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   特定財産損害誘導行為による被害の防止及び救済等に関する法律案要綱


第一 総則
 一 目的                                    (第一条関係)
   この法律は、特定財産損害誘導行為により多くの者の財産に著しい損害が生じていること並びに特定財産損害誘導行為の被害者及びその家族等(以下「被害者等」という。)にこれらの損害に起因して家庭環境の著しい悪化その他の生活の全般にわたる多様で深刻な被害が発生していることに鑑み、特定財産損害誘導行為を禁止し、特定財産損害誘導行為を行う者に対してその中止等を勧告し又は命ずる措置を定めるとともに、特定財産損害誘導行為による意思表示の取消し等に関する制度及び特別補助に関する制度を設け、あわせて特定財産損害誘導行為による被害者等の保護に資する相談体制の整備等について定めることにより、特定財産損害誘導行為による被害の防止及び救済を図ること等を目的とすること。
 二 定義等                                   (第二条関係)
  1 この法律において「特定財産損害誘導行為」とは、人に対し、次に掲げる行為その他の人の自由な意思決定を著しく困難とするような状況を惹起させる違法若しくは著しく不当な行為(以下「困難状況惹起行為」という。)を行い、又は困難状況惹起行為により惹起された状況を利用して、その人の財産に著しい損害を生じさせることとなる財産上の利益の供与を誘導することをいうこと。
   @ 次に掲げる方法により、人に著しい不安又は恐怖を与える行為
    イ 暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段を用いること。
    ロ 霊感その他の合理的に実証することが困難な特別な能力による知見として、そのままではその人に重大な不利益を与える事態が生じる旨を示すこと。
   A その所属する組織、働きかけの目的等を告知しないこと等による注意力の低下に乗じる等心理学に関する知識及び技術をみだりに用い、又は人の知慮浅薄若しくは心神耗弱に乗じて、その人の心身に重大な影響を及ぼす行為
  2 1の著しい損害に該当するかどうかの判断は、標準的な年収を得る者においてはその財産上の利益の供与に係る額がその者の年間の可処分所得の額の四分の一に相当する額を超える額となるかどうかを目安の一つとして、財産上の利益の供与を誘導された者の資産及び収入の状況、生活の状況その他の諸事情を考慮して行われるものとすること。
第二 特定財産損害誘導行為による被害の防止
 一 特定財産損害誘導行為の禁止                         (第三条関係)
   何人も、特定財産損害誘導行為をしてはならないこと。
 二 特定財産損害誘導行為を行う者に対する措置                  (第四条関係)
  1 勧告
    内閣総理大臣は、特定財産損害誘導行為を行う者に対し、特定財産損害誘導行為の中止、その被害の再発を防止するための措置その他の必要な措置をとるべきことを勧告することができること。
  2 是正命令
   @ 内閣総理大臣は、1による勧告を受けた者が、正当な理由がなくて当該勧告に係る措置をとらなかったときは、その者に対し、期限を定めて、当該措置をとるべきことを命ずることができること。
   A 内閣総理大臣は、@による命令をしたときは、その旨を公示しなければならないこと。
 三 報告の徴収及び立入検査                           (第五条関係)
   内閣総理大臣は、特定財産損害誘導行為による被害の防止のため必要があると認めるときは、特定財産損害誘導行為を行う者(特定財産損害誘導行為による被害の防止のため特に必要があると認める場合においては、特定損害誘導行為を行う者と密接な関係を有する者を含む。)に対し報告若しくは帳簿、書類その他の物件の提出を命じ、又はその職員にこれらの者の事業を行う場所に立ち入り、帳簿、書類その他の物件を検査させ、若しくは関係者に質問させることができること。
 四 権限の委任等                                (第六条関係)
  1 内閣総理大臣は、二又は三による権限(政令で定めるものを除く。)を消費者庁長官に委任すること。
  2 1により消費者庁長官に委任された権限に属する事務の一部は、政令で定めるところにより、都道府県知事又は消費生活センターを設置する市町村の長が行うこととすることができること。
3 二又は三による権限の行使に当たっては、国民の権利を不当に侵害しないように留意しなければならないこと。
第三 特定財産損害誘導行為による被害の救済
 一 特定財産損害誘導行為による意思表示の取消し等
  1 特定財産損害誘導行為による意思表示の取消し                (第七条関係)
    特定財産損害誘導行為によりその財産上の利益の供与を目的とする法律行為の意思表示をした者は、当該意思表示を取り消すことができること。
  2 解釈規定                                 (第八条関係)
    1は、1の意思表示に対する民法第九十六条及び消費者契約法第四条の規定の適用を妨げるものと解してはならないこと。
  3 供与した財産上の利益の取戻し                       (第十条関係)
    特定財産損害誘導行為によりその財産上の利益の供与を目的とする行為であって法律行為でないもの(以下「利益供与事実行為」という。)をした者は、当該利益供与事実行為に相当する法律行為の意思表示の取消しの例により、その財産上の利益を取り戻すことができること。
 二 特別補助
  1 特別補助開始の審判                           (第十一条関係)
    困難状況惹起行為を受け、自己の財産に著しい損害を生じさせる財産上の利益の供与を誘導されるような精神状態にある者又はそのような精神状態に陥るおそれが極めて高い者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、特別補助開始の審判をすることができること。特別補助開始の審判を受けた者は、被特別補助人とし、これに特別補助人を付すること。
