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青少年が安全に安心してインターネットを利用できる
環境の整備等に関する法律案要綱

第一 総則
 一 目的
   この法律は、インターネットにおいて青少年有害情報が多く流通している状況にかんがみ、青少年のインターネットを適切に活用する能力の習得に必要な措置を講ずるとともに、青少年有害情報フィルタリングソフトウェアの性能の向上及び利用の普及その他の青少年がインターネットを利用して青少年有害情報を閲覧する機会をできるだけ少なくするための措置等を講ずることにより、青少年が安全に安心してインターネットを利用できるようにして、青少年の権利の擁護に資することを目的とするものとすること。
 二 定義
  1 この法律において「青少年」とは、十八歳に満たない者をいうものとすること。
  2 この法律において「青少年有害情報」とは、インターネットを利用して公衆の閲覧に供されている情報であって青少年の健全な成長を著しく阻害するものをいうものとし、これを例示すると次のとおりとするものとすること。
   (1) 犯罪若しくは刑罰法令に触れる行為を直接的かつ明示的に請け負い、仲介し、若しくは誘引し、又は自殺を直接的かつ明示的に誘引する情報
   (2) 人の性行為又は性器等のわいせつな描写その他の著しく性欲を興奮させ又は刺激する情報
   (3) 殺人、処刑、虐待等の場面の陰惨な描写その他の著しく残虐な内容の情報
  3 この法律において「ISP(インターネット接続役務提供事業者)」とは、インターネットへの接続を可能とする役務を提供する電気通信事業者をいうものとすること。
  4 この法律において「携帯ISP(携帯電話インターネット接続役務提供事業者)」とは、携帯電話からのインターネットへの接続を可能とする役務を提供する電気通信事業者をいうものとすること。
  5 この法律において「青少年有害情報フィルタリングソフトウェア」とは、インターネットを利用して公衆の閲覧に供されている情報を一定の基準に基づき選別した上インターネットを利用する者の青少年有害情報の閲覧を制限するためのプログラム(電子計算機に対する指令であって、一の結果を得ることができるように組み合わされたものをいう。)をいうものとすること。
  6 この法律において「青少年有害情報フィルタリングサービス」とは、インターネットを利用して公衆の閲覧に供されている情報を一定の基準に基づき選別した上インターネットを利用する者の青少年有害情報の閲覧を制限するための役務又は青少年有害情報フィルタリングソフトウェアによって青少年有害情報の閲覧を制限するために必要な情報を当該青少年有害情報フィルタリングソフトウェアを作動させる者に対してインターネットにより継続的に提供する役務をいうものとすること。
  7 この法律において「特定サーバー管理者」とは、サーバーを用いて、他人の求めに応じ情報をインターネットを利用して公衆による閲覧ができる状態に置き、これに閲覧をさせる役務を提供する者をいうものとすること。
 三 基本理念
  1 青少年自身がインターネットを適切に活用する能力を習得することを旨として行われなければならないこと。
  2 青少年がインターネットを利用して青少年有害情報の閲覧をする機会をできるだけ少なくすることを旨として行われなければならないこと。
  3 民間における自主的かつ主体的な取組が大きな役割を担い、国及び地方公共団体はこれを尊重することを旨として行われなければならないこと。
 四 国及び地方公共団体の責務
   青少年が安全に安心してインターネットを利用することができるようにするための施策を策定し、及び実施する責務を有するものとすること。
 五 関係事業者の責務
   その事業の特性に応じ、青少年がインターネットを利用して青少年有害情報の閲覧をする機会をできるだけ少なくするための措置を講ずるとともに、青少年のインターネットを適切に活用する能力の習得に資するための措置を講ずるよう努めるものとすること。
 六 保護者の責務
   青少年のインターネットの利用の状況を適切に把握するとともに、そのインターネットの利用を適切に管理し、及びインターネットを適切に活用する能力の習得の促進に努めるものとすること。
 七 連携協力体制の整備
   国及び地方公共団体は、関係機関、青少年のインターネットの利用に関係する事業を行う者及び関係する活動を行う民間団体相互間の連携協力体制の整備に努めるものとすること。

第二 インターネット青少年有害情報対策・環境整備推進会議等
 一 インターネット青少年有害情報対策・環境整備推進会議
  1 内閣府にインターネット青少年有害情報対策・環境整備推進会議(以下「会議」という。)を置くものとすること。
  2 会議は、次の事務をつかさどるものとすること。
   (1) 二の基本計画を作成し、及びその実施を推進すること。
   (2) (1)のほか、青少年が安全に安心してインターネットを利用できるようにするための施策に関する重要事項について審議すること。
  3 会議は、会長及び委員をもって組織するものとすること。
   (1) 会長は、内閣総理大臣をもって充てるものとすること。
   (2) 委員は、内閣官房長官、関係行政機関の長及び内閣府特命担当大臣その他の国務大臣のうちから、内閣総理大臣が指定する者をもって充てるものとすること。
 二 基本計画 
  1 会議は、青少年が安全に安心してインターネットを利用できるようにするための施策に関する基本的な計画(以下「基本計画」という。)を定めなければならないものとすること。
  2 基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとすること。
 (1) 青少年が安全に安心してインターネットを利用できるようにするための施策についての基本的な方針
 (2) インターネットの適切な利用に関する教育及び啓発活動の推進に係る施策に関する事項
 (3) 青少年有害情報フィルタリングソフトウェアの性能の向上及び利用の普及等に係る施策に関する事項
 (4) 青少年のインターネットの適切な利用に関する活動を行う民間団体等の支援その他青少年が安全に安心してインターネットを利用できるようにするための施策に関する重要事項

