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   障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律案要綱


第一 総則
 一 目的
   この法律は、障害者に対する虐待が障害者の人権を著しく侵害し、その自立及び社会参加に深刻な影響を与えていること等にかんがみ、障害者に対する虐待の禁止、障害者虐待の防止等に関する国等の責務、障害者虐待を受けた障害者に対する保護のための措置、養護者に対する支援のための措置等を定めることにより、障害者虐待の防止、養護者に対する支援等に関する施策を促進し、もって障害者の権利利益の擁護に資することを目的とすること。(第一条関係)
 二 定義
  1 この法律において「障害者」とは、障害者基本法に定める障害者をいうこと。(第二条第一項関係)
  2 この法律において「障害者虐待」とは、養護者による障害者虐待、障害者福祉施設従事者等による障害者虐待及び使用者による障害者虐待をいうこと。(第二条第二項関係)
  3 この法律において「養護者」とは、障害者(十八歳未満の障害者を除く。)を現に養護する者であって障害者福祉施設従事者等又は使用者以外のものをいうこと。(第二条第三項関係)
  4 この法律において「障害者福祉施設従事者等」とは、障害者自立支援法に定める障害者支援施設(以下「障害者支援施設」という。)若しくは独立行政法人国立重度知的障害者総合施設のぞみの園が設置する施設(以下「のぞみの園」という。)(以下「障害者福祉施設」という。)又は障害者自立支援法に定める障害福祉サービス事業、相談支援事業、移動支援事業、地域活動支援センターを経営する事業若しくは福祉ホームを経営する事業その他厚生労働省令で定める事業(以下「障害福祉サービス事業等」という。)に係る業務に従事する者をいうこと。(第二条第四項関係)
  5 この法律において「使用者」とは、障害者を雇用する事業主(当該障害者が派遣労働者である場合において当該派遣労働者に係る労働者派遣の役務の提供を受ける事業主を含み、国及び地方公共団体を除く。以下同じ。)又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について事業主のために行為をする者をいうこと。(第二条第五項関係)
  6 この法律において「養護者による障害者虐待」とは、次のいずれかに該当する行為をいうこと。(第二条第六項関係)
   (1)養護者がその養護する障害者について行う次に掲げる行為
    イ 障害者の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること。
    ロ 障害者を衰弱させるような著しい減食又は長時間の放置、養護者以外の同居人によるイ、ハ又はニに掲げる行為と同様の行為の放置等養護を著しく怠ること。
    ハ 障害者に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応その他の障害者に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。
    ニ 障害者にわいせつな行為をすること又は障害者をしてわいせつな行為をさせること。
   (2)養護者又は障害者の親族が当該障害者の財産を不当に処分することその他当該障害者から不当に財産上の利益を得ること。
  7 この法律において「障害者福祉施設従事者等による障害者虐待」とは、障害者福祉施設従事者等が、当該障害者福祉施設に入所し、その他当該障害者福祉施設を利用する障害者又は当該障害福祉サービス事業等に係るサービスの提供を受ける障害者について行う次のいずれかに該当する行為をいうこと。(第二条第七項関係)
   (1)障害者の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること。
   (2)障害者を衰弱させるような著しい減食又は長時間の放置、当該障害者福祉施設に入所し、その他当該障害者福祉施設を利用する他の障害者又は当該障害福祉サービス事業等に係るサービスの提供を受ける他の障害者による(1)、(3)又は(4)に掲げる行為と同様の行為の放置その他の障害者を養護すべき職務上の義務を著しく怠ること。
   (3)障害者に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応その他の障害者に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。
