地方自治法の一部を改正する法律案要綱
第一 特別区移行協議会
一 特別区移行協議会の設置
市町村を廃止し、その区域において特別区を設置しようとする市町村(以下「特定市町村」という。)及びこれを包括する都道府県(以下「特定都道府県」という。)は、第二百五十二条の二第一項の規定により、特定市町村の廃止及びその区域における特別区の設置に関する協定書(以下「特別区移行協定書」という。)の作成その他特定市町村の廃止及びその区域における特別区の設置に関する協議を行うため、協議会(以下「特別区移行協議会」という。)を置くものとすること。
(第二百八十一条の三の二第一項関係)
二 特定市町村の要件
特定市町村は、一の指定都市であって、その人口が百万以上で政令で定める数を超えるもの又は指定都市を含み、隣接する同一都道府県の区域内の二以上の市町村であって、その総人口が百万以上で政令で定める数を超えるものでなければならないこと。ただし、既に特別区が設置されている都道府県の区域内において、その特別区に隣接して特別区を設置しようとするときは、この限りでないこと。
(第二百八十一条の三の二第二項関係)
三 会長及び委員
1 会長
特別区移行協議会の会長は、第二百五十二条の三第二項の規定にかかわらず、特定都道府県の知事をもって充てること。 (第二百八十一条の三の二第三項関係)
2 委員
(一) 特別区移行協議会の委員は、第二百五十二条の三第二項の規定にかかわらず、規約の定めるところにより、特定都道府県の議会の議員又は職員及び特定市町村の議会の議員又は長その他の職員をもって充てること。 (第二百八十一条の三の二第四項関係)
(二) 特別区移行協議会には、(一)の者のほか、第二百五十二条の三第二項の規定にかかわらず、規約の定めるところにより、学識経験を有する者を委員として加えることができること。
(第二百八十一条の三の二第五項関係)
第二 特別区移行協定書
一 特別区移行協定書の作成
特別区移行協定書は、次に掲げる事項について、作成するものとすること。
@ 特別区を設置する時期
A 特別区の区域
B 都道府県と特別区の事務の分担に関する事項
C 都道府県と特別区の税源の配分及び財政調整に関する事項
D 特別区の議会の議員の定数
E 特定都道府県及び特定市町村の財産及び債務の承継に関する事項
F 特定都道府県及び特定市町村の職員の引継ぎに関する事項
G @からFまでのほか、特別区の設置に関する重要事項
(第二百八十一条の三の三第一項関係)
二 既に特別区が設置されている場合の配慮
既に特別区が設置されている都道府県の区域内において、その特別区に隣接して特別区を設置しようとするときは、特別区移行協定書の作成に当たっては、既に設置されている特別区に係る一B及びCに掲げる事項との均衡に配慮しなければならないこと。 (第二百八十一条の三の三第二項関係)
三 総務大臣への説明
特別区移行協議会は、特別区移行協定書を作成しようとするときは、特別区への円滑な移行に資するため、総務大臣に情報を提供し、説明するものとすること。 (第二百八十一条の三の三第三項関係)
四 都道府県及び全ての特定市町村の議会の議決
特別区移行協定書については、特定都道府県及び全ての特定市町村の議会の議決を経なければならないこと。 (第二百八十一条の三の三第四項関係)
五 議会の議決の結果の通知
特定都道府県の知事は特定市町村の長に対し、特定市町村の長は特定都道府県の知事及び他の特定市町村の長に対し、四による議決の結果を速やかに通知しなければならないこと。
(第二百八十一条の三の三第五項関係)
六 特定都道府県の知事による通知、告示及び送付
特定都道府県の知事は、四により特定都道府県の議会が特別区移行協定書について可決し、かつ、五により全ての特定市町村の長から通知(当該特定市町村の議会が特別区移行協定書について可決した旨の通知である場合に限る。)を受けたときは、速やかに、その旨を特定市町村の長に通知するとともに、特別区移行協定書を告示し、これを総務大臣に送付しなければならないこと。
(第二百八十一条の三の三第六項関係)
七 特定市町村の長による告示
特定市町村の長は、六による通知を受けたときは、直ちに特別区移行協定書を告示しなければならないこと。 (第二百八十一条の三の三第七項関係)
第三 特定市町村における住民投票
一 住民投票の請求
特定市町村の長は、第二の六による通知を受けたときは、それぞれの選挙管理委員会に対し、第四の申請をすることについて、住民(当該特定市町村の議会の議員及び長の選挙権を有する者に限る。以下同じ。)の投票(以下「住民投票」という。)に付するよう請求しなければならないこと。
(第二百八十一条の三の四第一項関係)
二 住民投票の実施