  2 特別補助人の同意を要する旨の審判                 (第十二条第一項関係)
    家庭裁判所は、請求により、被特別補助人が次のいずれにも該当する行為のうち特定の行為をするにはその特別補助人の同意を得なければならない旨の審判をすることができること。
@ 民法第十三条第一項第二号から第五号まで及び第十号に掲げる行為
A その相手方が特定財産損害誘導行為を行う者又はその関係者である行為(相手方のない法律行為又は利益供与事実行為であって、これらの者に財産上の利益を供与するものを含む。)
3 審判に際しての本人同意の特例                   (第十八条第一項関係)
 本人以外の者の請求により1又は2の審判をするに際し、本人の同意は要しないものとすること。
  4 特別補助人の同意を得ないでした行為の取消し等      (第十二条第二項及び第三項関係)
    特別補助人の同意を得なければならない法律行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができること。特別補助人の同意を得なければならない利益供与事実行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、当該利益供与事実行為に相当する法律行為の意思表示の取消しの例により、その財産上の利益を取り戻すことができること。
  5 他の法令の準用等                            (第十八条関係)
    1から4までに定めるもののほか、特別補助については民法の補助に関する規定の例により、特別補助の審判の手続については家事事件手続法の補助に関する規定の例により、特別補助の登記については後見登記等に関する法律の補助に関する規定の例によるほか、特別補助について、補助に関する所要の法令を準用すること。
第四 特定財産損害誘導行為による被害者等の保護に資する相談体制の整備等
 一 実態調査                                 (第十九条関係)
   政府は、特定財産損害誘導行為による被害の実態を明らかにし、その被害を未然に防止するため必要な調査を行い、その結果をインターネットの利用その他適切な方法により公表しなければならないこと。
 二 相談体制の整備等                             (第二十条関係)
  1 国及び地方公共団体は、特定財産損害誘導行為による被害者等の適切かつ迅速な保護及びその負担の軽減に資するよう、被害者等に関する各般の問題について一元的にその相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他必要な措置を講ずるものとすること。
  2 国及び地方公共団体は、被害者等の支援に関する業務を行う関係機関及び民間団体の間の連携の強化、関係する職員の研修、民間団体の支援その他被害者等の支援のために必要な措置を講ずるよう努めなければならないこと。
 三 被害の発生を未然に防止するための教育及び啓発              (第二十一条関係)
   国及び地方公共団体は、特定財産損害誘導行為による被害者がその被害を認識することが困難であること等に鑑み、学校をはじめ、地域、家庭、職域その他の様々な場を通じて、特定財産損害誘導行為による被害の発生を未然に防止するために必要な事項に関する国民の十分な理解と関心を深めるために必要な教育活動及び啓発活動の充実を図るものとすること。
第五 雑則                                  (第二十二条関係)
  内閣総理大臣及び関係行政機関の長は、第二の二(勧告及び是正命令)及び三(報告徴収及び立入検査)による権限の行使が円滑に行われるとともに、特定財産損害誘導行為を組織的に行う法人その他の団体が適切に監督されるよう、情報交換を行い、相互に緊密な連携を図りながら協力しなければならないこと。
第六 罰則                         (第二十四条から第二十六条まで関係)
 1 第二の二の2の是正命令に違反したときは、その違反行為をした者は、二年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処すること。
 2 第二の三による報告徴収又は立入検査に際して虚偽報告、検査忌避等があったときは、その違反行為をした者は、一年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処すること。
 3 法人その他の団体の代表者等又は法人その他の団体若しくは人の従業者が1又は2の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、法人その他の団体又は人に対しても、@Aに定める罰金刑を科すること。
  @ 1の違反行為 三億円以下の罰金刑
  A 2の違反行為 三百万円以下の罰金刑
第七 附則
 一 施行期日                                (附則第一条関係)
   この法律は、公布の日から起算して二月を経過した日から施行すること。ただし、二は公布の日から、第三の二は公布の日から起算して一年を経過した日から、それぞれ施行すること。
 二 検討                                  (附則第三条関係)
   国は、この法律の公布後一年以内を目途に、次に掲げる事項について検討を加え、その結果に基づいて、必要な法制上の措置その他の措置を講ずるものとすること。
  @ 困難状況惹起行為を行い、又は困難状況惹起行為により惹起された状況を利用して人の生命、身体その他の権利利益を侵害するよう誘導する行為による被害の実情を踏まえた、これらの被害の防止及びその被害者の支援並びに当該行為の規制の在り方
  A 特定財産損害誘導行為を組織的に行う法人の解散命令に係る制度その他の特定財産損害誘導行為を組織的に行う法人に対する規制の在り方
 三 所要の規定の整備
   その他所要の規定の整備を行うこと。

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