   (4)障害者にわいせつな行為をすること又は障害者をしてわいせつな行為をさせること。
   (5)障害者の財産を不当に処分することその他当該障害者から不当に財産上の利益を得ること。
  8 この法律において「使用者による障害者虐待」とは、使用者が当該事業所に使用される障害者について行う次のいずれかに該当する行為をいうこと。(第二条第八項関係)
   (1)障害者の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること。
   (2)障害者を衰弱させるような著しい減食又は長時間の放置、当該事業所に使用される他の労働者による(1)、(3)又は(4)に掲げる行為と同様の行為の放置その他これらに準ずる行為を行うこと。
   (3)障害者に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応その他の障害者に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。
   (4)障害者にわいせつな行為をすること又は障害者をしてわいせつな行為をさせること。
   (5)障害者の財産を不当に処分することその他当該障害者から不当に財産上の利益を得ること。
 三 障害者に対する虐待の禁止
   何人も、障害者に対し、虐待をしてはならないこと。(第三条関係)
 四 国及び地方公共団体の責務等
  1 国及び地方公共団体は、障害者虐待の防止、障害者虐待を受けた障害者の迅速かつ適切な保護及び適切な養護者に対する支援を行うため、関係省庁相互間その他関係機関及び民間団体等の間の連携の強化、民間団体等の支援その他必要な体制の整備に努めなければならないこと。(第四条第一項関係)
  2 国及び地方公共団体は、障害者虐待の防止、障害者虐待を受けた障害者の保護及び養護者に対する支援が専門的知識に基づき適切に行われるよう、これらの職務に携わる専門的な人材の確保及び資質の向上を図るため、関係機関の職員の研修等必要な措置を講ずるよう努めなければならないこと。(第四条第二項関係)
  3 国及び地方公共団体は、障害者虐待を受けた障害者がその心身に著しく重大な被害を受けた事例の分析を行うとともに、障害者虐待の予防及び早期発見のための方策、障害者虐待があった場合の適切な対応方法、養護者に対する支援の在り方その他障害者虐待の防止、障害者虐待を受けた障害者の保護及び養護者に対する支援のために必要な事項についての調査及び研究を行うものとすること。(第四条第三項関係)
  4 国及び地方公共団体は、障害者虐待の防止及び障害者虐待を受けた障害者の保護に資するため、障害者の人権、障害者虐待に係る通報義務、人権侵犯事件に係る救済制度等について必要な広報その他の啓発活動を行うものとすること。(第四条第四項関係)
 五 国民の責務
   国民は、障害者虐待の防止、養護者に対する支援等の重要性に関する理解を深めるとともに、国又は地方公共団体が講ずる障害者虐待の防止、養護者に対する支援等のための施策に協力するよう努めなければならないこと。(第五条関係)
 六 障害者虐待の早期発見等
  1 障害者福祉施設、学校、病院、保健所その他障害者の福祉に業務上関係のある団体並びに障害者福祉施設従事者等、学校の教職員、医師、保健師、弁護士その他障害者の福祉に職務上関係のある者及び使用者は、障害者虐待を発見しやすい立場にあることを自覚し、障害者虐待の早期発見に努めなければならないこと。(第六条第一項関係)
  2 1の者は、国及び地方公共団体が講ずる障害者虐待の防止のための啓発活動及び障害者虐待を受けた障害者の保護のための施策に協力するよう努めなければならないこと。(第六条第二項関係)
第二 養護者による障害者虐待の防止、養護者に対する支援等
 一 相談、指導及び助言
   市町村は、養護者による障害者虐待の防止及び養護者による障害者虐待を受けた障害者の保護のため、障害者及び養護者に対して、相談、指導及び助言を行うものとすること。(第七条関係)
 二 養護者による障害者虐待に係る通報等
  1 養護者による障害者虐待を受けたと思われる障害者を発見した者は、当該障害者の生命又は身体に重大な危険が生じている場合は、速やかに、これを市町村に通報しなければならないこと。(第八条第一項関係)
  2 1の場合のほか、養護者による障害者虐待を受けたと思われる障害者を発見した者は、速やかに、これを市町村に通報するよう努めなければならないこと。(第八条第二項関係)