第三 インターネットの適切な利用に関する教育及び啓発活動の推進等
 一 インターネットの適切な利用に関する教育の推進等
  1 国及び地方公共団体は、学校教育、社会教育及び家庭教育におけるインターネットの適切な利用に関する教育の推進に必要な施策を講ずるものとすること。
  2 国及び地方公共団体は、青少年のインターネットを適切に活用する能力の習得のための効果的な手法の開発及び普及を促進するため、研究の支援、情報の収集及び提供その他の必要な施策を講ずるものとすること。
 二 家庭における青少年有害情報フィルタリングソフトウェアの利用の普及
   国及び地方公共団体は、家庭における青少年有害情報フィルタリングソフトウェアの利用の普及を図るため、必要な施策を講ずるものとすること。
 三 インターネットの適切な利用に関する広報啓発
   一及び二のほか、国及び地方公共団体は、インターネットの適切な利用に関する事項について、広報その他の啓発活動を行うものとすること。
 四 関係者の努力義務
   関係事業者等は、その事業等の特性に応じ、インターネットを利用する際における青少年のインターネットを適切に活用する能力の習得のための学習の機会の提供、青少年有害情報フィルタリングソフトウェアの利用の普及のための活動その他の啓発活動を行うよう努めるものとすること。

第四 青少年有害情報フィルタリングサービスの提供義務等
 一 携帯ISPの青少年有害情報フィルタリングサービスの提供義務
  1 携帯ISPの義務
    契約の相手方又は携帯電話端末の使用者が青少年である場合には、青少年有害情報フィルタリングサービスの利用を条件として、その役務を提供しなければならないものとすること。ただし、その青少年の保護者が、青少年有害情報フィルタリングサービスを利用しない旨の申出をした場合は、この限りでないものとすること。
  2 保護者の義務
    青少年に使用させるために契約を締結しようとする場合には、携帯ISPに対しその旨を申し出なければならないものとすること。
 二 ISPの義務
   インターネット接続役務の提供を受ける者から求められたときは、青少年有害情報フィルタリングソフトウェア又は青少年有害情報フィルタリングサービスを提供しなければならないものとすること。
 三 PCメーカー等の義務
   プレインストールその他青少年有害情報フィルタリングソフトウェア又は青少年有害情報フィルタリングサービスの利用を容易にする措置を講じた上で、PC等を販売しなければならないものとすること。
 四 青少年有害情報フィルタリングソフトウェア開発事業者及び青少年有害情報フィルタリングサービス提供事業者の努力義務
  1 青少年有害情報であって閲覧が制限されないものをできるだけ少なくするとともに、次の事項に配慮して青少年有害情報フィルタリングソフトウェアを開発し、又は青少年有害情報フィルタリングサービスを提供するよう努めるものとすること。
   (1) 閲覧の制限を行う情報を、青少年の発達段階及び利用者の選択に応じ、きめ細かく設定できるようにすること。
   (2) 閲覧の制限を行う必要がない情報について閲覧の制限が行われることをできるだけ少なくすること。
  2 1に定めるもののほか、青少年有害情報フィルタリングソフトウェア又は青少年有害情報フィルタリングサービスの性能及び利便性の向上に努めなければならないものとすること。
 五 有害情報の青少年による閲覧の防止措置等
  1 青少年閲覧防止措置等
   (1) 特定サーバー管理者は、青少年有害情報が発信されていることを知ったときは、青少年による閲覧ができないようにするための措置(以下「青少年閲覧防止措置」という。)をとるよう努めなければならないものとすること。
   (2) 特定サーバー管理者は、青少年閲覧防止措置をとったときは、当該措置に関する記録を作成し、これを保存するよう努めなければならないものとすること。
  2 連絡受付体制の整備
    特定サーバー管理者は、青少年有害情報の連絡受付体制を整備するよう努めなければならないものとすること。
  
第五 インターネットの適切な利用に関する活動を行う民間団体等
 一 フィルタリング推進機関 
   次に掲げるいずれかの業務を行う者は、総務大臣及び経済産業大臣の登録を受けることができるものとすること。
  1 青少年有害情報フィルタリングソフトウェア及び青少年有害情報フィルタリングサービスに関する調査研究並びにその普及及び啓発
  2 青少年有害情報フィルタリングソフトウェアの技術開発の推進
 二 民間団体等への支援
   国及び地方公共団体は、次の民間団体又は事業者に対し必要な支援に努めるものとすること。
  1 フィルタリング推進機関
  2 青少年有害情報フィルタリングソフトウェアの性能に関する指針の作成を行う民間団体
  3 青少年有害情報フィルタリングソフトウェア開発事業者等及び青少年有害情報フィルタリングサービス提供事業者
  4 青少年がインターネットを適切に活用する能力を習得するための活動を行う民間団体
  5 青少年有害情報に係る通報を受理し、特定サーバー管理者に対し措置を講ずるよう要請する活動を行う民間団体
  6 青少年有害情報フィルタリングソフトウェアにより閲覧を制限する必要がないものに関する情報を収集し、これを青少年有害情報フィルタリングソフトウェア開発事業者その他の関係者に提供する活動を行う民間団体
  7 青少年閲覧防止措置、青少年による閲覧の制限を行う情報の更新その他の青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備に関し講じられた措置に関する民事上の紛争について活動するADR機関
  8 その他関係する活動を行う民間団体

第六 施行期日等
 一 施行期日
   この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行するものとすること。
 二 検討
  1 政府は、この法律の施行後三年以内に、この法律の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとすること。
  2 インターネットを利用して公衆の閲覧に供することが犯罪又は刑罰法令に触れる行為となる情報について、サーバー管理者がその情報の公衆による閲覧を防止する措置を講じた場合における当該サーバー管理者のその情報の発信者に対する損害の賠償の制限の在り方については、この法律の施行後速やかに検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるものとすること。

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