一による請求があったときは、特定市町村の選挙管理委員会は、第四の申請をすることについて、住民投票に付さなければならないこと。 (第二百八十一条の三の四第二項関係)
三 住民投票の告示
住民投票の期日は、少なくとも十四日前に告示しなければならないこと。
(第二百八十一条の三の四第三項関係)
四 特定市町村の長による特別区移行協定書の内容の説明
特定市町村の長は、特別区移行協定書の内容について、住民の理解を促進するよう、パンフレットを住民に配布し、分かりやすい十分な説明をしなければならないこと。
(第二百八十一条の三の四第四項関係)
五 特定市町村の議会の会派による意見の表明
(一) 特定市町村の議会の会派は、住民投票に関して意見を表明しようとするときは、当該特定市町村の選挙管理委員会において意見表明団体の登録を受けることができること。
(第二百八十一条の三の四第五項関係)
(二) 特定市町村の選挙管理委員会は、(一)の意見表明団体の意見を公報に掲載し、住民に配布しなければならないこと。 (第二百八十一条の三の四第六項関係)
六 公職選挙法の規定の準用等
(一) 政令で特別の定めをするものを除くほか、公職選挙法中普通地方公共団体の選挙に関する規定は、住民投票に準用すること。 (第二百八十一条の三の四第七項関係)
(二) 住民投票は、普通地方公共団体の選挙、第七十六条第三項の規定による解散の投票若しくは第八十条第三項及び第八十一条第二項の規定による解職の投票又は第二百六十一条第三項の規定による一の普通地方公共団体のみに適用される特別法についての投票と同時に行うことができること。
(第二百八十一条の三の四第八項関係)
第四 特定市町村の廃止及びその区域における特別区の設置の申請
第三の二による全ての特定市町村の住民投票において過半数の同意があったときは、特定都道府県及び特定市町村は、共同して、総務大臣に対し、特定市町村の廃止及びその区域における特別区の設置を申請するものとすること。 (第二百八十一条の三の五関係)
第五 特定市町村の廃止及びその区域における特別区の設置
一 総務大臣による処分
総務大臣は、第四による申請に基づき、特定市町村の廃止及びその区域における特別区の設置を定めるものとすること。 (第二百八十一条の三の六第一項関係)
二 総務大臣による告示及び国の関係行政機関の長に対する通知
総務大臣は、一による処分をしたときは、直ちに、その旨を告示するとともに、これを国の関係行政機関の長に通知しなければならないこと。 (第二百八十一条の三の六第二項関係)
三 効力の発生
一による処分は、二による告示によりその効力を生ずること。
(第二百八十一条の三の六第三項関係)
四 必要な法制上の措置等
政府は、第二の六により総務大臣が送付を受けた特別区移行協定書の内容を尊重し、第四による申請があった日から六月を目途に特別区の設置のために必要な法制上の措置その他の措置を講じなければならないこと。 (第二百八十一条の三の六第四項関係)
第六 特別区設置の準備事務等
一 特別区設置の準備事務
特別区の設置に関する準備に必要な事務は、その区域において当該特別区が設置される特定市町村が、単独で又は共同して行うものとすること。 (第二百八十一条の三の七第一項関係)
二 都道府県の支援
特定都道府県は、特定市町村に対し、一の事務に関する必要な支援を行わなければならないこと。
(第二百八十一条の三の七第二項関係)
三 特別区の議会の議員の定数
第二の七により告示された特別区移行協定書に定める特別区の議会の議員の定数は、第二百八十三条第一項の規定により特別区に適用される第九十一条第一項の規定に基づく当該特別区の条例により定められたものとみなすこと。 (第二百八十一条の三の七第三項関係)
四 財産及び債務の承継
特定市町村を廃止し、その区域において特別区を設置する場合において必要となる財産及び債務の承継は、特別区移行協定書の定めるところによること。 (第二百八十一条の三の七第四項関係)
第七 政令への委任
この法律に規定するものを除くほか、住民投票の実施について必要な事項並びに特別区の長が選挙されるまでの間その職務を行う者の選任方法その他の特定市町村の廃止及びその区域における特別区の設置に伴う措置について必要な事項は、政令で定めること。 (第二百八十一条の三の八関係)
第八 その他
一 施行期日
この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行すること。
(附則第一条関係)
二 関係法律の整備
この法律の施行に伴う関係法律の整備については、別に法律で定めること。 (附則第三条関係)
三 所要の規定の整備
その他所要の規定の整備を行うこと。