 三 通報等を受けた場合の措置
  1 市町村は、二による通報又は障害者からの養護者による障害者虐待を受けた旨の届出を受けたときは、速やかに、当該障害者の安全の確認その他当該通報又は届出に係る事実の確認のための措置を講ずるとともに、障害者虐待対応協力者とその対応について協議を行うものとすること。(第十条第一項関係)
  2 市町村は、二による通報又は1の届出があった場合には、当該通報又は届出に係る障害者に対する養護者による障害者虐待の防止及び当該障害者の保護が図られるよう、養護者による障害者虐待により生命又は身体に重大な危険が生じているおそれがあると認められる障害者を一時的に保護するため迅速に当該市町村の設置する障害者支援施設その他の施設(以下「障害者支援施設等」という。)に入所させる等、適切に、身体障害者福祉法又は知的障害者福祉法の規定による入所等の措置を講ずるものとする。この場合において、当該障害者が身体障害者及び知的障害者以外の障害者であるときは、当該障害者を身体障害者又は知的障害者とみなして、身体障害者福祉法又は知的障害者福祉法の入所等の措置の規定を適用すること。(第十条第二項関係)
  3 市町村長は、二による通報又は1の届出があった場合には、当該通報又は届出に係る障害者に対する養護者による障害者虐待の防止及び当該障害者の保護が図られるよう、適切に、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律又は知的障害者福祉法の規定により審判の請求をするものとすること。(第十条第三項関係)
 四 居室の確保
   市町村は、養護者による障害者虐待を受けた障害者について三の2の措置を採るために必要な居室を確保するための措置を講ずるものとすること。(第十一条関係)
 五 立入調査
   市町村長は、養護者による障害者虐待により障害者の生命又は身体に重大な危険が生じているおそれがあると認めるときは、障害者の福祉に関する事務に従事する職員をして、当該障害者の住所又は居所に立ち入り、必要な調査又は質問をさせることができること。(第十二条第一項関係)
 六 警察署長に対する援助要請等
  1 市町村長は、五による立入り及び調査又は質問をさせようとする場合において、これらの職務の執行に際し必要があると認めるときは、当該障害者の住所又は居所の所在地を管轄する警察署長に対し援助を求めることができること。(第十三条第一項関係)
  2 市町村長は、障害者の生命又は身体の安全の確保に万全を期する観点から、必要に応じ適切に、1により警察署長に対し援助を求めなければならないこと。(第十三条第二項関係)
  3 警察署長は、1による援助の求めを受けた場合において、障害者の生命又は身体の安全を確保するため必要と認めるときは、速やかに、所属の警察官に、1の職務の執行を援助するために必要な警察官職務執行法その他の法令の定めるところによる措置を講じさせるよう努めなければならないこと。(第十三条第三項関係)
 七 面会の制限
   養護者による障害者虐待を受けた障害者について三の2の措置が採られた場合においては、市町村長又は当該措置に係る障害者支援施設等若しくはのぞみの園の長若しくは当該措置に係る身体障害者福祉法第十八条に定める指定医療機関の管理者は、養護者による障害者虐待の防止及び当該障害者の保護の観点から、当該養護者による障害者虐待を行った養護者について当該障害者との面会を制限することができること。(第十四条関係)
 八 養護者の支援
  1 市町村は、一に規定するもののほか、養護者の負担の軽減のため、養護者に対する相談、指導及び助言その他必要な措置を講ずるものとすること。(第十五条第一項関係)
  2 市町村は、1の措置として、養護者の心身の状態に照らしその養護の負担の軽減を図るため緊急の必要があると認める場合に障害者が短期間養護を受けるために必要となる居室を確保するための措置を講ずるものとすること。(第十五条第二項関係)
 九 専門的に従事する職員の確保
   市町村は、養護者による障害者虐待の防止、養護者による障害者虐待を受けた障害者の保護及び養護者に対する支援を適切に実施するために、これらの事務に専門的に従事する職員を確保するよう努めなければならないこと。(第十六条関係)
 十 連携協力体制
