インターネット誹謗中傷による被害の救済に資するための弁護士等の報酬の補助に関する法律案要綱
第一 総則
一 目的 (第一条関係)
この法律は、インターネット誹(ひ)謗(ぼう)中傷による被害が多数発生していることに鑑み、インターネット誹謗中傷による被害に係る民事裁判手続の準備及び追行に必要な費用に係る負担の軽減を図るため、特定電気通信役務提供者等が出えんする基金を活用して行う弁護士等に支払うべき報酬の補助について定めることにより、弁護士等のサービスの利用を容易にし、もってインターネット誹謗中傷による被害の救済に資することを目的とすること。
二 定義 (第二条関係)
この法律において「インターネット誹謗中傷」とは、電気通信の送信(公衆によって直接受信されることを目的とする電気通信の送信を除く。)による権利利益侵害情報(人に対して誹謗中傷をすること、人を不当に差別すること、人を侮辱すること、人の名誉を毀損することその他の人の権利利益を侵害することを内容とする情報をいう。)の流通をいうこと。
この法律において「インターネット誹謗中傷による被害に係る民事裁判手続」とは、裁判所における民事事件に関する手続であって、インターネット誹謗中傷による被害の回復又は被害の拡大の防止に係るものをいうこと。
この法律において「弁護士等」とは、弁護士、弁護士法人、弁護士・外国法事務弁護士共同法人、司法書士又は司法書士法人をいうこと。
第二 指定法人による補助業務
一 指定法人の指定 (第三条関係)
総務大臣は、インターネット誹謗中傷による被害の救済に寄与することを目的とする一般社団法人又は一般財団法人であって、二の業務(以下「補助業務」という。)を適正かつ確実に行うことができると認められるものを、その申請により、全国を通じて一個に限り、補助業務を行う者として指定することができるものとすること。
二 指定法人の業務 (第四条関係)
一による指定を受けた者(以下「指定法人」という。)は、インターネット誹謗中傷による被害に係る民事裁判手続において自己の権利を実現するための準備及び追行に必要な費用を支払う資力がない者又はその支払により生活に著しい支障を生ずる者を援助するため、次の業務を行うものとすること。
@ インターネット誹謗中傷による被害に係る民事裁判手続の準備及び追行(インターネット誹謗中傷による被害に係る民事裁判手続に先立つ和解の交渉を含む。)のためその事件を受任した弁護士等に支払うべき報酬(これに相当する日本司法支援センターに償還すべき立替金又は支払うべき報酬に相当する額を含む。)の一部を補助する業務
A @の業務に附帯する業務
三 補助業務に関する基金 (第五条関係)
指定法人は、補助業務に関する基金を設け、補助業務に要する費用に充てることを条件として特定電気通信役務提供者等から出えんされた金額及びにより交付を受けた補助金の金額の合計額に相当する金額をもってこれに充てるものとすること。
政府は、予算の範囲内において、指定法人に対し、の基金に充てる資金を補助することができるものとすること。
第三 補助業務の適正な実施の確保
一 業務規程の認可等 (第六条関係)
指定法人は、補助業務を行うときは、その開始前に、補助業務に関する規程(以下「業務規程」という。)を定め、総務大臣の認可を受けなければならないものとすること。
業務規程には、次の事項を定めておかなければならないものとすること。
@ 第二の二の@の業務に係る補助(以下単に「補助」という。)の要件に関する事項
A 補助の申請及び決定の手続に関する事項
B 補助の額の算定の基準及び交付の方法に関する事項
C @からBまでのほか、総務省令で定める事項
指定法人は、の認可を受けたときは、遅滞なく、その業務規程を公表しなければならないものとすること。
総務大臣は、の認可をした業務規程が補助業務の適正かつ確実な実施上不適当となったと認めるときは、指定法人に対し、これを変更すべきことを命ずることができるものとすること。
二 事業計画等の認可等 (第七条関係)
指定法人は、毎事業年度、補助業務に関し事業計画書及び収支予算書を作成し、総務大臣の認可を受けなければならないものとすること。
指定法人は、の認可を受けたときは、遅滞なく、その事業計画書及び収支予算書を公表しなければならないものとすること。
指定法人は、毎事業年度終了後、補助業務に関し事業報告書及び収支決算書を作成し、総務大臣に提出するとともに、これを公表しなければならないものとすること。
三 区分経理 (第八条関係)
指定法人は、補助業務に係る経理については、その他の経理と区分し、特別の勘定を設けて整理しなければならないものとすること。
四 秘密保持義務 (第九条関係)
指定法人の役員若しくは職員又はこれらの職にあった者は、補助業務に関して知り得た秘密を漏らしてはならないものとすること。
五 監督
1 報告及び検査 (第十条関係)
総務大臣は、この法律を施行するために必要な限度において、指定法人に対し、補助業務若しくは経理の状況に関し必要な報告若しくは資料の提出を求め、又はその職員に、指定法人の事務所に立ち入り、補助業務の状況若しくは帳簿、書類その他の物件を検査させ、若しくは関係者に質問させることができるものとすること。
2 監督命令 (第十一条関係)
総務大臣は、この法律を施行するために必要な限度において、指定法人に対し、補助業務に関し監督上必要な命令をすることができるものとすること。
3 指定の取消し (第十二条関係)
総務大臣は、指定法人が次のいずれかに該当するときは、第二の一による指定(以下単に「指定」という。)を取り消すことができるものとすること。
@ 補助業務を適正かつ確実に実施することができないと認められるとき。
A 指定に関し不正の行為があったとき。
B この法律の規定若しくは当該規定に基づく命令若しくは処分に違反したとき又は一のの認可を受けた業務規程によらないで補助業務を行ったとき。
第四 罰則 (第十四条及び第十五条関係)
秘密保持義務違反、立入検査の拒否等に対して所要の罰則を設けること。
第五 施行期日等
一 施行期日 (附則第一項関係)
この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行すること。
二 その他
その他所要の規定を整備すること。