委員会の構成、承認の具体的な手続など細部についても、この基準で定めることを予定している。
 4 記録の作成及び保存
   2による特定臓器の摘出及び移植が行われた場合の記録の作成及び保存に関する規定を置くこと。

五 その他の臓器等の摘出及び移植に関する規制
 1 臓器等の摘出及び移植が行われる医療機関の基準
   厚生労働大臣は、移植術に使用されるための臓器等(臓器及び組織をいう。以下同じ。)の摘出及び移植術が行われる医療機関の基準を設けること。
 2 ドナー及びレシピエントの健康状態の把握のための措置
   国は、移植術を受けた者及び四の2により特定臓器の摘出を受けた者の適切な健康管理に資するため、これらの者の健康に関する情報に係るデータベースが整備されること等により、これらの者その他関係者がこれらの者の当該移植術後の健康状態及び当該摘出後の健康状態を的確に把握することができるよう必要な措置を講ずるものとすること。
 3 臓器等の摘出及び移植に係る記録の保存期間
   臓器等の摘出及び移植に係る記録の保存期間を20年とすること。

六 臓器等の摘出及び移植に関する検証
 1 国による検証の対象
   国は、この法律による臓器等の移植に関し、臓器等を提供する意思表示の有効性、移植術の必要性、移植術を受けた者及び特定臓器を摘出された者の当該移植術後及び摘出後の健康状態等(※)の調査及び分析を行うことを通じて、適正な移植医療の確保を図るための検証を行うものとすること。
     (※)上記の事項に加え、脳死した者の身体からの臓器の摘出が行われた場合には脳死判定に至るまでの治療の適正性、脳死判定の適正性といった事項が、異状死体からの臓器等の摘出が行われた場合には当該異状死体に係る検視等の適正性といった事項が、生体からの特定臓器の摘出が行われた場合にはドナーの健康に関する判定の適正性といった事項が調査・分析の対象となる。
 2 検証を行うために講ずべき措置
   1の検証を行う機関の設置その他1の検証に関し必要な事項(※)については、別に法律で定めること。
     (※)検証を行う場合、検証の手続、検証が行われた後の検証機関の役割(結果の公表、必要に応じた関係行政機関等への勧告等)といった事項を規定することを予定している。

七 研究目的への転用
 1 研究に用いることができる場合
   死亡した者本人が、生存中に、死体から移植術に使用されるために摘出された臓器等であって移植術に使用されなかった部分の臓器等が研究のために使用されることを承諾する意思を書面により表示しているときは、医師その他の厚生労働省令で定める者は、厚生労働省令で定める基準を満たした施設(※)において、厚生労働省令で定めるところにより行われる当該施設の承認があった場合に限り、当該使用されなかった部分の臓器等を、疾病の予防、診断及び治療の方法の開発その他保健医療の向上に資する目的での研究に使用することができること。
     (※)施設内に倫理審査委員会が設置されていることなどを定めることを予定している。
 2 臓器等の摘出が行われた医療機関の確認
   臓器等の摘出が行われた医療機関の管理者は、死体から摘出された臓器等であって移植術に使用されなかった部分の臓器等を1の研究のために引き渡すときは、死亡した者本人の研究のために使用されることを承諾する意思があったことその他厚生労働省令で定める事項について厚生労働省令で定めるところにより行われる当該医療機関の確認(※)を受けなければならないこと。
     (※)院内の倫理審査会での認定などの事項を規定することを予定している。
 3 財産上の利益の供与及び収受の禁止
   移植術に使用されるために摘出された臓器等であって移植術に使用されなかった部分の臓器等のうち研究のために使用されるものの引渡しに関し、財産上の利益の供与又は収受をしてはならないこと。

八 子どもからの臓器等の摘出及び移植に関する検討
 1 子どもについての臓器等の移植に関する制度については、次に掲げる事項を含めて多様な分野の専門家その他広く国民の意見を求めつつ検討が加えられること。
  ア 臓器等の移植に関し子どもの自己決定及び親の関与が認められる範囲
  イ 子どもについての脳死判定基準
  ウ 虐待を受けた子どもからの臓器等の摘出を防止するために有効な仕組みの在り方
 2 1の検討を行うに当たっては、児童の権利に関する条約の趣旨を踏まえ、子どもの人権の保障に配慮されなければならないこと。

九 臓器等を摘出しようとする場合における検視等の制度に関する検討
  死体から臓器等が摘出されようとする場合において当該死体について検視等が行われるときにおける当該死亡した者が死亡した原因、死亡した状況等の究明を適切に行う方策について、検討が加えられること。

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