   市町村は、養護者による障害者虐待の防止、養護者による障害者虐待を受けた障害者の保護及び養護者に対する支援を適切に実施するため、福祉事務所その他関係機関、民間団体等との連携協力体制を整備しなければならないこと。この場合において、養護者による障害者虐待にいつでも迅速に対応することができるよう、特に配慮しなければならないこと。(第十七条関係)
 十一 事務の委託
   市町村は、障害者虐待対応協力者のうち適当と認められるものに、一による相談、指導及び助言、二の1若しくは2による通報又は三の1の届出の受理、三の1による障害者の安全の確認その他通報又は届出に係る事実の確認のための措置並びに八の1による養護者の負担の軽減のための措置に関する事務の全部又は一部を委託することができること。(第十八条第一項関係)
 十二 都道府県の援助等
  1 都道府県は、第二により市町村が行う措置の実施に関し、市町村相互間の連絡調整、市町村に対する情報の提供その他必要な援助を行うものとすること。(第十九条第一項関係)
  2 都道府県は、第二により市町村が行う措置の適切な実施を確保するため必要があると認めるときは、市町村に対し、必要な助言を行うことができること。(第十九条第二項関係)
第三 障害者福祉施設従事者等による障害者虐待の防止等
 一 障害者福祉施設従事者等による障害者虐待の防止等のための措置
   障害者福祉施設の設置者又は障害福祉サービス事業等を行う者は、障害者福祉施設従事者等の研修の実施、当該障害者福祉施設に入所し、その他当該障害者福祉施設を利用し、又は当該障害福祉サービス事業等に係るサービスの提供を受ける障害者及びその家族からの苦情の処理の体制の整備その他の障害者福祉施設従事者等による障害者虐待の防止等のための措置を講ずるものとすること。(第二十条関係)
 二 障害者福祉施設従事者等による障害者虐待に係る通報等
  1 障害者福祉施設従事者等は、当該障害者福祉施設従事者等がその業務に従事している障害者福祉施設又は障害福祉サービス事業等(当該障害者福祉施設の設置者若しくは当該障害福祉サービス事業等を行う者が設置する障害者福祉施設又はこれらの者が行う障害福祉サービス事業等を含む。)において業務に従事する障害者福祉施設従事者等による障害者虐待を受けたと思われる障害者を発見した場合は、速やかに、これを市町村に通報しなければならないこと。(第二十一条第一項関係)
  2 1の場合のほか、障害者福祉施設従事者等による障害者虐待を受けたと思われる障害者を発見した者は、当該障害者の生命又は身体に重大な危険が生じている場合は、速やかに、これを市町村に通報しなければならないこと。(第二十一条第二項関係)
  3 1及び2に定める場合のほか、障害者福祉施設従事者等による障害者虐待を受けたと思われる障害者を発見した者は、速やかに、これを市町村に通報するよう努めなければならないこと。(第二十一条第三項関係)
  4 障害者福祉施設従事者等による障害者虐待を受けた障害者は、その旨を市町村に届け出ることができること。(第二十一条第四項関係)
  5 障害者福祉施設従事者等は、1から3までによる通報をしたことを理由として、解雇その他不利益な取扱いを受けないこと。(第二十一条第六項関係)
  6 市町村は、1から3までによる通報又は4の届出を受けたときは、当該通報又は届出に係る障害者福祉施設従事者等による障害者虐待に関する事項を、当該障害者福祉施設従事者等による障害者虐待に係る障害者福祉施設又は当該障害者福祉施設従事者等による障害者虐待に係る障害福祉サービス事業等の事業所の所在地の都道府県に報告しなければならないこと。(第二十二条関係)
 三 通報等を受けた場合の措置
   市町村が二の1から3までによる通報若しくは二の4の届出を受け、又は都道府県が二の6による報告を受けたときは、市町村長又は都道府県知事は、障害者福祉施設の業務又は障害福祉サービス事業等の適正な運営を確保することにより、当該通報又は届出に係る障害者に対する障害者福祉施設従事者等による障害者虐待の防止及び当該障害者の保護を図るため、社会福祉法、障害者自立支援法その他関係法律の規定による権限を適切に行使するものとすること。(第二十四条関係)
 四 公表
   都道府県知事は、毎年度、障害者福祉施設従事者等による障害者虐待の状況、障害者福祉施設従事者等による障害者虐待があった場合に採った措置その他厚生労働省令で定める事項を公表するものとすること。(第二十五条関係)
第四 使用者による障害者虐待の防止等
 一 使用者による障害者虐待の防止等のための措置
   障害者を雇用する事業主は、労働者の研修の実施、当該事業所に使用される障害者及びその家族からの苦情の処理の体制の整備その他の使用者による障害者虐待の防止等のための措置を講ずるものとすること。(第二十六条関係)
