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赤潮被害対策特別措置法案要綱

第一 目的
  この法律は、養殖業が水産物の安定的な供給を図る上で重要な役割を果たしている中で、ここ数年来養殖業に深刻な被害をもたらす赤潮が相次いで発生し、養殖漁業者の自助努力では被害の回復及び経営の再建が困難となっているとともに、養殖業を重要な産業としている地域においてその経済に深刻な影響を及ぼしている現状にあること、また、近年の海水温度の上昇等によりこれまで赤潮が発生していなかった地域においてもそのような赤潮が発生するおそれが生じていること等にかんがみ、赤潮により深刻な被害を受けた養殖漁業者に対する赤潮被害補てん金の支給、これらの被害に対処するために要する費用等に係る国の財政上の措置、赤潮の発生に係る調査研究の推進等による赤潮の防除のための措置等について定めることにより、赤潮により深刻な被害を受けた養殖漁業者の経営の再建及び安定並びに赤潮による被害の防止を図り、もって国民に対する食料の安定的な供給及び地域の振興に資することを目的とすること。
(第1条関係)

第二 定義
1 この法律において「養殖漁業者」とは、漁業災害補償法第114条に規定する養殖業の種類を勘案して政令で定める養殖業を営む者をいうこと。
2 この法律において「特定赤潮」とは、深刻な被害が発生した赤潮として農林水産省令で定める要件に該当する赤潮をいうこと。
(第2条関係)

第三 赤潮被害補てん金の支給
1 都道府県知事は、当該都道府県の区域に係る地先水面において養殖業を営む養殖漁業者であって、特定赤潮により当該養殖業に係る養殖水産動植物(養殖中の水産動植物をいう。以下同じ。)が死亡したものに対し、その者の申請に基づき、赤潮被害補てん金(以下「補てん金」という。)を支給すること。
2 補てん金の金額は、当該養殖漁業者ごとに、特定赤潮により死亡した養殖水産動植物の数量に、当該養殖水産動植物と同種の水産動植物の当該地域における標準的な出荷価格を乗じて得た金額を基礎として農林水産省令で定めるところにより算定した損害額に、政令で定める割合を乗じて得た金額とすること。
3 2の政令で定める割合は、特定赤潮により当該養殖業に係る養殖水産動植物が死亡した養殖漁業者(以下「赤潮被害養殖漁業者」という。)に生じた損害が、漁業災害補償法の規定による漁業災害補償制度と相まって、十分に補てんされるものとなるよう定められるものとすること。
4 補てん金の支給を受ける権利を有する者について相続その他の一般承継があった場合には、その者の相続人その他の一般承継人は、自己の名で、その者の補てん金の支給を申請することができるものとすること。
5 補てん金については、補てん金の支給を申請した者が迅速にその支給を受けることができるよう、仮払をする方法その他の政令で定める方法により支給するものとすること。
(第3条関係)

第四 資料の提供等
1 都道府県知事は、漁業共済組合、漁業共済組合連合会、漁業協同組合、漁業協同組合連合会又は市場において卸売の業務を行う者に対し、赤潮被害養殖漁業者の損害額の算定のため必要と認められる資料の提供その他必要な協力を求めることができるものとすること。
2 都道府県知事は、赤潮被害養殖漁業者の損害額の算定に当たっては、1により提供を受ける資料を活用すること等により、補てん金の支給を申請する者に過重な負担を課することのないよう配慮するものとすること。
(第4条関係)

第五 政令への委任
  補てん金の申請期間、支給方法その他補てん金の支給に関し必要な事項は、政令で定めるものとすること。
(第5条関係)

第六 不正利得の徴収
  偽りその他不正の手段により補てん金の支給を受けた者があるときは、都道府県知事は、国税徴収の例により、その者から、その支給を受けた補てん金の額に相当する金額の全部又は一部を徴収することができるものとすること。
(第6条関係)

第七 非課税
  租税その他の公課は、補てん金として支給を受けた金銭を標準として、課することができないものとすること。
(第7条関係)


第八 国の負担
  国は、都道府県知事が補てん金の支給をするために必要な費用の五分の四を負担すること。
(第8条関係)

第九 特定赤潮に対処するために要する費用等に係る国の財政上の措置
  国は、補てん金の支給に要する費用、特定赤潮により死亡した養殖水産動植物の埋却の支援に要する費用その他特定赤潮に対処するために要する費用並びに赤潮被害養殖漁業者等の事業の再建等に必要な金融上の措置に要する費用及び雇用の機会の確保に要する費用その他特定赤潮による被害がこれらの者の経営又は生活に及ぼす影響を緩和するために要する費用について、特定赤潮による被害の発生した地方公共団体が実質的に負担する部分を生じさせることのないよう、必要な財政上の措置を講ずるものとすること。
(第9条関係)

第十 金融上の措置
  国及び地方公共団体は、赤潮被害養殖漁業者等に対し、種苗の購入、養殖業に係る施設又は設備の整備等に必要な資金の無利子の貸付けが円滑に行われるための措置、当該資金の貸付金の償還期限の延長に係る措置、養殖業に必要な資金の借入れに係る債務の保証の拡充のための措置その他の事業の再建等に必要な金融上の措置を講ずるものとすること。
(第10条関係)

第十一 赤潮による被害の回避のための措置
  国及び地方公共団体は、養殖漁業者等が行う消波堤及びいけす等を固定するための錨の設置その他の新規の養殖漁場の整備に係る措置並びに沈下式いけすの設置及び曳航によるいけすの移動に対する支援、人工種苗の開発及び活用による早期の出荷のための措置の推進その他の赤潮による被害を回避するために必要な措置を講ずるものとすること。
(第11条関係)

第十二 赤潮の発生に係る調査研究の推進
1 国及び地方公共団体は、赤潮の発生の原因となる有害なプランクトンの休眠期細胞の分布状況の調査を行うとともに、赤潮の発生メカニズムの究明を図るための調査研究を推進するものとすること。
2 国は、1の施策を効果的に実施するため、国、地方公共団体等の相互間の緊密な連携協力体制の整備を図るものとすること。
(第12条関係)

第十三 赤潮の防除のための措置
  国及び地方公共団体は、第十二の1の調査の結果及び調査研究の成果を踏まえて赤潮の発生の防止のための措置を講ずるとともに、赤潮の除去に関する研究開発の推進及びその成果の普及のための措置並びに赤潮の除去に係る措置を実施するため必要な財政上の措置その他の措置を講ずるものとすること。
(第13条関係)

第十四 事務の区分
  第三、第四及び第六により都道府県が処理することとされている事務は、地方自治法第2条第9項第1号に規定する第一号法定受託事務とすること。
(第14条関係)

第十五 政令への委任
  この法律に定めるもののほか、この法律の実施のための手続その他この法律の施行に関し必要な事項は、政令で定めること。
(第15条関係)

第十六 施行期日等
  この法律は、公布の日から施行し、第二から第四まで、第六から第十まで及び第十四については、平成二十二年六月一日以後において発生した赤潮について適用するものとすること。
(附則第1条関係)

第十七 検討
  政府は、この法律の施行後五年以内に、赤潮による被害の発生状況、赤潮の発生に係る調査研究の成果、赤潮の防除のための措置の実施状況その他この法律の施行の状況を勘案し、この法律の規定について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとすること。
(附則第2条関係)

第十八 その他
  地方自治法及び地方財政法について所要の規定の整備を行うものとすること。

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