 二 使用者による障害者虐待に係る通報等
  1 使用者は、当該事業所において使用者による障害者虐待を受けたと思われる障害者を発見した場合は、速やかに、これを市町村又は都道府県に通報しなければならないこと。(第二十七条第一項関係)
  2 1の場合のほか、使用者による障害者虐待を受けたと思われる障害者を発見した者は、当該障害者の生命又は身体に重大な危険が生じている場合は、速やかに、これを市町村又は都道府県に通報しなければならないこと。(第二十七条第二項関係)
  3 1及び2の場合のほか、使用者による障害者虐待を受けたと思われる障害者を発見した者は、速やかに、これを市町村又は都道府県に通報するよう努めなければならないこと。(第二十七条第三項関係)
  4 使用者による障害者虐待を受けた障害者は、その旨を市町村又は都道府県に届け出ることができること。(第二十七条第四項関係)
  5 労働者は、1から3までによる通報又は4の届出(虚偽であるもの及び過失によるものを除く。)をしたことを理由として、解雇その他不利益な取扱いを受けないこと。(第二十七条第六項関係)
  6 市町村は、1から3までによる通報又は4の届出を受けたときは、当該通報又は届出に係る使用者による障害者虐待に関する事項を、当該使用者による障害者虐待に係る事業所の所在地の都道府県に通知しなければならないこと。(第二十八条関係)
  7 都道府県は、1から3までによる通報、4の届出又は6の通知を受けたときは、当該通報、届出又は通知に係る使用者による障害者虐待に関する事項を、当該使用者による障害者虐待に係る事業所の所在地を管轄する都道府県労働局に報告しなければならないこと。(第二十九条関係)
 三 報告を受けた場合の措置
   都道府県労働局が二の7による報告を受けたときは、都道府県労働局長又は労働基準監督署長若しくは公共職業安定所長は、事業所における障害者の適正な労働条件及び雇用管理を確保することにより、当該報告に係る障害者に対する使用者による障害者虐待の防止及び当該障害者の保護を図るため、当該報告に係る都道府県との連携を図りつつ、労働基準法、障害者の雇用の促進等に関する法律、個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律その他関係法律の規定による権限を適切に行使するものとすること。(第三十一条関係)
 四 公表
   厚生労働大臣は、毎年度、使用者による障害者虐待の状況、使用者による障害者虐待があった場合に採った措置その他厚生労働省令で定める事項を公表するものとすること。(第三十二条関係)
第五 就学する障害者等に対する虐待の防止等
 一 就学する障害者に対する虐待の防止等
   学校の長は、教職員の研修の実施、就学する障害者又はその家族からの相談に係る体制の整備その他の当該学校に就学する障害者に対する虐待の防止等のための措置を講ずるものとすること。(第三十三条関係)
 二 保育所等に入所する障害者に対する虐待の防止等
   保育所又は認定こども園(以下「保育所等」という。)の長は、保育所等の職員の研修の実施、保育所等に入所する障害者又はその家族からの相談に係る体制の整備その他の当該保育所等に入所する障害者に対する虐待の防止等のための措置を講ずるものとすること。(第三十四条関係)
 三 病院又は診療所を利用する障害者に対する虐待の防止等
   病院又は診療所の管理者は、病院又は診療所の職員の研修の実施、病院若しくは診療所を利用する障害者又はその家族からの苦情の処理の体制の整備その他の当該病院又は診療所を利用する障害者に対する虐待の防止等のための措置を講ずるものとすること。(第三十五条関係)
第六 障害者権利擁護センター
 一 障害者権利擁護センター
  1 都道府県は、障害者の福祉に関する事務を所掌する部局又は当該都道府県が設置する施設において、当該部局又は施設が障害者権利擁護センター(以下「センター」という。)としての機能を果たすようにするものとすること。(第三十六条第一項関係)
  2 センターは、次に掲げる業務を行うものとすること。(第三十六条第二項関係)
   (1)第四の二の1から3までによる通報又は第四の二の4の届出を受理すること。
   (2)障害者虐待を受けた障害者に関する各般の問題について、相談に応ずること又は相談を行う機関を紹介すること。
   (3)障害者虐待を受けた障害者を支援するため、情報の提供、助言、関係機関との連絡調整その他の援助を行うこと。
   (4)障害者虐待の防止及び養護者に対する支援に関する広報啓発を行うこと。
   (5)その他障害者に対する虐待の防止等のために必要な支援を行うこと。
  3 センターは、障害者虐待の防止及び養護者に対する支援等のため、福祉事務所その他関係機関との連携協力体制を整備するとともに、その業務を行うに当たっては、必要に応じ、障害者虐待の防止及び養護者に対する支援等を図るための活動を行う民間団体等との連携に努めるものとする。(第三十六条第三項関係)
 二 事務の委託
   都道府県は、一の3により当該都道府県と連携する民間団体等のうち適当と認められるものに、一の2に掲げる業務の全部又は一部を委託することができること。(第三十七条第一項関係)
第七 雑則
 一 周知
   市町村及び都道府県は、障害者虐待の防止、第二の二の1若しくは2、第三の二の1から3まで若しくは第四の二の1から3までによる通報又は第二の三の1、第三の二の4若しくは第四の二の4の届出の受理、障害者虐待を受けた障害者の保護、養護者に対する支援等に関する事務についての窓口となるセンターその他の部局又は施設、障害者虐待対応協力者並びに一の3により当該都道府県と連携協力する者及び当該都道府県と連携する民間団体等(以下「都道府県連携協力者等」という。)の名称を明示すること等により、当該部局又は施設、障害者虐待対応協力者及び都道府県連携協力者等を周知させなければならないこと。(第三十八条関係)
 二 障害者虐待を受けた障害者に対する支援
   国及び地方公共団体は、障害者虐待を受けた障害者が地域において自立した生活を円滑に営むことができるよう、居住の場所の確保、就業の支援その他の必要な施策を講ずるものとすること。(第三十九条関係)
 三 財産上の不当取引による被害の防止等
  1 市町村は、養護者、障害者の親族、障害者福祉施設従事者等又は使用者以外の者が不当に財産上の利益を得る目的で障害者と行う取引(以下「財産上の不当取引」という。)による障害者の被害について、相談に応じ、若しくは消費生活に関する業務を担当する部局その他の関係機関を紹介し、又は障害者虐待対応協力者に、財産上の不当取引による障害者の被害に係る相談若しくは関係機関の紹介の実施を委託するものとすること。(第四十条第一項関係)
  2 市町村長は、財産上の不当取引の被害を受け、又は受けるおそれのある障害者について、適切に、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律又は知的障害者福祉法の規定により審判の請求をするものとすること。(第四十条第二項関係)
 四 成年後見制度の利用促進
   国及び地方公共団体は、障害者虐待の防止及び障害者虐待を受けた障害者の保護並びに財産上の不当取引による障害者の被害の防止及び救済を図るため、成年後見制度の周知のための措置、成年後見制度の利用に係る経済的負担の軽減のための措置等を講ずることにより、成年後見制度が広く利用されるようにしなければならないこと。(第四十一条関係)
第八 罰則
   所要の罰則を整備すること。(第四十二条及び第四十三条関係)
第九 施行期日等
 一 施行期日
   この法律は、平成二十二年十月一日から施行すること。(附則第一条関係)
 二 検討
   学校、保育所等、病院、官公署等における障害者に対する虐待の防止等の体制の在り方その他障害者虐待の防止、養護者に対する支援等のための制度については、この法律の施行後三年を目途として、この法律の施行状況等を勘案して検討が加えられ、必要があると認められるときは、所要の措置が講ぜられるものとすること。(附則第二条関係)
 三 身体障害者更生援護施設等に対するこの法律の適用
   この法律の施行の日から障害者自立支援法附則第一条第三号に掲げる規定の施行の日の前日までの間は、身体障害者更生援護施設、精神障害者社会復帰施設及び知的障害者援護施設は、障害者福祉施設又は障害福祉サービス事業等に含まれるものとすること。(附則第三条関係)
 四 高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律の一部改正
   六十五歳未満の者であって養介護施設に入所し、その他養介護施設を利用し、又は養介護事業に係るサービスの提供を受ける障害者については、高齢者とみなして、養介護施設従事者等による高齢者虐待に関する規定を適用すること。(附則第四条関係)

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